Trademark Appeal Case
周知商標の類否判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2019−900082(T2019−900082/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第6121255号商標(以下「本件商標」という。)は,「トルクル」の片仮名を標準文字により表してなり,平成30年4月11日に登録出願,第7類「金属加工機械器具,動力付き手持工具,インパクトレンチ,ナットランナー,電動ドライバー,電動ドリル」,第8類「手動工具,手動利器,トルクレンチ,トルクスクリュードライバー(手動工具)」,第9類「コンピュータプログラム(記憶されたもの又はダウンロード可能なもの),コンピュータプログラム開発用コンピュータプログラム,製造業における生産性向上を支援するためのシステム用コンピュータプログラム,測定機械器具,トルク測定機械器具,トルクゲージ,ノギス,マイクロメーター,タイヤ空気圧計,深さゲージ,距離測定機械器具,ホイールバランサ,気圧計,ゲージ,電気式測定機械器具,試験装置(医療用のものを除く。),電子出版物」及び第37類「測定機械器具の修理又は保守,金属加工機械器具の修理又は保守,手動工具の修理又は保守,動力付き手持ち工具の修理又は保守」を指定商品及び指定役務として,同31年1月24日に登録査定,同年2月8日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する商標は,「TorqueL」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び「トルクル」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)であり,申立人の業務に係るコンピュータプログラム商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとするものである。
以下「引用商標1」及び「引用商標2」をまとめていうときは,「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由(要点)
本件商標は,本件商標の指定商品中,第9類「コンピュータプログラム(記憶されたもの又はダウンロード可能なもの)」(以下「申立商品」という場合がある。)についての登録は,平成26年(2014年)12月24日より継続して販売されているコンピュータプログラム商品「TorqueL(トルクル)」の日本語読みとして需要者の間に広く認識,周知されている引用商標を片仮名で示したものにすぎず,商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると主張して,甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
ア 申立人提出の証拠によれば,次のとおりである。
(ア)申立人に関して「電撃Nintendo2017年2月号」とされる雑誌における「クリエイター インタビュー『TorqueL(トルクル)』編」の見出しの下,「『トルクル』開発のブレイクスルーになったゲームは?」の項に「『トルクル』を作ろうと思ったきっかけは?/柳原:もともとUnityをさわっているときに,物理エンジンを使って何かおもしろい動きができないかなと考えて,箱を転がす実験をしていたんです。」の記載並びに「FullPowerSideAttack.com(ハンドルネーム:なんも) 柳原 隆幸氏」及び「FullPowerSideAttack.com名義で個人制作を行うクリエイター。」の記載がある(甲15)。
(イ)「ファミ通.com」とされるウェブサイトにおける2015年(平成27年)2月27日掲載の記事(甲18)には「不思議な魅力の2Dアクション『TorqueL』が,個人開発にも関わらずコミケからE3まで出たワケ【インディーズの肖像Vol.3】(1/3)」の見出しの下,「・・・インディーゲームの開発者本人に焦点をあてたインタビューシリーズの第3弾は,PS4/Vita/PCで配信中の2Dアクションゲーム『TorqueL』(トルクル)を開発したFullPowerSideAttak.comのなんも氏が登場。」の記載があり,及び「Made with Unity」とされるウェブサイトにおける2018年(平成30年)2月6日掲載の記事(甲20)には「ゲームコントローラ・レクイエムは終わらない なんも トルクル(TorqueL) FullPowerSideAttack.com」の見出しの下,「・・・『トルクル』は物理演算を活用したアクションゲームです。・・・2014年12月にPlayStation 4版,PlayStation Vita版の『トルクル』の日本国内のリリースを行い,・・・2016年11月にWii U版(日本国内のみ),2017年10月・・・Xbox One版をリリースし・・・2018年2月,Nintendo Switch版が日本国内リリースとなります。」の記載がある。
(ウ)各種ゲームメーカーのウェブサイトにおいて,「発売中 2014.12.24」として「対応機器:PS4」及び「対応機器:PS Vita」(PlayStation Store:甲2及び甲3),「リリース日 2015年1月23日」及び「プラットフォーム Windows」(PLAYISM:甲5),「配信開始日:2016/01/29」及び「対応OS:Windows:7」(DMM GAMES:甲6),「配信開始日:2016.11.9」及び「トルクル(TorqueL)が,Wii Uで登場!」(任天堂:甲7),「リリース日 2017/10/18」及び「対応プラットフォーム Xbox One」(Microsoft Store:甲8)並びに「リリース日 2017/10/17」及び「対応プラットフォーム PC」(Microsoft Store:甲9)の記載があり,各記事には,引用商標の記載とともに「TorqueL(トルクル)」のゲームについての内容が記載され,そして各記事の「著作権等」,「開発者」,「メーカー」又は「開発元」等の欄に「FullPowerSideAttack.com」の記載がある。
(エ)ゲーム関連の雑誌の記事(甲12,甲14〜甲16),及びウェブサイトの記事(甲17)において,各記事には,引用商標の記載とともに「TorqueL(トルクル)」のゲームについての内容が記載されている。
(オ)「Comike Web Catalog」のウェブサイト(甲24,甲25)において,「FullPowerSideAttack.comの詳細」の見出しの下,「サークル名」の項に「FullPowerSideAttack.com」及び「補足説明/サークルアピール」の項に「FullPowerSideAttack.comはなんもがとにかく色々作ったり出したりするための制作サークルです。」,「TorqueL for Windowsを頒布」旨の記載がある。
(カ)平成27年(2015年)4月4日と同月11日にアニマックスチヤンネルで放送された番組「ゲームマニアックス#72」中の「インディーズ・ジョーズ 江口総編集長オススメの今注目すべきインディーズゲームを紹介するコーナー」において紹介され,「Torquel」,「Torquel(FullPowerSideAttack.com)」及び「PlayStation 4/PlayStation Vita/Windows」の表示並びに「トルクル」と称呼がされていることが認められる(甲29)。
イ 以上のことから,次のことが認められる。
「TorqueL」及び「トルクル」の商標(引用商標)は,平成26年(2014年)12月24日より平成30年(2018年)2月まで継続して販売されている「FullPowerSideAttack.com」(申立人)の開発に係る商品「コンピュータ用のゲームプログラム(コンピュータゲームソフトウェア)」及び「家庭用テレビゲーム機用プログラム」について使用されていることがうかがえる。
しかしながら,申立人の提出に係る全証拠からは,引用商標が,その使用に係る上記の商品について,申立人が使用する商標として需要者の間に広く認識されていたと認め得るに十分といえる具体的な証拠,例えば,引用商標が付された商品についての売上高,市場シェアなどの販売実績並びに引用商標に係る広告宣伝の規模及び範囲(雑誌の販売部数やカタログの頒布部数,イベントの展示内容や頒布物の数量及び番組の視聴率)等については,その事実を量的に把握することができる証拠は見出せない。
したがって,申立人提出の証拠をもってしては,本件商標の登録出願時及び登録査定時の両時点において,引用商標が申立人(他人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であると認めることはできない。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標
本件商標は,上記第1のとおり「トルクル」の片仮名を標準文字で表してなり,その構成文字に相応し「トルクル」の称呼を生じ,当該文字は,辞書等に載録された既成語とは認められないものであるから,特定の語義を有しない一種の造語として理解され,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1は,上記第2のとおり「TorqueL」の欧文字からなるところ,当該文字は,辞書等に載録された既成語とは認められないものであるから,特定の語義を有しない一種の造語として理解され,特定の観念を生じないものである。
そして,特定の語義を有しない欧文字は,一般に,我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って称呼されることから,「TorqueL」の欧文字は,英語の読みに倣って「トルクル」の称呼を生じるものである。
そうすると,引用商標1は,「TorqueL」の欧文字に相応して,「トルクル」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標2は,上記第2のとおり「トルクル」の片仮名からなるところ,これは,上記(1)のとおり,「トルクル」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との対比について
ア 外観について
本件商標は,「トルクル」の片仮名を標準文字により表してなるものであるから,欧文字のみからなる引用商標1とは,構成全体の外観において明らかに相違するものであるが,片仮名からなる引用商標2とは,構成する文字を同じくするものであるから,外観において極めて近似した印象を与えるものである。
イ 称呼について
本件商標と引用商標は,ともに「トルクル」の称呼を生じるものであるから,両者は称呼において共通する。
ウ 観念について
本件商標と引用商標は,いずれも造語からなるものであり,特定の観念を生じないから,両者は観念において比較することができない。
エ 小括
してみると,本件商標と引用商標は,観念について比較することができないものであり,また,本件商標と引用商標1とは,外観上相違するものであるが,本件商標と引用商標2は,その構成する文字を同じくするものであるから,外観において極めて近似した印象を与えるものであり,かつ,その称呼も共通にする。
したがって,本件商標と引用商標1とは,類似の商標であるとはいえないが,本件商標と引用商標2とは,類似の商標であるといえる。
3 申立商品と引用商標の使用に係る商品との類否について
申立商品と引用商標の使用に係る商品「コンピュータ用のゲームプログラム(コンピュータゲームソフトウェア)」とは,いずれもコンピュータを動作させるためのプラグラムであるから,両商品の目的,用途,流通部門及び需要者等を共通にする同一又は類似の商品である。
他方,申立商品と引用商標の使用に係る商品「家庭用テレビゲーム機用プログラム」とは,申立商品がコンピュータを動作させるためのプラグラムであり,引用商標の使用に係る商品が家庭用テレビゲーム機を動作させるためのプログラムであることから,両商品の目的,用途,流通部門及び需要者等が異なるものであって,コンピュータ用の各種ゲームプログラムが販売されており,一部にはコンピュータ用と家庭用ゲーム機用とに同じ内容の商品の存在が確認できるとしても,それが一般的,恒常的に取引に資されているということはできないものであるから,両商品が類似の商品であるということはできない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
上記2及び3のとおり,本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるが,本件商標と引用商標2とは類似の商標であり,申立商品と引用商標2の使用に係る商品とは同一又は類似の商品である。
しかしながら,本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものというためには,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていなければならないとするところ,引用商標は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人(他人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であると認めることはできないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり,本件商標は,その指定商品中,登録異議申立てに係る指定商品である第9類「コンピュータプログラム(記憶されたもの又はダウンロード可能なもの)」について,商標法第4条第1項第10号に該当するものではなく,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
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