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Trademark Appeal Case

位置商標の形状と色彩の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−8350(T2017−8350/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第7類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品とし,商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書に記載のとおりとして,平成27年5月15日に位置商標として登録出願されたものである。

その後,原審における平成28年7月29日提出の手続補正書により,本願の指定商品については,第7類「動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び『水車・風車』を除く。)用エンジン,水用ポンプ用エンジン,交流発電機用エンジン,直流発電機用エンジン,高圧洗浄機用エンジン」と,また,「商標の詳細な説明」については,別掲1(2)のとおりに,それぞれ補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標を構成するエンジンカバーの形状を赤色とする図形は,同種商品が一般的に採用し得る範囲内のものであって,他メーカーが各種エンジンカバーの基本的色彩及び形状として採用しているものと比較しても予測し難い特異な形状とはいえないから,本願商標のとおりの位置に特定してその指定商品に使用しても,これに接する取引者・需要者は,エンジンカバーの形状そのものの範囲を出ない,本願の指定商品の形状の一形態を表したものと認識するにとどまるから,本願商標は,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,出願人が提出した証拠からは,いずれも「HONDA」の文字と共に用いられているものであり,通常,需要者はこれらを目印に商品を識別しているものと推認され,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないから,本願商標が,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権により証拠調べをした結果,別掲2の事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,その結果を請求人に通知し(平成30年7月12日付け証拠調べ通知書),相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)

請求人は,上記第3の証拠調べ通知に対して,次のとおり意見を述べた。

1 本願商標を構成するエンジンカバーの赤色の図形は,以下の特徴を有している。

(1)エンジンカバーは,正面右半部の輪郭が略半円弧状で,正面左半部の輪郭が左下を傾斜面とした略台形状であり,エンジンカバー正面の中央やや右寄りに,エンジンカバー正面から前方へ突出する先細りの略円錐台状のリコイルスターターカバーを有している。

(2)エンジンカバー(リコイルスターターカバーを含む。ただし,リコイルスターターカバーの中央の円内部を除く。)全体が赤色である。

2 本願商標の構成は,上記(1)及び(2)の特徴を有しているのに対して,証拠調べ通知書において提示された他社商品のエンジンカバー,及び,請求人提出の資料29において提示された他社商品のエンジンカバーは,いずれも,上記(1)及び(2)の特徴の両方を備えたものは存在しないから,本願商標は,これら他社商品のエンジンカバーとは異なる,特異性を有するものである。

したがって,本願商標は,指定商品に使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであるから,商標法第3条第2項に該当し,商標登録を受けられるものである。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本願商標について

本願商標は,上記第1のとおり,「商標の詳細な説明」において,「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は,標章を付する位置が特定された位置商標であり,動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び『水車・風車』を除く。)用エンジン,水用ポンプ用エンジン,交流発電機用エンジン,直流発電機用エンジン,及び高圧洗浄機用エンジンのエンジンカバーの実線で示した形状の赤色の図形からなる。なお,破線は,商品の形状の一例を示したものであり,商標を構成する要素ではない。破線で囲まれた部分の商標記載欄の色彩は,商標を構成する要素ではない。」旨の記載がなされ,第7類の「動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び『水車・風車』を除く。)用エンジン,水用ポンプ用エンジン,交流発電機用エンジン,直流発電機用エンジン,高圧洗浄機用エンジン」をその指定商品とするものである。

そして,本願商標は,別掲1(1)の「商標登録を受けようとする商標」の記載からすれば,指定商品であるエンジンを正面から見た場合に,エンジンの下部の位置に付された,赤色の色彩が着色された,以下のような構成の図形からなる位置商標である。

ア 右半部の輪郭が略半円弧状で,正面左半部の輪郭が左下を傾斜面とし,左上部を四角形で切り欠いた略台形状に表された輪郭からなる。

イ アの輪郭のすぐ内側には,アの輪郭にそって,右半部が半円弧状で,左半部が左下を傾斜面とする略台形状に表された図形が表されている。

ウ イの図形の内側には,中央やや右寄りに3個の同心円状の図形が表され,外側から1番目の円図形内には,形状は特定されていないが,エンジンを始動するための引き手の図形と,冷却用の空気を取り入れるための孔の図形が,2番目の円図形内には,形状は特定されていないが,冷却用の空気を取り入れるための孔の図形が,それぞれ表されており,3番目の円図形内は白抜きになっている。

したがって,本願商標は,上記のとおり,エンジンを正面から見た場合のエンジンカバー及びそれが付される位置を,赤色の色彩で着色した平面的な図形として表したものであると認められる。

(2)商標法第3条第1項第3号該当性

ア エンジンカバーの位置について

本願商標は,上記1(1)のとおり,指定商品を正面から見た場合に,エンジンの下部の位置に付されている。

本願商標の指定商品であるエンジンにおいては,資料1及び資料29に示されている例や別掲2において示した例のように,エンジンの上部には燃料タンクやエアクリーナー及び気化器等の付属部品が付されており,下部にあるエンジン本体に,エンジンの形状に合わせてエンジンカバーが取り付けられている実情にある。

そうすると,本願商標に係るエンジンカバーの位置は,同種商品におけるエンジンカバーが通常取り付けられる位置であるといえるものである。

したがって,それが付されている位置が,出所識別標識としての機能を果たしているものと認められない。

イ エンジンカバーの形状について

本願商標は上記(1)のとおりの図形であるところ,一般にエンジンカバーの態様は,資料29に示されている例や別掲2において示した例よりすれば,エンジン本体の形状に合わせて,円又は四角形を組み合わせた形状から構成されており,その中には,エンジンカバーの右半部を半円弧状,左半部を斜辺を左下に有する略台形状とする形状からなる商品もある。

また,エンジンカバーには,そのほぼ中央の位置に,エンジンを始動するための引き手を伴った,始動のための内部構造を覆うため及び冷却用の空気を取り入れるための孔を有する円筒状又は略円錐台状の形状からなる突出部分を有しており,その中心部分には円形のスペースを設けて商標又はロゴマークを表示する例も多く見受けられる。

そして,エンジンを正面から見た場合,当該突出部の略円錐台状の形状は同心円状の図形と看取できる。

そうすると,本願商標は,商品の機能や美感に資することを目的として,同種商品に通常採用され得るエンジンカバーを正面から見た形状を表した図形の範囲内であるといえるものである。

そして,その図形に表された形状が,何らかの特定の観念を想起させるものと認識されるような特異な特徴も認められない。

したがって,本願商標の図形に表された形状が,出所識別標識としての機能を果たしているものと認められない。

ウ エンジンカバーの色彩について

本願商標は,赤色の色彩が着色されているところ,資料29に示されている例や別掲2において示した例よりすれば,エンジンカバーには,赤色を始め様々な色彩が着色されている実情がある。

そうすると,本願商標に係るエンジンカバーに着色された赤色の色彩は,商品の機能や美感に資することを目的として,同種商品が通常採用され得る商品の色彩の範囲内であるといえるものである。

そして,赤色に着色することが,何らかの特定の観念を想起させる特異なものとも認められない。

したがって,本願商標の図形に着色された赤色の色彩が,出所識別標識としての機能を果たしているものと認められない。

エ 以上のことからすれば,本願商標は,本願商標が付されている位置は同種商品が通常採用し得る範囲内のものであり,商品の機能や美感に資することを目的として,同種商品に通常採用され得るエンジンカバーを正面から見た形状を図形に表したものであって,また,本願商標に赤色の色彩を着色することは,商品の機能や美感に資することを目的として,同種商品が一般的に採用し得る範囲内のものであるから,特異なものとはいえず,本願商標は,その位置を特定して,本願の指定商品について使用しても,これに接する需要者は,エンジンカバーが一般的に付される位置に,通常採用され得る商品の形状を図形に表し,通常採用され得る商品の色彩を着色したものと認識するにとどまり,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないというべきである。

したがって,本願商標は,商品の形状及び特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 商標法第3条第2項について

(1)使用による自他商品識別力の獲得

商標法第3条第2項の規定によれば,同条第1項第3号に該当する商標であっても,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができるところ,ある標章が同項の規定に該当するかは,出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の販売数量又は売上高等,当該商品又はこれに類似した商品又は役務に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである(参考:知的財産高等裁判所 平成24年(行ケ)第10285号判決)。

(2)本願商標が商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は,「本願商標は,長年の使用の結果,自他商品識別力を獲得したものであり,商標法第3条第2項に該当し,商標登録を受けることができるものである。」旨主張し,証拠として,原審において資料1ないし資料41(枝番号を含む。)を提出し,当審において資料30を差し替えるとともに,新たに資料42ないし資料48(枝番号を含む。)を提出している。

そこで,上記(1)で述べた観点を踏まえ,請求人が提出した証拠及び同人の主張の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

ア 使用による本願商標の識別性について

請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば,次のとおりである。

(ア)本願商標の使用に係る商品の販売開始時期及び販売期間について

請求人が製造・販売し,本願商標を使用していると主張するエンジン(以下「請求人エンジン」という。)は,1983年(昭和58年)1月に販売が開始され,最初のモデルである「GX110」及び「GX140」以降,「GX120」,「GX160」,「GX200」,「GX240」,「GX270」,「GX340」及び「GX390」の9モデルがあり,現在,「GX110」及び「GX140」を除く,7モデルが販売されている。

(イ)エンジンカバーの特徴について

請求人エンジンの全てのモデルにおいて,エンジンカバーの取り付けられている位置を同じくし,エンジンカバーには赤色の色彩が着色されている。

そして,エンジンカバーの形状については,各モデルのエンジンに応じて異なる形状のエンジンカバーが取り付けられている。

また,エンジンカバーの一部である突出部の中央部分における円形のスペース内に「HONDA」の文字が表示されている(資料3〜資料28,資料41)。

(ウ)販売実績等について

請求人エンジン及び請求人の取扱いに係る請求人エンジンを搭載した完成機商品(資料39)は,日本全国の一次卸先(資料43)を通じて販売され,また,日本全国の取引法人(資料44)へ請求人から直接販売されている(資料45)。

そして,「申請者商品(GXエンジン)の販売台数及び販売シェア」(資料30)によれば,2005年(平成17年)から2013年(平成25年)までの9年間の社団法人日本陸用内燃機関協会「陸用内燃機関生産実績」(資料34)及び「販売経路別出荷」(資料36)並びに請求人エンジンの国内OEM向け販売台数及び同エンジンに対する販売シェアが記載されており,請求人エンジンの国内OEM向け販売シェアを,請求人エンジンの国内OEM向けの販売台数と社団法人日本陸用内燃機関協会のデータを基に,同種商品(空冷・ガソリン・3PS以上・4サイクル)のガソリンエンジンに限定して算出しており,その9年間の請求人エンジンの国内OEM向け販売台数は,合計848,012台(年平均94,223台)であり,販売シェアは平均28.2%としている。

また,請求人の主張によれば,そのうちの2007年(平成19年)から2013年(平成25年)の7年間におけるGX120,GX160及びGX200の3モデルの販売台数は,合計571,268台(年平均81,610台)であり,販売シェアは平均27.6%であるとしている。

(エ)広告実績について

請求人エンジンのカタログ(資料5〜資料28)及び請求人の取扱いに係る請求人エンジンを搭載した商品のカタログは,請求人の作成した資料(資料46)によれば,2008年(平成20年)から2016年(平成28年)までの期間に,請求人エンジンのカタログは,合計20,220部,請求人の取扱いに係る請求人エンジンを搭載した商品のカタログは,合計2,539,037部が,日本全国の一次卸先を通じて頒布されたとしている。

そして,資料39に示されている請求人エンジンを搭載した商品(高圧洗浄機,ポンプ,発電機等)については,商品カタログの提出はない。

また,請求人ホームページにおいて,請求人エンジン及び請求人の取扱いに係る請求人エンジンを搭載した完成機商品を掲載しており(資料3,資料41),請求人エンジンの掲載頁へのアクセス数は,2001年(平成13年)ないし2013年(平成25年)で712,387回,年平均55,000回であり,請求人の取扱いに係る請求人エンジンを搭載した完成機商品掲載頁へのアクセス数は,1,162,872回,年平均約90,000回である(資料37,資料38)。

(オ)アンケート調査

請求人は,調査会社に「位置+色彩商標に関する識別力調査」とするアンケート調査を依頼して,本願商標を構成する図形と,請求人エンジンの各モデルの写真とを提示して,同一のものと認識されるか(同一性認識の調査)を把握することを調査目的として,2017年(平成29年)5月16日から同月18日の調査期間に,WEB調査という調査手法により,日本全国の20歳から79歳の男女の中から,人口構成比に応じて無作為に抽出した者に対してインターネットを通じて調査票を配信して,3,000人以上の有効回答者が得られるように調査を実施した(資料48)。

イ 以上のことを総合すれば,当合議体は,本願商標は未だ自他識別力を獲得するまでには至っていないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。

(ア)本願商標の使用に係る商品の販売開始時期及び販売期間について

a 本願商標の使用態様

本願商標の特徴は上記1(1)のアないしウのとおりの図形に赤色の色彩を着色したものである。

b 本願商標の使用といえる商品

本願商標の使用といえる商品は,本願商標と特徴的部分が同一であり,その他の部分にわずかな違いを有するにすぎない同一視しうる形状及び色彩並びにそれが付された位置からなるエンジンカバーを有するものでなければならず,本願商標と同一視しうる形状及び色彩並びにそれが付された位置からなるエンジンカバーを有するモデルは,請求人の商品カタログ等の記載からすれば,1991年(平成3年)に発売されたGX120,GX160及び1995年(平成7年)に発売されたGX200の3モデル(以下「使用商品」という。)であると認められ,いずれのモデルも現在に至るまで販売されている。

c 使用商品以外の請求人エンジン

1991年(平成3年)以前に販売された請求人エンジンは,エンジンカバーから前方へ突出する部位の形状が,先細りの形状ではないことから,これを正面から見た場合に,当該部分を表す3個の同心円状の図形とならないこと,そして当該部位の形状に,先細りの形状が採用されたと思われる1991年(平成3年)以降に発売されたモデルにおいて,上記3モデル以外のものは,右半部右斜め上方にある注入口と思われる部位の基部が大きく盛り上がっており,これを正面から見た場合に,右半部の形状が半円弧状の形状を構成せず,右半部の形状が相違するもの(GX240,GX270,GX340,GX390)であるから,これらのモデルについては,正面から見たエンジンカバーの形状を図形に表した場合,本願商標とその特徴を異にするものであり,本願商標を使用しているものということはできない。

d アンケート調査

この点について,請求人は,アンケート調査結果において,約6割から8割の回答者が,本願商標と請求人エンジンの各モデルとが同一性を有しているとの認識を示している旨を主張する。

しかしながら,当該アンケート調査は,本願商標における「商標登録を受けようとする商標」に示された図と商品の写真とを比較して両者の同一性を質問しているものであるが,全体の形状の比較を概略的に問うような内容であることから,その回答結果について信用度が高いとはいえない(資料48)。

e 小括

以上のことからすると,本願商標が使用された期間は,1991年(平成3年)から現在までの約29年間である。

そして,本願商標の使用といえる商品の範囲はGX120,GX160及びGX200の3モデルであるといわなければならない。

(イ)使用商品の使用地域について

使用商品は,上記ア(ウ)のとおり,日本全国の一次卸先を通じて販売され,また,日本全国の取引法人へ販売されていることから,使用地域は日本全国である。

(ウ)販売実績等について

上記(ア)からすれば,請求人の主張する請求人エンジン全体の販売台数に対して,使用商品はその一部であるところ,その販売実績については,請求人は上記ア(ウ)のとおり,2007年(平成19年)から2013年(平成25年)の7年間におけるGX120,GX160及びGX200の3モデルの販売台数は合計571,268台,及び販売シェアは平均27.6%であるとしている。

しかしながら,資料30の記載によれば,販売シェアの算出に関して,市場規模を請求人エンジンの同種商品として,一定条件のガソリンエンジンに限定しているが,指定商品である「動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び『水車・風車』を除く。)用エンジン,水用ポンプ用エンジン,交流発電機用エンジン,直流発電機用エンジン,及び高圧洗浄機用エンジン」として取引されるエンジンは,この条件に限られるとはいえないことからすれば,比較する対象としての市場規模は「社団法人日本陸用内燃機関協会」による「販売経路別出荷」集計における「ガソリンエンジン/国内・直売・OEM(D)」(資料36)の出荷台数全体とみるのが相当であり,これに対する請求人エンジンの「国内OEM向け販売台数(E)」の割合をみるのが妥当と考えられる。

そうすると,請求人の述べる上記のGX120,GX160及びGX200の3モデルの販売台数をもとにした販売シェアについても,これより小さい数値となることは容易に類推できるところである。

そして,請求人の主張する使用商品の販売台数の数値をもとにして,「社団法人日本陸用内燃機関協会」による「販売経路別出荷」集計における「ガソリンエンジン/国内・直売・OEM(D)」(資料36)の2007年(平成19年)から2013年(平成25年)の7年間における出荷台数の合計値(7,559,300台)で計算すると,約7.6%となり,販売台数が多いとはいえないし,販売シェアも高いとはいえない。

(エ)広告実績について

請求人エンジンのカタログ(資料5〜資料28)及び請求人エンジンを搭載した商品のカタログの発行部数及び頒布量(資料46)については,2008年(平成20年)から2016年(平成28年)まで,毎年ある程度の部数が発行・頒布されており,商品が日本全国の一次卸先を通じて販売されていることからすれば,日本全国に頒布されていることは認め得るとしても,上記ア(エ)で述べたように請求人エンジンを搭載した商品のカタログについては提出がなく,本願商標の使用態様が不明であり,当該カタログにおいて本願商標が需要者に強い印象を与える態様で使用され,自他商品識別標識として機能を果たしていることを確認できない。

そして,請求人エンジンに関するカタログの頒布量は2008年(平成20年)から2016年(平成28年)の合計で20,220部であるところ,このうちの使用商品に関するカタログの頒布量は不明である。

また,請求人ホームページにおいて,請求人エンジンの掲載頁へのアクセス数のうち,使用商品の掲載頁へのアクセス数は,2001年(平成13年)ないし2013年(平成25年)の合計はそれぞれ41,472回(GX120),47,521回(GX160),38,043回(GX200)であり,3モデルの総計は127,032回,年平均では約10,586回であるところ,ある程度の者が利用していることは認め得るが,当該3モデルの掲載頁のアクセス数は,請求人エンジンの掲載頁全体のアクセス数の1/5以下であり,請求人エンジンの掲載頁における利用割合からみても利用者が多いとはいえず,このことをもって,本願商標が周知性を獲得していることを判断できない(資料37,資料38)。

そして,請求人エンジンを搭載した完成機商品(ポンプ,動力噴霧器,高圧洗浄機)の掲載頁については,搭載されている請求人エンジンのエンジンカバーの形状が把握できるような態様で商品の表示がされておらず,エンジンカバーの形状を確認することができないことから,本願商標が,需要者に強い印象を与える態様で使用され,自他商品識別標識として機能を果たしているとは認められない(資料37,資料38)。

さらに,請求人エンジンを搭載した完成機メーカーの完成機商品(水用ポンプ,交流発電機,直流発電機,高圧洗浄機,動力機械器具など)については,宣伝広告を行ったとする証拠の提出はなく,資料40に示されている内容からは,搭載されている請求人エンジンの細部が不明瞭であり,エンジンカバーの形状及び色彩等の使用態様を確認することができないことから,本願商標が,需要者に強い印象を与える態様で使用され,自他商品識別標識として機能を果たしているとは認められない。

また,その他,新聞・雑誌等において,請求人が,本願商標を使用した宣伝広告を行ったとする証拠はない。

(オ)その他

請求人エンジンは,エンジンカバーが付されている位置及び赤色の色彩が着色された態様は全てのモデルに共通するものの,エンジンカバーの形状については,各モデルのエンジンに応じて異なる形状のエンジンカバーが取り付けられている状況にある。

そして,請求人エンジンの各モデルには,「HONDA」の文字が,エンジンカバーにおいて一番目立つ部分である突出部の中央部分に表示されていることよりすれば,需要者は常に当該文字と一体のものと認識するのが自然であり,エンジンカバーの形状のみが分離して観察され,これが商品の出所識別機能を有するものとして強く印象付けられるとはいい難い。

ウ 本願商標と近似する赤色に着色された立体的形状がエンジンカバーの位置に配された他人の商品の存在

本願商標は,エンジンを正面から見た場合のエンジンカバー及びそれが付される位置を,赤色の色彩で着色した平面的な図形として表した位置商標であるところ,上記1のとおり,請求人以外の者によって,本願商標に近似する特徴を有する立体的形状がエンジンカバーの位置に使用された商品が製造・販売されており,その中には赤色の色彩に着色されたものも存在する。

そうすると,本願商標の形状及び色彩並びにそれが付された位置は,他の同種商品と比較して特異なものということはできない。

エ 小括

以上からすると,本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。

3 請求人の主張について

請求人は,「証拠調べ通知書において提示された他社商品のエンジンカバー及び請求人提出の資料29において提示された他社商品のエンジンカバーは,いずれも,本願商標の特徴を備えたものは存在しないから,本願商標は,これら他社商品のエンジンカバーとは異なる,特異性を有するものである。」旨を主張している。

しかしながら,本願商標に表されたエンジンカバー及び色彩並びにそれが付された位置は,上記1(2)のとおり,商品の機能の向上及び美感の観点から選択された同種商品が一般的に採用し得る範囲内のものであって,特異なものとはいえないから,これに接する需要者は,商品の形状及び色彩の一形態として認識するにとどまり,その形状及び色彩並びにそれが付された位置について,商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないというべきである。

したがって,上記請求人の主張は採用できない。

4 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同法第3条第2項の要件を具備するものではないから,これを登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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