Trademark Appeal Case
炭火発酵の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−14825(T2018−14825/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第29類「納豆」を指定商品として、平成28年10月24日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標の構成中、『炭火』の文字は、『炭でおこした火』の意味を、『発酵』の文字は、『酵母・細菌などの微生物が、有機化合物を分解してアルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生じる過程。本態は酵素反応。』の意味をそれぞれ有する語であり、本願商標全体として、『炭でおこした火を使用し酵素反応させる製法』といった意味合いを理解させるものである。そして、本願の指定商品を取り扱う業界においては、納豆は、通常、蒸し、あるいは煮た大豆に納豆菌を付し、これを発酵室等で発酵させ製品にするところ、その工程中、発酵室の温度を保つために、炭火が用いられていることが認められる。そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、『炭火を使用して発酵させて作られた商品』であること、すなわち、単に商品の品質を表示したものとして認識するというべきである。したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした証拠調べ
審判長は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、令和元年6月25日付けで、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、上記証拠調べの結果を通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えた。
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨
請求人は、前記3の証拠調べ通知に対し、要旨以下のとおり、意見を申し立てた。
(1)別掲2(1)に掲載されている情報において、7件中6件は、過去のある時点における情報でしかなく、また、掲載されている納豆商品の中に、「炭火発酵」という標章が使用されているものは存在していない。さらに、掲載されている情報によれば、納豆の製造過程(製造工程)で「炭火を使用している」と説明している生産者の間に、「炭火発酵」の意味、観念について共通する認識が存在していないことは明らかである。
(2)商品「納豆」に使用される「炭火発酵」という標章は、「商品『納豆』の製造に、天然物、自然物のみが用いられていて、化学的なものが使用されていないのではないか」という印象を、暗示的に、一般消費者に認識させるだけのものでしかなく、商品の品質、製造方法等を明確に表す語とはいえない。
(3)別掲2(2)に掲載されている情報は、僅か3件であり、「ある文字が略枠線で囲われている」という表記方法が「業界で普通に用いられていない」証左となっているとすら考えられる。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、毛筆体で二行に縦書きされた「炭火」及び「発酵」の文字を略枠線で囲った構成からなるものであるところ、その構成中の「炭火」の文字は「炭でおこした火」の意味を、「発酵」の文字は「一般に、酵母・細菌などの微生物が、有機化合物を分解してアルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生じる過程」の意味を有する語である(各語の意味については、いずれも「広辞苑第六版」から引用。)。
そして、本願の指定商品である「納豆」は、「よく煮た大豆を藁づとなどに入れて適温中に置き、納豆菌を繁殖させて作った食品。現在は、蒸し大豆に直接納豆菌を散布して発酵させたものが多い。」(上記「広辞苑」から引用。)という食品であるところ、納豆を取り扱う業界においては、別掲2(1)のとおり、原料を発酵させる方法として、炭火を使用する方法が古くから現在に至るまで広く採用されており、炭火で発酵させる方法を「炭火発酵」と称することもある事実が認められる。
他方、本願商標の構成中の文字部分に採択された書体(毛筆体)及び表記方法(縦書き、二行構成)は、いずれも一般的に用いられるものであり、また、構成中の略枠線の部分は、別掲2(2)に加えて別掲3のとおり、商品(納豆)の包装の前面に表示された記載事項を略枠線で囲むように表示することが一般に行われている事実が認められることから、本願商標は、取引上普通に用いられる方法で表示されたものである。
そうすると、本願商標は、その指定商品である「納豆」との関係において、「炭火で発酵させた納豆」の意味合いを認識させるにすぎず、その表示方法も、取引上普通に用いられる方法で表示されたものであるから、これをその指定商品に使用するときは、その需要者及び取引者をして、単に商品の品質を表したものと認識、理解させるにとどまり、自他商品の識別標識又は商品の出所を表示する標識として認識させることはないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、別掲2(1)に掲載されている情報の多くは、過去のある時点における情報でしかなく、また、掲載されている納豆商品の中に、「炭火発酵」という標章が使用されているものは存在していない旨述べるとともに、掲載されている情報によれば、「炭火を使用している」と説明している生産者の間に、「炭火発酵」の意味、観念について共通する認識が存在していないことは明らかである旨主張する。
しかしながら、例えば、「炭火を使って発酵させる昔ながらの納豆づくり」(別掲2(1)エ)などの記載に見られるように、原料を発酵させる方法として、炭火を使用する方法は古くから広く採用されており、現在においても、炭火で発酵させた納豆が製造販売されている事実(別掲2(1)キ)があること、また、請求人が主張するように「炭火発酵」を行う生産者の間に、共通認識が存在していないとしても、いずれも炭火を使用して発酵させていることにおいて変わりはなく、さらに、商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、当該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないというべきであるところ、別掲2(1)に掲げる事例は、第三者によって納豆商品に「炭火発酵」という標章が使用されていることは示していないとしても、納豆を取り扱う業界において、炭火で発酵させる方法を「炭火発酵」と称することもある実情を十分示すものであり、当該取引の実情を踏まえれば、本願商標は「炭火で発酵させた納豆」であることを認識させるにとどまることは、上記(1)のとおりである。
イ 請求人は、「納豆」に使用される「炭火発酵」という標章は、天然物、自然物のみが用いられていて、化学的なものが使用されていないという印象を、暗示的に、一般消費者に認識させるだけのものでしかなく、商品の品質、製造方法等を明確に表す語とはいえない旨主張する。
しかしながら、本願商標は、納豆の取引の実情を踏まえれば、「炭火発酵」の文字が「炭火で発酵させた納豆」という商品の品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであること、上記(1)のとおりである。
ウ 請求人は、別掲2(2)に掲載されている情報は、僅か3件であり、「ある文字が略枠線で囲われている」という表記方法が「業界で普通に用いられていない」証左となっている旨主張する。
しかしながら、別掲2(2)に加えて別掲3のとおり、納豆を取り扱う業界において、商品の包装の前面に表示された記載事項を、略枠線で囲むように表示することが一般に行われている事実から、本願商標の構成中の略枠線についても、普通に用いられる方法といえる程度のものであり、自他商品の識別標識としての機能を発揮し得るものではないと判断するのが相当である。
したがって、請求人による上記主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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