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Trademark Appeal Case

商標の不使用意思

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2019−890039(T2019−890039/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第6022380号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6022380号商標(以下「本件商標」という。)は,「mamaro」の文字を標準文字により表してなり,平成29年3月28日に登録出願,第19類「簡易更衣室組立セット(金属製のものを除く。),簡易授乳室組立セット(金属製のものを除く。),建造物組立てセット(金属製のものを除く。)」を指定商品として,同年12月25日に登録査定,同30年2月23日に設定登録されたものである。

第2 請求人標章

請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する標章(以下「請求人標章」という。)は,「mamaro」の文字からなり,同人が「移動可能な設置型個室タイプの授乳室(以下「可搬設置型授乳室」という。)」に使用しているとするものである。

第3 請求人の主張

請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)並びに資料1及び資料2(以下,資料1及び資料2を甲第25号証及び甲第26号証と読み替える。)を提出した。

1 無効事由

本件商標は,商標法第3条第1項柱書に違反し,同法第4条第1項第7号に該当するから,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。

2 無効原因

(1)商標法第3条第1項柱書違反について

ア 商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,「少なくとも登録査定時において,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標」をいう(知財高判平成24年5月31日判時2170号107頁)。

本件商標は,以下に記載する事実から,登録査定時において,現に被請求人の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標とはいえず,むしろ,被請求人は,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思もなく,本件商標の登録出願を行ったといえるため,本件商標は,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」といえないことは明らかである。

イ 本件商標に関して

(ア)請求人について

請求人は,授乳室及びおむつ替え施設の検索,投稿,地図上での表示,及び,利用者同士での情報交換ができるスマートフォン等の情報端末向けアプリケーションソフトウェア「Baby map」事業(以下「Baby map事業」という。)の運営,並びに,可搬設置型授乳室「mamaro」事業(以下「mamaro事業」という。)の運営等を行っている株式会社である(甲2〜甲16)。

(イ)mamaro事業について

請求人は,Baby map事業を運営する中で,そもそも授乳室やおむつ替え施設が不足していることに気付き,その解決策として可搬設置型授乳室の着想を得た。これを事業という形にしたのがmamaro事業であるが,かかる事業をより拡大するため,平成28年11月16日に横浜市経済局主催のピッチイベントである第3回横浜ベンチャーピッチ(以下「横浜ベンチャーピッチ」という。)において,mamaro事業の内容及び請求人標章を初めて公表した(甲6,甲7)。可動式であるため,既存の施設に手軽かつ早期に授乳室を増設できる等,これまでにない画期的な商品であったことから,mamaro事業は大きな注目を浴び,横浜ベンチャーピッチでの公表以降も,平成29年3月23日,WEBメディア「Techcrunch」(甲8),同日,請求人のホームページ内のプレスリリース(甲9),同年6月29日,京浜急行株式会社のホームページ内のニュースリリース(甲10),同年9月8日,東京新聞夕刊(甲11),同年10月5日,「ドリームゲート」のウェブサイト(甲12),平成30年1月26日,京橋経済新聞(甲13),同年2月5日,長崎県大村市長園田裕史氏のブログ(甲14),同月6日,長崎新聞紙面版(甲15),同月28日,日本経済新聞電子版(甲16)等,様々なメディアにおいて事業の内容及び請求人標章が記事にされ,掲載されていった。

そして,mamaroは,平成29年6月14日における京急ストアサニーマート店への導入を皮切りに(甲10),現在に至るまで累計111台(イベント等で設置し,現在撤去済みのものも含む。)が全国各地の商業施設や公共施設に導入されている。

(ウ)被請求人による本件商標の登録出願

請求人は,上記のとおりmamaro事業の内容が評価され,その設置が決まる中,その設置に先立って商標登録出願をしておくべき必要性を認識し,請求人標章の商標登録出願をしようとしたところ,平成29年3月28日,請求人とは一切面識もない被請求人が,指定商品を第19類「簡易更衣室組立セット(金属類のものを除く。),簡易授乳室組立セット(金属製のものを除く。),建造物組立セット(金属製のものを除く。)」として,本件商標は登録出願され,商標登録された(甲1)。

そもそも請求人が事業展開を行う可搬設置型授乳室の名称である「mamaro」は,授乳等の育児に携わる女性を指し示す「mama」に部屋を意味する「room」の接頭の「ro」を組み合わせた,辞書にも記載されていない独創的な造語である。そのように独創的な可搬設置型授乳室の名称である「mamaro」と本件商標は同一であるが,これは偶然同一になったとは考え難い。

また,可搬設置型授乳室は,請求人が国内で初めて開発したものであり,誰もがその着想を得られるようなありふれた商品ではなく,請求人が独自の着想により想到した極めてイノベーション性の高い製品である。

特許情報プラットフォームJ−PlatPatには,「授乳室」に関連する指定商品は見受けられず(甲17),請求人の可搬設置型授乳室は,極めて特徴的な製品であることは明らかである。しかしながら,本件商標にかかる指定商品のうち「第19類簡易更衣室組立セット(金属製のものを除く。),簡易授乳室組立セット(金属製のものを除く。)」は,請求人の可搬設置型授乳室と一致しており,これも偶然とは考え難い。

そして,本件商標の登録出願は,横浜ベンチャーピッチにおいてmamaro事業の内容及び請求人標章が公表された平成28年11月16日からそれほど間がない,同29年3月28日になされている。当該出願までの間に請求人がmamaro事業の内容及び請求人標章を公表したのは,横浜ベンチャーピッチでの公表,2017年3月23日付「Techcrunch」での記事掲載,及び,同日付請求人ホームページ内のプレスリリースでの記事掲載以外になく,「Techcrunch」での記事掲載,及び,請求人ホームページ内のプレスリリースでの記事掲載は本件商標の登録出願の出願日と近接しており,その時点でmamaro事業の内容や請求人標章を把握したところで,本件商標の登録出願の出願日に出願を行うことは困難であることを踏まえると,被請求人は横浜ベンチャーピッチに出席し,そこでmamaro事業の内容及びその価値を認識して,本件商標について剽窃的に出願を行ったために本件商標と請求人標章が一致するに至ったと推察される。

(エ)請求人が送付した書面に被請求人は何ら反応を示さなかったこと

請求人は,本件商標の登録出願に遅れて,平成29年8月7日,請求人標章について,指定商品及び指定役務を「第19類 保育のための設置型個室,授乳・離乳食・おむつ交換・着替え等,乳幼児ケアのための設置型個室,可搬式建造物組み立てユニット(金属性のものを除く)」及び「第43類 保育のための設置型個室の貸与,授乳・離乳食・おむつ交換・着替え等,乳幼児ケアのための設置型個室の貸与」として,登録出願を行った(甲19の1)。

しかし,本件商標に類似していることを理由に,平成30年6月1日付け拒絶理由通知書が発送されている(甲19の2)。

そこで,請求人は,平成30年8月6日,被請求人に対して,「ご連絡(商標権について)」と題する書面を内容証明郵便により送付し,被請求人が本件商標を事業で使用する予定がある場合にはアサインメントバック手続を,被請求人が事業で使用する予定がない場合には譲渡を依頼した(甲20の1)。

しかしながら,被請求人からは何ら回答はない。

被請求人が本件商標を利用して現に事業を行っていたり,将来的に事業を行う計画を有していたのであれば,請求人からのアサインメントバック手続や譲渡の依頼に対しては,通常,被請求人は,金銭の支払いを受ける代わりに応じるか,または,金銭の支払いを拒んだ上で,請求人標章の使用を中止するよう求めるか,いずれかの反応をすることが通常である。

さらに,請求人は,令和元年11月11日,被請求人に対して,「ご連絡(商標権について)」と題する書面を内容証明郵便により送付し,被請求人が本件無効審判事件について争う意向がない場合には本件商標権の放棄による権利抹消登録手続を依頼した(甲25)。

しかし,被請求人からは何ら回答は行われなかった。

そうすると,被請求人はいずれの連絡にも何ら反応しなかったのであるから,むしろ,被請求人には,本件商標を利用して事業を行っておらず,また,本件商標を利用して事業を行う計画がないにもかかわらず,本件商標の登録出願をしたといった事情があったことが推察される。

(オ)剽窃的な商標登録出願について

請求人は,剽窃的商標出願一覧のとおり,本件商標を含め,4種類の自社商品名称及びサービス名称に係る商標を第三者によって剽窃的に商標登録出願されている。

ウ 小括

以上の事実を踏まえると,本件商標及びその指定商品と請求人標章及びmamaro事業の内容とが完全に一致しているだけでなく,本件商標の登録出願と同日に請求人が提供する別のサービスに係る商標が被請求人により登録出願されていること等を併せると,本件商標の登録出願は,およそ偶然なされたものではないことは明白である。また,被請求人が本件商標を自身の事業に利用する目的で登録出願していたのであれば,通常とるであろう行動を被請求人がとっていないこと,そして,被請求人が,本件商標を使用して現に事業を行っていること及び何らかの事業を行う計画を有していることを示す証拠等は請求人が確認する限り見当たらないこと等からすると,本件商標は,本件商標の登録査定時において,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標とはいえず,むしろ,被請求人は,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思もなく,本件商標の登録出願を行ったといえる。

したがって,本件商標は,第3条第1項柱書に該当せず無効である。

(2)商標法第4条第1項第7号に該当すること

既に述べたように,本件商標及びその指定商品と請求人標章及びmamaro事業の内容が同一であること,また,請求人がmamaro事業の内容及び請求人標章を公表した後,それほど間がない時期に本件商標の登録出願がなされていること,被請求人は,本件商標以外にも請求人が行う事業に係る商標の登録出願を行っていることから,本件商標は,不正な目的をもって剽窃的に登録出願されたものであることは明らかである。

そのため,本件商標が公序良俗に反するものであり,商標法第4条1項第7号に該当するため無効である。

(3)まとめ

以上より,本件商標は,商標法第3条第1項柱書に違反し,また,同法第4条第1項第7号に該当することから無効である。

第4 被請求人の答弁

被請求人は,請求人の主張に対し何ら答弁していない。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項柱書について

商標法第3条第1項柱書は,商標登録要件として,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを規定するところ,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,少なくとも登録査定時において,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知財高裁平成24(行ケ)第10019号同年5月31日判決参照)。

2 事実認定

請求人提出の甲各号証,同人の主張によれば次の事実が認められる。

(1)請求人は,授乳室やオムツ替え施設の情報が検索・投稿でき,その結果を地図上に表示する機能を有するスマートフォン等の情報端末向けアプリケーションソフトウェア及び移動可能な設置型個室タイプの授乳室の提供,開発といった育児関連サービス事業を行っている(甲5,甲7〜甲16)。

(2)請求人は,平成28年11月16日に開催された横浜市経済局主催(運営委託先:トーマツベンチャーサポート株式会社)の「第3回横浜ベンチャーピッチ」において,可搬設置型授乳室について請求人標章に言及し事業概要を公開した(甲6,甲7)。

(3)WEBメディア「Techcrunch」において,2017(平成29)年3月23日付けで,請求人標章とともに可搬設置型授乳室についての記事が掲載された(甲8)。

(4)請求人の2017(平成29)年3月23日付けプレスリリースにおいて,株式会社ホープと包括的資本業務提携を締結するとの記事とともに設置型授乳室について請求人標章が掲載された(甲9)。

(5)京浜急行株式会社の2017(平成29)年6月29日付けニュースリリースにおいて,申立人の開発した可搬設置型授乳室を同年7月1日より京急グループの商業施設「京急サニーマート」内に試験的に設置するとの記事とともに請求人標章が掲載され(甲10),東京新聞の同年9月8日付け夕刊の記事(甲11)及び「ドリームゲート」のウェブサイトにおける同年10月5日付けの記事(甲12)においても,申立人の開発した可搬設置型授乳室が同年7月1日より上記商業施設内に設置されたとの記事とともに請求人標章が掲載された。

(6)京橋経済新聞において,2018(平成30)年1月26日付けで,申立人の開発した可搬設置型授乳室が同年1月より大阪・森ノ宮のショッピングモール「もりのみやキューズモールBASE」内に設置されたとの記事とともに請求人標章が掲載された(甲13)。

(7)長崎県大村市長園田氏のブログにおける2018(平成30)年2月5日付け記事(甲14)及び長崎新聞の同月6日付け記事(甲15)において,申立人の開発した可搬設置型授乳室を同年2月5日より大村市の市民交流プラザ内に設置したとの記事とともに請求人標章が掲載された。

(8)日本経済新聞電子版において,2018(平成30)年2月28日付けで,スルガ銀行は,申立人の開発した可搬設置型授乳室を同年3月1日より横浜市のたまプラーザ支店内に設置するとの記事とともに請求人標章が掲載された(甲16)。

(9)請求人は,2018(平成30)年8月6日付けご連絡(商標権について)と題する書面をもって,本件商標権者が本件商標権を事業で使用する予定(または,既に使用している)の場合には,本件商標権のアサインメントバック手続について,本件商標権者が本件商標権を事業で使用する予定のない場合には,本件商標権の請求人への譲渡について,本件商標権を事業で使用する予定(または,既に使用している)の場合には,その具体的内容や事業の進捗状況について,回答を求める内容証明郵便物を本件商標権者に送付した(甲20)。

この書面に対し,本件商標権者は,請求人に対し,何ら回答していない。

(10)請求人は,2019(令和元)年11月11日付けご連絡(商標権について)と題する書面をもって,本件無効審判について特に争う意向がない場合,本件商標権の放棄による権利抹消登録手続について,回答を求める内容証明郵便物を本件商標権者に送付した(甲25)。

この書面に対し,本件商標権者は,請求人に対し,何ら回答していない。

3 本件商標と請求人標章との類否

本件商標は,上記第1のとおり,「mamaro」の文字を標準文字により表してなり,平成29年3月28日に登録出願されたものである。

他方,請求人標章は,上記第2のとおり,「mamaro」の文字からなるものである。

そうすると,本件商標と請求人標章とは,「mamaro」のつづりを共通にするものであるから類似の商標であること明らかである。

また,「mamaro」の文字は,辞書等に掲載がない一種の造語と認められるものである。

4 商標法第3条第1項柱書違反

上記2及び3によれば,(1)請求人は,請求人標章を「可搬設置型授乳室」に使用していること,(2)請求人標章は我が国において本件商標の登録出願の日前からWEBメディア「Techcrunch」及び請求人のプレスリリース記事に掲載されていたこと,(3)本件商標と請求人標章は類似の商標であること,(4)請求人標章は造語であること,(5)本件商標権者が現在まで本件商標を使用したことが確認できないこと,(6)本件商標権者は,請求人からの本件商標権を事業で使用する予定(又は,既に使用している)の場合又は事業で使用する予定のない場合の交渉による解決の提案についての要請,本件商標権を事業で使用する予定(又は,既に使用している)の場合の具体的内容や事業の進捗状況についての要請,本件商標権の放棄による権利抹消登録手続についての要請のいずれに対しても何ら回答していないこと,が認められる。

これらの事情を総合すると,本件商標権者は,他人(請求人)が請求人標章を使用していることを知ったうえで,請求人標章と明らかに類似する本件商標を登録出願したものであって,本件商標をその指定商品に使用をしている,又は将来使用する意思を有するとは認められないと判断するのが合理的である。

そして,本件商標権者は請求人の主張に対し何ら答弁していない。

そうすると,本件商標は,少なくともその登録査定時において,本件商標権者が現に自己の業務に係る商品又は役務について使用をしている商標にも,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標にも当たらず,本件商標の登録は,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に関して行われたものとは認められず,商標法第3条第1項柱書の規定に違反するといわなければならない。

5 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項柱書の規定に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきである。

付言するに,当審は,本件商標の登録は,審判請求人が主張する商標法第4条第1項第7号には該当しないものと判断する。

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