Trademark Appeal Case
品質表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−17282(T2018−17282/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,「超タフストロングケーブル」の文字を標準文字で表してなり,第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,平成29年8月4日に登録出願されたものである。
その後,指定商品については,原審における平成30年6月8日付け手続補正書により,第9類「電線及びケーブル」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は,「本願商標は,『超タフストロングケーブル』の文字を標準文字で書してなるところ,その構成中の『超』の文字は『とびきりの』の意味を有する語であり,また,『タフ』の文字は『強じんで,粘りのあるさま』の意味を有する英語『tough』の表音,『ストロング』の文字は『強いこと,丈夫なこと』の意味を有する英語『strong』の表音,『ケーブル』の文字は『電線の1』の意味を有する英語『cable』の表音をそれぞれ片仮名で表したものであって,一般に広く使用されているものであるから,その構成文字全体からは,『とびきり強じんで丈夫なケーブル』程の意味合いを容易に理解・認識させる。そうすると,本願商標をその指定商品に使用した場合,これに接する需要者は,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したと認識するというべきであるから,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和元年8月13日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
1 本願商標は,請求人以外に使用する者はないことから,商品の品質表示として取引上普通に使用されているものではない。
2 本願商標は,高耐久かつ丈夫な商品であることを強調し,取引者及び需要者に商品の特徴を印象づける工夫をしたものであって,構成文字の特異な組合せからなること,および,本願の指定商品の分野における取引の実情として,ケーブルの強度や耐久性等に関する基準は存在しておらず,廉価品と高価格帯の商品とでは品質の差が大きく,取引者及び需要者の間に「通常の程度のケーブルの強さ」について共通の認識があるとは考えにくいことから,本願商標は一種の造語として理解されるものであり,商品の出所識別標識として十分に機能する。
3 過去の商標の登録例(「タフマックス/Toughmax」,「TOUGHBEND」,「SpeedCable」等)によれば,本願商標も登録されるべきである。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号が,「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状(包装の形状を含む。),生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは,このような商標は,指定商品との関係で,その商品の産地,販売地,品質,形状その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される。そうすると,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,審決の時点において,本願商標が,その指定商品との関係で,その商品の産地,販売地,品質,形状その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の指定商品の取引者及び需要者によって本願商標がその指定商品に使用された場合に,将来を含め,商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号,平成27年10月21日判決参照)。
(2)本願商標について
ア 本願商標は,上記第1のとおり,「超タフストロングケーブル」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中「超」,「タフ」,「ストロング」の各文字は順に「(接頭語的に)程度一杯をさらに超える意を表す。」,「頑強なこと。」,「強いこと,丈夫なこと」の意味を有する語としていずれも親しまれているものであり,「ケーブル」の文字は「電線・光ファイバーなどに外被をかぶせたもの。」の意味を有する外来語であって,本願の指定商品「電線及びケーブル」との関係においては,商品の普通名称といえるものである(別掲1)。
イ そうすると,本願商標は,よく知られた「超」,「タフ」,「ストロング」の各語と商品の普通名称である「ケーブル」の語から構成されるものであり,上記アの語義からすれば,全体として,「通常の程度をさらに超える頑強で丈夫なケーブル」との意味合いが容易に理解されるものである。
(3)指定商品との関係における,「超」,「タフ」,「ストロング」の文字の使用事例について
当審における職権調査によれば,以下の事実が認められる。
ア 指定商品「電線及びケーブル」の分野においては,断線しにくい素材を使う,多層構造を採用する,被膜破れに強い加工を施す等により耐久性を向上させた商品や,荷重試験又は折り曲げ試験に合格した商品など,通常よりも頑強で丈夫であることを特長とする商品が多数取引されている(別掲2)。
イ 「超」,「タフ」,「ストロング」の各文字又はいずれか2文字の組合せは,指定商品「電線及びケーブル」のうち,上記アのような通常よりも頑強で丈夫であることを特長とする商品との関係において,例えば,「タフなストロングケーブル」(別掲2(1)ア),「“地球上で最もタフなケーブル”を目指した超頑丈なiPhone用ライトニングケーブル」(別掲2(1)イ),「超耐久性でタフなケーブル」(別掲2(1)ウ),「断線に超強い!/バネ付スーパーストロング」(別掲2(1)オ),「超耐久型シールド付ロボット用ケーブル」(別掲2(2)ア),「一般的なケーブルの約10倍の強度を誇る超高耐久設計を実現」(別掲2(2)ウ),「タフさの秘密は,強化ナイロンメッシュ素材で被覆した適度に張りのある絡みにくく,断線に強いケーブルを採用。」(別掲2(3)ア),「究極ストロングケーブル」(別掲2(4)ウ)のように,商品の品質を表示する語として,普通に使用されている実情がある。
(4)上記(2)及び(3)のとおり,本願商標は,それを構成する各単語の語義並びに本願の指定商品の分野における「超」,「タフ」,「ストロング」の文字の使用状況などを勘案すれば,その指定商品の取引者及び需要者によって,「通常の程度をさらに超える頑強で丈夫なケーブル」程の意味合いを表すものとして認識されるものであると認められる。
そうすると,本願商標は,その指定商品に使用されたときは,「通常の程度をさらに超える頑強で丈夫なケーブル」といった商品の品質を表示するものとして,取引者及び需要者によって一般に認識されるものであって,取引に際し必要適切な表示であるものと認められるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適切でないとともに,自他商品の識別力を欠くというべきである。
そして,本願商標は,標準文字で表されているから,普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであることは明らかである。
したがって,本願商標は,その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として,商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
(1)請求人は,本願商標の使用状況及び取引者及び需要者の認識の程度に照らせば,本願商標は,指定商品との関係において,自他商品識別標識としての機能を発揮するものである旨主張し,証拠として,当審において第1号証ないし第62号証(枝番号を含む。)を提出している(以下,当該証拠を,甲第1号証ないし甲第62号証と読み替える)。
請求人は本願商標が使用による自他商品識別力を獲得したとして,商標法第3条第2項の要件を具備している旨主張しているものと解されるので,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。
(2)請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば,次の事実が認められる。
ア 請求人商品について
請求人は,2017年(平成29年)8月に,商品「充電器等の接続ケーブル」として,5万回以上の折り曲げ試験に合格したケーブル「超タフストロングケーブル」シリーズを発売した(以下「超タフストロングケーブル」の文字を使用した請求人に係る商品を「請求人商品」という。)。請求人商品は,内部にアラミド繊維を採用することにより耐久性の向上を実現し,付け根部分に独自形状の設計を施すことで断線しにくい等の特長を有するものであって,2014年(平成26年)に発売された「ストロングケーブル」シリーズの改良品である(甲1,甲2,甲28,甲33の2,甲46ほか)。
イ 請求人商品の販売数量等について
請求人商品に関する出荷数量又は販売数量については,以下のように報道された。
(ア)2018年(平成30年)5月22日付け「日本経済新聞 電子版」において,「シリーズ累計出荷数200万本突破の『超タフストロングケーブル』」の記載がある(甲3,甲45)。
(イ)2018年(平成30年)6月20日付け「PR TIMES」のウェブサイトにおいて,「私達は4年前に高耐久ケーブルを発売しこれまでシリーズ累計240万本以上,販売しています。第一世代の初代『ストロングケーブル』は,被覆部分の強化を行い固いケーブルが完成しました。ところが断線して返品になる商品がありました。これではお客様に満足してもらえないと,第二世代の『超タフストロングケーブル』を開発。」の記載がある(甲46)。
ウ 広告宣伝について
(ア)請求人は,請求人商品の発表に際し,2017年(平成29年)7月26日に東京都内において記者発表会を開催した。当該発表会では,商品説明を行うとともに,タレントを起用して商品の耐久性等をアピールした(甲1,甲33の2,甲34,甲35,甲37〜甲40)。
(イ)請求人は,2019年(平成31年)2月19日ないし同月22日に東京ビックサイトにおいて開催された「第47回国際ホテル・レストラン・ショー」に,「超タフストロングケーブル」の技術を使用した,スマートフォン用充電ケーブル等を展示した(甲32)。
(ウ)2017年(平成29年)7月ないし2019年(令和元年)7月の間に掲載されたインターネット上のウェブサイトにおいて,2017年(平成29年)の請求人商品の発売及び記者発表会に関する報道(甲1,甲33の2,甲34〜甲40),請求人商品と充電器又はモバイルバッテリーのセット販売に関する報道(甲41〜甲43),請求人に係る「ストロングケーブル」と称する商品及び請求人商品の誕生秘話に関する記事(甲44),2018年(令和元年)5月の請求人商品の新色の発売に関する報道(甲3,甲45),請求人商品の改良版である商品の開発に向けたクラウドファンディング又は当該商品の発売に関する報道(甲46ないし甲52),請求人商品の開発者へのインタビュー記事(甲53),請求人商品の紹介記事(甲54)が掲載されたところ,これらの報道や記事において本願商標は,請求人商品の商品名として表示されている。
(3)判断
当合議体は,本願商標は未だ使用による自他識別力を獲得するまでに至っていないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。
ア 本願商標が使用された期間
上記(2)アのとおり,請求人商品は,商品「充電器等の接続ケーブル」として,「超タフストロングケーブル」シリーズとして2017年(平成29年)8月に発売された。そして,請求人商品とともに使用された「超タフストロングケーブル」の文字は,本願商標と構成文字が同一であるから,本願商標と同一性を損なわないものと認められる。
そうすると,本願商標の使用開始時期は,2017年(平成29年)8月であり,本件審判の審決時までに本願商標が使用された期間は,わずか2年余である。
イ 請求人商品の販売数量
上記(2)イのとおり,請求人商品に関する出荷数量又は販売数量については,2018年(平成30年)5月22日及び同年6月20日に,それぞれ「シリーズ累計出荷数200万本突破の『超タフストロングケーブル』」,「私達は4年前に高耐久ケーブルを発売しこれまでシリーズ累計240万本以上,販売しています。」と報道されたものである。
しかしながら,これらの記載のうち「シリーズ累計」の語が,本願商標を使用した請求人商品のみの累計販売数量(出荷数量)を示すものであるのか,あるいは,請求人に係る「ストロングケーブル」と称する別の商品の販売数量等も含むものであるのか,明らかではない。
そうすると,上記(2)イの報道から,直ちに本願商標を使用した請求人商品そのものの販売数量等を把握することはできない。
また,仮に上記報道が,本願商標を使用した請求人商品そのものの販売数量等を示すものであるとしても,指定商品の分野における総販売数量等が明らかでないことから,請求人商品に係る販売数量等が他者に係る同種商品の販売数量等に比して多いものであるのか否かを判断することができない。
ウ 広告宣伝
上記(2)ウのとおり,請求人は,請求人商品の発表に際し,2017年(平成29年)7月26日にタレントを起用した記者発表会を開催し,2019年(平成31年)2月19日ないし同月22日には「第47回国際ホテル・レストラン・ショー」に,「超タフストロングケーブル」の技術を使用した,スマートフォン用充電ケーブル等を展示した。また,2017年(平成29年)7月ないし2019年(令和元年)7月の2年間に掲載されたインターネット上のウェブサイトにおいて,請求人商品の発売及び記者発表会に関する報道や請求人商品の紹介記事等が掲載された。
しかしながら,請求人商品の記者発表会及び「第47回国際ホテル・レストラン・ショー」における展示は,いずれも東京都内においてのみ単発で行われたものであること,展示会の来場者数等は明らかではないこと,ウェブサイトに掲載された報道や記事についても閲覧の頻度等は明らかでないこと,その他,請求人による広告宣伝の費用及び他の媒体(例えば,新聞,雑誌,テレビCM等)による広告宣伝の事実も確認できないことから,上記の広告宣伝により,本願商標が,わずか2年余の期間において,取引者及び需要者の間で全国的に広く知られる程に,その認知度が高まったと認めることはできない。
(4)小括
以上のとおり,本願商標の使用期間はわずか2年余であること,請求人商品の販売数量や市場シェアが明らかではないこと,請求人の広告宣伝は,本願商標が,わずか2年余の期間において,取引者及び需要者の間で全国的に広く知られる程に,その認知度を高めたと認め得るものとはいえないことから,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,本願商標は,請求人以外に使用する者はないことから,商品の品質表示として取引上普通に使用されているものではない旨主張する。
しかしながら,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,本件審判の審決時において,本願商標がその指定商品との関係で商品の品質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の取引者及び需要者によって本願商標がその指定商品に使用された場合に,将来を含め,商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであれば足り,それが一般に用いられていた実情があったことまでを必要とするものではないというべきであるから,「超タフストロングケーブル」の文字が,本願の指定商品の分野において現実に使用されていないからといって,本願商標の同号該当性が否定されるものではない。
(2)請求人は,本願商標は,高耐久かつ丈夫な商品であることを強調し,取引者及び需要者に商品の特徴を印象づける工夫をしたものであって,構成文字の特異な組合せからなること,および,本願の指定商品の分野における取引の実情として,ケーブルの強度や耐久性等に関する基準は存在しておらず,廉価品と高価格帯の商品とでは品質の差が大きく,取引者及び需要者の間に「通常の程度のケーブルの強さ」について共通の認識があるとは考えにくいことから,本願商標は一種の造語として理解されるものであり,商品の出所識別標識として十分に機能する旨主張する。
しかしながら,本願商標を構成する「超タフストロングケーブル」の文字は,仮にそれ自体としては造語であるとしても,それを構成する各単語の語義並びに本願の指定商品の分野における「超」,「タフ」,「ストロング」の文字の使用状況などを勘案すれば,「通常の程度をさらに超える頑強で丈夫なケーブル」の意味合いを想起させる複合語として認識されるものであるから,商品の品質を表示するものとして,取引者及び需要者によって一般に認識されるというのが相当であって,自他商品の識別力を欠くというべきである。
(3)請求人は,過去の商標の登録例(「タフマックス/Toughmax」,「TOUGHBEND」,「SpeedCable」等)によれば,本願商標も登録されるべきである旨主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるかどうかの判断は,当該商標の構成態様と指定商品とに基づいて,個別具体的に検討・判断されるべきものであって,請求人主張に係る各商標の登録例が存在するからといって,上記1で説示したとおり本願商標が同号に該当することを否定することはできず,また,本願商標についての同号該当性の判断が,これらの各商標の登録例によって左右されるものでもない。
(4)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものではないから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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