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Trademark Appeal Case

SWISS MILITARY商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2017−900216(T2017−900216/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5936205号商標の指定商品中,第14類「スイス製の時計,スイス製の時計の部品及び附属品,スイス製の腕時計,スイス製の置き時計,スイス製の目覚まし時計,スイス製の電気時計,スイス製のストップウォッチ,スイス製の時計用化粧箱,スイス製の時計側,スイス製の時計用計時機構,スイス製の時計の文字盤,スイス製の時計用ムーブメント,スイス製の日時計,スイス製の時計バンド,スイス製の時計鎖,スイス製の時計のガラス」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5936205号商標(以下「本件商標」という。)は,「SWISS MILITARY BY PSM」の欧文字を標準文字で表してなり,平成26年9月3日に登録出願,同29年3月10日に登録査定,第14類「スイス製の時計,スイス製の時計の部品及び附属品,スイス製の腕時計,スイス製の置き時計,スイス製の目覚まし時計,スイス製の電気時計,スイス製のストップウォッチ,スイス製の時計用化粧箱,スイス製の時計側,スイス製の時計用計時機構,スイス製の時計の文字盤,スイス製の装身用鍵輪,スイス製の時計用ムーブメント,スイス製の日時計,スイス製の時計バンド,スイス製の時計鎖,スイス製の時計のガラス」を指定商品として,同月31日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第7号又は同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきである旨申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第7号について

本件商標は,「SWISS MILITARY BY PSM」の欧文字を標準文字で表してなるところ,その構成文字中「SWISS MILITARY」は,スイス連邦政府の国策に係る商標であり,同政府の許可なく使用することが禁じられているものであるから,このような表示を含む商標の登録を認めることは国際信義に反するものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について

申立人の商標「SWISS MILITARY」は,日本国内において,申立人の業務に係る商品を表示する商標として,当業界及び需要者間に広く認識されている周知著名な商標であるところ,本件商標をその指定商品に使用すれば,当該商品が申立人の業務に係る商品と関係があるか,又は,経済的若しくは組織的に何らかの関係があるかのごとく,その出所について混同を生じさせるおそれがある。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 取消理由の通知

当審において,本件商標権者に対し,本件商標は,国際登録第1163988号商標(以下「引用商標」という。)との関係で商標法第8条第1項に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである旨の取消理由を平成30年2月27日付けで通知し,相当の期間を指定して意見を求めた。

第4 商標権者の意見

上記第3の取消理由に対し,本件商標権者は,何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断

1 商標法第8条第1項該当性について

(1)引用商標

引用商標は,「SWISS MILITARY」の欧文字をゴシック体で横書きしてなり,2012年(平成24年)10月12日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して,2013年(平成25年)4月12日に国際商標登録出願,第14類「Precious metals, unwrought or semi-wrought; key rings [trinkets or fobs] of precious metal; jewelry, precious stones; timepieces and chronometric instruments; all the aforesaid goods being Swiss.」並びに第3類,第9類,第16類,第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成30年8月17日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

(2)商標の類否について

ア 本件商標

(ア)本件商標は,上記第1のとおり,「SWISS MILITARY BY PSM」との欧文字を標準文字で表してなるところ,その構成全体から,「スイスミリタリーバイピーエスエム」との称呼を生じるものである。

また,本件商標は,その外観構成に照らして,「SWISS」,「MILITARY」,「BY」及び「PSM」の4つの単語からなるものであることは明らかであるところ,最初の単語である「SWISS」の文字は,「スイスの」の意味を有する英語の形容詞であり,2番目の「MILITARY」の文字は,「軍隊,軍人」の意味を有する英語の名詞であることから,我が国における英語の普及率に照らせば,取引者,需要者は,これら2語を「スイスの軍隊」ないし「スイスの軍人」程の意味合いでひとまとまりの熟語を表したものとして捉えるとみるのが自然といえる。

そして,3番目の「BY」の文字は,「〜によって,〜による」の意味を有する英語の前置詞であって,当該文字の後に,企業名あるいは個人名やそれらの略称等の文字が続く場合には,これに接する取引者,需要者は,当該文字の後に記載された企業名等によって製造,販売や提供される商品又は役務であることを認識するものであり,また,別掲のとおり,実際の商取引においても,そのように使用されている。

次に,4番目の「PSM」の文字は,一般の辞書類には掲載も見当たらないことから,特定の意味合いを直ちに想起させない造語と認められるものの,このような欧文字3文字からなる語は,企業名等の略称表示としてもしばしば採択使用されていることから,これに接する需要者は,「BY」の文字の後にあることもあいまって,「PSM」の文字部分を固有の企業名等の略称表示として理解することも十分にあり得るものといえる。

そうすると,本件商標は,これをその指定商品(商品群)について使用する場合には,これに接する取引者,需要者に対し,その構成全体から「『PSM』と称する事業者によって製造ないし販売される商品シリーズ『SWISS MILITARY』(「スイスの軍隊」ないし「スイスの軍人」)」といった観念を生じさせることから,本件商標中の「SWISS MILITARY」の文字部分は,取引者,需要者に対し,「PSM」なる事業者の取扱いに係る商品のシリーズ商標(いわゆるファミリーネーム)との印象を与えることとなり,本件商標においては,同文字部分も独立して自他商品識別標識として機能を有する部分として認識させるものと認められる。

したがって,本件商標は,その構成のうち「SWISS MILITARY」の文字部分だけを抽出して,引用商標と比較して類否を判断することも許されるものというべきである。

(イ)以上によれば,本件商標は,その要部たり得る「SWISS MILITARY」の文字部分に相応して「スイスミリタリー」の称呼及び「スイスの軍隊」ないし「スイスの軍人」の観念をも生じるものである。

イ 引用商標

引用商標は,上記(1)のとおり,「SWISS MILITARY」の欧文字をゴシック体で横書きしてなるから,これより「スイスミリタリー」の称呼及び「スイスの軍隊」ないし「スイスの軍人」の観念を生じるものである。

ウ 本件商標と引用商標との類否

本件商標の要部である「SWISS MILITARY」の欧文字部分と引用商標「SWISS MILITARY」とを比較すると,両者は,いずれもありふれた書体からなり,そのつづりを同じくするから,外観において酷似し,その称呼及び観念も同じであるから,互いに類似するものであって,そうである以上,本件商標と引用商標とは,類似の商標というべきである。

(3)指定商品の類否について

本件商標及び引用商標の各指定商品は,それぞれ上記第1及び上記(1)のとおりであるところ,本件商標の指定商品中,第14類「スイス製の時計,スイス製の時計の部品及び附属品,スイス製の腕時計,スイス製の置き時計,スイス製の目覚まし時計,スイス製の電気時計,スイス製のストップウォッチ,スイス製の時計用化粧箱,スイス製の時計側,スイス製の時計用計時機構,スイス製の時計の文字盤,スイス製の時計用ムーブメント,スイス製の日時計,スイス製の時計バンド,スイス製の時計鎖,スイス製の時計のガラス」は,引用商標の指定商品中,第14類「timepieces and chronometric instruments」(仮訳:計時用具)と同一又は類似する商品である。

(4)最先の出願人について

本件商標は,上記第1のとおり,平成26年9月3日に登録出願されたものであり,他方,引用商標は,上記(1)のとおり,2012年(平成24年)10月12日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2013年(平成25年)4月12日に国際商標登録出願されたものであるから,本件商標よりも引用商標が先願と認められる。

そうすると,引用商標に係る商標登録出願人が最先の商標登録出願人であり,かつ,同人と本件商標に係る商標登録出願人(本件商標権者)とは同一人ではない。

(5)小括

以上のとおり,本件商標の登録は,その指定商品中,第14類「スイス製の時計,スイス製の時計の部品及び附属品,スイス製の腕時計,スイス製の置き時計,スイス製の目覚まし時計,スイス製の電気時計,スイス製のストップウォッチ,スイス製の時計用化粧箱,スイス製の時計側,スイス製の時計用計時機構,スイス製の時計の文字盤,スイス製の時計用ムーブメント,スイス製の日時計,スイス製の時計バンド,スイス製の時計鎖,スイス製の時計のガラス」については,同一又は類似の商品について使用をする同一又は類似の商標について異なった日に二以上の商標登録出願があり,かつ,最先の商標登録出願人でない者(本件商標権者)が商標登録を受けたものであるから,商標法第8条第1項に違反してされたものといえる。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)「SWISS MILITARY」の周知性について

ア 証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。

(ア)申立人は,スイス連邦政府国防・市民防衛・スポーツ省(以下「スイス連邦国防省」という。)の傘下にある一組織であり,物資調達,技術及び不動産について権限を有する政府機関である(甲4〜7)。

申立人は,スイス連邦国防大臣から,スイス連邦国防省による商標政策に関する訓令(2014年(平成26年)1月22日発効。甲2,3。以下「本件訓令」という。)をもって,国内及び海外における「SWISS MILITARY」等のスイス軍に関する商標について,その商標登録及び保護管理を行うよう命じられた(甲2,3)。

(イ)提出された証拠からは,申立人が自己の業務に係る商品又は役務について商標「SWISS MILITARY」を使用している事実は認められない。

イ 上記アによれば,申立人は,スイス連邦国防省に所属する一組織であって,スイス連邦国防大臣から,本件訓令をもって,国内及び海外における「SWISS MILITARY」等のスイス軍に関する商標について,その商標登録及び保護管理を行うよう命じられていることは認められるものの,そのこと自体,我が国において広く知られているとはいえないし,また,申立人自身が自己の業務に係る商品又は役務について商標「SWISS MILITARY」を使用している事実も認められないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,標章「SWISS MILITARY」が,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国の取引者,需要者の間に広く知られていたものとは認めることができない。

(2)判断

上記(1)イのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,標章「SWISS MILITARY」が,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国の取引者,需要者の間に広く知られていたものとは認めることができないから,本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして,その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

上記第1のとおり,本件商標は,「SWISS MILITARY BY PSM」の欧文字を標準文字で表してなるものであって,その構成中には「SWISS MILITARY」の文字を有してなる。また,その指定商品は,いずれもスイス製の商品である。

申立人は,本件商標を構成する「SWISS MILITARY」は,スイス連邦政府の国策に係る商標であり,同政府の許可なく使用することが禁じられているから,この語を含む本件商標の登録を認めることは国際信義に反する旨主張する。

しかしながら,本件訓令は,スイス連邦国防省が申立人に対し,スイス軍に関する商標の管理等に係る事務の方針に関して下す命令にすぎないところ,本件訓令及びスイスネス(Swissness)法(甲8)のいずれにおいても,我が国おいて「SWISS MILITARY」又はこの語を含む商標を使用するに当たり,スイス連邦政府の許可が必要であると認めるに足りる記載はなく,その他全証拠によっても同許可が必要であるとは認められない。

そして,本件訓令第2条第5項には,「1 第三者による欺瞞行為及びスイス軍(Swiss Military)の商標の価値の毀損を避けるために,これらの商標はスイスで作られたラベル製品及びスイスのサービスのみに使用することができる。」との記載があるところ,上記のとおり,本件商標の指定商品は,いずれもスイス製の商品なのであるから,この点からみても,本件商標をその指定商品について登録し使用することで第三者による欺瞞行為及びスイス軍(Swiss Military)の商標の価値の毀損を招くものとは認め難い。

また,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,標章「SWISS MILITARY」が,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国の取引者,需要者の間に広く知られていたものとは認めることができないものであることは,上記(1)イのとおりである。

そうすると,本件商標をその指定商品について登録し使用しても国際信義に反するものとまではいえない。

加えて,本件商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。

また,本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するとはいえないし,申立人が提出した証拠からは,本件商標の登録出願の経緯が,社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるということもいえない。

その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠もない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。

4 まとめ

以上のとおり,本件商標の登録は,その指定商品中「結論掲記の指定商品」については,商標法第8条第1項に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。

しかし,本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については,その登録を取り消す理由がないから,商標法第43条の3第4項の規定により,その登録は維持すべきものとする。

よって,結論のとおり決定する。

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