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Trademark Appeal Case

著名人落款と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2019−900034(T2019−900034/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6095810号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第6095810商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成27年12月12日に登録出願、第33類「清酒」を指定商品として、同30年9月7日に登録審決、同年11月9日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第16号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番を含む。)及び参考資料1ないし3を提出した。

(1)本件商標は、著名な画家である横山大観の落款に酷似する文字で縦書きしてなるが、同氏は、第1回文化勲章を受章した、我が国の近代の日本画の著名な巨匠であり、「大観」は、同氏の著名な略称である。

横山大観と何の縁もない一私人である商標権者が、本件商標を自己の商標として独占使用することは、当該人物にゆかりのある土地で行われている事業にも悪影響や支障をきたすおそれがあるばかりでなく、社会公共の利益及び一般的道徳観念に反する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(2)横山大観は、清酒を愛飲したことでよく知られているが、同氏の落款に酷似する文字を清酒の商標として使用することは、同氏がその清酒を愛飲し、その落款の文字を商標として使用することを認めたものと消費者に誤認させるおそれがあり、その商品が同氏が愛飲した品質の優れたものであると誤認させるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第7号該当性について

ア 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定しているところ、これに該当する商標は、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。

イ 本件商標は、別掲のとおり、草書体筆書き風の文字からなり、その崩し方から、「大」の文字は確認できるものの、その下に表した部分が直ちに特定の文字であることを認識できないものである。

ウ 他方、落款とは「書画に筆者が自筆で署名し、又は印を押すこと。また、その署名や印。」(岩波書店発行(広辞苑第7版))であるところ、横山大観の落款は、その書体が数度にわたり著しく変化しており(甲3、甲8)、全ての落款が広く知られていると認めるに足る証拠は見いだせない。

そして、本件商標と横山大観の落款とを対比してみれば、同氏の落款の中に本件商標と似たようなものが確認できる(甲3、甲8)としても、通常、落款は上記のとおり書画に署名すること、また、その署名であることから、落款のみが同氏の作品から離れて、直ちに同氏の落款であることを認識されるとはいい難く、また、本件商標がそのように認識されるとする証拠も提出されていない。

エ また、例え本件商標が横山大観の落款又はこれに酷似した文字を書したものと看者に理解されたとしても、本件商標が同氏ゆかりの土地で行われている事業へ悪影響や支障をきたしているとする事実は見いだせない。

オ なお、申立人は、商標権者が本件商標の登録審決にあたり、虚偽の内容を陳述書として提出し、商標登録を受けようとした、極めて悪質な行為があったと主張するが、これを証する陳述書(甲9)は、申立人の理事長によるものであるから、その信用性は低いものといわざるを得ず、他にこれを裏付ける客観性が認められる証拠の提出は一切無いことから、申立人の主張は採用することができない。

カ 上記イないしウを上記アに照らしてみると、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。

また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。

さらに、申立人が提出した証拠及び主張を考慮しても、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるということもできない。

加えて、申立人が提出した証拠及び主張からは、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第16号該当性について

ア 商標法第4条第1項第16号は、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」は登録することはできない旨規定しているところ、「商品の品質の誤認を生ずるかどうかは、その商標の外観、称呼、観念等から判断して、その指定商品について、その商品が現実に有する品質と異なるものであるかのように需要者をして誤認されるおそれがあるかどうかに照らして判断するべきである。」 と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10783号 平成18年2月15日判決参照)。

イ 本件商標は、上記(1)イのとおり、その構成中、「大」の文字は確認できるものの、その下に表した部分が直ちに特定の文字であることを認識できないものであるから、その構成全体から特定の称呼及び観念が生じるものではない。

これを上記アに照らしてみると、本件商標は、その外観、称呼、観念等から判断して、その指定商品について、その商品の品質を認識させる構成態様ではないことから、需要者をして商品の品質を誤認させるおそれがないことは明らかである。

ウ また、例え本件商標が横山大観の落款又はこれに酷似した文字を書したものと看者に理解されたとしても、本件商標は、その指定商品との関係において具体的な品質を表示するものとみることはできない。

さらに、職権をもって調査するも、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、本件商標が商品の品質を表すものとして、使用されている事実及び取引者、需要者が商品の品質を表すものと認識し得るという特段の事情も見いだせない。

なお、申立人は、横山大観が清酒を愛飲したことでよく知られていることを前提に、同氏の落款に酷似する文字を清酒の商標として使用することは、同氏がその清酒を愛飲し、その落款の文字を商標として使用することを認めたものと消費者に誤認させるおそれがあり、その商品が同氏が愛飲した品質の優れたものであると誤認させるおそれがあると主張する。

しかしながら、横山大観が清酒を愛飲したことを証する陳述書(甲9、甲10)は、申立人の理事長又は一企業の代表取締役が当庁に宛てたものであり、横山大観の手紙(甲14)は、一個人に宛てたものであり、同氏の著書(甲15)は、1,000部の限定されたものであるから、これらをもって、本件指定商品の需要者をして同氏が清酒を愛飲したことが広く知られているということはできない。そうすると、申立人の主張は前提において失当であり、また、横山大観がその清酒を愛飲し、その落款の文字を商標として使用することを認めたものか否かは、商品の品質に該当するものではなく、さらに、品質の優劣は商標法第4条第1項第16号に該当しないことから、該主張は採用することができない。

以上からすると、本件商標は、その指定商品について、具体的な商品の品質を表示するものではないから、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第16号のいずれにも該当しないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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