Trademark Appeal Case
結合商標の要部抽出と公益標章
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−14294(T2018−14294/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「LIFULL地方創生」及び「ライフルチホウソウセイ」の文字を上下二段に書してなり、第35類及び第41類に属する願書記載のとおりの役務(別掲1参照)を指定役務として、平成29年6月16日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その構成中に『地方創生』の文字を有してなるところ、当該文字は、内閣官房まち・ひと・しごと創世本部事務局と内閣府地方創世推進事務局とが両輪となって、地方創世の推進に向けた施策に取り組んでいる名称を表す著名な標章『地方創生』の文字と同一又は類似するものと認められる。したがって、本願商標は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と類似する商標と判断するのが相当であるから、商標法第4条第1項第6号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第6号の趣旨について
商標法第4条第1項第6号は、同号に掲げる標章を一私人に独占させることは、同号所定の団体の信用や権威を損ない、国際信義に反することから、これを不登録事由としたものと解される。
2 「地方創生」の文字が「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章で著名」であることについて
ア 「地方創生」について
「地方創生」は、「少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度に集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施する」ことを目的とした「まち・ひと・しごと創生法」(平成26年法律第136号 平成26年11月28日公布)に基づき、安倍内閣による「人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生する」ための施策の総称である。
イ 「地方創生」の文字が、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」であり、かつ、著名であることについて
「地方創生」は、前記アのとおり、安倍内閣による「人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生する」ための施策の総称で、かつ、政府が各省庁やその委託を受けた機関等を通じて行っている公益事業の名称を表示する語として用いられており、今もなお、多数の新聞記事及びインターネット情報(別掲2及び別掲3参照)に取り上げられ、かつ、公益事業の名称を表示する語として使用されている。
よって、「地方創生」の文字は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であり、かつ、一般に広く知られている著名な標章と判断するのが相当である。
3 「地方創生」の標章(以下「引用標章」という場合がある。)と本願商標の類似性について
(1)「地方創生」の標章と本願商標の類似性の判断基準について
商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される商標の類否判断に当たり、構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、ア その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、イ それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月
8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
(2)本願商標の構成中の「地方創生」の文字部分を類否判断の対象とすることの可否について
本願商標は、「LIFULL地方創生」及び「ライフルチホウソウセイ」の文字を上下二段に書してなるところ、下段の片仮名は上段の文字の読みを特定したものと認められ、その全体の構成から、「ライフルチホウソウセイ」の称呼を生じるものである。
そして、本願商標の構成中の「LIFULL地方創生」は、「LIFULL」が欧文字で、「地方創生」が漢字で表されており、文字種が異なることから、「LIFULL」の欧文字と「地方創生」の漢字を組み合わせたものと容易に理解されるものであって、「LIFULL地方創生」の文字が、一連で特定の意味合いをもって認識されるというべき事情も見いだせないことから、「LIFULL地方創生」の文字を必ずしも一体不可分のものとしてのみ捉えなければならない特別な事情はないものである。
また、本願商標の構成中の「地方創生」の構成部分は、著名な標章である「地方創生」とその構成文字を同じくするものであるから、該構成部分は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
そうすると、本願商標の構成中の「地方創生」の文字を識別標識としての要部として抽出し、当該構成部分のみを引用標章と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
(3)本願商標と引用標章の類否
本願商標の要部と引用標章は、共に「地方創生」であり、「チホウソウセイ」の称呼及び安倍内閣による「人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生する」ための施策の総称の観念を共通にするものである。
したがって、本願商標と引用標章は類似するというべきである。
(4)小括
以上によれば、本願商標は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名な「地方創生」と類似の商標である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、「本願商標は『LIFULL』、『ライフル』の文字部分及び『地方創生』、『チホウソウセイ』の各文字部分を結合させた商標であり、本願商標の構成部分は特に軽重があるものとはいえないため、構成中の『地方創生』や『チホウソウセイ』の各文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいい難く、また、構成中の『LIFULL』や『ライフル』の各文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるような特段の事情は存在しない。そうすると、本願商標の類否判断に際しては、本願商標の構成中の『地方創生』や『チホウソウセイ』の各文字部分を抽出し、この一部だけを引用標章と比較してその類否を判断することは許されるべきではなく、本願商標より生ずる称呼は構成文字全体に相応した『ライフルチホウソウセイ』のみと認定、判断すべきである。」旨主張している。
しかしながら、前記3のとおり、本願商標の構成中の「地方創生」は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であり、かつ、一般に広く知られている著名な標章である「地方創生」と同一の文字であり、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとみるのが相当である。
よって、本願商標の構成中の「地方創生」及び「チホウソウセイ」の文字部分のみを、引用標章と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、請求人のこの主張は採用できない。
(2)請求人は、「『地方創生』の語を含んだ結合商標の登録例が多数存在していることからすると、本願商標についても登録を認めるのが、自然、かつ、合理的である。」旨主張している。
しかしながら、本願商標と引用標章の類否判断は、過去の登録例や審決例等の判断に拘束されることなく、本願の事案に即して、本願商標と引用標章とを対比することにより、個別具体的に判断されるべきものである。
また、請求人の挙げる登録例等は、本願商標とは商標の構成態様等において相違する等、事案を異にするといえることから、そのような例があることをもって、本願商標についてした上記認定、判断が左右されるものではない。
5 まとめ
以上のとおり、本願商標は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であり、かつ、著名な標章「地方創生」と類似の商標であるから、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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