Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2019−900192(T2019−900192/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第6137205号商標(以下「本件商標」という。)は,「Junior Economic Forum」の欧文字を標準文字で表してなり,平成30年6月4日に登録出願,第41類「セミナーの企画・運営又は開催」を含む第41類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として,同31年2月28日に登録査定され,同年4月12日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第1309337号商標(以下「引用商標」という。)は,第41類「WORLD ECONOMIC FORUM」の欧文字を横書きしてなり,2016年(平成28年)6月28日に国際商標登録出願,第16類,第35類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同29年7月21日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標はその指定役務中第41類「セミナーの企画・運営又は開催」(以下「申立役務」という。)について,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第83号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,標準文字で「Junior Economic Forum」と書してなり,「Junior」,「Economic」及び「Forum」の3つの英単語を結合してなるものであって,かかる構成から「ジュニアエコノミックフォーラム」,「エコノミックフォーラム」の称呼が生じ得,「子供のための経済フォーラム」,「経済フォーラム」の観念が生じる。
(2)引用商標
引用商標は,「WORLD ECONOMIC FORUM」と欧文字で横書きしてなり,「WORLD」,「ECONOMIC」及び「FORUM」の3つの英単語を結合してなるものであり,かかる構成に相応し「ワールドエコノミックフォーラム」,「エコノミックフォーラム」の称呼が生じ得,「世界の経済フォーラム」,「経済フォーラム」の観念が生じる。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 全体構成
本件商標と引用商標は,いずれも3つの英単語により構成され,各語とも我が国でも広く理解される語であっていずれかの語が特に傑出して強い結合力を有するとはいえず,その各構成要素を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強い結合力を有する語で構成されるものではないから,これらの類否判断においては各要素を分離して判断するのが妥当と思われる。
ここで,両商標を構成する各語の語義を検討するに,「Junior」,「WORLD」及び「Economic(ECONOMIC)」の語はそれぞれ「Forum(FORUM)」を修飾する形容詞的な働きをするから,本件商標と引用商標において商標の根幹をなすのは「Forum(FORUM)」の語であるといえる。そして,商標全体では,「Forum(FORUM)」の語から離れた「Junior」及び「WORLD」よりも,これと直接に連なる「Economic(ECONOMIC)」の語のほうが「Forum(FORUM)」との結合力が強いといえる。よって,両商標の比較においては「Economic Forum(ECONOMIC FORUM)」の部分を抽出して判断するのが妥当と思われる。
イ 本件商標と引用商標の類否について
上記アで述べたとおり,本件商標と引用商標は「Economic Forum(ECONOMIC FORUM)」の部分を分離して抽出するのが妥当であり,当該部分は大文字と小文字の相違こそあるものの同一の欧文字で構成される。そうとすれば,本件商標と引用商標は,それらの中心となる「Economic Forum(ECONOMIC FORUM)」が共通する以上,外観上類似するものである。
また,上記(1)及び(2)のとおり,本件商標から「ジュニアエコノミックフォーラム」及び「エコノミックフォーラム」の称呼,引用商標から「ワールドエコノミックフォーラム」及び「エコノミックフォーラム」の称呼が生じる。「ジュニアエコノミックフォーラム」と「ワールドエコノミックフォーラム」は比較的冗長な音構成であるから通常の取引者,需要者がこのような冗長な称呼をもって取引に当たるとは考え難く自然な称呼とはいえない。
そうすると,本件商標及び引用商標は一般には「エコノミックフォーラム」の称呼をもって認識される。
このことはまた,上述した商標の全体構成から「Economic Forum(ECONOMIC FORUM)」が分離抽出されやすいという観点からも妥当である。このように,本件商標と引用商標は,ともに「エコノミックフォーラム」という称呼を生じるから,称呼上類似する。
さらに,本件商標は「子供のための経済フォーラム」及び「経済フォーラム」の観念,引用商標は「世界の経済フォーラム」及び「経済フォーラム」の観念が生じ,両者は「経済フォーラム」という観念を生じる点で共通する。そして両商標においては全体構成から「Economic Forum(ECONOMIC FORUM)」の部分が強く認識されるから,当該部分に応じて「経済フォーラム」の観念が強く認識される。
したがって,本件商標と引用商標は観念上類似する。
以上より,本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念において類似する類似の商標である。
(4)役務の類似性
本件商標の指定役務「セミナーの企画・運営又は開催」と引用商標の第41類に属する指定役務は,ともに類似群コード41A03に属し,互いに類似する。
(5)小括
以上より,本件商標と引用商標は互いに類似の商標であって,同一又は類似の役務について使用されるものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標と申立人
申立人(引用商標の商標権者)は,毎年1月にスイスのダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会,いわゆる「ダボス会議」を主催する世界的に著名な国際機関であり,「経済,政治,学究,その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより,世界,地域,産業の課題を形成し,世界情勢の改善に取り組む,独立した国際機関」であり,「約2500名の選ばれた知識人,ジャーナリスト,多国籍企業経営者や国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会し,健康や環境等を含めた世界が直面する重大な問題について議論する場」を提供しており(甲3),日本においても幅広い活動を展開している。
2009年9月には,世界で四番目の拠点として世界経済フォーラムJapan事務所が設立された(甲4,甲5)。また,2013年6月に東京で開催された「World Economic Forum Japan Meeting」には,安倍首相,緒方元国連難民高等弁務官など社会的に強い影響力を持つ各界のリーダーが参加し世界的課題に関する提言をするなどした(甲6)。2018年1月には,世界経済フォーラム新任代表として江田氏を迎え,新たなスタートを切っている(甲7)。同年夏には,経済産業省などとの提携を得て,世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターが設立されたことが知られている(甲8〜甲10)。このように,日本は申立人の活動において世界的にも最も重要な拠点のひとつとなっている。
ところで,申立人は,日本では年次総会が開催される毎年1月に新聞やテレビニュースなどで取り上げられることが多い。特に,2019年の年次総会は安倍首相がスピーチをしたことで注目を集め,その様子は,テレビ,新聞各紙(甲第11〜甲20),その他各種マスメディアで報道されたほか,首相官邸や外務省のホームページでも紹介されている(甲21,甲22)。安倍首相は2014年の年次総会でも基調講演を行い,各メディアで大きく報道された(甲23〜甲25)。
さらに,申立人は,各国の情報技術体制に基づいた競争力を評価する世界競争力報告書,各国における男女間格差を評価する世界ジェンダーギャップ報告書など数々の指標を毎年発表している。これらは我が国でも広く紹介され,世界情勢,他国と比較した我が国の情勢を客観的に知るための重要指標として報道分野をはじめとして広く利用されている(甲26〜甲74)。
世界国際フォーラム年次総会は,各国首脳や世界をけん引する著名人が集うことでも知られ,例えば2019年には安倍首相,メルケル独首相など,2018年にはトランプ米大統領,モディ印首相,ジェンティローニ伊首相,マクロン仏大統領,メイ英首相,トルドー加首相など世界各国の首脳が参加した(甲75,甲76)。このように,世界経済フォーラム年次総会の内容は世界中の指導者,財界人,研究者,ジャーナリストの関心を集めるものであり,その求心力,影響力,信頼性,知名度は日本内外を問わず極めて高いものといえる。
(2)出所の混同の可能性
上述のとおり,申立人の活動は日本のみならず世界的に極めて著名であって絶大な発信力,影響力を誇り,引用商標「WORLD ECONOMIC FORUM」も同人の略称として極めて広く知られている。また,申立人の活動は政治,経済,社会など多岐にわたり,次世代を担うリーダーとなるべき若者の選出,育成を目指すYoung Global Leadersプロジェクトや,総会へ高校生など青少年の招へいなども行っており,そのようなプロジェクトから派生して青少年や子供を取り巻く生活環境に関わるムーブメントが起きることも珍しくない(甲77〜甲83)。申立人の活動は時として10代,20代の若い世代にも及ぶものであり,また,強い影響力を発揮する。
そうすると,申立人が展開する青少年の招へい活動や彼らの主張を共有し発信する取組み,申立人(World Economic Forum)の知名度や絶大な影響力,活動の広範さゆえに,本件商標がその指定役務に使用されると,その役務が需要者において,申立人による新たなプロジェクトに係るものであるかのような混同を生じるおそれがあり,さらには,商標権者と申立人との間に経済的又は組織的に何らかの関係があると誤認され出所の混同が生じるおそれがある。
(3)小括
以上より,本件商標は,申立人の役務と混同を生じるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証,同人の主張及び職権調査(インターネット情報,新聞記事情報など,以下同じ。)によれば,申立人は,毎年,スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)を主催する国際機関であること,世界のトップリーダーが一堂に会し,健康や環境等を含めた世界が直面する重大な問題について議論する場を提供していること,「世界競争力報告書」など各種研究報告書を発表していること,高校生など青少年を招へいし彼らの主張を共有し発信する取組みを行っていること,2009年9月に日本事務所「世界経済フォーラムJapan」を設立したこと,2018年7月に経済産業省などと連携し「第四次産業革命日本センター」を設立したこと,及びダボス会議には我が国を含む世界各国の首脳が参加していることなどが認められ,我が国においても,それらに関連する報道が多数なされている(甲3,甲4,甲7〜甲10等,職権調査)。
しかしながら,日本語の証拠において,「WORLD ECONOMIC FORUM」の文字が確認できるものは,「世界経済フォーラムJapan」のウェブページなど(甲7〜甲9)のほか,記事中の写真の背景に該文字が表されているものがいくつかある(甲11,甲12,甲17,甲19,甲21,甲22,甲25)にすぎず,また,申立人を「世界経済フォーラム(World Economic Forum)」と記載しているもの1件(甲3)を除いて,いずれも申立人は,「世界経済フォーラム」と表記されている(甲4,甲7〜甲10ほか,職権調査)。
(2)上記(1)の事実からすれば,「世界経済フォーラム」の文字は,我が国において,申立人及び同人の業務に係る役務を表示するものとして,ある程度広く認識されているものと認め得るとしても,「WORLD ECONOMIC FORUM」及び「World Economic Forum」の文字は,該文字が確認できる証拠は限られていることから,申立人及び同人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
したがって,「WORLD ECONOMIC FORUM」の文字からなる引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人及び同人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,上記第1のとおり「Junior Economic Forum」の欧文字を標準文字で表してなり,その構成文字は同書同大でまとまりよく一体的に表され,これから生じる「ジュニアエコノミックフォーラム」の称呼も,格別冗長というべきものでなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして,観念については,本件商標を構成する「Junior」,「Economic」及び「Forum」の3語それぞれは我が国において親しまれた英単語といえるものの,それらを結合した「Junior Economic Forum」の構成文字全体として特定の意味を有するものではないから,本件商標は特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
さらに,本件商標は,その構成中のいずれかの文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせない。
そうすると,本件商標は,その構成文字全体が一体不可分のものであって,「ジュニアエコノミックフォーラム」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものといわなければならない。
(2)引用商標
引用商標は,上記第2のとおり「WORLD ECONOMIC FORUM」の欧文字を横書きしてなり,その構成文字は同書同大でまとまりよく一体的に表され,これから生じる「ワールドエコノミックフォーラム」の称呼も,格別冗長というべきものでなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして,観念については,引用商標を構成する「WORLD」,「ECONOMIC」及び「FORUM」の3語それぞれは我が国において親しまれた英単語といえるものの,それらを結合した「WORLD ECONOMIC FORUM」の構成文字全体として特定の意味を有するものではないから,引用商標は特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
さらに,引用商標は,その構成中のいずれかの文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせない。
そうすると,引用商標は,その構成文字全体が一体不可分のものであって,「ワールドエコノミックフォーラム」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものといわなければならない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否を検討すると,両者は,外観において,文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において「Junior」と「WORLD」の文字の差異を有するものであって,その差異が両者の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく,両者を離隔的に観察しても相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に,称呼においては,両者は称呼の識別上重要な要素である語頭において「ジュニア」と「ワールド」の音の差異を有するものであって,その差異が両者の称呼全体に与える影響は大きく,両者をそれぞれ一連に称呼しても語調語感が異なり,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに,観念においては,両者は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において相紛れるおそれがなく,観念において比較できないものであるから,両者の外観,観念及び称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
その他,両者が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標は非類似の商標であるから,本件商標の指定役務中,申立役務と引用商標の指定役務が類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人及び同人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであること,上記2のとおり本件商標と引用商標は非類似の商標であって別異の商標というべきものであること,及び引用商標は我が国で親しまれた3つの英単語を結合してなるものであって独創性の程度が高いとはいえないことからすれば,本件商標は,看者をして引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務中申立役務について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の指定役務中,申立役務についての登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
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