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Trademark Appeal Case

色彩商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−3370(T2018−3370/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第35類及び第36類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成27年4月1日に色彩のみからなる商標として登録出願され、その後、指定役務については、原審における同28年2月10日付け及び同年9月13日付けの手続補正書並びに審判請求と同時に提出された同30年3月8日付けの手続補正書により、最終的に、第36類「インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「役務の提供の用に供する物や広告の装飾等に使用される色彩は、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。そして、本願の指定役務を取り扱う業界においては、本願商標のような橙色の色彩が、役務の提供の用に供する物や広告の装飾等として使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定役務の提供の用に供する物や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物や広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と判断するのが相当である。また、提出された証拠からは、本願商標が、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成30年10月31日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見の要点

請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。

(1)請求人が運営するような全国規模で種々の取引形態の不動産物件を掲載する一定規模以上の不動産総合ポータルサイトは、掲載物件数が常時100万件を下ることはないため、日本全国の不動産情報を網羅しているといって差し支えなく、不動産物件を探す者はまず初めに、希望する情報が手に入る確率が高いことを期待して、これらの不動産総合ポータルサイトを介して不動産情報にアクセスするのが近時の取引の現実である。

(2)我が国において管理・運営されている一定規模以上の不動産ポータルサイトといった分野においては、特段強い識別力を有する橙色とその他の緑色、濃青色、紅赤色といったようにすみ分けができている。そのため、このような不動産ポータルサイトに接する取引者、需要者は、橙色=請求人ウェブサイトと即座に認識、理解をするのが実情である。

(3)そうすると、証拠調べ通知において挙げている使用例は、いずれも一定規模以上の不動産ポータルサイトとは関連性が極めて薄いか、又は、一切関係のないものといわざるを得ず、これらの事実をもとに、本願商標は自他役務識別力が欠如するとの認定、判断することは、的が外れているものといわなければならない。

(4)いずれのウェブサイトも不動産総合ポータルサイトといえるほどの規模を有しておらず、我が国を代表する不動産総合ポータルサイトの規模には到底及ばず、また、請求人が想定する当業者とは異なり、消費者も不動産総合ポータルサイトと同列視することもない。そのため、請求人ウェブサイト上の本願商標と当該使用例とは、根本的、かつ、本質的に異なるものといわなければならない。

(5)そうすると、このような使用例は、本願商標と事案を全く異にするものといわざるを得ず、本願商標が本来有する自他役務識別力の存在に影響を与えることはない。

5 当審の判断

(1)本願商標について

本願商標は、別掲1のとおり、色彩のみからなる商標であって、橙色(RGBの組合せ:R237,G97,B3)のみからなるものであり、第36類「インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供」を指定役務とするものである。

(2)取引の実情について

役務の提供の用に供する物や広告に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上のために採択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。

そして、役務の提供の用に供する物や広告には、様々な色彩が用いられており、本願商標の色彩に近似する色彩についても、原審で示した事実のほかに、別掲2のとおり、本願の指定役務と関係の深い業界において、ウェブサイトに使用されている実情がある。

(3)請求人による本願商標の使用について

請求人は、「本願商標は、請求人の業務に係る役務、すなわち『インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供』を表示するものとして、需要者又は取引者の間に広く知られていることから、我が国において既に周知・著名性を獲得し、その周知・著名性は現在においても継続している。」旨主張し、証拠として、参考資料1ないし参考資料32を提出しており、これらの証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 請求人について

請求人は、1995年(平成7年)に創業した会社に端を発し、1997年(平成9年)に請求人の前身である株式会社ネクストを設立し、2017年(平成29年)に現社名に変更するまでの約23年間にわたって我が国の不動産情報を提供してきた企業である。

イ 本願商標の使用状況及び使用開始時期について

(ア)請求人は、2006年(平成18年)から、請求人の管理・運営する不動産・住宅情報等を提供するウェブサイトにおいて、本願商標と同じ色彩と認識される橙色(以下「本願橙色」という。)を使用している(参考資料2)。

(イ)請求人は、複数のテレビ局において、本願橙色を使用したテレビCMを放映している(参考資料5、6、27)。

(4)商標法第3条第1項第6号該当性について

上記(2)によれば、橙色の色彩のみからなる本願商標は、役務の魅力向上のために使用される色彩と認識されるものであって、また、本願商標と近似する色彩が、請求人以外の者によって、ウェブサイトに使用されていることからすれば、何人もその使用を欲するといい得るものであり、これを一私人に独占させることは妥当ではない。

そして、上記(3)によれば、請求人は、2006年(平成18年)から、請求人の管理・運営する不動産・住宅情報等を提供するウェブサイトにおいて、本願橙色を使用しており、複数のテレビ局において、本願橙色を使用した請求人のテレビCMを放映していることが認められる。

しかしながら、2006年当時のウェブサイトでの本願橙色の使用態様は、白色を背景としたウェブサイトに、小さなアイコンや図形などの色彩として本願橙色が使用されており、本願橙色以外にも青色や黄色などの色彩も使用されていることから、本願橙色のみが目立つ態様で使用されているとはいえないものであり、その他、現在に至るまで請求人のウェブサイトにおいて本願橙色を継続して使用してきた事実を確認できる証拠の提出はない。

また、テレビCMに本願橙色を使用したことが確認できる証拠は、参考資料27の静止画2枚のみであって、当該CMの全体の内容も不明であり、かつ、その静止画での本願橙色の使用も、図形や「LIFULL」、「HOME’S」などの文字等の色彩として使用されているものであるから、本願橙色のみが独立して出所識別機能を有するものとして強く印象付けられるものとはいい難い。

そうすると、これらの証拠からは、取引者、需要者をして、本願商標が何人かの業務に係る役務であることを認識させるということはできず、本願商標の色彩についての需要者の認識を客観的に把握することもできないことから、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至ったものとは認められない。

その他、提出された証拠をみても、本願商標のみが取引者、需要者において、請求人の役務の出所を表示するものとして、又は自他役務の識別標識として認識されていると認めるに足りる事実は見いだせない。

以上のことからすると、本願商標は、橙色の色彩のみからなる商標であるところ、その指定役務との関係において、一私人による独占使用が妥当でないことに加え、請求人の使用により識別力を獲得したとも認められないものであるから、これを本願の指定役務に使用しても、これに接する需要者は、その役務の提供の用に供する物や広告等に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、これを役務の出所を表示するものとして、又は自他役務を識別するための標識として認識することはないというべきである。

したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(5)請求人の主張について

ア 請求人は、自社の第15期ないし第22期までの「株主通信」の表題のある資料(参考資料7〜12、28、29)を提出し、「過去8年間では単年で100億円以上、累計1,300億円以上もの売上を計上している。特に、直近の3年においては圧倒的な成長を遂げており、平成29年度においてはさらなる成長が期待されるものである。このように請求人ウェブサイトは、我が国における不動産ポータルサイトのトップブランドとしての確固たる地位を築いている。そのため、この請求人ウェブサイトついて使用され現に業務上の信用が表彰されている本願商標は、需要者又は取引者の間においては、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、広く一般に知られており既に周知著名性を優に獲得しているものといわなければならない。」旨主張している。

しかしながら、提出された資料からは、その売上高が、本願の指定役務に係るものであるのか確認することができず、かつ、本願商標の使用状況も不明であるから、需要者の認識の程度を推し量ることができない。

したがって、請求人の上記主張は採用できない。

イ 請求人は、「本願商標は、本願指定役務『建物の貸借の代理又は媒介他役務』についても、需要者又は取引者の間において請求人の業務に係る役務を表示するものとして、広く一般に知られており既に周知著名性を優に獲得しているものといわなければならない。」旨主張している。

しかしながら、上記1のとおり、請求人は本願の指定役務を、審判請求と同時に提出された平成30年3月8日付けの手続補正書により、第36類「インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供」のみに補正しているものであるから、 上記主張は失当である。

ウ 請求人は、平成30年7月20日付けの上申書に対する手続補足書において、株式会社博報堂が調査・報告した「『オレンジ色』と『不動産・住宅情報サイト名称』の関係性調査について」と題する本願商標に関する需要者の認識度調査(参考資料30)を提出し、上記上申書において、「本願商標に接する需要者又は取引者の多くが、本願商標を単に役務の提供の用に供する物又は広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまらず、請求人の業務に係る役務、すなわち、『インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供』であることを直感的に認識、理解するものである。」旨主張している。

しかしながら、当該認識度調査は、「不動産・住宅情報サイト」の名称として、請求人のウェブサイトの名称である「LIFULL HOME’S」や「HOME’S」の名称をフリーアンサーで回答した者に対しての本願商標の認識度調査であり、本願商標に対する需要者全体の認識を調査した結果とはいえないものであるから、採用できない。

エ 請求人は、平成30年7月20日付けの上申書で、「自らが仲介可能な不動産情報に限って掲載するサイトは、『インターネット上に設置された不動産に関する情報サイト』であって『インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイト』とは異なり、需要者も異なる。『インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイト』に係る本願商標の判断を行う際に、『インターネット上に設置された不動産に関する情報サイト』における色彩の使用事例を参照することは失当である。」旨主張している。

しかしながら、上記請求人の主張を裏付ける具体的な証拠は提出されておらず、請求人の独自の主張といえるものであるから、採用できない。

オ 請求人は、平成30年10月31日付け証拠調べ通知書に対する意見書において、「我が国において管理・運営されている一定規模以上の不動産ポータルサイトといった分野においては、特段強い識別力を有する橙色とその他の緑色、濃青色、紅赤色といったようにすみ分けができている。そのため、このような不動産ポータルサイトに接する取引者、需要者は、橙色=請求人ウェブサイトと即座に認識、理解をするのが実情である。そうすると、合議体が挙げている使用例は、いずれも一定規模以上の不動産ポータルサイトとは関連性が極めて薄いか、又は、一切関係のないものといわざるを得ず、これらの事実をもとに、本願商標は自他役務識別力が欠如するとの認定、判断することは、的が外れているものといわなければならない。・・・いずれのウェブサイトも不動産総合ポータルサイトと言えるほどの規模を有しておらず、我が国を代表する不動産総合ポータルサイトの規模には到底及ばず、また、請求人が想定する当業者とは異なり、消費者も不動産総合ポータルサイトと同列視することもない。そのため、請求人ウェブサイト上の本願商標と当該使用例とは、根本的、かつ、本質的に異なるものといわなければならない。そうすると、このような使用例は、本願商標と事案を全く異にするものといわざるを得ず、本願商標が本来有する自他役務識別力の存在に影響を与えることはない。」旨主張している。

しかしながら、証拠調べ通知において示した例は、色彩のみからなる商標を一私人が独占使用することの妥当性について判断する上で、他人による使用の実情を調査した結果として、不動産に関連した多数のウェブサイトにおいて役務の広告の装飾や模様として、本願商標と近似した色彩を含む様々な色彩が普通に使用されている例を示したものであるから、これらの使用例は、本願商標の登録の可否を判断する上で考慮されるべき事実であり、請求人の上記主張は、当該判断を左右するものではない。

(6)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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