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Trademark Appeal Case

色彩のみ商標の要件

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−3929(T2018−3929/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲(1)の商標登録を受けようとする商標及び願書記載のとおりの商標の詳細な説明からなり、第36類「ICカード利用者に代わってする支払代金の清算,前払い式証票の発行」及び第39類「鉄道による輸送」を指定役務として、平成27年4月14日に登録出願されたものである。

そして、願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明については、原審における平成28年8月9日受付の手続補正書及び当審における同30年6月13日受付の手続補正書により、最終的に別掲(2)のとおり補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標の緑色の色彩は、ICカードの形状(輪郭)の数ミリメートル内側に付されており、ICカードの形状(輪郭)に全く接していない上に、緑色の色彩が付された部分の形状(輪郭)は、4つの頂点が丸みを帯びた特徴的な台形図形を認識させるものであるから、色彩を付する位置を特定するのに必要最低限の方法で表示されているものということはできない。また、ICカードの形状は規格化されており、その形状が変化することはないこと、仮にICカードの形状が将来的に変化したとしても、その形状の変化に即して、そこに付した色彩部分も変化することが、願書の商標記載欄の記載及び商標の詳細な説明からは把握することができないことも考慮すると、本願商標を、色彩のみからなる商標と認めることはできない。さらに、商標の詳細な説明の記載は、図形を認識させる記載を含んでおり、ICカードは、この商標登録出願に係る指定役務との関係からすると『役務の提供の用に供する物』に該当するので、当該記載は、商標登録を受けようとする商標を特定するものと認めることができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、本願は同法第5条第5項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)「色彩のみからなる商標」について

商標法第5条第2項第3号にいう「色彩のみからなる商標」は、人の知覚によって認識することができるもののうち、色彩からなるものであり、平成26年の特許法等の一部改正(平成26年法律第36号)により、商標法の保護対象に追加されたものである。

上記法改正の立法の経緯をみると、基本的論点が検討された産業構造審議会知的財産分科会の報告書において、「現行制度の保護対象」について、「現行商標法第2条第1項に掲げられた各標章は、いずれも一定の形状を備え、かつ、視覚で認識できるものであるから、形状を備えていない『輪郭のない色彩』や、視覚を認識できない『音』、『におい』等は、現行商標法における『標章』には該当せず、同法の保護を受けることができない。」とした上で、国際的な趨勢や我が国における保護のニーズの高まりを受け、「現行制度において商標登録されない商標の類型」である「『輪郭のない色彩』の商標」を新たに保護対象とすべきとされ、同報告書においては、「『輪郭のない色彩』の商標は、図形等と色彩が結合したものではなく、色彩のみからなる商標である。『輪郭のない色彩』の商標は、複数の色彩を組み合わせたものと、単一の色彩によるものがある。」と記載されている(「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」平成25年9月産業構造審議会知的財産分科会)。

そして、上記報告書の趣旨を踏まえ、従来、商標法の保護対象に含まれていなかった色彩のみの商標を新たに商標法の保護対象として追加する法改正が行われた(「工業所有権法(産業財産権法)逐条改正解説(第20版)」特許庁編、「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書 第4章 商標法の保護対象の拡充等」特許庁ホームページ(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/h26/document/tokkyo_kaisei26_36/04syou.pdf)。

以上の立法の経緯からすれば、「色彩のみからなる商標」とは、上記法改正前から商標法の保護対象に含まれていた一定の形状を備えた図形等と色彩が結合したものではない。

このような「色彩のみからなる商標」について商標登録を受けようとする際には、願書に、「色彩のみからなる商標」である旨(商標法第5条第2項第3号)及び商標の詳細な説明を記載しなければならず(同条第4項)、位置を特定した色彩のみからなる商標である場合は、商標登録を受けようとする商標を記載する欄(以下「商標記載欄」という。)に「商標登録を受けようとする色彩を当該色彩のみで描き、その他の部分を破線で描く等により当該色彩及びそれを付する位置が特定されるように表示した一又は異なる二以上の図又は写真」を記載しなければならない(商標法施行規則第4条の4第2号)。

(2)本願商標の願書の記載について

本件商標登録出願についての願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明として、「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、色彩のみからなるものであり、ICカード券面形状の約3ミリメートル内側の部分における左側約50%を緑色(DIC91)とする構成からなり、ICカードの形状が変化した場合は、その変化に即して変化する。なお、ICカードの破線は、役務の提供の用に供する物の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」と記載されている。

しかしながら、本願の商標記載欄に記載されている商標登録を受けようとする商標とされる部分(以下「色彩部分」という。)は、緑色で塗られた角を丸くした台形の形状として表されており、これよりは一定の形状を備えた図形と認識され得る態様といえるものである。

そうすると、色彩部分は、角を丸くした台形の形状の図形と緑色の色彩が結合した結合商標と認識されるものであり、一定の形状を備えた図形と色彩が結合したものというべきである。

また、本願の商標の詳細な説明の記載を考慮しても、台形の形状からなる色彩部分の右辺の傾斜部分は、ICカード券面形状の変化に即した変化が想定できないものであって、カードの形状(輪郭)が変化した場合は、その変化に即して色彩部分も変化すると解することはできず、結局、色彩部分は、図形としての要素を有するものといわざるを得ないものであるから、本願商標は、「色彩のみからなる商標」ということはできない。

してみれば、本願は「色彩のみからなる商標」についての商標登録出願であるにもかかわらず、願書の商標記載欄には「色彩のみからなる商標」が記載されていないものであり、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」が記載されていないといわざるを得ない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は、「緑色の色彩はICカードの形状(輪郭)に接してはいないものの、丸味を含めて、ICカードの形状(輪郭)に忠実に沿って表されている。したがって、ICカードの形状(輪郭)に沿ったものに準じて扱われるべきである。そして、ICカードの形状(輪郭)に沿って配されているからこそ、仮にICカードの形状(輪郭)が変化した場合は、本願商標の色彩を付した部分もその変化に即して変化することとなる。・・・本願商標の色彩を付した部分は、正方形、長方形に準ずるものとして取り扱われるべきものである。すなわち、本願商標を付した部分は、正方形及び長方形と同様に四角形の一態様として認識されうるものであり、構成自体が簡単で、輪郭として普通に用いられるものであるため、本願商標の色彩を付した部分の形状だけでは、何ら特徴的な図形を認識させるものではない。」旨主張している。

しかしながら、上記(2)のとおり、本願の商標記載欄に記載されている色彩部分は、角を丸くした台形の形状の図形と緑色の色彩が結合した結合商標と認識されるものであり、一定の形状を備えた図形と色彩が結合したものというべきであって、色彩部分の右辺の傾斜部分は、ICカード券面形状に沿ったものに準じて扱うことはできないものであるから、本願の商標の詳細な説明を考慮しても、結局、色彩部分は、図形としての要素を有するものといわざるを得ない。

そして、本願の商標記載欄に記載されている色彩部分の形状は、角を丸くした台形の形状として認識されるといえるものであるから、その形状は、正方形、長方形等に準ずる色彩を付する位置を特定するのに必要最小限の方法で表された形状とはいい難く、何ら特徴的な図形を認識させるものではないということはできない。

したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

イ 請求人は、「今回の拒絶査定において、拒絶理由通知書には全く記載していなかった新たな証拠(ウェブサイト)を追加し、拒絶査定を行った。この証拠は、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの主張を補強するものであり、この点に関する請求人の反論の機会を実質的に奪うものであるから、実質的に新たな拒絶理由を追加したものといえる。したがって、本願審査手続において、審査官は、請求人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなかったのであり、この点で本件審査手続には上記規定に違反するという瑕疵があったものというべきである。」旨主張している。

しかしながら、原査定は、平成28年6月30日付けで通知した商標法第3条第1項柱書に係る理由及び同年9月8日付けで通知した商標法第5条第5項に係る理由2により、拒絶の査定をしているのであって、「平成28年9月8日付けで通知した商標法第3条第1項第6号に係る理由1について、出願人は、平成28年11月21日受付意見書において、『本願商標は広く使用された結果、需要者が出願人の業務に係る役務であることを認識することができるものとなっている』と主張していますので、以下、提出された資料について、念のため検討します。」の記載のとおり、商標法第3条第1項第6号については、念のために検討しているにすぎず、実質的に新たな拒絶理由を追加したというようなものではなく、審査の手続上の瑕疵があるとはいえない。

したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(4)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものであるから、その他の拒絶の理由について検討するまでもなく、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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