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Trademark Appeal Case

周知商標と複合商標の類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2018−890076(T2018−890076/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6027506号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年3月17日登録出願、第33類「ぶどう酒」を指定商品として、同30年2月2日に登録査定、同年3月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が、本件商標の登録の無効の理由について、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、請求人の業務に係るオーディオ製品、無線通信機器及びカーエレクトロニクス製品(以下、これらの製品をまとめて「請求人製品」という。)に使用しているとするものである。

第3 請求人の主張

請求人は、「本件商標はその登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第115号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)類似性の程度について

本件商標は、別掲1のとおり、その構成中の上部に「KENWOOD」のアルファベット文字を大書している。

これに対し、引用商標は、「KENWOOD」のアルファベット文字よりなるものであり、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼の観点から互いに相紛らわしい類似の商標といわなければならない。

したがって、本件商標と引用商標との類似性は極めて高い。

(2)引用商標の周知著名性について

ア 請求人は、2008年(平成20年)10月1日付で、日本ビクター株式会社と株式会社ケンウッドが経営統合することにより設立され、総合電気機器メーカーとしてその名を馳せているものであり、引用商標は、1963年(昭和38年)に、米国でKENWOOD ELECTRONICS INC.が設立され、当初は米国内のみで製造販売されている製品にのみ付されていたが、1979年(昭和54年)に引用商標が付された製品が米国より我が国に輸入され、その時点から、我が国において、引用商標の使用が開始されて以降、40年もの長きにわたって、我が国有数のトップブランドの一角を占めるに至っている。引用商標の使用開始当初は、請求人が製造販売する製品は、家庭用オーディオ機器や車載用オーディオ機器等のオーディオ製品や無線通信機器が中心であったが、現在も継続して、オーディオ製品や無線通信機器やカーエレクトロニクス製品に引用商標を使用するものである(甲6〜甲98)。

イ 請求人製品は、その売上規模が合計で年間約1000億円規模に該当し、そのうち約4割は、日本国内における売上となっており、我が国有数のトップブランドの一角を占めるものである。また、取扱店舗は、請求人製品のうち家庭用オーディオ製品については、日本全国300を超える店舗、無線通信機器については、同じく300弱の店舗、カーエレクトロニクス製品については、オートバックスセブンやイエローハットなど日本全国にネットワークを持つ大手カー用品店において幅広く取りそろえられている(甲99〜甲101)。

ウ 請求人製品に関する広告宣伝活動も幅広く行われているが、中でも公共交通機関における交通広告については、定期的、かつ、継続的に行われている(甲102)。

エ 引用商標は、平成6年9月28日付で、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,薬味酒」を含む指定商品に防護標章登録がされ、その後、2回の更新登録がされ(甲103)、さらに、引用商標が我が国における周知・著名商標として登録されている(甲104)。

オ 引用商標は、使用開始から現在まで、継続して使用され、請求人が保有する主要な製品ブランドの一つであることから、我が国及び海外においても積極的に商標登録の取得を進めており、我が国における引用商標についての商標登録及び防護標章登録は、93件にのぼり、海外においては、281件もの商標登録を取得している(甲105)。

カ 請求人は、引用商標を広く全世界的に認知させるべく、現在に至るまで様々なスポンサーシップ活動の推進によるブランド訴求や無線通信機器・システムの高い信頼性の訴求を行っている(甲106〜甲109)。また、請求人製品とは異なる商品分野の取引者、需要者へも幅広く全世界的にブランド訴求を行っている(甲110、甲111)。

キ 以上のとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件指定商品を取り扱う分野において取引者、需要者の間においても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において広く認識され、著名性を獲得している。

(3)引用商標の独創性の程度について

引用商標は、請求人が独自に創出した造語性の高い標章である(甲112)。これに対して、本件商標の採択には必然的、かつ、合理的な理由がない。

(4)商品の関連性及び取引者、需要者の共通性、その他取引の実情について

被請求人が製造販売するぶどう酒(以下「被請求人製品」という。)は、嗜好品であるのに対し、請求人製品のうち、特にオーディオ製品は音楽を聴くことを主な目的とするものであるから、娯楽品ということもできるから、両者は、趣味の追及といった商品の目的において一定程度以上の共通性がある。

また、被請求人製品は、アルコール飲料であるから、その需要者は20歳以上の男女であるのに対し、請求人製品中、主要な製品であるカーエレクトロニクス製品は、自動車内に設置するものであり、我が国において普通運転免許証の取得可能年齢が18歳以上であること、自分で自動車を所有した上で、自身の嗜好にあったカーエレクトロニクス製品を購入・設置できるような年齢を想定すると、いずれも20歳前後以上の男女ということができる。

そのため、請求人製品と被請求人製品とは、その需要者の範囲が大部分において重なり合うこととなり、その需要者は共通する。

さらに、請求人は、我が国有数の企業規模を誇る総合電機メーカーであるが、その傘下に多くの子会社、関連会社などのグループ企業を保有しており、このグループ企業の事業を含めると請求人は、多角的、かつ、多種多様な事業を展開している(甲113)。

(5)まとめ

以上のとおり、本件商標と類似性が極めて高い引用商標は、著名性を獲得しているため、本件商標をその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者は、請求人の多角的経営の一環にかかる製品であると誤認混同し、あるいは、請求人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る製品であるものと誤認することは必定である。その結果、取引者、需要者が商品の出所について混同するおそれが高いものといえる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

2 商標法第4条第1項第19号該当性について

引用商標が著名性を獲得している点、引用商標と本件商標とが同一又は少なくとも互いに類似する点、さらには、「KENWOOD」の語が請求人による造語である点、及び、請求人が多角的、かつ、多種多様な事業展開を推進する企業体であることを考慮すれば、被請求人が請求人の高い名声、グッドウィルにフリーライドする意思があることは明らかであるから、被請求人が本件商標の登録出願に際して、不正の目的があったことは容易に推認できる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

(1)被請求人が登録出願時に悪意であったこと

引用商標は、前記のとおり、その販売、広告実績から著名性を獲得したものといえ、その著名性は現在においても継続しているから、被請求人のみが引用商標を知り得ないとする特別な事情は全く存在しない。

このように、被請求人が引用商標の存在を十分に認識し得る状況下において、被請求人は、引用商標と同一の文字構成よりなる「KENWOOD」の文字を含む商標態様について登録出願を行っていることから、被請求人は、遅くとも本件商標の登録出願時には、請求人製品である「KENWOOD」ブランドの存在について認識しており、悪意があったものと推認し得る。

(2)本件商標が剽窃的な出願であること

本件商標と引用商標とは、同一又は少なくとも互いに類似するものであるところ、「KENWOOD」の語は、請求人が独自に採択した独創的な造語であり、さらに、被請求人が本件商標を採択する必然的な理由が見出せないことからすれば、被請求人が本件商標の採択において、引用商標と偶然に一致したとするのは、極めて不自然であるものといわなければならない。

そのため、被請求人は、前記意思をもって剽窃的に本件商標を登録出願し、請求人に無断で登録を得たものと考えざるを得ない。

(3)まとめ

以上より、本件商標は、登録に至る出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものであり、この登録を認めることは、商標法の予定する秩序を害するおそれがあることは明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 結論

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当し、同法第46条の規定に基づき、その登録を無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第20号証を提出した。

1 本件商標について

(1)「KENWOOD」の意味合い

本件商標の文字部分のうち、上段の「KENWOOD」の文字は、カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する地区の名称である(乙1)。

ソノマカウンティは、ぶどう畑や良質のワインを生産するワインカントリーとして有名な世界屈指のワイン産地であり(乙2、乙3)、ケンウッドは、ソノマカウンティの中でも有名なワインの産地である(乙4)。

したがって、本件商標の構成中「KENWOOD」の文字は、ぶどう酒との関係においては、取引者、需要者に、その商品がカリフォルニア州ソノマカウンティ・ケンウッド地区のワインであることを理解させるにすぎないものであって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないか、極めて弱いものというのが相当である。

(2)「KENWOOD VINEYARDS」の一体性

本件商標においては、上記「KENWOOD」の文字のみならず、その下段に「VINEYARDS」の文字が近接して書されているところ、この「VINEYARDS」の文字は、「ぶどう園」の意味を有する「vineyard」の複数形であって(乙5)、その前に文字を冠した場合、構成全体で、「ぶどう園の名称(ワイナリー名)」として捉えられる用語である(乙6)。

そして、本件商標の文字部分の構成上のまとまりのよさや「VINEYARDS」の用語の意味合い・性質をも併せ考えれば、構成全体で「ケンウッド・ヴィンヤーズ」なるワイナリー名を表す不可分一体の用語と理解されるとみるのが相当である。

また、「KENWOOD VINEYARDS」は、1970年(昭和45年)に設立したソノマを代表する名門ワイナリーであって(乙7〜乙10)、創業わずか30年あまりで、総生産量30万ケースを超す大手ワイナリーに成長し(乙11)、創業から約50年経った現在では、100haの自社畑をソノマ・ヴァレーに所有し、長年にわたって契約している約45軒の栽培農家からも良質な葡萄を得て、ソノマカウンティの多様なテロワールを表現したワインを生産しており(乙12)、我が国においても一定程度の周知性を獲得したワイナリーとなっている(乙13〜乙17)。

このように、本件商標の構成中の文字部分「KENWOOD VINEYARDS」が我が国においても一定程度の周知性を獲得したワイナリーであることからすれば、該文字部分は、構成全体で「ケンウッド・ヴィンヤーズ」なる「周知なワイナリー名」と理解されること必定の文字部分である。

(3)まとめ

以上よりすれば、本件商標は、その構成中「KENWOOD」の文字部分のみが単独で商標として機能するものではなく、「KENWOOD VINEYARDS」の文字部分が一体不可分の文字部分として機能する商標であると考えるのが相当である。

2 引用商標の周知著名性について

(1)「ぶどう酒」における「KENWOOD」の文字に対する取引者、需要者の認識

引用商標は、「KENWOOD」の欧文字を細身のフォントで書し、構成文字中「W」の真ん中上部に逆三角形を配した構成の特徴的な態様よりなる商標であるところ、「KENWOOD」の文字は、カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する地区の名称であって、同地区が有名なワインの産地でもあることからすれば、本件指定商品「ぶどう酒」の産地を理解させるにすぎない用語である。

(2)請求人の主張について

請求人は、引用商標が、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件指定商品を取り扱う分野における取引者、需要者の間においても、著名性を獲得している旨主張する。

しかしながら、請求人提出の証拠においては、ぶどう酒の分野における使用例が一切見当たらず、また、特殊なロゴ態様からなる引用商標の使用例を提示するのみで、「『KENWOOD』といえば引用商標を指す」なる主張を裏付ける証拠についても一切提出されていない。

また、1981年(昭和56年)10月発行カタログ(甲97)及び1980年(昭和55年)5月発行カタログ(甲98)を除き、引用商標が発表された1982年(昭和57年)(乙18)以降のカタログにおいては、特殊なロゴ態様からなる引用商標を前面に出した広告展開がなされており、通常書体「KENWOOD」が使用されること自体少ないことが確認できる。

したがって、これらの証拠のみでは、引用商標が、本件指定商品「ぶどう酒」の分野で著名であったとは認められず、特に、通常書体で書された「KENWOOD」の文字列自体が、本件商標の登録出願時にぶどう酒の取引者、需要者の間で請求人の商標として広く認識されていたとは認めることができない。

3 商標法第4条第1項第15号について

(1)本件商標と引用商標との類似性の程度について

本件商標は、その構成中「KENWOOD」の文字が、その指定商品「ぶどう酒」との関係においては、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないか、極めて弱い文字部分であり、該文字部分のみが単独で商標として機能するものではなく、かつ、「KENWOOD VINEYARDS」が一定の周知性を獲得していることからしても、該文字部分は一体不可分でのみ機能すると考えるのが相当である。

したがって、本件商標は、引用商標とは全く類似するところのない別異の商標といわざるを得ず、本件商標と引用商標との類似性の程度は低い。

(2)引用商標の周知著名性について

引用商標は、本件指定商品「ぶどう酒」の分野とは全く異なる商品分野でのみ使用されているから、請求人の業務に係る商標として、本件指定商品の分野の需要者にまで、広く知られているとは認め難い。

特に、本件商標の「KENWOOD」に接した取引者、需要者は、まずは産地としての地名を認識し、文字全体でワイナリー名が書されていると理解し、ぶどう酒の分野においては、本件商標の通常書体の「KENWOOD」の文字列に接した取引者、需要者が請求人を想起する程度に請求人商標が広く認識されていたとは認められない。

(3)独創性の程度について

「KENWOOD」の語は、カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する地区の名称であり、該地域がぶどう酒の有名な産地であることからすれば、本件指定商品「ぶどう酒」との関係においては、独創性の程度の低い用語といわざるを得ない。

(4)商品の関連性の程度について

本件指定商品「ぶどう酒」と請求人製品とは、その用途、性質、機能等において著しく異なるばかりか、生産者、取引系統、販売場所等においても明らかに相違するから、関連性は見いだせない。

(5)取引者及び需要者の共通性、その他取引の実情について

本件指定商品「ぶどう酒」と請求人製品との需要者の範囲が恒常的に一致するとみるべき特別の事情も見いだせず、両商品の需要者の共通性の程度は高いとはいえない。

さらに、請求人は、グループ企業の事業を含めると、多角的、かつ、多種多様な事業を展開している旨主張しているが、請求人グループ企業は、いずれも、音響・映像機器及びその関連製品の製造販売等を行う企業であり、多角的、かつ、多種多様な事業を展開しているとはいえない。

(6)まとめ

以上のとおり、本件商標と引用商標との類似性の程度が低いこと、「KENWOOD」の語は独創性の程度が極めて低く、その特殊なロゴ態様を離れて、通常書体の表示自体が、本件指定商品「ぶどう酒」との関係で周知著名性を獲得しているとはいえないこと、本件指定商品と請求人製品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度が極めて低く、取引者及び需要者の共通性が認められないこと等を総合的に判断すれば、本件商標がその指定商品に使用されたとしても、請求人又は請求人と業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのごとく、商品の出所の誤認・混同を生ずるところはない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第19号について

本件商標は、「KENWOOD」の文字部分のみが単独で商標として機能するものではないから、引用商標とは非類似の商標であって、「KENWOOD」の文字は、被請求人のワイナリーの所在地であるとともに、1970年(昭和45年)に設立されたワイナリー名を構成する文字であることからしても、不正の目的をもって使用するものでないこと明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

5 商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、その構成中の「KENWOOD」の文字が、被請求人のワイナリーの所在地であり、1970年(昭和45年)に設立されたワイナリー名を構成する文字であるから、本件商標は、引用商標を剽窃したものでない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

6 むすび

以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するものではない。

第5 当審の判断

請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。

1 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用商標の周知・著名性について

ア 請求人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。

(ア)1963年(昭和38年)に米国で「KENWOOD ELECTRONICS INC.」が設立されて、「KENWOOD」ブランドが誕生したとされる(甲112、甲113)。

(イ)請求人は、2008年(平成20年)10月1日付で、日本ビクター株式会社と株式会社ケンウッドが経営統合することにより設立された総合電機メーカーである。

(ウ)引用商標は、我が国において、請求人の前身である株式会社ケンウッドが発行する家庭用オーディオ、ポータブルCD・MDプレイヤー等に関するパンフレット(甲56〜甲93:1987年(昭和62年)11月20日〜2000年(平成12年)6月22日 KENWOOD CORPORATION発行)に表示されている。また、2014年(平成26年)から2018年(平成30年)における請求人発行のパンフレット(甲39〜甲55)には、ドライブレコーダー、カーナビゲーション、車載用オーディオ、家庭用オーディオ、アマチュア無線機、トランシーバー等の製品に引用商標が表示されている。

以上のことから、引用商標は、我が国において、請求人の前身である株式会社ケンウッドによって、1987年(昭和62年)頃から、2000年(平成12年)頃まで、家庭用オーディオ、ポータブルCD・MDプレイヤー等の音響機器に使用され、その後、請求人により、2014年(平成26年)から現在に至るまで請求人製品に使用されているものである。

(エ)請求人製品のうち、家庭用オーディオ製品、無線通信機器については、日本国内に300程の取引先を有し、カーエレクトロニクス製品については、大手カー用品店を主な取引先としている(甲99〜甲101)。

(オ)請求人は、引用商標とほぼ同じ態様の標章について平成6年9月28日付で、防護標章登録されて、それを現在も保有している(甲103)。

(カ)請求人は、カーナビゲーションに関する広告宣伝活動として、公共交通機関における交通広告をJR東日本の品川駅及び横浜駅、西武池袋駅の駅構内、東京メトロ銀座線、東急東横線、JR西日本快速車、大阪地下鉄御堂筋線の電車内において定期的、かつ、継続的に行っており(甲102)、当該交通広告に引用商標の表示がある。

(キ)請求人は、マクラーレンF1チームとのオフィシャル・サプライヤー契約の締結により、2016年(平成28年)10月には、同チームへの無線システムの供給を開始し、2018年(平成30年)から3シーズンのスポンサーシップを締結し、二輪レースなどにおいて、引用商標を表示している(甲106〜109)。

イ 上記アのとおり、請求人及び請求人の前身である株式会社ケンウッドにより、請求人製品中、家庭用オーディオ、ポータブルCD・MDプレイヤー等の音響機器に引用商標が長年にわたり使用されていること、請求人製品中、家庭用オーディオ製品の日本国内における300程の取引先に関する実績等よりすれば、引用商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、請求人製品のうち、家庭用オーディーオ製品について、我が国の需要者の間に広く認識されていたものといえる。

一方、外国における引用商標の周知・著名性を判断するための広告実績、販売実績等は明らかにされていないため、引用商標は、外国における需要者の間に広く認識されていたとはいえない。

(2)本件商標と引用商標との類似性

ア 本件商標について

本件商標は、別掲1のとおり、図形とその上部に「KENWOOD」の欧文字を大きく表し、その下に前記文字より小さく「VINEYARDS」の欧文字を二段に書してなるものである。

そして、本件商標の構成中の文字部分「KENWOOD VINEYARDS」のうち、「KENWOOD」の文字は、カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する地区の名称であって、ワインの生産地として紹介されており(乙1、乙4)、一方、「VINEYARDS」の文字は、「ぶどう園」の意味を有し、その前に文字を冠した場合には、構成全体で「ぶどう園の名称(ワイナリー)」を意味するものとして使用されている(乙5、乙6)。

加えて、「KENWOOD VINEYARDS」について、カリフォリニア州のソノマを代表するワイナリーとして紹介されているものである(乙7〜乙17)。

以上よりすれば、本件商標の構成中の欧文字部分は、その文字の大きさの違いはあるとしても、構成文字全体が不可分一体として看取されるというべきであり、これより生じる一連の称呼も特段、冗長ではないから、本件商標は、その構成文字に相応して、「ケンウッドビンヤーズ」の称呼のみを生じ、「(カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する)ケンウッド地区のぶどう園の名称(ワイナリー)」の観念を生じ得る。

その他に、本件商標から、「ケンウッド」の称呼のみを生じるとする事情はない。

イ 引用商標について

引用商標は、別掲2のとおり、中央の「W」の文字の中心上部に逆三角形を配した「KENWOOD」の欧文字からなるものである(中央の「W」の文字の中心上部に逆三角形を赤で着色したものも含む。以下同様。)。

そして、上記(1)のとおり、引用商標は、請求人製品のうち、家庭用オーディオ製品について、我が国の需要者の間に広く認識されていたものといえる。

以上からすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ケンウッド」の称呼を生じ、「家庭用オーディオ製品のブランドとしてのケンウッド」の観念を生じるものである。

ウ 本件商標と引用商標の類否について

本件商標と引用商標は、それぞれ、上記ア及びイのとおりであるところ、両者は、図形の有無の差異、構成文字及びその態様において、明らかに相違するものであるから、外観上、区別し得るというべきである。

次に、称呼については、本件商標は、「ケンウッドビンヤーズ」の称呼のみが生じるのに対し、引用商標は、「ケンウッド」の称呼が生じるものであり、両称呼は、音数において明らかに相違し、互いに聞き誤るおそれはないものといえる。

さらに、観念については、本件商標は、「(カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する)ケンウッド地区のぶどう園の名称(ワイナリー)」の観念を生じるのに対し、引用商標は、我が国の需要者の間に広く認識されている「家庭用オーディオ製品のブランドとしてのケンウッド」の観念が生じるものであるから、観念において類似するとはいえない。

そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても、相紛れるおそれがない非類似の商標というべきであって別異の商標である。

(3)独創性の程度について

「KENWOOD」の文字は、カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する地区の名称と同じ綴りからなる。

なお、請求人は、「KENWOOD」の文字は造語性の高い標章である旨述べているが、上記のとおり、当該文字は、カリフォルニア州の地区の名称と同一であることに加え、本件商標の指定商品の産地であることからすれば、独創性の程度は決して高いとまではいえない。

(4)本件商標の指定商品と家庭用オーディオ製品について

本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、「ぶどう酒」であって、一方、請求人及び請求人の前身である「株式会社ケンウッド」は、引用商標を請求人商品中、家庭用オーディオ製品に使用している(甲39〜甲93)。

そうすると、本件商標の指定商品と家庭用オーディオ製品とは、その用途、品質、需要者、生産部門、販売部門等を明らかに異にする全く関連性のない業務分野における商品というべきものである。

(5)需要者の共通性、その他取引の実情について

本件商標の指定商品である「ぶどう酒」と請求人製品中、家庭用オーディオ製品との需要者の範囲について、一部共通にする場合があるとしても、恒常的に一致するとみるべき特別の事情も見いだせず、両商品の需要者の共通性の程度は高いとはいえない。

なお、請求人は、グループ企業の事業を含めると、多角的、かつ、多種多様な事業を展開している旨主張しているが、請求人グループ企業は、いずれも、音響・映像機器及びその関連製品の製造販売等を行う企業であり、多角的、かつ、多種多様な事業を展開しているとはいい難く、また、多角経営を行っているとみるべき状況もみあたらない。

(6)出所の混同のおそれについて

引用商標は、上記(1)ないし(5)のとおり、請求人の業務に係る家庭用オーディオ製品に使用し、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、本件商標と引用商標は非類似の商標というべきであって別異の商標であり、また、「KENWOOD」の文字は、カリフォルニア州ソノマカウンティに位置する地区の名称であることからすれば、その独創性は高いとまではいえず、さらに、本件商標の指定商品と家庭用オーディオ製品とは、全く関連性のない商品であって、需要者の範囲が常に共通するともいい難く、請求人の提出する証拠からも、両商品間で混同を生じているとみるべき事情は見いだせない。

そうすると、本件商標は、これに接する需要者が引用商標を連想又は想起するということはできない。

してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が請求人の業務に係る商品、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。

そして、他に、本件商標が商品の出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。

2 商標法第4条第1項第19号該当性について

引用商標は、上記1(1)のとおり、請求人の業務に係る家庭用オーディオ製品に使用され、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものであるものの、外国において需要者の間に広く認識されていたとはいえないものであり、本件商標と引用商標は、非類似の商標というべきであって別異の商標である。

そして、本件商標は、上記1(6)のとおり、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものである。

そうすると、被請求人が、引用商標の名声と信用にフリーライドする意図など、不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めることはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

本件商標の構成中、「KENWOOD」の欧文字は、上記1(2)アのとおり、カリフォルニア州ソノマカウンティに位置するワインの生産地の名称であって、「KENWOOD VINEYARDS」は、ワイナリーの名称であることからすれば、本件商標は、その出願の経緯に請求人が主張するような悪意があったとか剽窃的な出願とはいえない。

そうすると、本件商標は、引用商標の信用力や顧客吸引力にフリーライドするものとはいえず、請求人提出の全証拠によっても、本件商標の出願経緯等に不正の利益を得る目的その他不正の目的があるなど社会通念に照らして社会的相当性を欠くものがあったものと認めることはできない。

してみれば、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではないことはもとより、本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するとの理由は見いだせない。

その他、他の法令等に反するとみるべき事情も認められないものである。

したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標には該当しない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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