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Trademark Appeal Case

ゴジラ商標の周知性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2019−890045(T2019−890045/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5739434号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5739434号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成26年9月29日登録出願,第9類「業務用テレビゲーム機用プログラム,携帯電話機の附属品,その他の電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「おもちゃ,人形,すごろく,トランプ,遊戯用器具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として,同27年1月15日に登録査定,同年2月6日に設定登録されたものである。

その後,本件商標の商標権は,令和元年10月15日受付の商標権の放棄によりその登録が抹消されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第187号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 「GODZILLA」の周知・著名性

(1)請求人について

請求人は,映画の制作・配給・上映,映画・演芸・演劇の興行等を行っており,その設立以来すでに80年余の歴史を有し,この業界における我が国の第一人者の地位を築き現在に至っている(甲2)。

(2)映画「ゴジラ」第1作について

請求人は,昭和29年に映画「ゴジラ」を制作し,当該映画は,当時の大ヒット作となった(甲3〜甲6)。その後も請求人により20作を超えるゴジラ映画が制作され,ゴジラは60年以上も経た現在も依然として新鮮さと映画のヒーローとしての生命を持ち続けている。「昭和」あるいは「20世紀」の時代に起きた日々の出来事をまとめた書籍類には,昭和29年11月の映画「ゴジラ」の封切りが大きく取り上げられているが,このことは,「ゴジラ」という映画及び「ゴジラ」の存在が日本の映画史上のみならず社会・文化史にも残ることを示しているといえる(甲5,甲6)。

(3)ゴジラの欧文字表記「GODZILLA」について

ゴジラの欧文字表記である「GODZILLA」が我が国においてはじめて登場したのは,第1作目の映画「ゴジラ」の海外輸出用に1955年(昭和30年)に作成されたプロモーション用の海外向けポスター及び宣伝素材である(甲7)。

「GODZILLA」の語のスペリングについては,諸説あるが(甲8),いずれにしても,当該語は造語であり,識別力の高い極めて強い出所表示力を有している。

このことは,例えば,特許情報プラットフォームで検索したところ,語頭が「G」で始まり語尾が「ZILLA」で終わる商標は,本件商標等の被請求人の商標を除き,請求人の「GODZILLA」商標しか存在しないことからも明らかである。

「GODZILLA」の語は,映画のタイトルやキャラクター商品等に多数使用されてきたが,現在日本で発行されている多数の国語辞典,英和辞典,和英辞典にも当該語が掲載されている(甲125〜甲129,甲143〜甲153)。

(4)「GODZILLA(ゴジラ)」の一般への浸透度及び請求人の貢献度

「ゴジラ」第1作から現在までに,合計29作のゴジラ映画が制作された(甲9)。その間,ゴジラ映画を特集した雑誌やゴジラを内容とする書籍が数多く出版された(甲10,甲11,甲52〜甲73)。

また,請求人は作品が封切られる度に大々的な宣伝を行っており,「GODZILLA」はより広範に,かつ,より深く,一般大衆に知られるようになっていった。

そして「GODZILLA(ゴジラ)」に関する色々な話題が,その都度一般の新聞・雑誌・テレビにしばしば取り上げられた(甲13〜甲20)。

さらに,平成16年11月には,「GODZILLA」が米国ハリウッドの「ウォーク・オブ・フェーム」に殿堂入りしたことは,米国の有力業界紙ばかりではなく,日本でも新聞等で大きく報道された(甲23〜甲26)。

(5)「ゴジラ」の名称の由来

「ゴジラ」の名称は,昭和29年の第1作の制作時に採用されたものである(甲4)。また,「GODZILLA(ゴジラ)」は恐竜をモデルとしているが,請求人が創作した架空の生物たる怪獣であり,その性質や行動を擬人化して表したいわゆる「キャラクター」である。そして,上記のとおり「GODZILLA(ゴジラ)」の名称も請求人の創作にかかるものであるから,「GODZILLA(ゴジラ)」の名称と上記のキャラクターとは常に一体なものとして使用され,一般にも広くかつ深く浸透している。

(6)レコード・書籍・ビデオ等によるゴジラ作品

「GODZILLA(ゴジラ)」は,映画以外にも,特に昭和40年代初頭から当時の「怪獣ブーム」の影響を受け,レコード,書籍(怪獣図鑑),雑誌を通しても大きな人気を得てきた(甲11)。

また,請求人は,ゴジラ作品に係るレーザーディスク,DVDやブルーレイディスク等のビデオグラムを販売してきたものであり(甲21),請求人は,これらの「GODZILLA(ゴジラ)」作品のビデオグラムに「GODZILLA」の表示を使用してきたものである(甲39〜甲45)。また,平成21年には,株式会社デアゴスティーニ・ジャパンから「東宝特撮映画DVDコレクション」が発売され,そのコレクションにおいても,「GODZILLA」の表示が使用されてきたものである(甲46〜甲51)。

さらに,上記怪獣図鑑のみならず,文化論の観点からゴジラを論じた「ゴジラとは何か」等,多数の書籍や雑誌が発行されてきた。これらの書籍及び雑誌においても,「GODZILLA」の表示が繰り返し強調して使用されてきたものであり(甲53〜甲73),国立国会図書館の蔵書検索システムにおいて,「godzilla」のキーワードで検索すると,185件もの図書,雑誌,記事,映像資料等が表示される(甲52)。

(7)ゴジラ映画のアメリカ版「GODZILLA」

請求人によるゴジラ映画は,日本以外でも欧米を中心に公開され世界各国で人気を集めている(甲9)。アメリカでは,邦画のゴジラ作品の多くがテレビで放映されているところ(甲75),「ゴジラ」は「GODZILLA」と表記されている(甲76〜甲78)。したがって,「GODZILLA」は日本のみならず,外国でもそのまま通用するキャラクターの名称である。

また,米国においても,「GODZILLA(ゴジラ)」映画が制作され,タイトル及びクレジットに「GODZILLA」の文字が使用されている(甲27,甲29,甲76,甲81)。

(8)「GODZILLA(ゴジラ)」の商品化権

請求人は「GODZILLA(ゴジラ)」の文字及びキャラクターについて,多くの企業にいわゆる商品化権を与えており(甲169〜甲181,甲186),平成13年6月の時点で使用権者(ライセンシー)の総数は97社であって,それらの商品は,「人形,ぬいぐるみ,玩具,陶器」等,多岐にわたっている(甲83,甲84)。

これらの商品には,共通して,「GODZILLA(ゴジラ)」のキャラクターが使用され。「GODZILLA」(又は「ゴジラ」)の表示が商品自体,商品の包装,宣伝広告物,取引書類等のいずれかに使用されている。また,これらの商品の店頭あるいは電話による取引に際しては,当業者は当該商品を単に「GODZILLA」(「ゴジラ」)と特定している。

したがって,上記の商品の取引に当たっては「ゴジラのキャラクター」及び「GODZILLA」(「ゴジラ」)の文字は商標として使用され,出所表示機能あるいは品質保証機能を十分に発揮してきた。

(9)請求人によるゴジラ・キャラクターの独占的な使用及び使用許諾

請求人は,2007年(平成19年)公開の邦画(甲85,甲86),企業の宣伝広告,(甲87〜甲91),人形(フィギュア)(甲12,甲93〜甲96),菓子,玩具,アパレル,文具及びゲームソフト等の製造販売(甲97〜甲102)について,ゴジラ・キャラクターの使用の許諾を行ってきた。

(10)請求人が所有している「GODZILLA」関連商標

請求人は,「GODZILLA」の名称及びキャラクターの保護を図るために,ほぼ全ての商品及び役務の分野において商標登録を取得している(甲103〜甲113)。

(11)まとめ

以上のとおりの商品化事業等を通じて,「GODZILLA」の名称及びそのキャラクターが,請求人にとって貴重な経済的価値を有する財産となっていること,並びにそれらの権利が請求人の所有に係るものであることが一般にも広く認知されていることは明らかである。

2 商標法第4条第1項第10号に関する主張

(1)上記のとおり,請求人が「GODZILLA(ゴジラ)」の商品化権を与えて販売されてきた「人形,ぬいぐるみ,玩具,陶器」等の商品には,「GODZILLA(ゴジラ)」のキャラクターが使用され,「GODZILLA」(又は「ゴジラ」)の表示が商品自体,商品の包装,宣伝広告物,取引書類等のいずれかに使用されている。

上記の商品の取引にあたり,「GODZILLA」(「ゴジラ」)の文字は,遅くとも本件商標の登録出願日である平成26年9月29日前の平成13年から(甲83),商標として使用され,出所表示機能あるいは品質保証機能を十分に発揮してきた。その結果,今日では「GODZILLA」(「ゴジラ」)の文字は単に怪獣の名称としてばかりでなく,様々な商品,役務の出所を表示する請求人の商標としても広く認識されている。

(2)本件商標は,欧文字「GUZZILLA」を一目でわかるように大きく上段に表し,片仮名文字「ガジラ」を小さく欧文字「GUZZILLA」の下に横書きした構成からなる。しかして,本件商標の要部は,一目でわかるように大きく表された欧文字の「GUZZILLA」部分にある。(甲156〜甲162)。

一方,請求人の周知商標は,欧文字により横書きした「GODZILLA」である。

ア 外観上の類似

本件商標の要部である「GUZZILLA」と請求人の周知・著名商標である「GODZILLA」の外観を比較すると,これらはともに8文字からなり,看者にとって印象の薄い第2文字目及び第3文字目が異なるにすぎず,その他の6文字を共通にする。また,「GODZILLA」は,通常の欧文字表記であれば「GOJIRA」又は「GOZIRA」となるところ,後半部分に「ZILLA」の表記を用いた点に特徴を有している。本件商標「GUZZILLA」と「GODZILLA」は,外観上強く印象に残る語頭の「G」と請求人の表示として特徴的な「ZILLA」の文字を共通にする。

さらに,本件商標の欧文字部分におけるUの文字は,ロゴ化されており,上の開いた部分の右側はZの文字と連続しているため,また,Uの文字の上の開いた部分の間隔は小さいため,Oの文字と見誤るおそれがある。しかも,本件商標の実際の使用態様に着目すると,この間隔はさらに小さく見え,Oの文字と見誤るおそれがより一層高い。実際,本件商標は,ワンポイントマークとして被請求人の商品に使用されており,比較的小さいものであるから(甲156〜甲162),商標の構成は視認しにくく,本件商標におけるUの文字はOの文字と見誤ってしまうおそれが高い(甲168)。

したがって,本件商標は外観上,請求人の周知・著名商標「GODZILLA」と類似する。

なお,外観上の類否は,欧文字と片仮名の二段併記商標の欧文字部分と欧文字のみからなる商標とが対比されることもある(甲132)。

イ 称呼上の類似

つぎに,本件商標と請求人の周知・著名商標の称呼を比較する。

本件商標の要部である「GUZZILLA」を英語読みすると,「ガァ」と発音され,「ガァ」の音は「ゴ」の音に聞き間違えるおそれがある(甲166)。

一方,請求人の周知・著名商標「GODZILLA」の発音記号は,別掲2のとおりであり(甲143〜甲153),語頭音は「ゴ」と「ガ」の中間の音として称呼される(甲164,甲165)。

したがって,本件商標と請求人の周知・著名商標は,語調,語感が極めて紛らわしいので,称呼上類似する。

また,本件商標のUの文字がOの文字と見誤ってしまう可能性が高いことを考慮すれば,本件商標がその欧文字部分より「ゴジラ」と称呼される可能性も高いといわなければならない。

なお,本件商標は,欧文字「GUZZILLA」を一目でわかるように大きく上段に表し「ガジラ」の片仮名を小さく欧文字「GUZZILLA」の下に横書きした構成からなるが,片仮名部分から生ずる称呼のみならず,欧文字部分からも称呼が生ずる(甲134)。

ウ 以上述べた理由により,本件商標は請求人の周知・著名商標と類似する。

(3)本件商標の指定商品中,第25類「被服」及び第28類「おもちゃ,人形」は,請求人の周知・著名商標が使用されてきた「人形,ぬいぐるみ,玩具,Tシャツ,トランクス,トレーナー」と類似する。

(4)よって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。

3 商標法第4条第1項第15号に関する主張

(1)本件商標と請求人の表示との類似性の程度並びに表示の周知著名性及び独創性の程度

ア 本件商標と請求人の周知・著名表示である「GODZILLA」は,上記2(2)と同様の理由により,類似する。

イ 「GODZILLA」の周知・著名性は上記のとおりである。また,請求人表示の周知・著名性は,登録第4395864号商標に対する無効審判(無効2001−35302)の無効審決の中で認定されている(甲133)。しかして,「GODZILLA」が,本件商標の登録出願日である平成26年9月29日のはるか前から現在に至るまで周知・著名であることは明白である。

また,上記のとおり,「GODZILLA」の名称は請求人の創作に係るものであって,これらは独創的で識別力の高い表示である。

(2)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との関連性

本件商標の指定商品は,レコード,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,被服,おもちや,人形等の娯楽に関する消費財である。

一方,上記のとおり,請求人は,映画の制作・配給・上映,映画・演芸・演劇の興行,テレビ放送番組及び録画の制作等を主たる業務とする同業界における我が国の代表的な企業であって,請求人が販売する商品はまさに娯楽に関する消費財である。

すなわち,本件商標の指定商品及び請求人が販売する商品はいずれも,本件知財高裁判決が認定した「一般消費者に比較的安価で販売され得るものであり,日常生活で,一般消費者によって使用される」商品である(甲130)。

したがって,本件商標の指定商品は,請求人の業務に係る商品と極めて密接な関連性を有する。

(3)取引者及び需要者の共通性

本件商標の指定商品の需要者は一般消費者であり,その取引者は,これらの商品の製造販売や小売り等を行う者である。

また,請求人の周知・著名表示である「GODZILLA」の使用を許諾した玩具,雑貨等の需要者は一般消費者であり,その取引者は,これらの商品の製造販売や小売り等を行う者である(甲130)。

本件商標の指定商品及び請求人の業務に係る商品はいずれも娯楽に関する消費財であるから,取引者及び需要者は共通する。

(4)以上のような状況下において,請求人の周知・著名表示と類似する本件商標がその指定商品に使用されれば,当該商品はあたかも請求人又はその関連会社の関与する商品であるかのようにその出所につき誤認・混同を生じさせることは明らかである。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 商標法第4条第1項第19号に関する主張

(1)「GODZILLA」が請求人の周知・著名商標であること及び本件商標が請求人の周知・著名商標と類似することは,上記のとおりである。

(2)上記のとおり,「GODZILLA」は請求人の周知・著名商標である。また,「GODZILLA」は,請求人の創作に係る独創的な商標であるから,請求人の出所を表示する標識として極めて強い出所表示力を有している。しかも,語頭が「G」ではじまり語尾が「ZILLA」で終了する商標は,請求人と被請求人の商標以外に存在しない。さらに,被請求人は,ホームページにおいて特撮物を連想させるストーリー仕立ての動画を多数掲載したり,怪獣を想起させる重機を用いた見学会を行っている(甲136〜甲138)。

したがって,請求人の周知・著名商標と類似する本件商標が請求人の周知・著名商標と無関係に採択されたとは到底考えられず,本件商標が「GODZILLA」の有する顧客吸引力を利用しようとするものであることは容易に看取される。

しかして,本件商標が請求人の商品と無関係の商品に使用されれば。「GODZILLA」のキャラクターに愛情をもって接してきた需要者はこれによって欺かれる結果となり,長年にわたり注意深くそのキャラクター商品の品質維持に努めてきた請求人の信用・イメージが大きく損なわれることは見易い道理である。

また,被請求人が請求人の周知・著名商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する意図を有していたことは,被請求人が本件商標の他に,複数の商標を登録出願してきた事実からもうかがえる(甲139〜甲142)。

このような状況下,本件商標が「不正の目的」をもって使用されるものであることは明らかである。

(3)よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

5 商標法第4条第1項第7号に関する主張

「GODZILLA」が請求人の周知・著名な商標及び表示であること,本件商標が請求人の周知・著名な商標及び表示と類似すること,並びに被請求人が「GODZILLA」に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正の目的を有していたことは,上記のおりである。

しかして,本件商標は,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反するものであり,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものであるから,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきである。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

6 まとめ

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に該当し,同法第46条第1項第1号により,その登録を無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は,請求人の主張に対して答弁していない。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして,上記の「混同を生じるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)。

(2)商標の類似性の程度

ア 外観

(ア)本件商標は,別掲1のとおり,「GUZZILLA」の8文字の欧文字とそれより小さな文字で「ガジラ」の3文字の片仮名を上下2段に表してなるものである。

そして,本件商標の上段の「GUZZILLA」の文字中の「G」と「A」の字体は,やや丸みを帯び,「U」と3文字目の「Z」の上端及び7文字目の「L」と「A」の下端は,それぞれ結合し,3文字目及び4文字目の「Z」は,両文字の左下が前下方に鋭く突尖しているほか,やや縦長の太文字で表されることによって,デザイン化されている。

また,本件商標の下段の「ガジラ」の片仮名は,上段の「GUZZILLA」の読みを表したものと理解されるものである。

(イ)請求人が周知・著名性を主張する商標は「GODZILLA」の8文字の欧文字からなる(以下「引用商標」という。)。当該文字は,デザイン化されていないが,実際には,様々な書体で使用されている。

(ウ)本件商標は,上記のとおり,上下2段に表されているものの,上段の欧文字部分と引用商標の外観とは,いずれも8文字の欧文字からなり,語頭の「G」と語尾の5文字「ZILLA」を共通にする。2文字目において,本件商標の欧文字部分は「U」からなるのに対し,引用商標は「O」からなるが,本件商標の欧文字部分において「U」と3文字目の「Z」の上端は結合し,やや縦長の太文字で表されているから,見誤るおそれがある。もっとも,本件商標の欧文字部分と引用商標は,3文字目において相違するほか,本件商標は前記のとおりデザイン化され,全体的に外観上まとまりよく表されている。

そうすると,本件商標と引用商標とは,外観において相紛らわしい点を含むものということができる。

イ 称呼

(ア)本件商標は,別掲1のとおり,「GUZZILLA」の8文字の欧文字とそれより小さな文字で「ガジラ」の片仮名を上下2段に表してなるところ,構成中の下段の「ガジラ」の文字は,上段の「GUZZILLA」の読みを表したものと理解されるから,本件商標は「ガジラ」と称呼されるのが相当である。

(イ)引用商標は,下記(3)イのとおり,怪獣映画に登場する怪獣の名称として著名な「ゴジラ」の欧文字表記として広く知られているから,「ゴジラ」と称呼されるものである。また,引用商標の語頭音は,英語の発音において,「ゴ」と「ガ」の中間音としても称呼され,現に大ヒットした映画「シン・ゴジラ」や,海外制作版映画の「GODZILLA」においても,「ゴ」と「ガ」の中間音として称呼されていたものである(甲164,甲165)。そして,我が国において,本件商標の登録出願時,引用商標の英語の発音による称呼も一般化していたものであるから(甲143〜甲153),引用商標の語頭音の「ゴ」は,「ゴ」と「ガ」の中間音としても称呼されるものである。

(ウ)本件商標と引用商標の称呼を対比すると,語頭音を除く称呼は「ジラ」と共通する。また,語頭音は,本件商標は「ガ」として称呼され得るものであって,引用商標は「ゴ」と「ガ」の中間音として称呼され得るものであるところ,本件商標における「ガ」の音と,引用商標における「ゴ」と「ガ」の中間音とは,いずれも子音を共通にし,母音も近似する。

したがって,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしい場合もあるというべきである。

ウ 観念

本件商標からは特定の観念が生じず,引用商標からは怪獣映画に登場する怪獣「ゴジラ」との観念が生じる。

エ 本件商標と引用商標の類似性

以上のとおり,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしい場合があるものであって,外観においても相紛らわしい点を含むものということができる。

(3)引用商標の周知著名性及び独創性の程度

ア 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」は,請求人によって創作されたものであって(甲4),当該「ゴジラ」の文字は請求人に係る映画のタイトル及び当該映画に登場する怪獣の名称として著名である(甲3〜甲21,甲25,甲26,甲28,甲30,甲39〜甲43,甲46〜甲51,甲53〜甲75,甲77,甲78,甲82)。

イ 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」には,昭和30年,欧文字表記として引用商標が当てられ,その後,引用商標が「ゴジラ」を示すものとして使用されるようになったものである(甲7,甲8)。欧文字表記の引用商標は,我が国において,遅くとも昭和32年以降,映画の広告や当該映画中に頻繁に使用され(甲7,甲8,甲21,甲30,甲42,甲43,甲49,甲55,甲82,甲164),遅くとも昭和58年以降,怪獣である「ゴジラ」を紹介する書籍や,ゴジラを基にした物品に多数使用されていること(甲52〜甲74,甲92),さらに,怪獣である「ゴジラ」の英語表記として多くの辞書にも掲載されていること(甲125〜甲129,甲145〜甲153)からすれば,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定日の時点において著名であるということができる。

ウ 語頭が「G」で始まり,語尾が「ZILLA」で終わる登録商標は,引用商標の他には,本件商標を除き見当たらない。さらに,欧文字表記において,引用商標と類似するものも見当たらない。

エ 以上によれば,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定日の時点において周知著名であって,その独創性の程度も高いというべきである。

(4)商品の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性

本件商標の指定商品は,上記第1のとおり,第9類「業務用テレビゲーム機用プログラム,携帯電話機の附属品,その他の電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「おもちゃ,人形,すごろく,トランプ,遊戯用器具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」である。

これに対し,請求人の主な業務は,映画の制作・配給・上映,映画・演芸・演劇の興行,テレビ放送番組の制作,ビデオグラムの販売等である(甲2,甲21)。また,請求人は,100社近くの企業に対し,引用商標の使用を許諾しているところ,その対象商品は,人形やぬいぐるみなどの玩具,文房具,衣料品,食料品,雑貨等であるなど,多岐にわたる(甲83〜甲102)。

そして,本件商標の指定商品と請求人の業務に係るビデオグラム等の商品及び引用商標の使用を許諾した玩具,雑貨,衣類等の商品とは,日常生活で,一般消費者によって使用される物であって,一般消費者に比較的安価で販売され得るものであるなど,性質,用途又は目的において一定の関連性を有しているといわざるを得ない。

よって,本件商標の指定商品は,請求人の業務に係る商品と比較した場合,性質,用途又は目的において一定の関連性を有するものである。

また,本件商標の指定商品と,請求人の業務に係る商品との需要者は,共に一般消費者であって,その範囲は共通する。

(5)出所混同のおそれ

以上のとおり,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであって,外観においても相紛らわしい点を含む。また,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定日の時点において周知著名であって,その独創性の程度も高い。さらに,本件商標の指定商品は,請求人の業務に係る商品と比較した場合,性質,用途又は目的において一定の関連性を有するものである。加えて,これらの商品の取引者及び需要者と,請求人の業務に係る商品の取引者及び需要者とは共通し,これらの取引者及び需要者は,取引の際に,商品の性能や品質のみではなく,商品に付された商標に表れる業務上の信用をも考慮して取引を行うものということができる。

そうすると,本件商標の指定商品は,本件商標を使用したときに,当該商品が請求人又は請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるものが含まれるといわざるを得ない。

(6)小括

以上によれば,本件商標は商標法4条1項15号に該当する。

2 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから,その余の無効事由について判断するまでもなく,同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。

よって,結論のとおり審決する。

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