Trademark Appeal Case
色彩グラデーションの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−3383(T2018−3383/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務として、平成27年4月1日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、出願人により提出された証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できるに至っているとはいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における審尋
当審において、請求人に対し、平成31年1月29日付けで、以下のとおりの審尋を発し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。
1 本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対してこれを開示した。
2 これまでに提出された証拠の他に、本願商標が使用された結果、需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができることを示す客観的な証拠を提出されたい。
第4 請求人の意見
上記第3の審尋に対し、請求人は、何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、色彩のみからなる商標であって、その色彩は、「上の青色(マンセル値:7.3PB5.0/12.2)から白色(マンセル値:N9.5)を経て下の緑色(マンセル値:2.0G5.77/12.95)に向かってグラデーションで表しており、配色は、上から順に、青色が商標の5パーセント、同じく青色から白色へのグラデーションが12パーセント、白色が10パーセント、白色から緑色へのグラデーションが29パーセント、緑色が44パーセント」(以下「青白緑色グラデーション」という。)であり、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務とするものである。
(2)取引の実情について
役務の提供の用に供する物又は広告に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上のために採択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。
そして、本願の指定役務である「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を取り扱う業界においても、原審で示した事実(別掲2)のほかに、当審における審尋において示したとおり(別掲3)、青、白、緑の色彩の組み合わせ、並びにそれと比較的近い印象を与える色彩を広告宣伝に資するウェブサイトや役務の提供の用に供する工事現場の仮囲等に採用し、それらに濃淡を付けることは一般に行われている実情がある。
(3)上記(2)によれば、青白緑色グラデーションの色彩のみからなる本願商標に接する需要者は、その役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 使用による識別力の獲得について
請求人は、本願商標が使用された結果、需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるに至っている旨主張し、当審において証拠方法として、第1号証ないし第27号証を提出している。そこで、本願商標が、使用をされた結果、需要者又は取引者が何人かの業務に係る役務であることを認識するに至っているかについて、以下検討する。
なお、上記第1号証ないし第27号証については、甲第1号証ないし甲第27号証と読み替える。
(1)これらの証拠及び請求人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 請求人について
請求人は、明治25年(1892年)に土木建築請負業者として創業した会社を前身とし(甲1、甲2)、2016年度には、1兆8,727億円の売上高を有し(甲2)、国内外に数多くの事業所及びグループ会社を擁する(甲4〜甲6)大規模な建設業者であり、公官庁、オフィスビル、医療・福祉施設、教育施設、商業施設等多くの施工を行っている(甲7、甲8)。
そして、請求人は、青色の三角形と緑色の扇型を組み合わせた図形を、社章として使用している(甲10)。
イ 本願商標の使用態様、使用数量
請求人は、本願商標を、その指定役務の提供の用に供する物として、主に建築現場の「コミュニケーションパネル(仮囲)」において使用しており、2004年3月から2015年6月までに少なくとも39か所の建設現場にコミュニケーションパネルを設置したと主張している(甲12、甲21〜甲23)。
しかしながら、これらの証拠におけるコミュニケーションパネルには、「OBAYASHI」の文字及び社章も共に表示されている。
ウ 本願商標の使用期間
請求人は、昭和63年(1988年)1月よりCIの準備的活動を始め、平成2年(1990年)4月1日、新しく定めた企業理念・経営姿勢・行動規範を社内に発表し、その周知を図った(甲10)。また、新しい社章を制定し、同年7月1日より使用を開始した(甲11)。同時に、新しいサイトウェア(工事事務所勤務者用の作業服)やオフィスウェア(女子事務服及び受付服)のデザイン及び色調が決定し、以後は「大林組デザインシステムマニュアル」に基づく運用が続けられており、本願商標に係る色彩の組み合わせは、コーポレートカラーとして制定されたと主張しているが、かかる記載は発見できない(甲10)。
エ 広告宣伝の方法、期間、地域及び規模
請求人は、本願商標を構成する重要な色彩である「モーニングブルー(青色)」と「ブライトグリーン(緑色)」の組み合わせは、出願人の社章として(甲13)、ホームページ(甲14)、ポスター(甲15)、パンフレット・封筒・手提げ袋・メモ帳等(甲16)の他、タワークレーンなどの工事機械にも使用している(甲17)。
また、請求人は、「ひとつひとつの現場から」篇と題された30秒間のテレビCMを、平成26年(2014年)8月から平成27年(2015年)11月にかけて18回、平成27年(2015年)10月から平成28年(2016年)1月にかけて79回放映している旨主張している(甲20)。
しかしながら、提出された証拠からは、当該テレビCMの全容や放映されたテレビ番組の視聴者数は確認できない。
オ 取引関係企業及び事業者からの「証明書」について
「出願人(請求人)と取引関係を有する企業・事業者からの『証明書』の写」には、本願商標の色彩について、「平成2年(1990年)以来、株式会社大林組が広く全国の建設工事、地域開発・都市開発・その他建設に関する事業等において継続的に使用されてきたものである。上記色彩は、同社の長年にわたる使用の結果、極めて高い周知性を得ており、特に当建設業界における取引者・需要者間では、常に株式会社大林組の業務を示す商標として容易に認識することができるものである。/以上/上記事項に相違ないことを証明します。」の文章が、全ての用紙に印刷されており、その下に、日付、証明者の住所、名称及び代表者名の記載並びに押印がある(甲19)。
また、請求人は、1990年以降の竣工実績だけでも1,400件を超えるため(甲25)、出願人と取引関係を有する建設関係者のみならず、それ以外の建設関係者においても、本願商標に係る色彩の組み合わせが請求人を表すものとして広く認知されていると考えるのが自然であると主張している。
(2)判断
ア 本願商標の使用状況について
上記(1)イによれば、請求人は、本願商標を構成する青白緑色グラデーションの色彩を、同人の提供する役務の提供の用に供する建築現場のコミュニケーションパネルに使用しているものの、前記1(2)のとおり、本願の指定役務の分野において、請求人以外の者も、青、白、緑の色彩の組み合わせ、並びにそれと比較的近い印象を与える色彩を役務の提供の用に供する物や役務の広告の装飾等の色彩として採用し、それら色彩に濃淡を付けることが一般に行われている実情があることからすれば、請求人が使用している上記青白緑色グラデーションの色彩が特徴的なものということはできない。
また、請求人は、本願商標は、コミュニケーションパネルにおいて少なくとも39件の使用実績があると主張するが、その具体的な設置場所や、使用期間が客観的に示されていない上、提出された証拠におけるコミュニケーションパネルには、青白緑色グラデーションの色彩とともに「OBAYASHI」の文字及び社章が表示されている。
加えて、請求人は、平成2年(1990年)4月1日に、新しく定めた企業理念・経営姿勢・行動規範を社内に発表し、本願商標に係る色彩の組み合わせは、コーポレートカラーとして制定されたと主張するが、提出された資料には、コーポレートカラーが青白緑色グラデーションの色彩であるとの記載はなく、本願商標を構成する青白緑色グラデーションと同じ色彩が、コーポレートカラーとして制定された事実及び現在に至るまでどのように使用されてきたのか明らかでない。
広告宣伝においては、ホームページやポスター等に使用されているのは、請求人の社章であって、本願商標を構成する青白緑色グラデーションとはいえない。そして、テレビCMについては、当該テレビCMの全容、放映されたテレビ番組の視聴者数及び本願商標が使用されている事実も確認できない。
イ 取引関係企業及び事業者からの「証明書」について
上記(1)オによれば、甲第19号証の「証明書」は、あらかじめ、証明する内容についての記載が印字された証明用紙に、それぞれの証明者が日付、住所、名称及び代表者名を記入し、押印するという形式によるものであって、証明者が、どのような具体的事実に基づいて、本願商標の色彩が請求人の業務を示す商標として認識することができるに至っているものと判断したかは明らかではなく、当該証明書の証拠力は低いものである。
また、当該証明書の証明者は、請求人と取引関係を有する事業者や企業に限られていることから、当該証明書は、指定役務の分野における取引者、需要者全体の認識度を示すものとはいえない。
ウ 需要者の本願商標の認識度について
請求人は、1990年以降の竣工実績に基づき、本願商標に係る色彩の組み合わせが請求人を表すものとして広く認知されていると主張するが、1,400件を超える竣工実績があったとしても、当該現場において、本願商標を構成する青白緑色グラデーションのコミュニケーションパネルがどのように使用されたのかについては不明であるから、かかる請求人の主張は採用することはできない。
エ 小括
上記アないしウによれば、請求人は、本願商標を構成する青白緑色グラデーションの色彩を役務の提供の用に供する物に使用しているものの、その具体的な使用実績や使用期間が客観的に証明されていないこと、広告宣伝においても青白緑色グラデーションの色彩の使用が確認できないことから、本願指定役務の分野における取引者、需要者は、本願商標の色彩のみによって、出所の識別を行っているということはできず、また、本願商標を構成する青白緑色グラデーションの色彩のみが独立して、請求人の業務に係る役務を表すものとして、指定役務の分野における取引者、需要者に広く認識されているというべき事情も認められない。
してみれば、本願商標を構成する青白緑色グラデーションは、色彩のみが独立して請求人の業務に係る役務を表すものとして取引者、需要者間に認識されているとみることはできず、本願商標は、使用された結果、請求人の役務の出所を表示するものとして、又は自他役務の識別標識として認識されるに至っているということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、自己のプロジェクト実績を例にとり、東京都港区六本木一丁目に建てられた「アークヒルズ 仙石山森タワー」(店舗、住宅、事務所からなる47階建て超高層の複合棟と8階(建築基準法上地上6階、地下2階)建ての住宅棟)の新築工事の場合、工期は約35か月(2009年10月〜2012年8月)に及ぶこと(甲24)、その間、コミュニケーションパネルが設置され、本願商標が多くの人の目に触れることとなり、建設地の地域性を考慮すると、その数は延べ人数で優に百万人を超える旨を主張している。また、コミュニケーションパネルの39件の使用実績の中には大都市における高層ビル建設以外の案件も含まれ、請求人が手掛ける案件の多くは工期が数年に及ぶものであり、その期間中、本願商標に接する人の数も常に数千、数万を超えることから、請求人と取引関係を有する建設関係者のみならず、それ以外の建設関係者においても、本願商標に係る色彩の組み合わせが請求人を表すものとして広く認知されていると考えるのが自然であると主張している。
しかしながら、大規模な工事の工期が数年に及ぶものであるとしても、「アークヒルズ 仙石山森タワー」の場合、本願商標が付されたコミュニケーションパネルを目にする者が延べ人数で百万人を超える等の数値的な主張を裏付ける資料は提出されておらず、請求人のこれらの主張は、工期や立地の観点からみた推測の域を出ないものといわざるを得ない。
さらに、前記1(2)のとおり、同様の色彩を他人も使用していることからすると、需要者、取引者は、本願商標を構成する青白緑色グラデーションの色彩を請求人の業務に係る役務を表す色彩であると認識する蓋然性は低いというべきである。
したがって、請求人の主張は、採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない
よって、結論のとおり審決する。
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類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。