Trademark Appeal Case
地名と一般名称の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2019−1625(T2019−1625/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、「杭州飯店」の文字を縦書きしてなり、第43類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成29年10月3日に登録出願され、その後、指定役務については、原審における同30年6月28日付けの手続補正書及び審判請求と同時に提出された同31年2月5日付けの手続補正書により、最終的に、第43類「ラーメン(杭州料理)の提供」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『杭州飯店』の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、その構成中の『杭州』の文字は、『中国浙江省の省都』の意味を有し、また、『飯店』の文字は、『中国料理店』の意味を有するものであるから、その全体よりは、『杭州にある料理店』程の意味を理解させるものである。そして、『杭州料理』は、中国八大料理に数えられる伝統料理といえるものであり、『飯店』の語は、中国料理店の意味合いをもって、一般に使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、当該役務が『杭州料理を食べさせてくれる中国料理店』程の意味合いを認識、理解するにとどまるとみるのが相当であるから、単に役務の質(内容)、役務の提供場所を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、『ラーメン(杭州料理)及び杭州料理の提供』以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和元年9月19日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要点
請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。
(1)日本国内において、本願商標「杭州飯店」を使用している事実は請求人のみであり、したがって、本願商標「杭州飯店」が普通に用いられる方法で表示される標章のみからなる商標とは認められない。
(2)提出した資料及び審査基準によれば、本願商標「杭州飯店」は、昭和52年から継続して使用された結果、少なくとも新潟県燕市地域において周知、著名な商標となっており、また、沢山のグルメ雑誌、観光雑誌、グルメサイトや個人ブログにおいて、「背脂ラーメン発祥の店」や「背脂ラーメンの名店」として「杭州飯店」が認識されていることから、商標「杭州飯店」が周知、著名な商標となっており、識別力を獲得している。
(3)本願商標「杭州飯店」は、商標法第3条第2項に該当するものとして登録されるべきである。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、上記1のとおり、「杭州飯店」の文字を縦書きしてなるところ、その構成中の「杭州」の文字は、「中国浙江省の省都」の意味を、「飯店」の文字は、「中国料理店」の意味を有する語(いずれも株式会社岩波書店「広辞苑第6版」)である。
そして、原審説示のとおり、中国八大料理の1つとして「杭州料理」が存在し、別掲2のとおり、例えば、「北京料理」を提供する中国料理店の店名に「北京飯店」、「広東料理」を提供する中国料理店の店名に「廣東飯店」などのように、その提供する中国料理が発達した「中国の地域名」と「飯店」の語を組み合わせた文字が、中国料理を提供する店名に使用されている実情がある。
そうすると、本願商標の構成中、「杭州」の文字は、本願の指定役務である「ラーメン(杭州料理)の提供」との関係において、その提供する中国料理が発達した「中国の地域名」を看取させる語といえるものであるから、本願商標は、構成文字全体として、「杭州料理を提供する中国料理店」程の意味合いを容易に想起させるものである。
してみれば、「杭州飯店」の文字からなる本願商標を、その指定役務である「ラーメン(杭州料理)の提供」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「杭州料理のラーメンを提供する中国料理店」であることを理解するにすぎず、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにとどまるというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「本願の指定役務を取扱う業界において『杭州料理を食べさせてくれる中国料理店』程の意味合いで役務の質、提供の用に供する物を表す語として取引上普通に使用されている事実はなく、これに接する取引者・需要者は、単に役務の質、提供の用に供する物を表示したものと理解、認識するとはいえないものであり・・・取引の実情に鑑みると、本願商標『杭州飯店』は指定役務『ラーメン(杭州料理)の提供』において、むしろ、それほどの意味をもたない造語と認識されるとすべきものである。」旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、本願商標の構成文字の有する意味や別掲2に示したとおり、その提供する中国料理が発達した「中国の地域名」と「飯店」の語を組み合わせた文字が、中国料理を提供する店名に使用されている実情があることからすれば、「杭州飯店」の文字からなる本願商標は、容易に「杭州料理を提供する中国料理店」程の意味合いを認識させるといえるものであり、これをその指定役務に使用しても、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというのが相当である。
そして、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、取引者,需要者が、役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足り、それが一般に用いられていた実情があったことまでを必要とするものではないというべきであるから(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号、平成27年10月21日判決参照)、取引上普通に使用されている事実がないことを理由とする請求人の上記主張は採用できない。
イ 請求人は、過去の登録例、審決例を挙げて、本願商標もそれらと同様に登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、商標の識別性の有無の判断は、過去の登録例や審決例に関わらず、商標の構成態様と指定商品・指定役務との関係や、その商品又は役務の分野における取引の実情をも踏まえて、事案に応じて判断すべきところ、請求人が主張する過去の登録例及び審決例は、本願商標とは、その構成文字や指定商品・役務が相違するものであって、事案を異にするといえるものであるから、当該登録例及び審決例によって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについての判断が左右されるものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(3)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、当審における令和元年9月19日付けの証拠調べ通知書に対する同年10月31日付け意見書において、本願商標は、使用をされた結果需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるものであるから、商標法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができるものである旨主張し、証拠方法として、上記意見書と同日付けの手続補足書により、資料1ないし資料57を提出している。
そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったものであるかについて、以下検討する。
ア 商標法第3条第2項に係る判示について
ある標章が商標法第3条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきであり(知財高裁平成24年(行ケ)第10285号、平成25年1月24日判決参照)、役務についても同様に解されるものである。
また、商標法第3条第2項により商標登録が認められるためには、同条第1項第3号から第5号までに該当する商標が、その使用の結果、指定商品又は指定役務の需要者の間で、特定の者の出所表示として我が国において全国的に認識されるに至ったことが必要であるものと解される(知財高裁平成27年(行ケ)第10002号、平成27年7月16日判決参照)。
イ 請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば、次の事実が認められる
(ア)請求人、商標の開始時期、使用地域等について
請求人は、「中華料理店の経営」等を目的とする株式会社であり、新潟県燕市において、昭和52年頃から、中国料理店の店名として「杭州飯店」の文字を使用している(資料1、資料2、資料4、資料9等)。
(イ)広告宣伝の方法、地域及び規模等について
提出された燕市の広報誌(資料4)、燕・三条地域限定のフリーマガジン(資料5)、雑誌・パンフレット(資料7〜資料11)、新聞記事(資料6、資料13)、インターネット記事(資料15〜資料57)などで、「杭州飯店」の文字を使用した請求人が経営するラーメン店が紹介されている。
ウ 判断
上記イ(ア)及び(イ)によれば、請求人は、昭和52年頃から、本願商標である「杭州飯店」の文字を、請求人の経営する中国料理店の店名として使用していることが認められる。
しかしながら、提出された燕市の広報誌(資料4)、燕・三条地域限定のフリーマガジン(資料5)、雑誌・パンフレット(資料7〜資料11)などは、いずれも新潟県や燕市などの一部の地域に特化したものであり、その具体的な発行部数や頒布範囲も明確とはいえないものである。
また、新聞記事(資料6、資料13)は、「スポーツニッポン」、「新潟日報」の2紙のみであって、個人のブログを含むインターネットの紹介記事は、その閲覧数、閲覧の頻度等も明確でない。
その他、請求人による広告宣伝の実績や費用等も明らかではない。
そうすると、請求人は、令和元年10月31日付けの意見書において、本願商標は、少なくとも新潟県燕市地域において周知、著名な商標となっていると主張するものの、提出された資料からは、本願商標が、本願の指定役務に係る取引者、需要者の間で全国的に著名性を獲得しているとはいい難いものである。
以上のことからすると、本願商標は、その役務の取引者、需要者の間で全国的に認識されているとはいえず、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものとはいえない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものということはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものではないから、商標登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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