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Trademark Appeal Case

色彩商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−6512(T2018−6512/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第11類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成28年10月7日に色彩のみからなる商標として登録出願されたものであるが,その指定商品については,当審における同30年5月11日付け手続補正書により,第11類「ガス湯沸かし器,家庭用ガス給湯器」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨

原査定は,「商品に使用される色彩は,多くの場合,商品の魅力向上等のために選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別するための標識として認識し得ないものである。そうすると,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,商品に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,本願商標は,単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎないというのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,提出された証拠において示された本願商標と同一と推測される色彩の使用状況や使用態様からは,色彩のみからなる本願商標が独立して識別力を有するに至っているとはいえないから,本願商標は,商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものとは認められない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権により証拠調べをした結果,別掲2の事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,その結果を請求人に通知し(令和元年10月31日付け証拠調べ通知書),相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

第4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見の要旨

請求人は,上記第3の証拠調べ通知に対して,以下のとおり意見を述べた。

1 本願商標と近似する色彩が商品の色彩又はその広告において商品の色彩に使用されたとしても,ごく一部である以上,これをもってグレーの色彩が給湯器において一般的な色彩とすることはできない。本願商標は指定商品である給湯器の業界において特徴的な色彩であり,当該色彩によって需要者に対して請求人の出所に係る商品と認識させることが可能である。

2 他社は,いくら国内市場においてシェアが高かったとしても,その製造,販売する給湯器の色彩としてホワイト,シルバー系を標準色としているのであり,標準色の給湯器のみを宣伝広告し,グレー系の色彩の給湯器について特別な宣伝をしておらず,多数あるオプションの色の一部としか扱っていない以上,給湯器の色彩として一般的な認知度を得るに至っていないことは明白である。

3 他社がグレー系の色彩に対してほとんど宣伝広告をしていない一方で,請求人だけが本願商標に係る色彩を大規模に使用し,宣伝広告しており,本願商標が使用された商品は請求人の業務に係る商品であると需要者が認識することができるに至っている。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は,上記1のとおり,色彩のみからなる商標であって,グレー(マンセル値:5Y6.5/0.5)のみからなるものである。

色彩は,商品そのものやその包装又は広告等において,商品の美感や魅力向上等に資する装飾等として,一般に広く使用されているものである。

そして,商品の色彩は,文字及び図形等の商標とは異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではなく,その色彩や色彩構成自体が商品と結合して特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合があるにすぎないものである。

また,本願の指定商品を取り扱う業界において,別掲2(1)のとおり,建物の外壁の色などの設置場所の外観との調和を図るといった目的で商品の美感や魅力向上等に資するために,商品の色彩(外装色)として,複数の色彩を「カラーバリエーション」や「オプション」として選択可能としており,その中には本願商標を構成するグレーの色彩に近似する色彩も,選択可能な商品の外装色として設定し,商品の色彩に使用されている実情がある。

そうすると,グレーの色彩のみからなる本願商標は,これをその指定商品に使用しても,これに接する需要者は,商品の美感や魅力向上等に資する装飾等として,商品に通常使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,その色彩について,商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当であり,また,本願商標と近似する色彩が請求人以外の者によって指定商品に使用されていることからすれば,何人もその使用を欲するといい得るものであるから,これを一私人に独占させることは妥当ではない。

したがって,本願商標は,商品の特徴(色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 商標法第3条第2項の要件を具備するかについて

請求人は,「本願商標は使用により識別力を獲得しており,本願商標は商標法第3条第2項によって登録されるべきである。」旨を主張し,その主張に係る証拠として,原審において甲第1号証ないし甲第17号証を提出し,当審において甲第18号証ないし甲第25号証を提出している。

そこで,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

(1)請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。

ア 請求人並びに本願商標の使用開始時期及び使用地域について

請求人は,平成24年(2012年)1月から,請求人の業務に係る「ガス湯沸器」及び「家庭用ガス湯沸器」(以下,これらをまとめて「請求人商品」という。)に本願商標を付し「ハーモニーシリーズ」と名付けた商品シリーズを展開している(甲1)。

請求人商品は,自社のみならず全国各地のガス製品の取扱店の他,建築会社,工務店,リフォーム会社等で取り扱われている(甲14〜甲17)。

イ 本願商標の指定商品に係る使用及び販売実績について

請求人は,本願商標の色彩を使用した請求人商品は,約60種類にわたり,その販売台数は2019年(令和元年)12月3日付け「ハーモニアスグレー対象機種 販売実績台数」と題する書面(甲25)によれば販売開始から同年11月までの累計販売台数の合計は約22万7千台であると主張している。

ウ 広告宣伝について

(ア)テレビコマーシャル

A 請求人は,平成24年(2012年)5月1日から,全国放送のほか,静岡,関東,関西及び福岡の各地域で放送される番組において,定期的に,本願商標と同一視し得る色彩を付した請求人商品が表示される「寿命があるよ」編及び「ママも笑顔に」編のCMを放送した(甲10〜甲11)。

B 平成28年(2016年)11月1日から2週間の期間,秋田,仙台,名古屋,関西,広島,福岡,宮崎,熊本及び鹿児島の地域で,上記AのCMと同じ内容のCMを合計445本集中的に放送した(甲12)。

C 請求人は,平成29年(2017年)10月1日から,本願商標と同一視し得る色彩を付した請求人商品が表示される「“お得側家”シリーズ」編の新テレビCM(甲18)を,静岡のほか,秋田,仙台,関東,名古屋,関西及び福岡の各地域並びにBS放送で放送される番組において定期的に放送し,並びに同日より2週間の期間,仙台,関東,名古屋,関西,広島,宮崎,熊本及び鹿児島の地域で,当該CMを合計379本集中的に放送したほか,関東及びBS放送で同年年末ないし同30年(2018年)年始に放送された番組においても放送した(甲21,甲22)。

D 請求人は,平成30年(2018年)3月より4月にかけて,上記CのCMと同じ内容のCMを,秋田,仙台,関東,静岡,中京,関西及び福岡の各地域並びにBS放送で放送される番組において定期的に放送した(甲20,甲23,甲24)。

(イ)新聞等広告

請求人商品については,以下の業界新聞等の記事において,商品の外観写真及び「本体色(外装色)に『ハーモニアスグレー』を採用した」旨の記載と共に紹介されたところ,当該商品の写真はモノクロであり,また,写真のない記事も存在する(甲13)。

A 管材新聞:平成24年1月11日,平成25年3月13日,平成26年2月12日,同年7月23日

B 日本物流新聞:平成24年1月25日,同年2月10日,同年7月25日(ウェブ版),平成26年2月10日,同年7月25日

C プロパン産業新聞:平成23年12月20日,平成24年2月14日,平成25年3月26日,平成26年2月4日,同年7月29日

D ガスエネルギー新聞:平成24年2月15日,平成25年3月18日,平成26年2月10日,同年7月21日

E プロパン新聞:平成25年3月11日,平成26年2月10日,同年7月21日

F 建通新聞:平成25年3月15日,平成26年8月1日

G プロパン・ブタンニュース:平成25年3月18日,平成26年2月3日,同年7月28日

H Housing Tribune:2013年6月号,Vol.467(平成28年2月28日)

I 石油ガス・ジャーナル:平成26年2月14日,同年8月1日

(ウ)自社カタログやガス製品販売会社などを通じた宣伝広告

請求人は,本願商標と同一視し得る色彩を付した請求人商品を掲載した,自社商品のカタログを作成して,工事会社,建築会社,工務店,ガス機器販売店等に頒布している他に,自社ウェブサイトにて公開している(甲2,甲3)。

また,請求人が行う宣伝広告以外にも,各種の業者のウェブサイトによって商品の外観写真を掲載した宣伝広告が行われている(甲14〜17)。

(2)判断

上記(1)アないしウを総合勘案すれば,請求人は,平成24年1月以降,約8年間にわたり継続して,本願商標を指定商品「ガス湯沸かし器」,「家庭用ガス給湯器」の外装色として使用していることが認められる。

しかしながら,本願商標は,未だ自他商品識別力を獲得するまでには至っていないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。

ア 販売実績について

本願商標を用いた商品の販売台数は,2019年(令和元年)までの累計販売台数は約22万7千台であると主張するが,その裏付けとなる客観的な証拠の提出はないから,結局,当該販売実積及び業界におけるシェアは明らかであるとはいえない。仮にこの数量であるとしても,各年ごとの販売台数(甲25)は,指定商品の市場の規模(各年300万台)や他社の販売台数(リンナイ:142万台/年)(別掲2(2))と比較すると少ないといわざるを得ない。また,本願商標が使用されている商品は,請求人取扱いに係る商品の一部であると推認でき,市場におけるシェアは,請求人の販売実績に基づくシェア(4.8%)より低いものといえる。

イ 広告宣伝について

(ア)テレビコマーシャルについて

甲第11号証における「寿命があるよ」編(平成24年(2012年)5月から放映,同28年(2016年)11月に集中放映(甲12)),甲第18号証における「“お得側家”シリーズ」編(同29年(2017年)10月から放映,同30年(2018年)も継続(甲20〜甲24))の内容で,ほぼ全国(東北・関東・東海・中京・関西・九州及びBS放送)で放映されていることがうかがえるが,各放送地域において,定期的なものは週に1回ないし2回程度の放送であり,集中的に放送を行った期間や年末年始の期間においても1日あたり1回ないし2回程度の放送であって,その回数は多いとはいえない。また,CM中に本願商標と同一視し得る色彩を付した商品が表示されるものの,特に商品の色彩について訴求する内容とはいえないことから,色彩部分のみが分離して観察され,需要者に強く印象付けられるとはいい難いものである。

(イ)新聞等広告について

新聞等における広告(甲13)には「本体色(外装色)に『ハーモニアスグレー』を採用した」と記載されているが,掲載されている商品の外観写真はモノクロであり,具体的な色彩は確認できない。また,掲載時期は,平成23年12月ないし同24年2月のほか,同25年3月,同26年2月及び同年7月ないし8月の時期にまとまっており,年に1回ないし3回の散発的なものであって,これらの期間における掲載回数も各紙あたり1回ないし5回程度と多いとはいえない。そして,掲載紙も業界紙であって,購読者は限定的といえるものであり,各業界紙の発行部数等は,その裏付けとなる客観的な証拠の提出はないから不明である。

(ウ)カタログ等について

カタログ(甲2,甲3)については,本願商標と同一視し得る色彩が付された商品が掲載されているところ,請求人は,カタログを作成して,工事会社,建築会社,工務店,ガス機器販売店等に頒布している他に,自社ウェブサイトにて公開していると述べているが,カタログの作成数や頒布数及びウェブサイトの閲覧回数等は不明であり,また,業者による宣伝広告についても,各ウェブサイトの閲覧回数等は不明であるから,どれほどの需要者が当該カタログやウェブサイトを認識しているかを推し量ることができない。

ウ 上記ア及びイのとおり,請求人が提出しているこれらの証拠によっては,本願商標の色彩は,請求人の商標(色彩)として全国的に広く知られて,需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識できるに至っていると認めることはできない。

エ 本願商標に類似する他社の色彩を付した商品が存在すること

本願商標の指定商品を取り扱う業界において,別掲2(1)のとおり,他社の販売する商品について,本願商標を構成するグレーの色彩に近似する色彩が,選択可能な商品の外装色として設定がされており,本願商標又はこれに類する色彩を付した商品が存在していることからすれば,需要者にとって,色彩のみからなる本願商標を見ただけでその商品の出所を識別することは困難な状況にあり,需要者が,本願商標により特定の出所を想起することはないというべきである。

オ 小括

以上のとおり,本願商標は,上記ウよりすれば,請求人の商標として我が国において全国的な周知性を獲得するに至ったものとはいえないこと,また,上記エのとおり,本願商標に類似する色彩を付した他社の商品が存在することから,本願商標が使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

3 請求人の主張について

請求人は,「本願商標と近似する色彩が商品の色彩又はその広告において商品の色彩に使用されたとしても,ごく一部である以上,これをもってグレーの色彩が給湯器において一般的な色彩とすることはできない。本願商標は指定商品である給湯器の業界において特徴的な色彩であり,当該色彩によって需要者に対して請求人の出所に係る商品と認識させることが可能である。本願商標は請求人のみによって大々的に使用されており,需要者に請求人の出所に係る商品を示すものとして広く知られている」旨を主張している。

しかしながら,本願の指定商品を取り扱う業界において,別掲2(1)に示すように,他社の商品は,複数の色彩が選択可能なものとして広告宣伝がされていることや,選択可能な色彩の一つとして本願商標に類似するグレーの色彩が用いられていることよりすれば,グレーの色彩のみからなる本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する需要者は,商品の色彩として,通常使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,その色彩について,商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。そして,上記2(2)のとおり,本願商標が使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとは認められない。

したがって,上記請求人の主張は,採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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