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Trademark Appeal Case

企業スローガンの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−16791(T2018−16791/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,「より良い未来を次世代へ」の文字を標準文字で表してなり,別掲1に掲げる第7類,第9類,第11類,第12類及び第35類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成29年7月3日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要旨)

原査定は,「本願商標は,『より良い未来を次世代へ』を標準文字で表してなるところ,全体として『より良い未来を次世代へ届けるために』のような意味合いを認識,理解させるものであり,また,『次世代』,『未来を』あるいは『より良い』等の文字が,企業の事業の遂行における企業理念や公益法人等の施策を行う際に,一般的に使用されていると認められる。

そうすると,本願商標をその指定商品又は指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者は,事業の遂行における企業理念や公益法人等における施策を表したものと理解するにとどまり,自他商品又は自他役務の識別力を有するものとはいい難いため,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標といわざるを得ない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲2に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和元年8月29日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見

請求人は,上記第3の通知に対して,要旨以下のとおり,意見を述べた。

1 証拠調べ通知書で提示された10件の引用情報は,「より良い未来を次世代へ」等の文字(フレーズ)並びに「より良い未来」及び「次世代(次の世代)」等の文字が,各企業の会社情報や企業概要等のウェブサイトの中で,企業理念や活動方針等を説明する文章中に用いられているようだが,それらはあくまでも当該文章中の一部分として使用されているにすぎず,商標としての使用として客観的に認識され得るものではない。

2 本願商標は,2017年(平成29年)1月から請求人のブランドスローガンである「Crafting the Core」に対応する日本語のブランドメッセージとして,請求人ウェブサイト・テレビCM・新聞雑誌広告・空港看板広告等の自社企業広告において,日本全国で大々的に使用されている。

3 本願商標については,単なる企業理念や経営方針等を表示するものを超えた請求人の「ブランドメッセージ」として,本願指定商品又は指定役務について十分に自他商品役務識別力を発揮し得る商標として我が国の取引者・需要者に把握・認識され得る。よって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当しない。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第6号該当性

(1)本願商標について

本願商標は「より良い未来を次世代へ」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「より」の文字は,「(多く形容詞・形容動詞の上に付けて)それまでの程度を越えて。いっそう。さらに。もっと。」を,「良い」の文字は,「物事が質的に他よりすぐれまさっている。すぐれている。上等である。」を,「未来」の文字は,「過去・現在とともに時の流れを三区分した一つで,まだ来ていない部分。」の意味を有するものである。

そして,構成中後半の「次」の文字は,「順序がすぐあと(のもの)」の意味を,「世代」の文字は,「親・子・孫と続いてゆくおのおのの代」の意味を,「へ」の文字は,「(助詞)作用の向かって進む目標地点・方向を示す。...の方に。...に向かって。」の意味をそれぞれ有するものである(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)。

そうすると,本願商標全体としては,それぞれの構成文字の語義に相応して,「さらに良い未来を次の世代へ」ほどの意味合いを容易に理解させる記述的な文字である。

(2)取引の実情について

一般に,多くの企業は,企業活動に際して,企業理念や経営方針等を策定し,企業の宣伝広告の一環として,ウェブサイトやインタビュー記事などにおいて,当該企業理念や経営方針等を会社や経営者からのメッセージとして表明することを普通に行っている。

そして,当審が職権で調査したところ,別掲2のとおり,本願商標と同一である「より良い未来を次世代へ」及び本願商標と類似する「より良い未来を次世代に」又は「より良い未来を次の世代に」の表現,並びに「より良い未来を」及び「次世代(次の世代)」を組み合わせた表現が,「つなぐ」,「届ける」,「残す」又は「引き継ぐ」等の動詞を伴い,企業理念や活動方針等として一般的に採択されている実情がある。

(3)小括

以上よりすると,本願商標は,「さらに良い未来を次の世代へ」ほどの意味合いを容易に理解させる記述的な文字であること,及び本願商標と同一又は類似する文字が「つなぐ」,「届ける」,「残す」又は「引き継ぐ」等の動詞を伴い,企業理念や活動指針等を表す際に一般的に使用されている。

そうすると,本願商標に接する取引者・需要者は,本願商標を自他商品役務の識別標識として認識するのではなく,さらに良い未来を次の世代につなぐ(届ける,残す,引き継ぐ等)ことを目標としている企業等の企業理念や活動方針等の一種と理解するにすぎないものである。

また,本願商標は,標準文字で表してなるから,その態様上顕著な特徴は認められない。

そうすると,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標というべきである。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。

2 請求人の主張について

(1)請求人は,証拠調べ通知書で提示された各引用情報の「より良い未来」及び「次世代」等の使用例は,あくまでも,企業理念や活動方針等を説明する文章中の一部分として使用されているにすぎず,商標としての使用として客観的に認識され得るものではない旨主張する。

しかしながら,「より良い未来」及び「次世代」の文字が,各企業の企業理念や活動方針等を表す際に一般的に使用されている表現であることからすると,本願商標に接する取引者・需要者は,本願商標が上記の表現と同様に企業の企業理念や活動方針等を表示するものと理解するにすぎないものであり,商標としての使用例か否かは問題とならない。

(2)請求人は,本願商標からは,「より良い未来を次世代へ贈る」程度の意味合いが看取され得るにすぎないと考えるのがごく自然だから,「より良い未来を次世代へ届けるために」といった意味合いを端的に認識・理解させるにすぎないという原査定の拒絶の理由はその解釈にやや飛躍がある旨主張する。

しかしながら,「贈る」の文字は「本来は、意志的に後からついて行く意。転じて、後から心をこめて人に物をとどける意。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)であることから,「より良い未来を次世代へ贈る」と「より良い未来を次世代へ届けるために」とは,ほぼ同義の印象を与えるものといわざるを得ない。

(3)請求人は,本願商標は,2017年(平成29年)1月から請求人のブランドスローガンである「Crafting the Core」に対応する日本語のブランドメッセージとして,請求人ウェブサイト・テレビCM・新聞雑誌広告・空港看板広告等の自社企業広告において,日本全国で大々的に使用されており,2017年(平成29年)及び2018年(平成30年)における宣伝広告費用は約5億円にあがる旨主張する。

しかしながら,提出された証拠によっては,2017年(平成29年)1月に本願商標がブランドメッセージとして採用されたことは確認できるとしても,広告規模,頻度,費用等を客観的に裏付ける証拠の提出はなく,本願商標が使用をされた結果,その指定商品及び指定役務との関係において,日本全国における取引者・需要者の間において広く知られていると認めることはできない。

(4)請求人は,過去の商標の登録例を挙げて,本願商標もそれらと同様に,登録されるべきである旨主張する。

しかしながら,過去の登録例に関わらず,商標の識別性の有無の判断は,商標の構成文字や構成態様等に則して,事案に応じて判断すべきであるから,請求人が主張する過去の登録例によって,本願商標の上記判断が左右されるものではない。

(5)よって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。

3 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するから,これを登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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