結論テキスト
審判費用は,請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2019−890017(T2019−890017/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第6038567号商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成27年7月30日に登録出願,第35類「フランチャイズ事業の運営及び管理」及び第37類「塗装工事,リフォーム工事,建設工事,建築工事に関する助言」を指定役務として,同30年3月23日に登録審決,同年4月27日に設定登録されたものである。
請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,引用商標1ないし引用商標5をまとめて「11号引用商標」,引用商標1ないし引用商標6をまとめて「引用商標」ということがある。)。
商標の態様 別掲2のとおり
指定役務 第37類「管工事,機械器具設置工事」
出願日 平成4年9月29日
設定登録日 平成8年7月31日
商標の態様 別掲3のとおり
指定役務 「建築一式工事,しゅんせつ工事,土木一式工事,舗装工事,石工事,ガラス工事,鋼構造物工事,左官工事,大工工事,タイル・れんが又はブロックの工事,建具工事,鉄筋工事,塗装工事,とび・土工又はコンクリートの工事,内装仕上工事,板金工事,防水工事,屋根工事,管工事,機械器具設置工事,さく井工事,電気工事,電気通信工事,熱絶縁工事,建築工事に関する助言」を含む第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
出願日 平成11年1月22日
設定登録日 平成12年3月10日
商標の態様 別掲4のとおり
指定役務 「建設工事,建築工事に関する助言」を含む第37類に属する 商標登録原簿に記載のとおりの役務
出願日 平成19年1月9日
設定登録日 平成19年8月24日
商標の態様 別掲5のとおり
指定役務 「建設工事,建築工事に関する助言」を含む第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
出願日 平成23年4月5日
設定登録日 平成23年10月28日
商標の態様 別掲6のとおり
指定役務 「建設工事,建築工事に関する助言」を含む第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
出願日 平成25年2月13日
設定登録日 平成25年7月26日
商標の態様 別掲7のとおり
指定商品 第30類「調味料,香辛料」
出願日 昭和35年5月31日
設定登録日 昭和37年8月24日
書換登録日 平成15年7月23日
なお,引用商標6は,第1類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務について防護標章登録されている。
請求人は,本件商標の指定役務中,第37類「全指定役務」についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証(枝番号を含む。ただし,甲第35号証は,欠番。)を提出した。
本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し,同法第46条第1項の規定により本件商標の指定役務中,第37類「全指定役務」(以下「本件請求役務」という。)の登録は無効とされるべきである。
(1)指定役務の類否について
本件請求役務は,第37類「塗装工事,リフォーム工事,建設工事,建築工事に関する助言」である。これに対して,引用商標2ないし引用商標5は,同じ役務を指定役務とするものであり,また,引用商標1は,これらの役務と抵触する役務を指定役務としていることから,本件商標と11号引用商標とは,その指定役務において類似するものである。
(2)商標の類否について
ア 11号引用商標から生ずる称呼及び観念について
引用商標1は,二重線で囲まれた縦長の黒字背景にキューピーの図形が配されてなり,また,引用商標2ないし引用商標5は,当該キューピーの図形と,請求人の会社名の略称及びその英文字表記である「キューピー/KEWPIE」の文字からなるものであるから,11号引用商標からは,「キューピー」の称呼,並びに「キューピー」又は「キューピー人形」の観念が生じるものである。
イ 本件商標から生ずる称呼及び観念について
(ア)第37類の「塗装工事」等との関係での「外壁」の文字について
本件商標中の右側の家のイラストの図形(以下「本件商標右側図形」という。)に含まれる,「ドクトル外壁さん」の文字のうち,「外壁」の文字は,指定役務との関係で,他の要素と結合して数多く商標登録されている(甲9)から,家のイラストの図形や「外壁」の文字は,塗装工事等の対象物を表示する文字にすぎず,本件請求役務との関係で識別力が弱い要素である。
そして,被請求人は,キューピー人形を被請求人の目印とうたい,他社と差別化を図るための識別標識として使用していることもある一方で(甲14〜甲21,甲40),被請求人やそのフランチャイジーにおいては,本件商標右側図形(甲37)のみをもって被請求人やフランチャイジーの目印とうたっている垂れ幕や,その他の宣伝広告物も一見して見当たらない。
そうすると,本件商標は,その構成中,左側のキューピー人形の図形(以下「本件商標左側図形」という。)が重要な役割を果たしているということができ,引用商標と誤認混同が生じるおそれがあることは明白である。
(イ)本件商標の特徴について
本件商標は,その構成中の本件商標右側図形が,別途登録されている商標(甲11,甲36,甲37)であることを前提として,その左側に「キューピー人形」に係る図形を付したことを特徴とするものであるといえる。
そして,本件商標左側図形が著名なキューピー人形の図形であることは争いがない点に鑑みると(乙44),本件商標は,とりわけ需要者の間においても広く認識されている左側のキューピー人形からも称呼や観念が生じることは明らかである。
(ウ)本件商標左側図形について
上述のとおり,本件商標左側図形が我が国において特徴的かつ著名であることから,本件商標を全体として観察した場合,その需要者が「キューピー」又は「キューピー人形」を認識すると考えることは極めて自然である。
なお,被請求人のフランチャイジーにおいては,本件商標左側図形が単独で使用されている場合(甲18〜甲20),需要者は「キューピー人形」に着目する状況にあるため,そのような態様からは当然に「キューピー」又は「キューピー人形」の称呼が生じる。
また,本件商標左側図形の外観及び観念から,本件商標左側図形の使用が請求人の商標権を侵害するという状況にあることはいうまでもない。
(エ)小括
本件商標は,本件商標左側図形と,本件商標右側図形の構成が異なることとも相まって,視覚上,分離して把握し,認識されるものである(甲7,甲8)。
そして,本件商標右側図形は,その部分のみをもって,役務「建設工事,塗装工事」との関係で,他社(競合店)と顕著な差別化を図れる状況にはない。
したがって,本件商標は,需要者,取引者にとって,本件商標左側図形が,外壁に関するフランチャイズ事業(外壁の建設工事・塗装工事等)の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分に当たる。
以上を総合すると,本件商標は,本件商標左側図形から,「キューピー」の称呼及び「キューピー」又は「キューピー人形」の観念を生じるというべきである。
ウ 本件商標と11号引用商標の類否について
本件商標と11号引用商標は,いずれもその構成中,「キューピー」の図形部分を独立して認識できるものであり,両図形部分は,以下のとおり外観,観念及び称呼において共通するものである。
(ア)本件商標及び11号引用商標の外観について
11号引用商標の図形部分は,立位の裸の「キューピー」を表したものであり,その顔はぱっちりとした丸い目や頭頂部だけに小さい山状に盛り上がった毛髪を有する図形となっている。これに対して,本件商標左側図形は,白衣を着た「キューピー」であり,その姿態から一見して「キユーピー」と認識できる点,またその顔の特徴が,ぱっちりとした丸い目や,頭頂部だけに小さい山状に盛り上がった毛髪を有するなど,11号引用商標の図形部分と同じ特徴を備えたものである。
上記の点,更にはキューピー人形に服を着せることはよくあることであり,服を着せても依然として「キューピー」と認識されていることからすると(甲23),本件商標左側図形は,キューピーをモチーフとしてそれに白衣を着せたものというべきであるから,本件商標と11号引用商標とは,外観上類似する商標である。
(イ)本件商標と11号引用商標の観念及び称呼についての対比
11号引用商標は,上記のとおり,「キューピー」の称呼,並びに「キューピー」又は「キューピー人形」の観念が生じるものである。同様に,本件商標からも,上記のとおり,「キューピー」の称呼及び「キューピー」又は「キューピー人形」の観念を生じるものである。
したがって,本件商標は,11号引用商標と観念及び称呼においても類似する商標である。
(3)小括
本件商標は,それを全体で観察した場合,「キューピー」又は「キューピー人形」の観念・称呼が生じることから11号引用商標と類似し,更に,その取引実情を考慮したときには,本件商標は,11号引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
さらに,本件請求役務と11号引用商標の指定役務は類似している。
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
仮に本件商標と11号引用商標が類似しないと判断される場合であっても,本件商標は,引用商標との関係で商標法第4条第1項第15号に該当する。
(1)引用商標6の著名性について
引用商標6は,立位で両腕を左右上方にまっすぐ上げた裸のキューピーを表したものであり,その顔はぱっちりとした丸い目ににっこりほほ笑む口元を有し,頭頂部だけに小さい山状に盛り上がった毛髪を有する愛らしいものとなっている。
請求人は,その主力商品であるマヨネーズの包装にこの図形を付して販売をしており,商品の品質の良好さや活発な宣伝広告の成果として,請求人のマヨネーズは発売以来,高いシェアを誇っている。
また,主要な商品であるマヨネーズ及びドレッシング類について,請求人は,生産量・販売量シェアにおいて業界第1位を獲得しており,それ以外のパスタソース,ソース類缶詰,雑炊・粥類,ベビーフード等についても上位にランクしている(甲25)。
このような状況の下,「キューピー」の図形(引用商標6)は,請求人に係る商標として,更には,請求人を指称し,象徴する図形として,我が国の需要者に広く一般に認識されており,引用商標6及び請求人のハウスマークたる「キューピー」は,いずれも第30類において日本国周知・著名商標として掲載されている(甲26)。
上記より明らかなように,引用商標6は,食品の分野において,相当以前より著名性を発揮しているものであるが,それにとどまらず,請求人は,毎年数多くのテレビCMを放映しており(甲27),また,朝日新聞,読売新聞等の有力紙にも1面広告を掲載する等(甲28),積極的に宣伝広告を行っている。
加えて,平日の正午前の時間帯に長年にわたって,請求人がスポンサーとなり,請求人の著名な略称を冠したTV番組「キューピー3分クッキング」が放映されており(甲29の1),また,請求人は2004年(平成16年)6月より渋谷ハチ公前スクランブル交差点の屋外ビジョンにおいて毎日18:00に時報広告を行っている(甲29の2)。
これらの宣伝広告の媒体には,必ず引用商標6に係る「キューピー」の図形が表示されており,このことからも,当該図形が請求人を象徴する図形であることは十分に認識できる。
そして,近年では,「キューピー」の図形を用いてバスや電車の背面に広告掲載(甲30)を行うなど,食品分野の需要者にとどまらず,あらゆる分野の需要者に引用商標に係るキューピー図形が認識される状況となっている。
(2)請求人の「キユーピー」ブランドと引用商標6について
請求人の「キユーピー」ブランドは,その商品の品質について消費者の高い信頼を得るブランドとしてのイメージをも築きあげたものである。
実際に,第三者機関による企業ブランド調査において請求人の「キユーピー」ブランドは,日経BP社による食の安心安全ブランド調査において,2004年(平成16年)に1位を獲得しており,その後も2008年(平成20年)及び2011年(平成23年)の2位を始めとして,継続して上位を保っている(甲31)。
また,日経リサーチ社による企業ブランド調査においても「キユーピー」ブランドについては,消費者からの評価が高く,2005年(平成17年)の1位から近年に至るまでほぼ一貫して首位を保っている(甲32)。
上記のとおり,引用商標6は,請求人に係る「キユーピー」ブランドを象徴する図形であり,引用商標6について,全45区分において防護標章登録がされていること(甲24),及び書籍の中でも記述されていることからも(甲33),請求人を指称するものとして周知・著名となっていることは明らかである。
(3)請求人の「キユーピー」ブランドとの出所の混同について
上記の著名性は,食品分野における著名性を起源として導かれるものであるが,食品分野についてみると,「食品」は一般消費者を対象とし,かつ,全ての人の利用に供するものを対象とするという特性を有しており,種々の産業分野の中で,需要者の範囲は最も広いといえるから,そこには当然に建物の建設・塗装に係る需要者も含まれる。
したがって,請求人の製造販売に係る食品の需要者は,披請求人のフランチャイズ事業の対象たる役務「外壁の建設工事・塗装工事」等の潜在的な需要者に他ならず,これらの者が建設工事や塗装工事の現場で本件商標中の「キューピー」図形を目にしたときには,請求人又は請求人と経済的・組織的に何等かの関連を有する者がその建設工事や塗装工事を請負っているのではないか誤認混同を生じるおそれがある。
加えて,請求人においても,実際に機械器具の設置など建築工事を請け負っており(甲34),第37類に係る指定役務について,引用商標6のような「キューピー」の図形を使用している状況にある。
また,請求人が引用商標6について全区分で防護標章登録を受けていることからも,請求人の著名な表示は,全分野にわたって混同が生じるおそれがある。
以上からすれば,被請求人が本件商標を本件請求役務に使用する場合には,需要者,取引者をして,あたかも請求人が提供するかのごとく,又は請求人と経済的・組織的に何等かの関連を有するものであるかのごとく役務の出所について誤認混同を生じるおそれがあることは明らかである。
(4)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(1)利害関係人について
本件商標左側図形は,被請求人も認めるとおり「キューピー人形」であり,請求人は本件商標と類似する「キューピー」又は「キューピー人形」についての商標登録を有している。
また,引用商標は剽窃的出願により登録を受けたものではなく,かつ,引用商標に係る商標登録は有効に存続している。
さらに,被請求人がローズオニール社と締結したという使用許諾契約書(乙44)の末尾に記載されている4件の商標については,2016年(平成28年)4月25日にローズオニール社の代表者から請求人に商標権が譲渡されている。
そのような状況下,請求人が本件商標に係る利害関係を有していないという答弁はいずれも具体的な根拠に欠け,明らかな失当である。
(2)剽窃的出願について
キューピー人形やキューピーのキャラクターは,特定の者が新たに創作したものではなく,キューピッド,サンタクロース,福助人形,金太郎等と同様に,民俗的で,自然発生的に生まれた存在であり,知的財産権がなく誰でも自由に使える,いわゆるパブリックドメインであると認識されていたと解するのが自然であり,剽窃する意図やそのようにいわれなければならない状況などなく,請求人の「キューピー」に係る商標は,合法に出願・登録され,現在も有効に存続している。
さらに,すべての区分での防護標章登録が認められている事実等からすると,「キューピー」や「キューピー人形」は,長年の使用により,請求人を指称する著名な商標として我が国において認められていることは明白な事実である。
したがって,被請求人の請求人が剽窃の意図を明確に有していたという主張は,具体的な証拠に欠けるものである。
(3)ローズオニール社との使用許諾契約について
被請求人とローズオニール社とが,本件商標左側図形(キューピー・キャラクター)について著作物の使用許諾契約を締結(乙44)しているようであるが,キューピーは1900年(明治33年)初頭にローズ・オニールにより創作されたキャラクターであり,ローズ・オニールは1944年(昭和19年)に死去している。この事実に鑑みると,被請求人が使用許諾契約を行った平成25年にはキューピーやその人形についての著作権は既に消滅している(乙46)。
そのため,被請求人が本件商標中のキューピー人形を制作した加藤工芸株式会社ではなく,キューピーに関する特段の権利を有していないローズオニール社と締結している使用許諾契約は,既に権利が消滅しているキューピーについての二次的著作物に関する使用許諾契約となっている。
この二次的著作物に関する使用許諾をもって本件商標について登録を取得することの正当性が認められる訳ではなく,そして,本件商標左側図形を好き勝手に使用していいことが保障される訳でもないことも明らかであるし,この点も譲渡契約書の第1条第5項(乙46)で示唆されているところでもある。
(4)不正競争防止法第2条について
被請求人のいう商品表示とは,不正競争防止法第2条第1項第1号の「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名,商号,商品,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう)」であり,他人の周知又は著名な商品等表示が存在することが前提となるところ,誰の,どのような商品等表示(商品又は役務の出所を示す識別標識)に基づいて主張しているのか判然しない。
引用商標に係る商標登録の登録時において(またその後も),キューピー人形やキューピーのキャラクターは,特定の者が新たに創作したものではなく,上記のとおり,知的財産権がなく誰でも自由に使える,いわゆるパブリックドメインであると認識されていたと解するのが自然である。
また,被請求人に対するキューピーに係る著作権訴訟後の現在においてすら,ローズ・オニールがキューピーのキャラクターの創作者であることが日本で広く知られている状況には無く,本件商標の登録前の大正期の日本の状況に鑑みれば,これらの多くのキューピーを使用する者らが,皆ローズ・オニール又はその代理店等の許諾を得て使用していたとは考え難い(そのような事実を示す証拠も無い)。
上記の点に鑑みると,請求人による「キューピー」及び「キューピー人形」の使用は,他人の商品等表示の使用でもなく,また,請求人は自己の著名な商品等表示である「キューピー」及び「キューピー人形」について商標権に基づいて正当に使用しているものであるため,他人の商品等表示とは「混同」されることもなく,また,「冒用」の意図も有していないことは明らかである。
そのため,請求人の「キューピー」及び「キューピー人形」の使用は不正競争には該当しない。
(5)著作権違反について
我が国でキューピーのキャラクターが認知され始めた1910年代後半から1920年代にかけて,作者が明示されることなく,それ以前から存在する自然発生的なものとして,瞬く間に広まったキューピーのキャラクターがローズ・オニールの著作物であったことが周知されていなかったこと(甲42),長年にわたって多数の企業が我が国で使用されていたことに鑑みると,中島董一郎氏による商標登録出願の当初からキューピーやキューピー人形は既に我が国においては,上記のとおり,いわゆるパブリックドメインであると認識されていたと過去の判例からも解されるべきである。
そのため,中島董一郎氏の商標及び引用商標は著作権法に違反して作成,複製されたものではなく,合法的に作成及び商標登録出願・登録が行われてきたものであり,現在も有効に存続していることは明白な事実である。
(6)キューピー「商標」の著名性について
「商標」とは商標法第2条第1項により,標章を業として商品を生産等又は役務の提供等を行うものを示すが,被請求人の答弁は,どの商品又は役務との関係でキューピー標章が著名であるのか不明確であり,具体的な根拠に欠けるというべきである。
(7)米国における権利行使について
請求人は,実際に2016年(平成28年)に米国において異議申立を行っていることは認めるところであるが,2012年(平成24年)に第28類「DOLLS」について米国で権利を有していた商標権者から商標権(登録番号第1543698号)を譲受け,その権利を根拠に出所混同が生じることを理由として異議申立を行っている。そのため,請求人は米国において正当な権利を行使しているものである。そして,異議申立に係る出願は,その後権利の正当性について争われることなく取り下げられていることからも,正当性に疑義がないことは明白である。
そして,キューピーが創作された米国において,それに基づく商標権について公序良俗(国際信義)に反する旨主張する者はいないことからも,請求人が我が国においても正当な権利者であることを示しているといえる。
(8)小括
以上述べたとおり,被請求人の,本件審判は利害関係を有さないため,不適法であるとの答弁はいずれの理由においても具体的な根拠に欠けるものであるため,失当である。
そのため,請求人は本件無効審判についての利害関係を当然に有しているものと認識されることは明らかである。
被請求人は本件請求を却下する又は結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第47号証を提出した。
引用商標は「利害関係」の前提となる商標法上の法的利益が認められないものであって,請求人は本件無効審判の利害関係がないものであり,請求人の適格を欠き本件審判請求は不適法であるから(商標法第56条1項,特許法第135条),本件無効審判請求は不適法であり却下されるべきである。
(1)請求人の創始者である中島董一郎は(乙43),大正11年4月1日に別掲8のとおりの商標を登録出願し,当該商標は,同年10月27日に登録第147269号商標として登録された(乙1〜乙4,以下「中島董一郎商標」という。)。
(2)引用商標及び中島董一郎商標は,その登録出願前に周知・著名であった,ローズ・オニール作成の人形の図形とその名称と類似する。
ア ローズ・オニール作成の人形の図形
ローズ・オニールは,米国の雑誌「Ladies’HomeJournal」1909年(明治42年)12月号に掲載した自作のイラスト付き詩「TheKEWPIES’Christmas Frolic(クリスマスでのキューピーたちの戯れ)」にて発表した(乙6)。
その後,ローズ・オニールは,1912年(大正元年)12月17日,米国特許庁に人形の意匠を出願し,登録された(乙5)。
イ ローズ・オニールの創作にかかる人形の名称
ローズ・オニールは,上記雑誌において,「このファニーでずんぐりした生き物」を「Kewpie」と名付けたものであるから,「Kewpie」はローズ・オニールが創作した人形の名称であり,彼女の知的創作である。また,「キューピー」は「Kewpie」の日本語表記であり称呼は同一である(乙7)。
ウ 中島董一郎商標の登録出願前における「キューピー人形の図形」及び「Kewpie」,「キューピー」標章の周知性・著名性について
中島董一郎商標の登録出願前には「キューピー人形」及び「Kewpie」,「キューピー」標章は,日本全国において老若男女を問わず周知・著名であった(乙6,乙8,乙10〜乙21)。
エ 引用商標及び中島董一郎商標とローズ・オニール作成の人形の図形とその名称との対比
(ア)引用商標及び中島董一郎商標の構成
中島董一郎商標及び引用商標2ないし引用商標5は,人形の図形と「KEWPIE」,「kewpie」の英文字,「キューピー」の片仮名からなり,引用商標1及び引用商標6は人形の図形のみからなる。
(イ)中島董一郎商標及び引用商標と,ローズ・オ二ールの創作にかかる人形との対比
中島董一郎商標及び引用商標に描かれた人形は,ローズ・オニールの創作にかかる人形の特徴すべてに一致し,中島董一郎商標及び引用商標に描かれた人形は,ローズ・オニールの創作にかかる人形と類似する。
オ 中島董一郎商標及び引用商標2ないし引用商標5の文字部分について
(ア)中島董一郎商標及び引用商標2ないし引用商標5を構成する文字部分
中島董一郎商標及び引用商標2ないし引用商標5には「KEWPIE」,「kewpie」の英文字,「キューピー」の片仮名が配されており,それぞれ「KEWPIE」,「kewpie」,「キューピー」と認識され,いずれも「キューピー」の称呼を生じる。
(イ)中島董一郎商標及び引用商標2ないし引用商標5を構成する文字部分とローズ・オニールの創作にかかる名称の対比
ローズ・オニールは,上記イのとおり,「このファニーでずんぐりした生き物」を「Kewpie」と名付けたものである(乙7)。
「Kewpie」は日本語で「キューピー」と表記される。
「Kewpie」,「キューピー」はいずれも「キューピー」の称呼が生じる。
そうすると,「Kewpie」,その大文字表記「KEWPIE」はローズ・オニールの人形の名称と同一であり,「キューピー」はローズ・オニールの人形の名称の日本語表記であり,ローズ・オニールの人形の名称と同一の称呼である。
したがって,中島董一郎商標及び引用商標2ないし引用商標5を構成する英文字及び片仮名は,ローズ・オニールの創作にかかる名称と同一または類似する。
(3)中島董一郎商標及び引用商標は多数の法律・条約等に違反する。
ア 旧商標法違反
中島董一郎商標は,その指定商品に使用するにおいては,著名な「キューピー人形及びその名称「キューピー」と関係があるかの誤認,すなわち,商品の混同のおそれがあると判断される。
したがって,中島董一郎商標は,旧商標法第2条第1項第11号に規定される「商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アルモノ」に該当する。よって,同法第16条第1項第1号により無効にすべきものであることは明らかである。
イ 著作権法違反
(ア)上記(2)アのとおり,ローズ・オニールは,1909年(明治42年)発行の雑誌においてキューピーを発表した(乙6)。
そして,1909年(明治42年)から1913年(大正2年)までの間に発行されたキューピー作品の著作権は平成17年(2005年)5月21日まで存続すると判示された(平成16年(ネ)第1797号)。
そうすると,中島董一郎商標の登録出願以降において当該商標を使用する行為は旧著作権法(明治32年3月4日法律第39号)に違反する。
(イ)キューピー人形の図形は「絵画,版画,彫刻その他の美術の著作物」であり,本件商標はローズ・オニールの作成にかかるキューピー人形の図形と類似する人形図形を含むものであるから,現行著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)施行後から,著作権が保護期間を満了するまでの間に,本件商標を使用することは,「著作物を複製する権利を専有する」という著作権を侵害するものである。
さらに,中島董一郎商標及び引用商標の図案は,ローズ・オニールの作成にかかるキューピー人形の図形と同一ではない。
中島董一郎商標及び引用商標は,ローズ・オニールの作成にかかる原著作物に許諾無く改変するものであるから同一性保持権を侵害し,著作者ローズ・オニールの人格的利益を損なうものである。
そうすると,中島董一郎商標及び引用商標を使用する行為は,現行著作権法に違反する。
(ウ)以上のとおり,中島董一郎商標及び引用商標は,著作権法に違反して作成,複製されてきたものであり,著作者ローズ・オニールの人格的利益・著作財産権を侵害し,その使用は公序良俗に違反する。
ウ 不正競争防止法違反
周知な商品表示であるローズ・オニール作成のキューピー人形の図形あるいはその名称を使用して,キューピー人形と関係あるかのような混同を生じさせる行為,あるいは,著名な商品表示であるローズ・オニール作成のキューピー人形の図形あるいはその名称を使用する行為は,不正競争に他ならない。
したがって,中島董一郎商標及び引用商標は,不正競争防止法に違反して使用されてきたものであり,公序良俗に違反する。
エ 工業所有権の保護に関するパリ条約違反
中島董一郎商標及び引用商標は,パリ条約第6条の2(1)項に該当するものであり,悪意の登録・使用である。
オ TRIPS協定違反
カ 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約違反
中島董一郎商標及び引用商標の図案は,ローズ・オニールの作成にかかるキューピー人形の原著作物を許諾無く改変するものであるから,著作者の人格的利益を損なうものであり,それを使用することは本条約の趣旨に違反する。
キ 社団法人日本経済団体連合会「知的財産権に関する行動指針」違反(乙22)
ローズ・オニールの作品であるキューピー人形やその名称を無断で冒用することは,「他者の知的財産権を尊重する」という企業活動の基本的な行動指針に違反するものであり,公序良俗に違反する。
(4)中島董一郎商標及び引用商標は剽窃的出願によって登録されたものであり,その登録出願は不法性がある。
ア 中島董一郎が,中島董一郎商標を商標登録した経緯(乙6,乙27)は,著名標章の著名性にただ乗りする意図,他人の知的財産を自己のものとして登録出願し権利化を図るという「不正な目的」が如実に表されているものである。
さらに,請求人による「キューピー人形の図案」,「キューピーの名称」からなる「キューピー関連商標」の使用は,請求人の創始者中島董一郎による,不正の目的による登録から,今日に至るまでそのまま綿々と引き継ぐものに他ならない(乙25)。
かかる不正の目的によって登録された商標はいかなる時点においても,商標法の保護を受けることがあってはならない。
イ 請求人による全区分出願・登録
請求人は,中島董一郎商標及び引用商標の他,「キューピー人形の図形」,「キューピー」,「KEWPIE」などからなる,キューピー関連商標を524件出願し,登録し,あるいは譲り受けたものである(乙30)。
他人の知的創作である「キューピー人形の図案」「キューピーの名称」を「自分のものとして商標登録すること」という中島董一郎の決意を,その後商品役務区分の全区分において登録したものである。かかる商標出願・登録の行為は,他人の著名標章を自己のものとする知的財産の剽窃である。
ウ まとめ
以上のとおり,中島董一郎商標及び引用商標は,かかる知的財産に係わる公序に違反するものであり,商標法の保護を受ける法的利益を欠くものである。
(5)中島董一郎商標及び引用商標は,国際信義に違反する商標である。
ア 請求人による米国におけるキューピー商標の権利取得及び権利行使
請求人は,キューピー人形及びその名称「キューピー」の創作者の母国であり,かつ,本件「キューピー人形」の著作物の第1発表国である米国において,キューピー関連商標の権利を取得し,また権利行使をしたものである(乙36,乙37)。
イ 請求人による世界におけるキューピー関連商標の権利取得
請求人は,全世界において,103件のキューピー関連商標を登録するものであって,他人の知的創作であるキューピー人形及びその名称「キューピー」の権利化を図っているものであり,請求人による他人の知的創作の剽窃行為は全世界規模に及んでいる(乙38)。かかる行為は,国際信義にもとる行為に他ならない。
ウ 知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号平成18年9月20日判決について
中島董一郎商標及び引用商標は,上記判決に沿うと商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当し,商標登録を受けることができないものである。
(6)社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反すること
上記(1)ないし(5)より,請求人による「キューピー人形の図案」,「キューピーの名称」からなる「キューピー関連商標」の使用は,中島董一郎による,不正の目的による中島董一郎商標の出願・登録から,今日に至るまでそのまま綿々と引き継ぐものに他ならない。
そのような行為は,知的財産の秩序の根幹,すなわち公序に違反する行為であり,かかる知的財産の根幹の秩序に違反するかどうかの判断は,本件審決は請求人を名宛てにしてなされるものであるから,請求人による登録商標の利用状況も本件審判において「利害関係」の判断において考慮されなければならない。
(7)小括
請求人が無効理由として引用する引用商標は,中島董一郎商標と共にいずれも法的保護を受ける利益がないものであり,請求人は本件無効審判請求の利害関係がなく本件無効審判請求は不適法である。
(1)本件商標について
本件商標は,右部にだいだい色地による平屋建ての家の外観図形内に,最上部に白色の十字と,右上部に黒色の一段の稲妻状のクラック(ひび割れ)と,左から中央にかけて白色の「ドクトル」の文字と,その下方に「ドクトル」の文字と同書体でそれよりも大きな白色の「外壁さん」の文字と,上記「外壁さん」の「さ」の文字から右上方に向けて白色の虫眼鏡状図形を上記稲妻状のクラック(ひび割れ)を囲むように配置し,左部に頭部を右方向に傾け,右下方向を見ている双方の目はその視線が,右側に配置された平屋建ての家の外観図形内における白色の虫眼鏡状図形によって囲まれた上記稲妻状のクラック(ひび割れ)方向を向き,白衣を着て聴診器を持った,立体感を有するキューピー人形を配置してなる構成からなる。
本件商標は,左部に配置された白衣を着たキューピー人形の医師(ドクトル,本件商標左側図形)が,右部に配置された平屋建ての家(本件商標右側図形)の外壁における,虫眼鏡によって拡大された稲妻状のクラック(ひび割れ)を注視している構図からなるものである。
本件商標は,上記の外観から「白衣を着て聴診器を持った医師が外壁補修の要否を点検している観念」が生じる。
本件商標は,上記の外観及び観念から,本件商標右側図形の外観図形内に表示された「ドクトル」と「外壁さん」の文字部分と,相まって「ドクトルガイヘキサン」の称呼が生じる。
なお,本件商標は,本件商標左側図形のキューピー人形のみに着目して「キューピー」の称呼が生じることはない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は,外観全体から「白衣を着て聴診器を持った医師(すなわちドクトル)が外壁補修の要否を点検している観念」が生じる。
本件商標は,その外観及び観念から,本件商標右側図形内に表示された「ドクトル」と「外壁さん」の文字部分と,相まって「ドクトルガイヘキサン」の称呼が生じるものであって,本件商標と引用商標と観念及び称呼において類似するものではない。
(3)取引の実情を踏まえた上での全体的な考察及び本件商標に対するフランチャイジー(加盟店)の認識について
商標の類否判断は,当該商標について行わなければならないものであって,当該商標と異なる「垂れ幕」の使用態様が商標の類否判断に影響を及ぼすことはありえないことである。
また,商標の類否は,対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである」,「外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべき」であり,加盟店が持っている認識は商標の類否判断とは無関係である。
(4)その他
被請求人は,平成25年6月4日,ローズオニール社との使用許諾契約を締結することにより,契約書記載末尾記載の「ドクトル外壁さん」の使用許諾を得たものである(乙44)。
被請求人は,2015年(平成27年)3月1日,ローズオニール社と譲渡契約を締結し,「ドクターキューピー」のキャラクターの二次的著作権を譲り受けた(乙46)。
(5)商標中に法的に保護されない部分は除外して,商標の類否判断を行わなければならない。
引用商標を構成する,人形の図形と「KEWPIE」,「kewpie」の英文字,「キューピー」の片仮名は,上記1のとおり,商標法第4条第1項第7号(公序良俗違反)に該当するものであって商標法の保護を受ける法的利益を欠くものであり,引用商標において権利が認められないものであるから,商標の類否判断において,引用商標から除外しなければならない。
その結果,引用商標は,空虚な商標に帰することとなるから,引用商標と本件商標は類似しない。
(6)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,類似するものではないから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(1)上記2のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,観念,称呼において全く相違し,本件商標は,被請求人の主要な営業業務である,住宅塗装,外壁の建設工事や塗装工事事業への親和性が高いものであって,食品分野の商品や役務を想起させるものではない。
また,請求人が引用商標の周知性が認められると主張するマヨネーズ,ドレッシングその他の加工食品の製造販売の業務と,被請求人の主要な営業業務である住宅塗装フランチャイズ本部運営の業務,外壁の建設工事や塗装工事のフランチャイズ事業を含む「フランチャイズ事業の運営及び管理」とは,社会通念上著しく異なる業務である。
以上のとおりであるから,被請求人が本件商標を「フランチャイズ事業の運営及び管理」業務に使用したとしても,請求人による役務と混同するおそれはない。
(2)引用商標を構成する,人形の図形と「KEWPIE」,「kewpie」の英文字,「キューピー」の片仮名は,上記1のとおり,商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当するものであって商標法の保護を受ける法的利益を欠くものである。
(3)したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
被請求人は,「引用商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するから,法的保護を受ける利益がないものであり,請求人は本件無効審判請求の利害関係がなく本件無効審判請求は不適法であり却下されなければならない。」旨主張する。
そこで,被請求人が引用商標は,法的保護を受ける利益が無いとして挙げている点について検討する。
(1)他人の著作権との抵触について
商標法第29条は,「商標権者・・・は,指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様により・・・その商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは,指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。」と規定し,商標法における(商標を含む)標章の「使用」態様については,同法第2条第3項第1ないし第8号に限定的に列挙されているところ,無効審判請求及び審決取消訴訟の提起は,上記各号所定の行為のいずれにも該当しないから,他人の著作権と抵触することが商標登録の無効理由とはならない。
また,著作権は,特許権,商標権等と異なり,特許庁における登録を要せず,著作物を創作することのみによって直ちに生じ,また,発行されていないものも多いから,先行著作物を調査することは,極めて困難である。
さらに,このような先行著作物の調査等がされたとしても,依拠性の有無を認定するためには,認定困難な諸事情を認定する必要がある。
したがって,その使用が他人の著作権と抵触する商標であっても,商標法第4条第1項第7号に規定する商標に当たらないものと解するのが相当である。そして,このように解したとしても,その使用が商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触する商標が登録された場合には,当該登録商標は,指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により使用することができないから(商標法第29条),不当な結果を招くことはない。
(2)不正競争防止法違反について
商標法は,その使用が不正競争防止法第2条第1項第2号に規定する不正競争に当たる商標については,商標法第4条第1項第10号,同項第15号又は同項第19号の規定に該当する場合に登録拒絶及び無効の事由とすることにより,その登録を規律することを意図していると解するのが相当であって,その使用が不正競争防止法第2条第1項第2号に規定する不正競争に当たる商標が一律に商標法第4条第1項第7号に該当し登録拒絶及び無効とされるべきものと解することはできない。
(3)その他の条約等及び引用商標が剽窃的出願によって登録されたことにについて
被請求人は,引用商標が不適法であり却下されなければならない理由について,その他条約等に違反している及び引用商標が剽窃的出願によって登録された旨も述べているが,いずれも他人の著作権との抵触又は不正競争違反について述べているものであるから,引用商標は,上記(1)及び(2)と同様に無効の理由はない。
(4)請求人による国内及び海外での権利取得について
請求人が,我が国及び国外において商標登録を行っていることが直ちに不正の目的であるということはできない。また,このことが国際信義に反する行為であるともいえない。
さらに,請求人が自己の商標権に基づいてそれを行使することも不当であるとはいえない。
(5)小括
したがって,引用商標の登録は,不適法ではなく,被請求人の主張は採用できない。
以下,本案に入って審理する。
請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)請求人の製造に係る商品の販売状況
請求人の製造に係るマヨネーズ及びドレッシング類の生産量のシェアは,2007年(平成19年)ないし2012年(平成24年)及び2014年(平成26年)ないし2017年(平成29年)には50%を超えるものであり,販売額のシェアは,2010年(平成22年)ないし2012年(平成24年)には55%を超えるものであって,いずれも業界第1位である。
また,パスタソースの2011年(平成23年),2012年(平成24年),及び2015年(平成27年)ないし2017年(平成29年)の販売シェアは,業界第3位,雑炊・粥類の2011年(平成23年),2012年(平成24年)及び2015年(平成27年)の販売シェアは,業界第2位,2016年(平成28年)は,業界第3位,ベビーフードの2007年(平成19年)ないし2014年(平成26年)の販売シェアは,いずれも22%を超えるもので業界第2位,ソース類及び缶詰の2007年(平成19年)ないし2012年(平成24年)の販売シェアは業界第3位又は第4位である(甲25)。
(2)引用商標6を使用した広告
請求人は,2015年(平成27年)1月ないし2018年(平成30年)7月において,請求人の製造に係るマヨネーズについてテレビコマーシャルを行っており,その映像には引用商標6が表示されている(甲27)。また,当該コマーシャルの関東地区におけるのべ視聴率(一定期間流したCMごとの視聴率の合計)は,14903%である(甲27の10)。
請求人は,請求人の名称を冠したテレビ番組の放映を,1963年(昭和38年)から現在に至るまで行っている(甲27の11,甲29の1,職権調査)。
請求人は,2015年(平成27年)8月29日に朝日新聞,同年3月2日に日経MJ,2016年(平成28年)8月27日に朝日小学生新聞及び読売新聞,同月31日に朝日新聞及び読売新聞において,引用商標6を表示した広告を行った(甲28の1〜6)。
請求人は,2018年(平成30年)10月発売の家庭画報11月号,STORY11月号,ミセス11月号,3分クッキング(NTV・CBC)11月号,Oggi12月号において,引用商標6を表示した広告を行った(甲28の7)。
請求人は,バス及び電車に引用商標6を付して,広告を行った(甲30)。
(3)請求人のブランドイメージ
日経BP社「食のブランド」調査において,請求人は2004年(平成16年)は第1位,2005年(平成17年),2006年(平成18年)及び2009年(平成21年)は第3位,2008年(平成20年)及び2011年(平成23年)は第2位,2013年(平成25年)は第4位にランクインしている(甲31)。
日経リサーチによる企業ブランド知覚指数・消費者版ランキングにおいて,請求人は2003年(平成15年)及び2016年(平成28年)には第2位,2004年(平成16年)には第4位,2005年(平成17年)ないし2008年(平成20年)並びに2014年(平成26年)及び2015年(平成27年)には第1位となっている(甲32)。
(4)判断
上記(1)ないし(3)によると,請求人は本件商標の登録出願日及び登録査定日時において,我が国の食品関係の取引者及び一般消費者の間で,マヨネーズを中心とする調味料や加工食品を製造・販売する会社として著名であり,引用商標6は,請求人を出所として識別させる商標として著名であったものと認められる。
しかしながら,引用商標6は,食品関連分野以外の分野においても著名であることを認めるに足りる証拠はなく,また,請求人以外の者が,「キューピー人形」をモチーフとした商標を採用し,食品分野以外の商品及び役務に商標登録し,商品又は役務の広告等に使用していることは当庁において顕著な事実であるから,引用商標6は,食品関連分野以外の分野において著名であるとまでは認められない。
(1)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,左側に人形の図形(本件商標左側図形)を配し,右側にオレンジ色の背景色による家と思しき輪郭線の内部に「+」,「ドクトル○」(「○」の内部に黒色でくさび模様を表して成る。),並びに「外壁さん」の文字及び記号を白色で3段に表し,2段目の,当該「○」と3段目の「さ」の文字とを白色の直線で結合した図形(本件商標右側図形)を配した構成よりなるものである。
そして,本件商標左側図形と本件商標右側図形は,その間に空白を有し,色彩が異なり,視覚的に分離して観察されることに加え,本件商標左側図形及び本件商標右側図形(その構成中の文字部分を含む。)は,互いに観念的なつながりも見いだすことはできないから,これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難く,それぞれ独立して出所識別機能を有する要部であるというべきである。
したがって,本件商標は,その構成中,本件商標左側図形を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標(引用商標)と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
次に,本件商標左側図形は,その頭部の特徴により親しまれたキャラクターであるキューピー人形をモチーフとしたものと看取され(甲23,甲33),白衣を着て聴診器を持っていることから,医者の姿を模したものと認められる。
そうすると,本件商標左側図形は,「医者の姿をしたキューピー」の観念が生じるものの,特定の称呼が生じるものとは認められない。
(2)11号引用商標について
ア 引用商標1
引用商標1は,別掲2のとおり,黒色の背景色の2重楕円の中央に人形の図形を配してなるところ,当該人形の図形は,親しまれたキャラクターであるキューピー人形を表したものと認められるから,「キューピー人形」の観念を生じ,特定の称呼が生じるものとは認められない。
イ 引用商標2ないし引用商標5
引用商標2は,別掲3のとおり,人形の図形を配しその上部に「キューピー」の片仮名を,下部には「KEWPIE」の欧文字を表したものである。
引用商標3は,別掲4のとおり,人形の図形を配しその上部に「キューピー」の片仮名を表したものである。
引用商標4は,別掲5のとおり,人形の図形を配しその上部に「KEWPIE」の欧文字と「キューピー」の片仮名を2段に表した構成よりなるものである。
引用商標5は,別掲6のとおり,人形の図形を配しその下部に「kewpie」の欧文字と「キューピー」の片仮名を2段に表した構成よりなるものである。
そして,引用商標2ないし引用商標5に配された人形の図形は,親しまれたキャラクターであるキューピー人形を表したものであって,当該図形の上下に表されている「キューピー」の片仮名並びに「KEWPIE」及び「kewpie」の欧文字は,キューピー人形を表す「キューピー」,「KEWPIE」及び「kewpie」を,片仮名及び英語で表記したものと認められるから,引用商標2ないし引用商標5は人形の図形と文字部分とが一体となって「キューピー(人形)」を認識させるものである。
そうすると,引用商標2ないし引用商標5は,「キューピー人形」の観念が生じ,「キューピー」の称呼が生じるものと認められる。
(3)本件商標と11号引用商標との類否
ア 本件商標と11号引用商標の類否について検討すると,両者は,外観においては,その構成が異なるものであるから,相紛れるおそれのないこと明らかである。
本件商標の要部の一である本件商標左側図形と11号引用商標を比較すると,外観においては,本件商標左側図形がその頭部の特徴により親しまれたキャラクターであるキューピー人形をモチーフとしたものであり,11号引用商標の図形部分がキューピー人形を表したものとしても,両者は着衣の有無及び聴診器の有無の差異を有し,加えて,本件商標と引用商標2ないし引用商標5とは,文字の有無の差異をも有するから,本件商標左側図形と11号引用商標とは,相紛れるおそれのないこと明らかである。
イ 称呼においては,本件商標左側図形及び引用商標1から,特段の称呼が生じるものとは認められないから,両者は比較することができない。
また,本件商標左側図形から特段の称呼が生じるものとは認められないのに対し,引用商標2ないし引用商標5からは「キューピー」の称呼が生じるから,両者は,称呼上,相紛れるおそれはない。
ウ 観念においては,本件商標左側図形からは「医者の姿をしたキューピー」の観念が生じるのに対し,11号引用商標からは「キューピー人形」の観念が生じるものであるから,本件商標と11号引用商標とは,相紛れるおそれはない。
エ そうすると,本件商標と11号引用商標とは,引用商標1について称呼上比較できないものとしても,その他,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上のとおり,本件商標と11号引用商標とは,非類似の商標というべきであるから,本件商標の指定役務と11号引用商標の指定役務が類似の役務であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)本件商標と引用商標6の類似性の程度
引用商標6は,別掲7のとおり,人形の図形からなり,11号引用商標に係る人形の図形部分と同一のものである。
そうすると,本件商標と引用商標6との類似性の判断においては,上記3と同様の判断になるものであるから,本件商標と引用商標6は非類似の商標であって,別異の商標というべきであって,本件商標と引用商標6の類似性の程度は低いものである。
(2)引用商標6の周知性及び独創性の程度
上記2のとおり,引用商標6は,請求人の業務に係るマヨネーズを中心とする調味料や加工食品の商標として食品関連分野の需要者の間に広く認識されているものと認められるものの,引用商標6は,食品関連分野以外の分野において著名であるとまでは認められない。
また,引用商標6は,よく知られたキャラクターである「キューピー人形」を表したものであり,請求人以外の者が「キューピー人形」をモチーフとした商標として採用し,商品又は役務の広告等に使用しているから,その独創性が高いとはいえない。
(3)商品及び役務の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性
上記第2のとおり,本件請求役務は,第37類「塗装工事,リフォーム工事,建設工事,建築工事に関する助言」であるところ,これらの役務は,恒久的な建築物の建設において請負人又は下請け人が提供する役務及びそれに関する助言である。
これに対し,引用商標6が使用され需要者に広く認識されている商品は,マヨネーズを中心とする食品であって,食品会社等によって提供され,人が食用とするものである。
そうすると,本件請求役務と引用商標6が使用されている食品とでは,その提供者,用途及び機能が全く異なるものであり,役務の提供方法と商品の販売経路も異なるものであるから,本件請求役務とマヨネーズを中心とする食品との関連性の程度及び取引者,需要者の共通性は低いものである。
(4)出所混同のおそれ
以上のとおり,本件商標と引用商標6とは,その類似性の程度は低いものであり,引用商標6は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係るマヨネーズを中心とする食品を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められるものの,食品関連分野以外の分野において著名であるとは認められない。
そして,引用商標6は,その独創性が高くはなく,本件請求役務と引用商標6が使用される商品との関連性の程度及び取引者,需要者の共通性は低いものといえる。
そうすると,本件商標は,本件商標権者が本件請求役務に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,引用商標6を想起又は連想するようなことはないというべきであり,請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について,混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(1)請求人は,本件商標より「キューピー」の称呼及び「キューピー」又は「キューピー人形」の観念を生じる旨主張する
確かに,本件商標左側図形はその頭部の特徴により親しまれたキャラクターであるキューピー人形をモチーフとしたものであることは認め得るが,キューピー人形は,親しまれたキャラクターであって,様々な特徴を有するキューピー人形が販売されていること及びキューピー人形には様々な服等を着せることも行われているところ,それらのキューピー人形においては,単なるキューピー人形と区別するために「○○キューピー」(「○○」には,当該人形の特徴等を表す文字が入る。)と称され,区別して識別されている実情が認められる(甲23の1,2)。
そうすると,本件商標左側図形は,「医者の姿をしたキューピー」と看取されるものであるから,他の様々なキューピー図形等とは,区別して認識されるとみるのが相当である。
(2)請求人は,「食品」は一般消費者を対象とし,かつ,全ての人の利用に供するものを対象とするという特性を有しており,種々の産業分野の中で,需要者の範囲は最も広いといえるから,そこには当然に建物の建設・塗装に係る需要者も含まれる旨主張する。
しかしながら,例え食品の対象が一般消費者で需要者の範囲が広いとしても,上記4(3)のとおり,両者はその提供者,用途及び機能が全く異なるものであって,役務の提供方法と商品の販売経路が異なるものであり,関連性の程度及び取引者,需要者の共通性は低いものであるから,本件請求役務の取引者,需要者が含まれるとはいえない。
(3)したがって,請求人の主張はいずれも採用することはできない。
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすべきでない。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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