結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2019−900172(T2019−900172/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第6132172号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成30年6月25日に登録出願,第9類「スロットマシン用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能なスロットマシン用プログラム,家庭用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な携帯用液晶画面ゲーム機用プログラム,ダウンロード可能な電子計算機用プログラム,ダウンロード可能な携帯電話機用プログラム,遊戯用器具用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な遊戯用器具用のプログラム」,第28類「家庭用テレビゲーム機,スロットマシン,スロットマシンの筐体,ぱちんこ器具,その他の遊戯用器具,携帯用液晶画面ゲーム機,その他のおもちゃ,人形」を含む第9類,第16類,第24類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同31年2月21日に登録査定され,同年3月22日に設定登録されたものである。
登録第5916783号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおり,標章を付する位置が特定された位置商標であり,平成27年11月11日に登録出願,第9類「コンピュータ用スロットマシンゲームプログラム,コンピュータ用スロットマシンゲームプログラムを記憶した記録媒体,インターネットを利用してダウンロード可能なスロットマシンゲームコンピュータプログラム,インターネットを利用してダウンロード可能な携帯電話機用スロットマシンゲームプログラム,携帯電話機用スロットマシンゲームプログラム,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用スロットマシンゲームプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM 」及び第28類「スロットマシン」を指定商品として,同29年1月27日設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その指定商品中,第9類「全指定商品」及び第28類「全指定商品」の登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
商標法第4条第1項第11号における位置商標と図形商標等との類否判断に関しては,商標審査基準において「位置商標を構成する標章が要部として抽出される場合は,標章が同一又は類似の図形商標等とは,原則として,商標全体として類似するものとする。」とされている。
(1)引用商標の要部について
引用商標(位置商標)は,商標公報の「商標の詳細な説明」に記載のとおりスロットマシンの正面,又は,スロットマシンゲームで表示されるスロットマシンの正面画像の可変表示部の上方左右の位置に表示された左右対称に配置された一対のハイビスカスの図形である(甲2)。
引用商標中に表れた破線部分は形状の一例を示すためのものであり,商標を構成する要素ではないため,左右のハイビスカスの図形が,引用商標の要部であることは明らかである。そして,これらのハイビスカスの図形は,相当離れた位置に配置された左右対称形の図形であるため,個々の図形が自他商品の識別機能を発揮するものであり,各々の図形が独立した要部として認識されるものである。よって,商標審査基準における「位置商標を構成する標章が要部として抽出される場合」に該当する。
(2)引用商標の左端部のハイビスカスの図形と本件商標との対比について
引用商標の左端部に配されたハイビスカスの図形は,右斜め上に向けられた花びらが5枚,その花びらの下に半分隠れた状態の葉が左右に1枚ずつ,そして右斜め上に向けられた,雌しべ及び花糸を蓄えた雄しべから構成される。一方,本件商標は,同じくハイビスカスの図形として認識でき,さらにその構成は,右斜め上に向けられた花びらが5枚,その花びらの下に半分隠れた状態の葉が左右に1枚ずつ,そして右斜め上に向けられた,雌しべ及び花糸を蓄えた雄しべから構成される。
通常自然界のハイビスカスは,花びらは重なり合うように生え,葉も花びらからある程度離れた下の位置に何枚も蓄えるものである(甲3)。これに対して引用商標の左端部に配されたハイビスカスの図形は,花びらが重なり合わず星形に構成し,葉2枚が,花びらのすぐ下から左右に一枚づつ,その半分が花びらで隠れて表されている点に特徴を有している。他方,本件商標も,これらの特徴を全て備えており,引用商標の左端部に配されたハイビスカスの図形の構成態様と酷似するものである。さらに,両商標のハイビスカスの図形は,花びらと共に雌しべ及び花糸を蓄えた雄じべが,右斜め上方向に配置されている点においても共通しており,図形創作者の創意工夫により表現されている特徴部分がことごとく共通する。
そうすると,両商標のハイビスカスの図形の基本的な構成や図形のモチーフは共通しているといい得るものであり,構成における軌を一にするものであって,需要者の印象・記憶に強く残る部分は,基本となる構成部分といわざるを得ない。それに対し,両図形の差異点は花びらや葉の形状において僅かに認められるものの,これらの差異は,両図形に隔離的に接した場合には明瞭に把握できない程度の微差であるか,そうではないとしても,看者の印象に残り難いものである。
したがって,両商標は,商標の構成全体の有する外観的な印象が紛らわしく,外観上,類似する商標であることは明らかである。また,両商標からは,「ハイビスカス」の称呼及び観念が生ずるものであるため,称呼及び観念においても相紛れるおそれがあるというべきである。
(3)引用商標の右端部のハイビスカスの図形と本件商標との対比について
本件商標と引用商標の右端部に配置されたハイビスカスの図形とを対比しても,左端部のハイビスカスの図形が単に対称となったにすぎないものであることから,その視覚的印象は,上記左端部のハイビスカスの図形と大きく変わるものではない。
したがって,本件商標と引用商標の右端部に配置されたハイビスカスの図形についても,全体から受ける外観的印象は類似するといえ,また,両商標からは,共通して「ハイビスカス」の称呼及び観念が生ずるものである。
(4)以上のとおり,本件商標と引用商標の要部である左右の図形とは,外観,称呼及び観念の何れの点においても類似するものであるから,位置商標を構成する標章が類似であることになり,「位置商標を構成する標章が要部として抽出される場合」で「標章が同一又は類似の図形商標等とは,原則として,商標全体として類似するものとする。」との商標審査基準によって,本件商標と引用商標とは商標全体として類似の商標であるといえる。
したがって,商標審査基準によれば,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
申立人は,引用商標を2001年(平成13年)から現在に至るまで,その指定商品に20年近く(甲10),ボーナス告知機能として使用し続けてきた。これだけ長きにわたり引用商標を使用し続けてきたのも,この引用商標の要部であるハイビスカスの図形が需要者の間で人気となり,その人気が不動のものとなったからに他ならない。引用商標の長期にわたる盛大な使用と申立人の絶え間ない営業努力により,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表すものとして,その取引者,需要者の間で広く認識されるに至っているものであり,このことは雑誌及びウェブ記事からも明らかである(甲11〜甲24)。
そうすると,申立人の引用商標におけるハイビスカスの図形は,「お馴染み」と称されるほど,取引者,需要者の中で,申立人の商品を示すものとして相当程度広く認識されていると認めることができる。つまり,申立人がハイビスカスの図形を,取引において需要者が視認し易い特定の場所に配置することを継続して行ってきたことで,需要者はそれを商品を識別する標識であると広く認識するに至っているといえる。
本件商標の指定商品に係る業界においては,スロットマシンの正面等において,図形等を点灯させ,ボーナスを告知するということにより,需要者がその図形等に目を引くという一般的取引実情がある。この点,本件商標権者は,需要者が視認しやすいスロットマシンの正面,又は,スロットマシンゲームで表示されるスロットマシンの正面画像の可変表示部の上方左右に,当然に需要者の目をひくであろうボーナス告知機能を伴い,本件商標と同一の商標を付し,使用している事実がある(甲25,甲26)。この使用は,まさに引用商標において特定された位置における使用であり,それも,引用商標と同様に,ボーナスを光って告知する機能として使用されている。本件商標のハイビスカスの図形は,花びらや葉の部分にグレー掛かった着色が施されているが,実際の使用態様を比較した場合には,非常に酷似した使用態様であることが分かる。
したがって,本件商標をその指定商品に使用した場合には,全体として外観印象が極めて紛らわしく,取引者,需要者をしてその商品の出所について誤認混同を生ずる蓋然性が高いといわざるを得ない。
以上により,上記1で述べた本件商標と引用商標の要部の類否に加え,上記2のとおり,引用商標が需要者の間に広く認識されている点,及び上記のとおり,図形等を点灯させ,ボーナスを告知するという一般的取引実情に沿い,互いの商標が,実際に使用されていることをも考慮して判断すれば,本件商標は引用商標と類似することは明白である。
図形の類否に関する審決及び決定では,互いの商標が使用されている商品等の取引の実情を考慮し,その基本的な構成や図形のモチーフが共通しているものについては,図形の細部に多少の差異があったとしても,構成における軌を一にするものというべきであるとして,外観の類似性を肯定し,互いの商標を類似するものと判断している(甲27,甲28)。
そうすると,本件商標と引用商標とは,構成の軌を一にするものであるから,需要者の印象・記憶に強く残る部分は,ともに基本となる構成部分といわざるを得ない。してみれば,時と所を異にしたときには,殊に,ワンポイントマークとしての使用形態をも勘案すれば,本件商標は,周知な引用商標と相紛れる余地の高いものといわざるを得ない。
よって,両者は,その外観において,商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものであり,類似する商標というべきである。
以上のとおり,本件商標と引用商標は,その外観,称呼及び観念において互いに類似するものであり,また,引用商標の特定の位置の要素及び取引の実情を考慮し総合的に判断をすれば,両商標は,相紛れるおそれのある類似する商標と認められるべきものであることは明らかである。さらに,本件商標の指定商品中の第9類「スロットマシン用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能なスロットマシン用プログラム,家庭用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記噫させた記憶媒体,ダウンロード可能な携帯用液晶画面ゲーム機用プログラム,ダウンロード可能な電子計算機プログラム,ダウンロード可能な携帯電話機用プログラム」及び第28類「スロットマシン,スロットマシンの筐体,ぱちんこ器具,その他の遊戯用器具」と引用商標の指定商品は同一又は類似の商品である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
当審において,令和元年10月17日付けで,本件商標権者に対し,「本件商標と引用商標とは,類似する商標であって,かつ,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似する商品であるから,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるため,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
本件商標権者は,上記第4の取消理由に対して,要旨以下のように意見を述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第110号証を提出している。
(1)本件商標
本件商標は,1輪のハイビスカスをモチーフとしており,2枚の葉,5枚の花弁及び花弁の中心から突出する花柱並びに雄しべ及び雌しべからなる。花柱が左下から右上方向に突出している。2枚の葉は,1枚が手前左下部に配置され,もう1枚は奥側右下部に,いずれも花弁の下に配置されている。手前左下部に配置された葉の葉脈は,主脈から5本の側脈が枝分かれしており,奥側右下部に配置された葉の葉脈は,主脈から6本の側脈が枝分かれしている。2枚の葉の葉先は,やや上に向いている。葉端の鋸歯(ギザギザ)が明確に表れている。5枚の花弁の大きさは略同一である。このため,花弁は全体として星形状となっている。また,花弁には花脈は描かれていない。花弁には濃淡の模様が施されており,花弁の端部はやや下に向いている。
これに加えて,2枚の葉の葉先は,やや上に向いているのに対し,5枚の花弁の端部はやや下に向いている。また,花弁には濃淡の模様が施されているため,本件商標は全体として,立体的な印象を受ける。2枚の葉には葉脈として,主脈と側脈が明瞭に沢山表れているのに対し,5枚の花弁には花脈が描かれていないため,葉と花弁の区別がはっきりしている。
(2)引用商標
引用商標は,位置商標であり,ハイビスカスをモチーフとした図形がスロットマシンの正面画像の可変表示部の上方左右に各1輪ずつ,合計で2輪配されている。左右の図形は各々,2枚の葉,5枚の花弁及び花弁の中心から突出する花柱と雄しべからなる。雌しべは描かれていない(以下,左右の図形のうち,左側の一つを「引用図形商標」という場合がある。)。
引用図形商標は,花柱が左下から右上方向に突出している。2枚の葉は,1枚が手前左下部に配置され,もう1枚は奥側右下部に,いずれも花弁の下に配置されている。手前左下部に配置された葉の葉脈は,主脈から2本の側脈が枝分かれしており,奥側右下部に配置された葉の葉脈は,主脈から2本の側脈が枝分かれしているにすぎない。2枚の葉の葉先は,まっすぐ伸びている。葉端に鋸歯は表れていない。5枚の花弁のうち手前側下部の3枚の花弁は小さく,奥側上部の2枚の花弁は大きい。このため,花弁は全体として略菱形状となっている。また,花弁には花脈が描かれている。花弁には模様は施されておらず,花弁の端部はまっすぐ伸びている。
これに加えて,2枚の葉の葉先と5枚の花弁の端部は,まっすぐ伸びている。また,葉及び花弁は白抜きで模様がないため,引用図形商標は全体として,平面的な印象を受ける。2枚の葉には葉脈として,主脈から2本の側脈が伸びているにすぎず,5枚の花弁には花脈が明瞭に描かれているため,葉と花弁の区別がはっきりしない。
(3)本件商標と引用商標について
ア 判決における判断手法
商標は商品の識別標識であるから,1個の商標は図形等が組み合わされたものであり,従って,商標の類否の判断においても原則的にはこれらの部分を総括した全体が識別標識として取引者,需要者の心理にいかに反映し理解されるかという見地からなされなければならず,その意味において,商標類否の判断は対象を全体的に観察した上でなされるべきであって,これを前提とせずにその構成要素の各部分のみを摘出比較するのみでは足りない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決,最高裁昭和37年(オ)第953号昭和38年12月5日第一小法廷判決,最高裁平成3年(行ツ)第103号平成5年9月10日第二小法廷判決,最高裁平成19年(行ヒ)第223号平成20年9月8日第二小法廷判決同旨)。
商標法が一商標一出願を前提としており(商標法第6条第1項),一つの商標登録出願では,「商標ごとにしなければならない」と定められ,複数の商標を出願したと認められる場合は,同法第6条第1項の要件を具備しないものである以上,引用商標は,1つのマークとして認識できる程度に外観上まとまりがあるものであり,軽々に構成要素の各部分のみを摘出されることがあってはならない。
イ 引用商標の指定商品「スロットマシン」の取引の実情
商標法第4条第1項第11号の判断基準時である本件商標の登録査定時において,スロットマシンでは,いわゆる「沖スロ」というジャンルが確立されており,同ジャンルのスロットマシンには,ハイビスカスを模したイラストが多数の機種で使用されているという実情がある。
また,本件商標と引用商標が重複する指定商品において,本件商標の登録査定時にハイビスカスをモチーフにした図柄が多数商標登録されている(乙90〜乙107)。
そして,2019年(平成31年)2月27日時点では,スロットマシンの正面画像の可変表示部の上方左右にハイビスカスをモチーフにした図柄が付されている機種が多数販売されている(乙3〜乙25)。また,スロットマシンの正面画像の可変表示部の上方左右以外にも,ハイビスカスをモチーフにした図柄が付されている機種が多数販売されている(乙26〜乙89)。
このように,指定商品「スロットマシン」の業界では,当該機種の正面画像の可変表示部の上方左右にハイビスカスをモチーフにした図柄を配することは「沖スロ」の特徴として一般的に行われており,ハイビスカスの図柄を識別標章とみるのであれば,一対のハイビスカスの図形は常に一体のものとして,取引者,需要者に看取されるとみるのが相当である。
引用商標は位置商標であって,当該商標が使用される指定商品は,実物のスロットマシン又はスロットマシンゲームで表示されるスロットマシンの正面画像の正面の可変表示部の上側左右に図形を配したもののみに限られることから,指定商品「スロットマシン」以外の引用商標の指定商品(「コンピュータ用スロットマシンゲームプログラム」等)においても同様である。
以上を前提とすると,引用商標の左右一対の図形をそれぞれ個別のものとして摘出することは妥当ではなく,図形全体を一つの標識として把握する必要がある。
ウ 本件商標と引用商標との比較
本件商標は,上記(1)のとおり,1輪のハイビスカスをモチーフとしており,2枚の葉,5枚の花弁及び花弁の中心から突出する花柱並びに雄しべ及び雌しべからなる。
一方,引用商標は,上記(2)のとおり,位置商標であり,ハイビスカスをモチーフとした図形がスロットマシンの正面画像の可変表示部の上方左右に各1輪ずつ,合計で2輪配されている。左右の図形は各々,2枚の葉,5枚の花弁及び花弁の中心から突出する花柱と雄しべからなる。雌しべは描かれていない。
両者を対比すると,その構成における特徴に照らして,外観上,明らかに区別し得るものである。
また,称呼及び観念については,両者とも直ちに具体的な事物をあらわしたものではないから,特定の称呼及び観念は生じないものである。
したがって,本件商標と引用商標とは,類似しない商標である。
エ 本件商標と引用図形商標との比較
引用図形商標を抽出して本件商標と比較したとしても,本件商標の2枚の葉の葉先は,やや上に向いているのに対し,5枚の花弁の端部はやや下に向いている。また,花弁には濃淡の模様が施されているため,本件商標は全体として,立体的な印象を受ける。一方,引用図形商標の2枚の葉の葉先と5枚の花弁の端部は,まっすぐ伸びている。また,葉及び花弁は白抜きで模様がないため,引用図形商標は全体として,平面的な印象を受ける。
また,本件商標の2枚の葉には葉脈として,主脈と側脈が明瞭に沢山表れ,葉端の鋸歯(ギザギザ)が明確に表れており,葉と花弁の輪郭が明確に異なる。また,5枚の花弁には花脈が描かれていないため,葉と花弁の区別がはっきりしている。一方,引用図形商標の2枚の葉には葉脈として,主脈から2本の側脈が伸びているにすぎず,葉端に鋸歯は表れておらず,葉と花弁の輪郭が似たものとなっている。また,5枚の花弁には花脈が明瞭に描かれており,葉脈と相紛らわしく,葉と花弁の区別がはっきりしない。
さらに,本件商標の5枚の花弁の大きさは略同一であり,花弁は全体として星形状となっているのに対し,引用図形商標の5枚の花弁のうち手前側下部の3枚の花弁は小さく,奥側上部の2枚の花弁は大きいため,花弁は全体として略菱形状となっており,一見してその形状が異なる。
このように,両者を対比すると,その構成における特徴に照らして,外観上,明らかに区別し得るものである。
また,称呼及び観念については,両者とも直ちに具体的な事物を表したものではないから,特定の称呼及び観念は生じないものである。
したがって,本件商標と引用図形商標とは,類似しない商標である。
オ その他
他の登録例において,本件と同様にスロットマシンの正面画像の可変表示部の上部左右に配されているアゲハチョウが左右の羽根を広げたような図形を有するもの(乙108)と,アゲハチョウが左右の羽根を広げたような図形を有するもの(乙109,乙110)とは,本件のように構成を共通にするものであるから,デザインの構成が軌を一にするものといえ,看者に近似した印象を与えるものとしてみるのが相当である,にもかかわらず,両者を類似しないとして適法に登録されたものがある。
この判断手法を本件商標と引用商標との類否判断に適用すると,本件商標と引用商標及び引用図形商標とは類似しない商標であるという結論が導き出されて当然である。
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,花びらは右斜め上方に向けられた5枚が五角形を呈するように配され,その花びらの下に半分隠れた状態の葉が左右に1枚ずつ配され,花びらの中央に右上方に向けられた雌しべとおぼしきものが配され,全体として,モノトーンで花を表したものである。
(2)引用商標
ア 引用商標は,別掲2のとおり,「商標」及びそれを特定する「商標の詳細な説明」からなる位置商標である。
イ 引用商標中,位置商標を構成する要素(図形)は,スロットマシンの正面の可変表示部の上部左右において実線で表した図形(標章)からなるものである。
当該図形(標章)は,その一つが花びらを上方に向けられた5枚が五角形を呈するように配され,その花びらの下に半分隠れた状態の葉が左右に1枚ずつ配され,花びらの中央に上方に向けられた雌しべとおぼしき図形が配され,全体として,実線で花を表したものといえ,スロットマシンの正面画像の可変表示部の上方右左に配されているものである。
そして,当該図形(標章)は,引用商標の指定商品との関係においては,独立して出所識別標識として機能を有するものである。
一方,引用商標中に表された破線部分は,当該図形(標章)を引用商標中に付する位置を特定するものであり商標を構成する要素ではない。
ウ 引用商標中,実線で表した図形(標章)は,スロットマシンの正面画像の可変表示部の上方右左に配され,視覚的に分離して配されており,必ずしも1対のものでなく,左右の図形一つ一つが独立して,取引者,需要者に看取されるものとみるのが相当であるから,それぞれ独立して出所識別標識として機能を有するものといえる。
エ 以上よりすると,引用商標は,その構成中の図形の一つを要部として抽出し,これを本件商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標の要部である引用図形商標との類否を検討すると,外観において,両者は,花びらは上方に向けられた5枚が五角形を呈するように配され,その花びらの下に半分隠れた状態の葉が左右に1枚ずつ配され,花の中央に上部に向けられた雌しべとおぼしき図形が配されている構成において共通するものである。
そして,両者は,本願商標がモノトーンにより表され,引用図形商標が実線により表されている点において相違するとしても,上記のとおり,その構成において共通するものであるから,デザインの構成が軌を一にするものといえ,看る者に近似した印象を与えるとみるのが相当である。
また,称呼及び観念については,上記のとおり構成全体をもって,それぞれ特徴を備えた図形商標を表したものと認識されるものであるとしても,それが直ちに具体的な事物を表したものではないから,特定の称呼及び観念は生じないものである。
してみれば,本件商標と引用図形商標とは,両者を時と場所を異にしてみた場合において,両者は近似した印象を与え,外観上,相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
したがって,本件商標と引用商標とは,類似する商標である。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品中,第9類「スロットマシン用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能なスロットマシン用プログラム,家庭用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な携帯用液晶画面ゲーム機用プログラム,ダウンロード可能な電子計算機用プログラム,ダウンロード可能な携帯電話機用プログラム,遊戯用器具用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な遊戯用器具用のプログラム」及び第28類「家庭用テレビゲーム機,スロットマシン,スロットマシンの筐体,ぱちんこ器具,その他の遊戯用器具,携帯用液晶画面ゲーム機,その他のおもちゃ,人形」(以下,それらをまとめて「取消対象商品」という。)は,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
(5)小括
以上のとおり,本件商標は引用商標と類似する商標であって,本件商標の指定商品中の取消対象商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
しかしながら,上記取消対象商品以外の指定商品は,引用商標の指定商品とは非類似の商品である。
したがって,本件商標は,その指定商品中の取消対象商品について商標法第4条第1項第11号に該当するが,それ以外の指定商品については,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)本件商標権者は,「商標は商品の識別標識であるから,1個の商標は図形等が組み合わされたものであり,したがって,商標の類否の判断においても原則的にはこれらの部分を総括した全体が識別標識として取引者,需要者の心理にいかに反映し理解されるかという見地からなされなければならず,その意味において,商標類否の判断は対象を全体的に観察した上でなされるべきであって,・・・商標法が一商標一出願を前提としており(商標法第6条第1項),一つの商標登録出願では,『商標ごとにしなければならない』と定められ,複数の商標を出願したと認められる場合は,同法第6条第1項の要件を具備しないものである以上,引用商標は,1つのマークとして認識できる程度に外観上まとまりがあるものであり,軽々に構成要素の各部分のみを摘出されることがあってはならない。」及び「引用商標の左右一対の図形をそれぞれ個別のものとして摘出することは妥当ではなく,図形全体を一つの標識として把握する必要がある。」と主張している。
しかしながら,引用商標は,標章を付する位置が特定された位置商標であって,左右に1つずつ花の図形を表す構成態様からなるものであるから,これらの図形がやや離れた場所に位置しているのであれば,左右の図形からなる結合された標章が特定の位置に付されているものとみるのが自然である。
そうすると,引用商標は,それぞれの図形に自他商品としての出所識別標識としての機能を有するものであるから,これを分離抽出して,他の商標と比較することは許されるものである。
そして,引用商標の構成態様からは,必ずしも左右一対でみる特段の理由も見いだせないものである。
したがって,引用図形商標を要部として抽出して,これを本件商標と比較して商標の類否を判断することは許され得るものである。
(2)本件商標権者は,他の登録例において,本件のようにスロットマシンの正面画像の可変表示部の上部左右に配されている個々のアゲハチョウが左右に羽根を広げたような図形を有するもの(乙108)と,アゲハチョウが左右に羽根を広げたような図形を有するもの(乙109,乙110)とは,本件のように構成を共通にするものであるから,デザインの構成が軌を一にするものといえ,看者に近似した印象を与えるものとしてみるのが相当である,にもかかわらず両者を類似しないとして適法に登録されたものがある。この判断手法を本件商標と引用商標との類否判断に適用すると,本件商標と引用商標及び引用図形商標とは類似しない商標であるという結論が導き出される旨の主張をしている。
しかしながら,商標の類否の判断は,対比する商標について個別具体的に判断されるべきものであるところ,上記登録例は,商標の具体的構成等において本件とは事案を異にするものであり,本件商標については,上記3及び4において判断したとおりであるから,当該登録例をもってその判断が左右されることはない。
よって,本件商標権者の上記主張は,いずれも採用することができない。
以上のとおり,本件商標の登録は,第9類「スロットマシン用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能なスロットマシン用プログラム,家庭用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な携帯用液晶画面ゲーム機用プログラム,ダウンロード可能な電子計算機用プログラム,ダウンロード可能な携帯電話機用プログラム,遊戯用器具用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な遊戯用器具用のプログラム」及び第28類「家庭用テレビゲーム機,スロットマシン,スロットマシンの筐体,ぱちんこ器具,その他の遊戯用器具,携帯用液晶画面ゲーム機,その他のおもちゃ,人形」(取消対象商品)については,商標法第4条第1項第11号に該当し,その登録は同条第1項に違反してされたものと認められるから,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。
しかしながら,本件異議申立てに係るその余の指定商品については,取り消す理由がないから,商標法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。