Trademark Appeal Case
引用商標の周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2019−900270(T2019−900270/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第6155785号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年11月10日に登録出願、第43類「レストランにおける飲食物の提供」を指定役務として、同31年1月23日に登録審決、令和元年6月28日に設定登録されたものである。
2 引用商標
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第5919147号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成28年10月18日に登録出願、第43類「パキスタン料理・アラブ料理・ハラール料理の提供,ビリヤニ・ニハリ・ハリームを主とする飲食物の提供」を指定役務として、同29年2月3日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当するとして引用する商標は、「Ali’s Kitchen」の欧文字からなり(以下「引用商標2」という。)、申立人が「飲食物の提供」について使用し、本件商標の登録出願前から取引者、需要者間に広く認識されていると主張するものである。
以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、引用商標1と同一又は類似であって、その指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、申立人が、「飲食物の提供」について使用し、本件商標の登録出願前から取引者、需要者間に広く認識されている引用商標2と類似する商標であり、かつ、同一の役務である「飲食物の提供」に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人が、「飲食物の提供」について使用し、本件商標の登録出願前から取引者、需要者間に広く認識されている引用商標2との関係において、他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、他人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている引用商標2に類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次のとおりである。
(ア)申立人が、パキスタン料理などを提供するレストラン「Ali’s Kitchen」(以下「申立人レストラン」という。)を平成21年頃に大阪市大正区で開店したこと、同レストランは、遅くとも平成26年には大阪市中央区に移転し現在まで継続して営業していること、及び2016年10月21日発売の「ミシュランガイド京都・大阪2017」において「ビブグルマン」に選ばれ掲載されたことが認められる(甲3〜甲6、甲8〜甲11)。
(イ)申立人レストランは、ブログ、テレビ、新聞で紹介されており、それらには、申立人レストランが「アリーズキッチン」、「ALI’S KITCHEN」のような表記で紹介されている(甲4〜甲6、甲8〜甲11)。
(ウ)申立人レストランのウェブページなどには、申立人レストランを表示するものとして、引用商標1(甲2)、引用商標2(甲3)、「ALI’S KITCHEN」の欧文字(甲5)が表示されている。
(エ)しかしながら、申立人レストランにおける売上高、来店客数など営業実績を示す客観的な証拠は見いだせない。
イ 上記アからすれば、申立人レストランは、大阪市において平成21年頃から営業していること、2016年(平成28年)10月21日発売の「ミシュランガイド京都・大阪2017」において「ビブグルマン」に選ばれ、掲載されたこと、及びテレビ、新聞などで紹介されたことが認められる。
しかしながら、本件商標の登録出願(平成28年11月10日出願)は、「ミシュランガイド京都・大阪2017」の発売(平成28年10月21日発売)から1か月も経過していない上、何より申立人レストランの営業実績を示す証拠は見いだせないから、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人レストランを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると、引用商標は、いずれも本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務(飲食物の提供)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものということはできない。
ウ なお、申立人は、申立人レストランの年間売上高は、ほぼ右肩上がりで伸びており、同種のレストランの2ないし3倍であると主張するとともに、証拠(甲12)を提出し、また、広告費は、2018年に約73.6万円計上している、イスラム諸国の有名人なども多数来店しているなどと主張しているが、それらの主張を裏付ける客観的な証拠は見いだせないから、申立人のかかる主張は採用できない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「Ali’s Halal Kitchen」の欧文字を横書きし、その右にアラビア文字とおぼしき図形(3つ)を描いてなるものであり、その構成態様から「Ali’s Halal Kitchen」の文字部分が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当である。
そして、本件商標の構成中、「Ali’s Halal Kitchen」の文字部分は、同書同大でまとまりよく一体的に表され、これから生じる「アリズハラルキッチン」又は「アリーズハラルキッチン」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに、当該文字は特定の意味合いを有する語として知られているというような事情は見いだせないものであり、たとえ、その構成中「Halal」の文字が「イスラム教律にもとづいて処理された食肉」を意味するものであり(「コンサイス英和辞典第13版」株式会社三省堂)、本件商標の指定役務との関係において識別力がないか弱いものであるとしても、かかる構成においては、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるとみるのが自然である。
その他、「Ali’s Halal Kitchen」の文字部分について、その構成文字中のいずれかの文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
してみれば、本件商標の構成中「Ali’s Halal Kitchen」の文字部分は、その構成全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるものであって、「アリズハラルキッチン」又は「アリーズハラルキッチン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
また、本件商標の構成中、アラビア文字とおぼしき図形部分は、我が国において特定の読みや意味合いをもって親しまれているとはいえないことから、当該部分からは、特定の称呼、観念を生じないものである。
そうすると、本件商標からは、「アリズハラルキッチン」又は「アリーズハラルキッチン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標1
引用商標1は、別掲2のとおり、緑色で縦書きした「ALI’S」の欧文字と横書きした「KITCHEN」の文字を、「I」の文字を共通にして交差させた構成からなり、その構成態様から「アリズキッチン」又は「アリーズキッチン」の称呼を生じるものである。
そして、引用商標1は、特定の意味合いを有する語として知られているというような事情は見いだせないものであることから、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1の類否を検討すると、外観においてはそれぞれ上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、両者は、その構成態様が明らかに異なるものであるから、外観上、明確に区別できるものである。
次に、本件商標から生じる「アリズハラルキッチン」又は「アリーズハラルキッチン」の称呼と引用商標1から生じる「アリズキッチン」又は「アリーズキッチン」の称呼を比較すると、両者は中間部ではあるが「ハラル」の3音の有無という差異を有し、両者をそれぞれ一連に称呼した場合、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、互いに聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、両者はいずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較できないとしても、外観、称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
そして、他に、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情も見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1は非類似の商標であるから、両商標の指定役務が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記(2)アのとおり、「Ali’s Halal Kitchen」の欧文字とアラビア文字とおぼしき図形からなり、その構成中「Ali’s Halal Kitchen」の文字部分が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものであり、「アリズハラルキッチン」又は「アリーズハラルキッチン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そうすると、本件商標からは、「アリズハラルキッチン」又は「アリーズハラルキッチン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標2
引用商標2は、上記2(2)のとおり、「Ali’s Kitchen」の欧文字からなり、その構成文字に相応して「アリズキッチン」又は「アリーズキッチン」の称呼を生じるものである。
そして、当該文字は、特定の意味合いを有する語として知られているというような事情は見いだせないものであり、一種の造語として認識されるものであるから、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標2の類否
本件商標と引用商標2の類否を検討すると、外観においてはそれぞれ上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、両者は、その構成全体をみたときは明らかに構成態様が異なるものである。
また、本件商標の要部である「Ali’s Halal Kitchen」と引用商標2を比較するに、両者は、中間部ではあるが「Halal」の5文字の有無という差異を有し、その差異が両者の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく、外観上、明確に区別できるものである。
次に、本件商標から生じる「アリズハラルキッチン」又は「アリーズハラルキッチン」の称呼と引用商標2から生じる「アリズキッチン」又は「アリーズキッチン」の称呼を比較すると、両者は中間部ではあるが、「ハラル」の3音の有無という差異を有し、両者をそれぞれ一連に称呼した場合、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、互いに聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、両者はいずれも特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標2は、観念において比較できないとしても、外観、称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
そして、他に本件商標と引用商標2が類似するというべき事情も見いだせない。
エ 小括
上記(1)のとおり、引用商標2は申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記ウのとおり、本件商標と引用商標2は非類似の商標である。
したがって、本件商標は、その指定役務と引用商標2に係る使用役務が同一又は類似するとしても、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標2は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(3)ウのとおり、本件商標は、引用商標2と非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして、引用商標2を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
申立人は、商標権者が神戸三宮で運営するレストラン「Ali’s Halal Kitchen」(以下「商標権者レストラン」という。)が申立人レストランの神戸支店であるなどと勘違いする事例が多数あるなどと主張し、その証拠(甲14)を提出しているが、かかる証拠は、その記載内容も具体的でなく、客観性に欠けるものといわざるを得ず、その他に、その記載内容を裏付ける証拠は見いだせないから、かかる主張は採用できない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人は、商標権者に店名の件で何回も連絡し、店名を真似るのをやめて欲しいと平成28年11月4日に文書として送ったにもかかわらず、商標権者が神戸三宮に商標権者レストランを開店した等述べ、本件商標の登録出願には、申立人レストランが獲得した業務上の信用を横取りするなどの不正の目的がある旨主張している。
しかしながら、かかる主張は、それらの事実を裏付ける証拠の提出はなく、かつ、それを認めるに足りる証拠も見いだせないから、採用することができない。
そうすると、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
また、引用商標2は,上記(1)のとおり、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記(3)ウのとおり、本件商標は引用商標2と非類似の商標である。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的をもつて使用するもの」ということはできないから、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当せず、その登録は同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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