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Trademark Appeal Case

単色商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−10786(T2018−10786/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおり,色彩のみからなる商標であって,赤色(CMYKの組合せ:C20%,M100%,Y100%,K0%)のみからなるものであり,第9類「光電子増倍管」を指定商品として,平成28年9月28日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は,「商品又は商品の包装に使用される色彩は,多くの場合,商品の魅力向上等のために選択されるものであって,商品の出所を表示し自他商品を識別するための標識として認識し得ないものである。そうすると,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,商品又は商品の包装に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,本願商標は,単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,本願商標は,提出された証拠における本願商標の使用状況や使用態様からは,色彩のみからなる本願商標が独立して識別力を有するに至っているとはいえないこと,本願商標の使用実績が明らかではないこと等から,本願商標は,同法第3条第2項に規定する要件を具備するものとは認められない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知及びそれに対する請求人の対応

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲2に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和元年12月6日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。

しかしながら,請求人は,上記証拠調べ通知に対し,何ら意見を述べていない。

第4 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本願商標は,上記第1のとおり,色彩のみからなる商標であって,赤色(CMYKの組合せ:C20%,M100%,Y100%,K0%)のみからなるものであるところ,赤色は,「七色の一つ。血のような色。また,緋色・紅色・朱色・茶色などの総称。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)であることからすると,本願商標は,特異な色彩からなるものであるとはいえない。

また,本願商標は,第9類「光電子増倍管」を指定商品とするものであるところ,当該「光電子増倍管」は,商品「フォトダイオード」,「分光器・分光センサ」や各種「センサ」等とともに,商品「光センサ」に属する商品であると認められる(別掲2(1))。

(2)赤色は,本願の指定商品「光電子増倍管」及び商品「フォトダイオード」,「分光器・分光センサ」,「光センサ」等を取り扱う業界において,商品の装飾,又は,商品を取扱う企業における商標の基調色・ウェブサイトの基調色・展示会等におけるブースの基調色等として,請求人以外の第三者によって広く使用されているというのが実情である(別掲2(2))。

(3)そうすると,赤色の色彩のみからなる本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する需要者は,商品の装飾等について通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。

したがって,本願商標は,商品の特徴(色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというべきものであり,商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は,本願商標を,永年,様々な態様で継続的かつ大々的に使用してきた結果,本願商標は,商標法第3条2項の要件を具備しており,登録されるべき商標である旨主張し,証拠として,当審において資料1ないし資料49(枝番号を含む。)を提出している。

なお,本審決においては,当該各証拠について,順次,甲第1号証ないし甲第49号証(枝番号を含む。)と読み替える。

そこで,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。

(1)請求人及び請求人による赤色の使用について

ア 請求人は,微弱な光を検出する「光電子増倍管」の製造等を行う企業である(甲1,甲6の19,甲8の14ほか)。

イ 本願商標の赤色と同一性を損なわない赤色(以下「本願赤色」という。)は,(ア)平成24年3月改訂版及び記載内容が平成28年4月現在の請求人の業務に係る電子管製品の総合カタログ表紙(左上部)の「HAMAMATSU/PHOTON IS BUSINESS」の文字の背景色(甲5,甲37,甲45の1),(イ)2012年(平成24年)から2015年(平成27年)の間に公表された請求人の業務に係る商品「光電子増倍管」(以下「請求人商品」という。)のニュースリリースの「HAMAMATSU」の文字の色彩及び「NEWS/RELEASE」文字の背景色(甲26,甲39),(ウ)2013年(平成25年),2014年(平成26年),2015年(平成27年)にそれぞれ開催された展示会における請求人ブースや請求人商品の説明用パネル・プレート等の「HAMAMATSU」の文字及びその他の文字の色彩や背景色,並びに同商品の説明用パネル・プレート等の最上部の横線等の色彩(甲29〜甲31,甲40の4〜6),(エ)請求人の「会社案内2016」における「HAMAMATSU」の文字の色彩,及び右端又は左端の縦線の色彩(甲1),(オ)平成29年及び平成27年の請求人商品に関する資料における「HAMAMATSU」の文字の色彩等(甲3,甲4),(カ)請求人商品の出荷時の包装箱の「HAMAMATSU」の文字の色彩及び同文字の直下に位置する四角形の色彩(甲25の1,甲38の1・8)として使用されていた。なお,当該包装箱が使用された請求人商品の出荷時期は確認できない。

(キ)また,請求人商品は,2002年(平成14年),2013年(平成25年)及び2015年(平成27年)にそれぞれノーベル物理学賞を受賞した者の研究等に貢献し,電気・電子技術分野における偉業をたたえる賞とされる「米国電気電子学会(IEEE)」のマイルストーンに認定され,それらについて,我が国の多数の新聞,書籍,ウェブサイト等により紹介されたほか,浜松市の小中学校や,我が国の博物館等において,一般に紹介されたところ(甲6の8〜20,甲7の1〜12,甲8の1〜3・5・6〜8・12,13,15,甲10,甲11,甲12,甲16の4,甲17の1〜3・6・7・9・11・12・15〜22・25・26,甲20の1〜3,甲24,甲35,甲41の8〜20),これらの紹介記事において,本願赤色が請求人商品に関して使用されていると確認できるものは15件ほどであり,その使用態様は,請求人商品の展示用プレート又は説明用スライドの「HAMAMATSU」の文字の色彩や背景色として使用されているものや,同スライドの最上部に位置する横線の色彩として使用されているものである(甲7の2・4・5・12,甲10の5・13・14,甲11の14・21・26,甲17の9・15,甲24の2・3・18)。また,赤色ではない青色が,請求人商品の展示用プレートの文字の背景色として使用されているものも2件確認できる(甲11の22・23)。

(ク)提出された全証拠によれば,本願赤色が,請求人商品それ自体に使用されている事実は確認できず,また,上記(ア)ないし(キ)の請求人が作成した資料(会社案内,製品カタログ等)及び請求人商品の紹介記事(新聞,書籍,ウェブサイト等)のいずれにおいても,本願赤色が請求人商品を表示するものである旨の記載は確認できない。

(2)請求人商品の市場占有率等について

請求人商品の我が国の市場占有率については,「ふじのくにMyしずおか日本一」(静岡県の情報誌)の2013年(平成25年)版ないし2017年(平成29年)版,静岡県の公式ホームページ(平成29年9月29日更新)及び浜松市の平成29年度IR資料において,我が国における生産量がシェア100%である旨紹介され,また,2016年3月18日付け,2017年3月15日付け,2018年3月14日付けの請求人の格付けに関する公表資料(株式会社日本格け研究所)において,「市場をほぼ独占」である旨紹介された(甲6の1〜7,甲41の1〜7,甲47)。

なお,これらの紹介記事において,本願赤色は確認できず,また,本願赤色が請求人商品を表示するものである旨の記載は確認できない。

(3)判断

上記(1)及び(2)によれば,請求人は,平成24年から約8年間にわたり,請求人の業務に係る電子管製品の総合カタログ,請求人商品に関するニュースリリース,展示会における請求人ブースや請求人商品の説明用パネル・プレート等,請求人の会社案内,請求人商品に関する資料,請求人商品の展示用プレート又は説明用スライド等において継続して本願赤色を使用してきたこと,使用時期は明らかではないものの,請求人商品の出荷時の包装箱に本願赤色を使用したこと,請求人商品は,ノーベル物理学賞を受賞した者の研究等に複数回貢献し,米国において電気・電子技術分野における偉業をたたえる賞を受賞し,それらについて,我が国においても多数報道されたこと,請求人商品は,浜松市の小中学校や,我が国の博物館等において,一般に紹介されたこと,請求人商品の市場占有率は,平成25年からほぼ100%であることが認められる。

しかしながら,他方で,本願赤色の使用態様は,主に「HAMAMATSU」の文字や他の文字の色彩又は背景色,「HAMAMATSU」の文字の直下に位置する四角形の色彩として本願赤色が使用されているものであり,これらは,本願赤色が「HAMAMATSU」等の文字から分離して使用されていたものとはいえない。また,請求人商品の説明用パネル・プレート等の最上部の横線等や請求人の会社案内の右端又は左端の縦線の色彩として本願赤色が使用されているものがあるが,これらは,当該横線又は当該縦線の大きさや形状からすると,目立つ態様のものではなく,当該説明用パネル・プレートや会社案内の装飾の一部として使用されているとみるのが自然であり,本願赤色をもって自他商品を識別するために使用されているものとはいい難い。さらに,請求人の業務に係る電子管製品の総合カタログ,請求人商品に関するニュースリリース,展示会における請求人ブースや請求人商品の説明用パネル・プレート等,請求人の会社案内,請求人商品に関する資料,請求人商品の展示用プレート又は説明用スライド等,及び請求人商品に関する紹介記事において,本願赤色が請求人商品を表示するものである旨の記載はなく,小中学校又は博物館等における請求人商品の紹介においても,本願赤色が請求人商品を表示するものである旨紹介された事実は一切確認できない。

以上に加えて,上記1のとおり,本願商標を構成する赤色は特異な色彩であるとはいえず,赤色は,本願の指定商品「光電子増倍管」及び商品「フォトダイオード」,「分光器・分光センサ」,「光センサ」等を取り扱う業界において,商品の装飾,又は,商品を取扱う企業における商標の基調色・ウェブサイトの基調色・展示会等におけるブースの基調色等として,請求人以外の第三者によって広く使用されていること,請求人によって,本願赤色を強調し,印象付けるための広告宣伝が行われてきた事実は確認できないことを総合考慮すると,たとえ,請求人商品自体の機能や性能が,需要者の間に優れたものとして認識されていると認め得るとしても,本願赤色それ自体が,請求人商品の技術的な優位性から独立して,請求人商品を表示するものとして,我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

してみれば,赤色の色彩のみからなる本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

3 請求人の主張について

(1)請求人は,光電子増倍管における請求人の市場シェアは極めて高く,我が国では今世紀に入る前にほぼ100%のシェアを獲得し現在も維持しており,かかる特殊な事情の下では,本願商標が単一の色彩からなるものであるとしても,少なくとも,光電子増倍管の商品分野では自他商品識別標識としての機能を十分に果たしており,請求人の業務に係る商品であることの出所標識として機能している旨,及び,本願商標の色彩は,ありふれた赤色とは言い難いやや黒みがかった赤色であって,商標見本(甲34)に示すとおり,やや特殊な赤色(これを「HAMAMATSU RED」と称している。)であり,光電子増倍管の使用者,需要者は,一般人ではなく現代物理学の学者や研究者,最先端テクノロジーの研究者,設計開発者であり,彼らは,やや特殊な赤色を繰り返し何度も目にする中で,この色合いが脳裏に焼き付いていき,本願商標は,請求人の業務に係る光電子増倍管であることの出所標識として機能している旨主張する。

しかしながら,請求人が,本願商標の色彩が特殊な赤色でありこれを「HAMAMATSU RED」と称しているとして提出した甲第34号証は,審判請求書の添付物件目録によれば,「ブランドマニュアル 該当頁写し」であり,請求人の社内資料と推察されるものであるところ,当該資料の作成時期や頒布の事実は明らかではないから,当該資料のみをもって,本願商標に接する取引者,需要者が,本願商標の色彩を特殊な赤色と認識し,これを「HAMAMATSU RED」と称していると認めることはできない。そして,光電子増倍管における請求人商品の市場シェアが極めて高いものであるとしても,請求人による本願商標の使用状況や使用態様,本願の指定商品である「光電子増倍管」を含む「光センサ」等を取り扱う業界において,赤色が商品の装飾等として,請求人以外の第三者によって使用されていること,請求人によって,本願赤色を強調し,印象付けるための広告宣伝が行われてきた事実が確認できないこと等からすれば,本願赤色それ自体が独立して,請求人商品を表示するものとして,我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないことは,上記2(3)のとおりである。

(2)請求人は,本願商標の色彩は,光電子増倍管の本体およびその部品が通常有する色彩ではなく,安全基準表示等の規制ために,例えばX線管のような放射線装置には赤色マークが付されるが,光電子増倍管は放射線の発生とは無縁であるから,本願商標を登録商標として独占権を認めたとしても,第三者の利益を害するおそれは全くない旨,及び,請求人が光電子増倍管の国内シェアをほぼ100%独占しているのであるから,本願商標が登録されることによって正当な利益が害される者は出るはずがなく,請求人は,唯一無二の高性能,高品質を実現することで光電子増倍管の国内市場をほぼ独占しているのであるから,独占適応性を十分に獲得している旨主張する。

しかしながら,上記1のとおり,本願の指定商品である「光電子増倍管」を含む「光センサ」等を取り扱う業界において,赤色が商品の装飾,又は,商品を取扱う企業における商標の基調色・ウェブサイトの基調色・展示会等におけるブースの基調色等として,請求人以外の第三者によって使用されている事実があることからすれば,本願色彩を登録商標として独占権を認めた場合に、第三者の利益を害するおそれは全くないということはできず,本願商標を登録することは,色彩の自由な選択や使用を阻害するものであって,公益的見地から容易に認容できるものではない。

(3)請求人は,長年にわたって請求人が国内市場をほぼ独占してきた結果として,現在では,コーポレートカラー「HAMAMATSU RED」が表示されていると当該商品(光電子増倍管)は請求人の提供したものである,と取引者,需要者が認識する状況が生まれており,このような状況下で,例えば悪意の競業者により,既登録第4576925号商標「HAMAMATSU」(甲48)と類似はしないが,近似するような商品表示が使用された場合,光電子増倍管の取引者,需要者である現代物理学の研究者,最先端テクノロジーの開発者は,見慣れたコーポレートカラー「HAMAMATSU RED」の会社製であると誤認し,本願商標を登録商標として独占権を認めない場合には,品質保証機能が害されて取引者,需要者の利益が害され,公益をも損なわれることになる旨主張する。

しかしながら,本願の指定商品である「光電子増倍管」は,当該商品の機能性,信頼性のほか,どのメーカーの商品であるか等の点も確認したうえで商品を選択し購入するものと考えられるから,色彩のみが果たす役割の大きさは,極めて小さいものと解するのが相当であり,かつ,本願の指定商品である「光電子増倍管」を含むいわゆる「光センサ」を取り扱う業界において,請求人以外の第三者が赤色を使用している実情をも考慮すれば,本願商標を登録しないことが,取引者,需要者の利益を害し,公益を損なうおそれがあるとはいえない。

(4)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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