Trademark Appeal Case
公益性名称の商標登録拒絶
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2019−4381(T2019−4381/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「Kagra」の文字を標準文字で表してなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成29年8月21日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『Kagra』の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、東京大学宇宙線研究所を中心として、岐阜県飛騨市神岡町において建設を進めている大型重力波望遠鏡『KAGRA』を認識させる語であり、『KAGRA』は、その本格稼働を目前として世間の注目を集めている実情があること、また、『KAGRA』を含む観測装置は、岐阜県飛騨市神岡町において地域活性化の期待が寄せられており、市が観光に力を入れている実情も見受けられることから、『KAGRA』との関係が定かでない一私人である出願人が、本願商標を自己の商標として使用することは、『KAGRA』に関する観光振興や地域おこしなどの公益的な施策の遂行を阻害することになり、社会公共の利益に反するというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和元年10月25日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の回答の要旨
1 証拠調べの事実について、本願商標を用いて「果実酒等の酒類」を販売するという事実がなく、一プロジェクトの存在によって、考えられる全ての指定商品が、社会公益の利益に反するというのは、やはり行き過ぎた判断である。
2 商標法は、公益団体にも該当する法律であるから、商標を使用する意思があるのであれば、公益団体であっても商標出願すべきであり、第三者の客観的判断で公益の利益に反すると結論づけるのは、商標法の目的に反している。
第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
本願商標は、前記第1のとおり、「Kagra」の文字を標準文字で表してなるところ、原審において開示した事実(別掲1)及び当審における証拠調べ通知で開示した事実(別掲2)等から、「KAGRA」について、以下のことを認めることができる。
(1)「KAGRA」の語について
「KAGRA」とは、2012年頃から、東京大学宇宙線研究所を中心として、自然科学研究機構国立天文台重力波プロジェクト推進室、高エネルギー加速器研究機構が密接に連携し、さらに国内外の多くの大学、研究機関等が協力して、岐阜県飛騨市神岡町で建設を進め、2019年秋に完成した大型低温重力波望遠鏡の愛称であり、該重力波望遠鏡は、米国と欧州に続く4か所目のものとなる。
そして、「KAGRA」の建設、設置及び重力波の観測等に関する「大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)計画」は、文部科学省が学術研究の大型プロジェクトへの安定的・継続的な支援を図るべく、2012年度に創設した「大規模フロンティア促進事業」において、10年計画による学術研究の大型プロジェクトの一つとして位置付けられており、当該計画により、アインシュタインが存在を予測した「重力波」の特定が大きく進むと期待されているものである。
また、「KAGRA」の愛称は、公募にあった「神楽」と、同市神岡町の「KA」及び「Gravity」や「Gravitational wave」といった重力をイメージする言葉の頭文字「GRA」から命名されている。
(2)「KAGRA」に対する国民又は地域住民の認識等
「KAGRA」は、その建設、設置場所である地元の岐阜県飛騨市において、地域振興や観光振興にも活用されており、例えば、東京大学宇宙線研究所と飛騨市等の主催により「KAGRA」の一般向け見学会や岐阜県飛騨市神岡町公民館ホールでの「KAGRA」に関する講演会が開催されたり、東京大学宇宙線研究所の主催により、岐阜県及び近隣の県などに在住する小学生以上を対象とした重力波に関する講義や重力波望遠鏡「KAGRA」の中を見学するイベント等が約50回開催されるほか、現地で「KAGRA」の完成記念式典が催される等、岐阜県飛騨市において、「KAGRA」の名称は、大型低温重力波望遠鏡及びそのプロジェクトの名称として、地域住民に広く認識されているといえる。
(3)判断
上記(1)のとおり、「KAGRA」とは、東京大学宇宙線研究所を中心として、国内外の多くの大学等の関係機関が連携、協力して、岐阜県飛騨市神岡町に建設、設置を進め、2019年秋に完成した大型低温重力波望遠鏡の愛称であって、これに係る「大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)計画」は、文部科学省による学術研究の大型プロジェクトの一つとして位置付けられており、重力波の観測は国内外から期待されて注目を集めているものである。
また、上記(2)のとおり、「KAGRA」の地元である岐阜県飛騨市において、「KAGRA」の見学会や講演会等も行われており、同市の地域振興や観光振興に広く活用されていることが認められる。
上記の実情からすれば、「KAGRA」の文字と構成文字を同じくする「Kagra」の文字からなる本願商標は、東京大学宇宙線研究所を中心に公的な機関等も含む国内外の関係機関、文部科学省等が連携、協力し、重力波の観測を目的として岐阜県飛騨市に設置されて、同市の地域振興等に活用されている大型低温重力波望遠鏡及びそのプロジェクトの名称を理解、認識させるものである。
そうすると、本願商標を、当該望遠鏡「KAGRA」やそのプロジェクトに関わる、東京大学宇宙線研究所をはじめ関係機関等と何ら関係のない、一私人である請求人が自己の商標として登録することは、当該望遠鏡「KAGRA」の名称を活用した公益的な各種施策、地域振興、観光振興等の遂行を阻害するおそれがあり、ひいては社会公共の利益に反するものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 請求人の主張について
請求人は、本願商標の出願背景には、北海道の神楽(かぐら)地方の原料で製造した酒類を広めていきたいという思いで出願しているだけであり、本願の指定商品が岐阜県飛騨市の観光土産物等として販売されることになったとしても、本願商標が存在していることで、公益的な施策の遂行を阻害するとは考えられない旨主張する。
しかしながら、「神楽」をローマ字表記する場合、「kagura」と表記するのが自然であるのに対し、本願商標の綴りはこれと相違するものである上、商標登録出願された商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かの判断は、各商標につき個別具体的に判断すべきものであるところ、本願商標については、上記1のとおり、国内外から注目を集める公的な事業といい得る大型低温重力波望遠鏡及びそのプロジェクトの名称を理解、認識させるものであるから、本願商標の登録を認めることは公益的な施策の遂行を阻害するおそれがあると言わざるを得ないものである。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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