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Trademark Appeal Case

企業理念の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−17484(T2018−17484/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「豊かな技術で未来を創造する」の文字を横書きしてなり、第19類「建築用又は構築用の非金属鉱物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,土砂崩壊防止用植生板,セメント及び外周に鋼管を被せたコンクリートくい及びその他のセメント製品,石材,人工魚礁(金属製のものを除く。),セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。)」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言,電子応用機械器具の修理又は保守,土木機械器具の修理又は保守,測定機械器具の修理又は保守,土木機械器具の貸与」を指定商品及び指定役務として、平成29年8月31日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、その構成中に『物が豊富で、心の満ち足りているさま。』を意味有する『豊か』の文字及び『理由・原因を示す。...によって。』の意味を有する助詞の『で』を含む『豊かな技術で未来を創造する』の文字を書してなるところ、これよりは、『豊富な技術によって未来を創造する』程の意味合いを理解させるものである。また、本願商標中の『未来を創造する』に通ずる『未来を創る』の語が、企業理念・経営方針等として使用されている実情がある。そうすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者をして、企業理念・経営方針等を表す際に一般的に使用される語句の一種と理解するにとどまり、その指定商品・役務に使用しても、自他商品・役務の識別標識としての機能を有するものとはいえないことから、需要者が何人かの業務に係る商品・役務であるかを認識することができない商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和元年9月6日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要点

請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。

(1)使用例1ないし8は、単に文中に「豊かな技術」の語が含まれているにすぎないものを含め、本願商標の構成中の一部の語が記載されているものをあげたにすぎず、本願商標の使用例とはいえない。

(2)使用例9ないし18は、単に文中に「未来を創造」の語が使用されているにすぎないものを含め、本願商標の構成中の一部の語が記載されているにすぎないものであり、本願商標の使用例とはいえない。

(3)ある商標を観察する場合においては、その構成の全体をもって判断がなされるべきであって、その構成の一部にすぎない語の使用をもって、識別力の判断がなされることは許されるべきではない。

(4)本願商標は造語であって、明確な観念を生ずるとはいえないものの、漠然とではあるが、「十分な技術(力)によって未来を作り上げる」程度の一連の観念を想起させるものであり、かつ、請求人が本願商標の使用を継続している一方で、請求人の他に、本願商標を使用するものが存在しないという点も踏まえて考えるのであれば、現実に全体として識別力を有する語として機能している本願商標について、仮にその構成語の一部が使用されている例があるからといって、これが商標全体としての識別力を否定することに直結するものではない。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号該当性について

本願商標は、上記1のとおり、「豊かな技術で未来を創造する」の文字からなるところ、その構成中、「豊か」の文字は、「他の語に付き、それに十分に達しているさま。」の意味を、「技術」の文字は、「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に役立てるわざ。」の意味を、「未来」の文字は、「過去・現在とともに時の流れを三区分した一つで、まだ来ていない部分。」の意味を、「創造」の文字は、「新たに造ること。」の意味を有する語(いずれも「広辞苑第6版」株式会社岩波書店)として知られており、その構成態様は、「豊かな技術」の文字と「未来を創造する」の文字を、格助詞の「で」で結合したものと容易に認識されるものである。

そうすると、本願商標は、構成文字全体として「十分な技術で未来を造る」程の意味合いを認識させる語句であるといえるものである。

そして、別掲のとおり、本願の指定商品及び指定役務と関係の深い分野等において、「豊かな技術」の文字や「未来を創造する」等の文字が、企業理念・経営方針等を表す語句の一部として多数採択されており、また、企業理念・経営方針等を表す語句として、例えば、「豊かな技術で未来を創る」(別掲1)、「豊かな技術でよりよい環境を創る」(別掲3)、「確かな技術で未来を創造する」(別掲10)などのように使用されている実情も見受けられる。

そうすると、本願商標は、企業理念・経営方針等を表す際に一般的に使用される語句を組み合わせたにすぎないものであり、これに接する取引者、需要者は、本願商標を商品及び役務の出所を識別するための標識ではなく、「十分な技術で未来を造る」程の意味合いを想起させる企業の特性や優位性を記述した企業理念・経営方針等として理解、認識するにとどまるものというべきである。

したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は、「本願商標は『豊かな技術で未来を創造する』であり、例えばここから『十分な技術(力)によって未来を創り上げる』程度の観念を想起するとしても、その意味するところは非常に漠然している。・・・そのように漠然とした語が、『企業の特性や優位性を記述する』ものではない。」旨主張している。

しかしながら、上記(1)のとおり、本願商標は、企業理念・経営方針等を表す際に一般的に使用される語句である「豊かな技術」と「未来を創造する」の文字を、格助詞の「で」で結合したにすぎないものであり、その構成全体の意味合いの理解も容易であることから、これに接する需要者は、企業の特性や優位性を記述した企業理念・経営方針等として理解、認識するものというのが相当である。

イ 請求人は、商標審査基準における商標法第3条第1項第6号の判断基準について、「企業理念・経営方針等以外を認識させる事情」として、「出願人が出願商標を一定期間自他商品・役務識別標識として使用しているのに対し、第三者が出願商標と同一又は類似の語句を企業理念・経営方針等を表すものとして使用していないこと」に関し、「請求人は、長年にわたって継続して本願商標を使用している」旨主張し、証拠方法として甲第3号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出している。

しかしながら、提出された証拠からは、請求人が、1990年頃から現在まで一定期間「豊かな技術で未来を創造する」の文字を使用していることが確認できるとしても、証拠から確認できる、新聞(甲3)、テレビCM(甲7)、封筒(甲9〜甲11)、ウェブサイト(甲13)での本願商標の使用態様は、いずれも請求人の社名とともに「豊かな技術で未来を創造する」の文字が、小さく又は細い文字で表示されており、「三谷セキサン/設立50年史」の表題の書籍(甲4)においては、その本文(甲4−2)に記載され、「『実は福井』の技」の表題の冊子(甲5)は、請求人の紹介記事の「経営者から一言」の欄(甲5−2)に記載されているところ、これらの記載方法からすれば、各証拠に記載されている「豊かな技術で未来を創造する」の文字は、自他役務の識別標識として機能しているとは認められないものであり、これに接する需要者は、企業理念・経営方針等を表示したものとして認識するとみるのが相当であるから、請求人が、「豊かな技術で未来を創造する」の文字を、自他役務の識別標識として使用しているとはいい難いものである。

ウ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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