Trademark Appeal Case
装飾的位置商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−19555(T2017−19555/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第3類「歯磨き,洗口液,口臭用消臭剤,せっけん類,化粧品,香料,薫料」を指定商品とし、平成27年4月1日に位置商標として登録出願、その後、本願の指定商品については、原審における同28年8月2日付け手続補正書及び当審における同30年2月22日付け手続補正書により、最終的に、第3類「液体歯磨き,洗口液」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標を構成する図形は、商品の包装容器の正面中央付近に付された緑色の図形からなるものであるが、商品の包装等においては、美感を発揮させるため、または需要者の注意をひく目的等で、出所を表示するための識別標識以外の装飾的な種々の文字、図形及び色彩が使用されている実情があり、本願指定商品を取り扱う業界においても、出願人以外の者が、商品のパッケージの正面中央付近に緑色の色彩が施された図形を使用している実情が認められる。そうすると、本願商標を指定商品に使用しても、需要者は、単に美感を発揮する等のために装飾、模様等が施された商品の形状の一形態を表示するにすぎないと認識するにとどまるものである。また、出願人は、本願商標は、使用された結果、出願人の業務に係る商品であることを認識させるに至ったものである旨主張するが、本願商標を構成する図形と同一視し得る図形が、出願人の取扱いに係る洗口液の包装容器の正面中央付近に使用されていることは認められるものの、いずれも、需要者の注意を強く惹くように、『G・U・M』の文字等が目立つように使用されており、本願商標と同一視し得る図形及び位置以外の構成要素を伴った使用態様であることから、出願商標部分のみで独立して識別力を有するに至っているということはできない。そうすると、販売期間や市場占有率、宣伝広告等の状況を踏まえても、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているということができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
ア 本願商標は、前記第1のとおり、商品の包装容器の正面中央付近の位置に、左縦線が曲線の略長方形であって、右端から左方向に向けて明るくなるように緑色のグラデーションが施された図形を付してなる位置商標であり、第3類「液体歯磨き,洗口液」を指定商品とするものである。
ところで、本願の指定商品を取り扱う業界においては、商品の魅力向上や需要者の関心を引くなどといった目的のため、商品の包装に様々な図形や色彩を装飾的に付すことが一般に広く行われているところ、商品「液体歯磨き,洗口液」についても、その商品の包装容器の正面に表された商品名や効能等を示す文字を際立たせるための枠等として、例えば、略長方形、略三角形、略円形などといった様々な図形を用いることが一般に広く行われていることに加え、これらの図形の色彩として緑色を採択すること、また、該色彩に濃淡を付けることも広く一般に行われている(別掲2及び3)。
そうすると、本願商標は、その構成要素である図形の形状及び位置について子細にみれば、上記用例の液体歯磨き又は洗口液の包装容器に付された図形の形状及び位置とは異なる点があるとはいえるものの、本願商標をその指定商品に使用するときは、需要者をして、その商品の包装容器に通常採用され得る位置に付された枠図形の一類型として認識されるにとどまり、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
イ 請求人は、本願商標を構成する図形について、左右非対称の特殊な形状であり、かつ、右から左にかけて、濃緑から明るい緑にグラデーションの彩色が施された特徴的な態様からなるものであること、また、本願商標を構成する図形が付される位置は、商品の包装容器の正面中央という、需要者が商品を選択する際に着目する位置であって、通常商標が付される位置であるため、位置によって識別性が減ぜられるという事情はない旨主張する。
しかしながら、上記アのとおり、本願の指定商品である「液体歯磨き,洗口液」を取り扱う業界においては、商品の包装容器に付される枠図形等として様々な形状が用いられており、該図形の色彩として緑色が採用され、該色彩に濃淡を付けることも広く一般に行われていることに加え、これらの図形が、商品名等を示す文字とともに包装容器の正面中央付近の位置に付されることも広く一般に行われているという実情に鑑みると、本願商標に接する取引者、需要者は、商品の包装容器に付す枠図形の一類型として認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないというべきである。
なお、請求人は、様々に彩色された長方形又は正方形を組み合わせてなる過去の商標登録例を挙げ、本願商標を構成する図形について、識別力がないとする理由はない旨主張するが、これらの登録商標と本願商標とは、図形や色彩の相違という顕著な差異がある上、本願商標が位置商標として登録出願されたものであることをも併せ考慮すれば、該登録商標が存することをもって、本願商標が商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識され得るなどということはできない。
(2)請求人の使用に係る歯磨きについて
請求人は、本願商標は、請求人から独占的通常使用権を受けているサンスター株式会社によって、遅くとも2005年から現在に至るまで、同社が製造、販売するオーラルケアブランドであるGUMシリーズに使用されてきたこと、本願の指定商品「液体歯磨き,洗口液」は、シリーズの中核となる商品であって、市場占有率も高いこと、GUMシリーズの商品は新聞、雑誌等の多数の記事で取り上げられていること及びサンスター株式会社は、GUMシリーズの商品について、大々的な広告宣伝活動を行ってきたことを挙げつつ、本願商標を構成する図形は、多数の需要者の目に触れ、自他商品の識別標識として認識されてきた旨主張し、証拠方法として、当審において第1号証ないし第335号証を提出している(なお、本審決においては、以下、該第1号証ないし第335号証について、順次、甲第1号証ないし甲第335号証と読み替えることとする。)。
そこで、上記請求人の主張及び同人提出に係る甲各号証について、以下検討する。
ア 使用開始時期及び使用態様
請求人は、1988年に、「G・U・M」と称する歯ブラシのブランドを創設した米ジョン・O・バトラー社を買収し、1989年に、歯周病予防のための歯ブラシ、歯磨き、デンタルリンス等のオーラルケアのトータルブランドとして、「G・U・M」と称するシリーズ商品の販売を開始した。該「G・U・M」シリーズに係る「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きのパッケージデザインは、おおむね以下のように変遷していることがうかがえる(甲1、甲6〜甲25、甲27、甲302、甲329)。
(ア)1989年の販売開始時には、淡い緑色の長方形内に丸みを帯びた白抜きの「G・U・M」の文字を表してなるものが、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器の正面に大きく付されていた(甲1、甲6、甲27)。
(イ)1997年には、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器の正面に大きく付された長方形の色彩が、効能の強さをイメージさせるため、濃い緑色に変更されるとともに、白抜きの「G・U・M」の文字の書体が、やや丸みが少ないものへと変更された(甲1、甲6)。
(ウ)1999年には、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器の正面に大きく付された長方形の左下角が丸みを帯び、また、該長方形の左縦線から下横線に添って濃い青色のラインが配される態様に変更されるとともに、白抜きの「G・U・M」の文字には陰影が付され、その書体は、丸みを一部に残し全体的に角張った書体へと変更された(甲1、甲6、甲27)。
(エ)世界各国で異なっていたロゴを統一する「グローバルロゴ」を策定した2004年には、長方形の色彩として濃い緑色一色を用いると、包装容器の地の色である白色とのバランスが悪くなるため、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器の正面に大きく付された長方形に、比較的薄い緑色から濃い緑色へのグラデーションが施され、かつ、該長方形の左縦線が曲線となった。そして、白抜きの「G・U・M」の文字の書体は、丸みを帯びた部分と角張った部分とが混在するものへと変更され(甲1、甲6、甲9、甲27)、それ以降、白抜きの「G・U・M」の文字の書体については、陰影の付し方に微差はあるものの、おおむね同一の態様が用いられている。
なお、「SUNSTAR 製品総合カタログ 2005 SPRING&SUMMER」(甲10)によれば、該カタログから新製品として「ガム デンタルリンス ナイトケア」と称する洗口液が掲載されているものの、該商品のパッケージデザインは、上記標章を小さくしたものが付されている点において、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きのパッケージデザインとは差異が認められる。
(オ)2005年には、白い包装容器と緑色の略長方形のバランスを見直した結果、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器の正面に付された略長方形をやや小さくしたレイアウトに変更されるとともに、該長方形の下横線に添って、「ガム・デンタルリンス」の文字を白抜きで表してなる青色の帯状図形(該図形にも、青色のグラデーションが施されている。)を付す態様へと変更された(甲6、甲11)。該白抜きの文字は、2013年には「HEALTHY GUMS,HEALTHY LIFE」というスローガンに変更されている(甲6、甲19)。
なお、「ガム デンタルリンス ナイトケア」と称する洗口液のパッケージデザインは、上記態様とは差異が認められる場合がある(甲11)。
(カ)「サンスター製品総合カタログ 2015春夏」(甲21)に掲載されている「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器からは、上記(オ)で述べた青色の帯状図形がなくなるとともに、緑色の略長方形がより小さくなり、本願商標を構成する図形と同一視し得る図形内に白抜きの「G・U・M」の文字を表してなるもの(以下「使用標章」という。)が、液体歯磨きの包装容器の正面中央付近に付されるとともに、緑色の略三角形を重ねたような図形が、包装容器の正面左下方に付された態様へと変更された(該略三角形の色彩は、「ガム デンタルリンス [爽快タイプ]」「ガム デンタルリンス [ノンアルコールタイプ]」と称する液体歯磨きについては水色で彩色されている)。
なお、「ガム デンタルリンス ナイトケア」と称する洗口液については、使用標章の下横線に添って、上記(オ)で述べた青色の帯状図形が付されている一方、緑色の略三角形を重ねたような図形は付されていない点において、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きのパッケージデザインとは差異が認められる。
そして、2015年以降現在に至るまで、4年ほど、使用標章が、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器の正面中央付近の位置に使用されていることが確認できる。
なお、「日経デザイン2013年11月号」(2013年10月24日発行、日経BP社)(甲6)の「ロングセラーパッケージの秘密 第17回 G・U・M/サンスター」を見出しとする記事において、「G・U・M」シリーズ商品に係る液体歯磨きのパッケージデザインの変遷が紹介されているところ、「不易 変わらないデザイン 文字と色の組み合わせ 白地にブランドカラーのグリーンの組み合わせとG・U・Mの文字というビジュアルの核は変わっていない」「流行 デザインの変更点 ロゴ G・U・Mの3文字を点で区切る構成は変わらないが、書体は変化している」「流行 デザインの変更点 グリーン ブランドカラーの色調は、時代に合わせて変えている」の記載、また、「ブランドを想起させる核」として、緑色の長方形内に丸みを帯びた部分と角張った部分とが混在する白抜きの「G・U・M」の文字を大きく表してなる標章が紹介されるとともに、「パッケージの基調は白。その上に緑の帯と白抜きのG・U・Mの文字という基本的なパターンは一貫しており、ブランドイメージを形作る重要な要素になっている」の記載がある。
イ 売上高及びマーケットシェア
請求人の取扱いに係る洗口液は、2010年から2013年(見込)の期間において、56億円ないし66億円の販売実績であり、洗口液市場において1位のシェア(約28〜31%)を占めていることが認められる(甲252、甲253)。また、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きを含む「G・U・M」シリーズ商品に係る液体歯磨き及び洗口液は、2013年から2016年(見込)の期間において、59億円ないし67億円の販売実績であり、洗口剤(液体歯磨き及び洗口液を合算したもの)市場において1位のシェア(約27%)を占めていることが認められる(甲254、甲303)。
ウ 広告宣伝
(ア)テレビCM
請求人は、2005年以降、継続的に、35種類のテレビCMを制作しており、その内容の一部として、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨き、又は「ガム デンタルリンス ナイトケア」と称する洗口液、あるいは該液体歯磨きを含む複数の「G・U・M」シリーズ商品の正面の映像とともに、上記ア(オ)で述べた標章(青色の帯状図形を伴う緑色の略長方形内に白抜きの「G・U・M」の文字を表してなるもの)、又は上記ア(カ)で述べた使用標章が表示される映像が含まれていることはうかがえるが、使用標章を付した態様の歯磨きが表示されているのは、2015年3月3日に放映されたとする「GUMデンタルペースト リンス リスクロ臭篇 15秒」「GUMデンタルペースト リンス リスクロ臭篇 30秒」(甲306)、また、放映日不明の「ペースト/リンス リスクロ臭篇 15秒(爽快タイプ新発売)2015年3月OA素材」「歯周病リスク プロダクト篇 15秒 2015年上期OA素材」「デンタルリンス CA篇 15秒 2015年〜2016年 液体OA素材」「デンタルリンス 親子篇 15秒 2015年〜2016年 液体OA素材」「GUMデンタルリンス 3人に1人篇 15秒 2016年5月以降 OA素材」「GUMデンタルリンス データ篇 15秒 2016年5月以降 OA素材」(甲309)と称するテレビCMのみであり、それ以外のテレビCMにおいては、上記ア(オ)で述べた態様の商品が表示されている。また、上記各テレビCMの放映に係る具体的な時期、地域及び回数等は明らかでない(甲29、甲30、甲32、甲34〜甲37、甲306、甲309)。
なお、請求人は、2016年の4月、5月、8月に11種類のテレビCMを放映したとするが、その具体的な内容、放映に係る具体的な時期、地域及び回数等も明らかでない(甲307)。
(イ)新聞
請求人は、上記ア(カ)で述べた使用標章を付した態様の「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きについて、2015年3月14日付け朝日新聞、読売新聞、北海道新聞、河北新聞(甲186〜甲189)に、また、同月16日付け東京新聞、北陸中日新聞、中日新聞、中国新聞、西日本新聞、徳島新聞(甲190〜甲195)に、同一の記事下広告(白黒)を掲載した。該広告においては、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きを含む複数の「G・U・M」シリーズ商品の正面の画像とともに、「殺菌力のG・U・Mで歯周病予防」等の文字、「SUNSTAR」の文字及び使用標章が掲載されている。
また、請求人は、使用標章を付した態様の「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きについて、2017年11月17日付け朝日新聞及び東京新聞に、同一の全面広告(カラー)を掲載した。該広告においては、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの正面の画像とともに、「液体ハミガキの継続使用が 歯周病予防におすすめ!」等の文字、「SUNSTAR」の文字及び使用標章が掲載されている(甲330、甲331)。
なお、2012年6月1日付け読売新聞ほか8紙(甲84〜甲92)、2013年3月7日ないし9日及び13日付け西日本新聞ほか11紙(甲103〜甲137)、2013年8月8日ないし10日及び9月1日付け読売新聞ほか7紙(甲160〜甲172)及び同年11月7日付け「東奥新聞」(甲173)に掲載された全面広告又は記事下広告(白黒)においては、上記ア(オ)で述べた態様の「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの正面の画像とともに、「覚えてください、防災にオーラルケア。」の文字、「SUNSTAR」の文字等が掲載されている。
(ウ)雑誌
請求人は、上記ア(カ)で述べた使用標章を付した態様の「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きについて、「ダイヤモンド・チェーンストア 2015.6.1」(甲240)、「日経ヘルス 2015年7月号」(2015年6月2日発行)(甲244)、「CO−OPステーション 2015年5月号」(2015年4月10日発行)(甲247)及び「saita 2015年7月号」(平成27年6月7日発行)(甲248)といった雑誌に、ほぼ同一の裏表紙広告又は見開き広告(カラー)を掲載した。該広告においては、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きを含む複数の「G・U・M」シリーズ商品の正面の画像とともに、「殺菌力のG・U・Mで歯周病予防」等の文字、「SUNSTAR」の文字及び使用標章が掲載されている。
また、請求人は、使用標章を付した態様の「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きについて、「日経ヘルス 2016年11月号、12月号」(2016年10月2日、11月2日発行)(甲317〜甲318)及び「ダイヤモンド・チェーンストア 2017.9.15」(甲331)といった雑誌に、ほぼ同一の裏表紙広告又は見開き広告(カラー)を掲載した。該広告においては、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの正面の画像とともに、「液体ハミガキは、ガム・デンタルリンス。」等の文字、「SUNSTAR」の文字及び使用標章が掲載されている。
なお、2009年ないし2014年の期間に、「Chain Store Age」「saita」といった雑誌に掲載された16回の広告(カラー又は白黒)においては、上記ア(オ)で述べた態様の「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの正面の画像とともに、上記ア(オ)で述べた標章等が掲載されている。
エ 新聞、雑誌の記事等における紹介
新聞、雑誌において、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きを含む複数の「G・U・M」シリーズ商品に関する記事が掲載されているが、これらの記事情報において、「G・U・M」シリーズの商品の価格、効能等は紹介されているものの、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きの包装容器に付された使用標章及びそれを付す位置について言及しているものはない(甲255〜甲288、甲304、甲305)。
オ アンケート調査
請求人は、マーケティングリサーチの専門会社に依頼して、2018年1月9日ないし11日の期間に、「『(ロゴ、パッケージデザインを提示しない)ブランド表記の背景であるグリーンの図形』のみでの『GUM』ブランドの消費者の認知を確認する」との目的で、アンケート調査を実施した(甲319)。これは同社のアンケートサイトの登録モニターに対して、インターネット調査として実施されたものであり、全国に居住する20歳ないし69歳の一般消費者(本人及び同居家族がマスコミ・広告、市場調査及び食品・食品加工業に従事していないことという条件を満たす者)、計1066名を対象とし、そのうち性別の内訳は、男性は516人、女性は550人であった。
調査の具体的方法は、回答者がふだんマウスウォッシュを購入するかを尋ね(Q1)、その後、「提示パッケージ」(破線で輪郭が表された白色のマウスウォッシュの包装容器の正面中央付近に、左縦線が曲線の略長方形であって、右端から左方向に向けて明るくなるように緑色のグラデーションが施された図形を付したもの)の画像を見せて、マウスウォッシュで思い浮かぶ商品名を自由回答させ(Q2)、続いて、「ガム、リステリン、モンダミン、システマ、クリニカ、オーラ2、NONIO、クリアクリーン」の中から、マウスウォッシュで知っている商品を全て選択させ(Q3)、最後に再び「提示パッケージ」を見せて、改めてこの商品は何だと思うか、Q3で提示した選択肢の中から当てはまるものを選択させる(Q4)調査である。なお、回答者は問番号順に回答を入力する形式で、システム上、前の質問には戻れないような仕組みとなっていた。
調査結果は、「提示パッケージ」を見て、マウスウォッシュで思い浮かぶ商品名について「G・U・M(ガム)」と回答した者は、調査対象者全体の38%であった(Q2)。また、マウスウォッシュのブランドリスト提示による認知率では、「モンダミン」が最も高く、調査対象者全体の82%が知っていると回答し、次いで「G・U・M(ガム)」の認知率は78%であった(Q3)。そして、再び「提示パッケージ」を見て、マウスウォッシュで思い浮かぶ商品名について、選択肢の中から「G・U・M(ガム)」を選択した者は、調査対象者全体の56%であった(Q4)。
カ 小括
上記アないしオによれば、「G・U・M」シリーズに係る「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きは、1989年に販売され、販売開始時から5度にわたるパッケージデザインの変更を経て、2015年以降現在に至るまでの4年ほどは、使用標章が、歯磨きの包装容器の正面中央付近に付された態様で使用されている。
また、上記「G・U・M」シリーズに係る「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きは、少なくとも2005年以降、様々な方法により、広告宣伝がなされてきたとはいえるが、その広告宣伝に当たっては、商品の写真(映像)とともに、略長方形内に白抜きの「G・U・M」の文字を表した標章及び「SUNSTAR」の文字が表示されている。
さらに、「G・U・M」シリーズ商品に関する記事が、新聞等に掲載されていることは認められるものの、その内容において、歯磨きの包装容器に付された使用標章及びそれを付す位置について言及しているものはない上、使用標章及びそれを付す位置のみをもって、通常、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識されていると認めるに足る事実も見いだせない。
加えて、請求人が実施したアンケート調査は、「提示パッケージ」の画像は色彩について何らの言及もないことから、白色のマウスウォッシュの包装容器を想起させるものである一方、本願商標は、別掲1のとおりの構成からなる位置商標であり、その容器の全体形状(輪郭)はもとより、色彩が特定されていないものであるから、「提示パッケージ」の画像と本願商標との間には、視覚上の印象に少なからず影響を及ぼす差異が存するとみるのが相当である。また、該差異を差し引いたとしても、回答者が該画像に係る容器のどの部分をもって回答したかは不明である上、「提示パッケージ」を見せて、マウスウォッシュで思い浮かぶ商品名について「G・U・M(ガム)」と回答した者は、調査対象者全体の38%にとどまることからすれば、本願の指定商品に関連する商品の一般的な需要者は、「提示パッケージ」の画像から、具体的な商品の出所までを認識できる者は少ないというのが相当である。
そうすると、上記「G・U・M」シリーズに係る「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きが、その発売から30年の間、継続して製造、販売され、洗口液又は洗口剤市場において、2010年ないし2016年にかけて、国内で1位のシェアを占めているとしても、該商品については、その広告宣伝等を含めて使用されている「G・U・M」の文字又は「SUNSTAR」の文字が、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として需要者に認識されているとみるのが相当であり、本願商標のみが、自他商品の識別標識としての機能を果たしているとみることはできないものである。
したがって、本願商標は、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、洗口液の包装容器に付された図形について、時期により、色彩の濃淡や外枠の有無の違い、青色の帯を伴っているか否かといった違いがあるものの、同一形状の緑色の図形が、パッケージの中央付近にあるという特徴は一貫していることから、請求人の使用に係る洗口液と本願商標とは、2005年から同一視できる態様で、継続して使用されてきた旨主張する。
しかしながら、2005年ないし2014年の期間における、液体歯磨きの包装容器の使用態様(上記1(2)ア(オ))は、緑色の略長方形に添って青色の帯状図形が配されており、また、両図形には同様のグラデーションが施されていることもあいまって、両者は一体的な印象を看者に与える態様で表示されてきたということができる。そして、一体的な印象を与える該図形から、緑色の略長方形のみが分離して観察され、これが商品の出所識別機能を有するものとして強く印象付けられるとはいい難い。
さらに、「ガム デンタルリンス ナイトケア」と称する洗口液のパッケージデザインは、上記液体歯磨きの態様とは差異が認められる場合があることに加え、2015年以降においても、上記1(2)ア(オ)で述べた青色の帯状図形が付されている場合があること、上記1(2)アのとおりである。
したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。
(2)請求人は、アンケート調査の結果について、Q4において、「提示パッケージ」(マウスウォッシュの包装容器)を示して、改めてこの商品は何だと思うか、Q3で提示した選択肢の中から当てはまるものを選択させたものであるところ、その回答者として、マウスウォッシュを購入しない者を除外し、ふだんマウスウォッシュを購入する者の回答に絞り込んだ場合には、そのうちの71%が、「GUM」と回答した(甲319の14頁)ことから、本願商標を構成する図形が、本願の指定商品の需要者に、請求人の自他商品識別標識として認識、記憶されていることは明らかである旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する割合は、回答者を、ふだんマウスウォッシュを購入する者に絞り込み、その者が多肢選択肢から「G・U・M(ガム)」を選択した結果であるところ、ふだんマウスウォッシュを購入する回答者が、選択肢として提示されたブランドリストから、「提示パッケージ」の画像が何のブランドであるか熟慮した上で回答したことが推認されるにもかかわらず、その場合であっても、請求人と関連付ける回答をした者は7割程度にとどまるものである。そして、Q4について、ふだんマウスウォッシュを購入する者を含めた調査対象者全体についてみれば、上記1(2)オのとおり、選択肢の中から「G・U・M(ガム)」を選択した者は、調査対象者全体の56%であったことから、約半数の調査対象者は、「提示パッケージ」と請求人との関連を想起できなかったということになる。
また、「提示パッケージ」を見て、マウスウォッシュで思い浮かぶ商品名を自由に回答するQ2においては、「G・U・M(ガム)」と回答した者は、調査対象者全体の38%にとどまること、上記1(2)オのとおりであることに加え、上記1(2)カのとおり、本アンケート調査については、そもそも「提示パッケージ」の画像と本願商標との間に、回答者の認識に影響を及ぼす差異点が存するものである。
そして、「ガム デンタルリンス」と称する液体歯磨きについては、該商品に使用されている「G・U・M」の文字又は「SUNSTAR」の文字が、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として需要者に認識されているとみるのが相当であること、上記1(2)カのとおりである。
したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。
3 まとめ
以上によれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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