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Trademark Appeal Case

独占許諾と新商標登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2018−890041(T2018−890041/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5935066号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5935066号商標(以下「本件商標」という。)は、「仙三七」の文字を横書きしてなり、平成28年10月14日に登録出願、第5類「サプリメント」を指定商品として、同29年3月6日に登録査定、同月24日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。

(1)当事者

ア 請求人は、高麗人参と同じ仲間である「三七人参」を原材料とする健康食品に「仙三七」「金不換王」等の名称を付し、「仙三七」「金不換王」については商標登録(甲3、甲4)を行い、「仙三七」に係る商品(以下「仙三七商品」という。)を平成11年頃から継続して被請求人に独占的に卸売りしてきた株式会社である(甲1)。なお、「三七人参」の収穫期は、年1回であるため、請求人は、年単位での生産・発注を検討する必要があった。

また、牡蠣から取り出されたエキスによって作られた商品に「マナマリン」の名称を付し、商標登録(甲5)を行い、「マナマリン」に係る商品(以下「マナマリン商品」という。)についても被請求人に事実上、独占的に卸売りしてきた。

イ 被請求人は、請求人から仕入れた健康食品を薬局薬店等へ販売する株式会社である(甲2)。

(2)継続的売買取引の経緯

ア 「仙三七」販売の開始

請求人の代表者と被請求人の代表者との間の商品の継続的売買は、平成11年頃に開始され、その後、それぞれが法人を設立して、請求人と被請求人との取引に変更された。

取引開始当初は、現在の商標「仙三七」を付した商品に、商標「金不換」を付していたが、第三者から商標「金不換」に関する仮処分申立を受けたことを契機に、商標「金不換」を変更することを請求人と被請求人との間で合意した。請求人は、いくつかの商標候補を考え出した後、最終的に商標「仙三七」について、指定区分を「第29類(いわゆる全類指定)」として平成15年6月2日に出願を行い、同年9月より、請求人は、被請求人に商標「仙三七」を付した仙三七商品の販売を開始した。

イ 覚書の締結

平成16年1月30日に商標「仙三七」の登録が完了した(登録第4744413号、甲3)ため、同年3月25日、請求人と被請求人とは、商標「仙三七」について「商標使用許諾に関する覚書」(甲6)を締結し、請求人は被請求人に対して、「仙三七」の使用を独占的に無償で許諾し、仙三七商品を継続的に供給することに合意した。

なお、当該覚書では、「継続的に乙(被請求人)に供給を行ってきた」ことが確認され(第一条)、第三者が本件の権利を侵害し、又は侵害しようとしていることを知った時は、互いに遅滞なく報告し合い協力することがうたわれ(第五条)、契約期間は原則無期限と合意され(第六条)、信義に基づいてこれを履行すること(第七条)がうたわれている。

その結果、その後の取引により、請求人の被請求人に対する売上高は、マナマリン商品等も含めると、請求人の売上高全体の90%以上を占めるに至った。当該覚書を基礎とする、被請求人に対する継続的な商標の使用許諾と卸売りをその内容とする継続的売買契約(以下「本契約」という。)は、請求人の経営維持のために極めて重要で不可欠なものであった。

以上のとおり、(a)三七人参の特徴(収穫期が年1回であり、年単位で生産・仕入等の検討が必要)、(b)覚書の存在(特に期間無期限との合意や様々な協力義務)、(c)当該覚書を基礎とする請求人と被請求人との間の本契約は、長年継続し、結果的に請求人が売上の90%を被請求人に依存していた等、過度に被請求人に依存する体制にあったことからすれば、仮に被請求人が請求人に対し、本契約を解除して請求人からの継続的売買を中止するのであれば、本契約上の義務として、被請求人には、契約を終了するには少なくとも1年前に申し入れる義務(以下「本予告義務」という。)、契約期間中はこの継続的・独占的売買を明らかに損なう行為を行わない義務(以下「本協力義務」という。)があったというべきである。

(3)被請求人の背信的行為

ア 被請求人による突然の取引終了通知

被請求人の代表者は、請求人に対して、平成29年8月18日付けの「申し入れ書」(甲7)を唐突に持参して、「8月末日をもって仙三七の取引を終了させて頂きます。」と宣言した。なお、当該申し入れ書の提出が突然されたことを証するために、被請求人の代表者に対応した従業員の陳述書(甲19)を提出する。

請求人は、当初の個人商店時代の取引を勘案すれば平成11年頃から約18年間、覚書の締結時から考えても約13年にわたり、本契約に基づき、被請求人に対して、商標「仙三七」の使用を独占的に無償で許諾し、仙三七商品を継続的に供給してきた。

このように過度に被請求人に依存する継続的売買契約を長年にわたり締結してきたのであり、また、主力商品「仙三七」の原料仕入れの特殊性からすれば、少なくとも被請求人による取引終了の申出は、終了の1年前にされるべきであった。

しかしながら、被請求人は、請求人に対して、僅か10日余りの予告期間のみで一方的に取引終了を宣言した。被請求人によるこの行為は、それ自体が請求人との間の信頼関係を破壊する債務不履行行為(本予告義務違反)である。

イ 被請求人による剽窃的な商標出願行為

申し入れ書により、被請求人が平成28年10月14日に、請求人に何ら相談なく、無断で、第5類「サプリメント」を指定商品とする本件商標の出願を行い、登録を受けていたことが明らかとなった(甲7、甲8)。

請求人が商標「仙三七」を商標登録出願した平成15年当時、健康食品は第29類又は第30類に分類されており、第5類「サプリメント」として出願、登録することはできなかった。被請求人は、請求人が商標権を有する商標「仙三七」について、請求人との本契約により、無償にて独占的に使用許諾を受けていた者であり、請求人の商標権を妨げてはならず、請求人に損害を与えてはならない信義則上の義務を負っている。被請求人による本件商標の商標登録出願は、平成24年における商品及び役務の区分の改正により、「第5類」で「サプリメント」を出願できるようになったことを奇貨として、請求人に何ら相談なく、無断で行われたものである。

また、被請求人は、申し入れ書(甲7)において、被請求人が本件商標を登録できたことを理由に挙げて、「請求人との取引終了」「9月以降の仕切り値変更」「仙三七商品の原材料の価格折衝及び付帯条件付きの上での原材料の購入」「商標『マナマリン』の譲渡等の申し入れ」等を通知したという経緯から考えると、被請求人が独自に本件商標を商標登録出願することにより、請求人との交渉を有利に進める意図があったことは明らかである。加えて、請求人に損害を与える一方で、自ら商標を利用することにより不正な利益を得ようとする目的があったことが明らかである。

このような本件商標の出願の目的及び経緯に鑑みれば、被請求人による出願は、請求人との間の信頼関係を裏切る債務不履行行為となる(本協力義務違反)のみならず、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為というべきである。よって、これに基づいて被請求人を権利者とする商標登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であって、「商標を保護することにより、商標の使用する者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の法目的(商標法第1条)にも反するというべきである。

したがって、被請求人が本件商標を出願した行為は、公正な取引秩序を乱す剽窃的な出願行為に該当し、本件商標は、公序良俗を害する商標に該当することが明らかである。なお、被請求人が本件商標を出願した平成28年10月14日現在、被請求人が請求人と同様の高麗人参と同じ仲間である「三七人参」を原材料として製造販売している「夢三七」という商品について、商標「夢三七」を第5類「サプリメント」を指定商品として出願し、同29年3月24日に登録(甲9)されている。このことも、平成28年10月当時、商標「仙三七」又は商標「夢三七」にて同種商売をするための準備行為をしていたと評価することができるが、このような被請求人による行為は、明らかな本協力義務違反である。

ウ 再度の取引終了通知

請求人は、被請求人の申し入れ書(甲7)に対して、平成29年8月26日付け「お申し入れ書に対する回答」と題する書面により、被請求人が本件商標を出願した行為は商標法第4条第1項第7号に該当し、無効とされるべきものであることを指摘し、被請求人の取引終了等の申し入れには応じられない旨を回答した(甲10)。

これに対して、被請求人は、平成29年8月30日付け「申し入れの回答」と題する書面(甲11)により、「仙三七の取引は従来通りで了承致しました。」「マナマリンの取引は従来通りで了承致しました。」、その他の商品についても「従来通りで了承致しました。」と回答して、請求人との取引終了の意思表示を撤回した。

請求人は、被請求人が突然の取引終了の意思表示を一旦撤回したとしても、再び被請求人が取引終了を突如宣言するおそれが残ると考え、平成29年9月7日付け「ご回答を受けての今後の対応について」と題する書面(甲12)により、本契約に基づく継続的売買関係を維持するにあたり、被請求人との信頼関係の確立のために、被請求人が出願、登録した本件商標の無償譲渡(ただし、被請求人が出願に要した実費は請求人が負担する旨を提案)を求めた。

これに対して、被請求人は、平成29年9月15日付け「申し入れ書、回答」と題する書面(甲13)により、被請求人が出願、登録した本件商標の無償譲渡を拒否し、仙三七商品の売買につき、同年12月末日をもって終了するとして、再び唐突な取引終了の意思表示を行った。

エ 小活

以上の経緯に照らせば、被請求人には、本予告義務、本協力義務があるにもかかわらず、被請求人自ら本件商標と商標「夢三七」とを出願して、請求人と被請求人との間の独占的・継続的売買の終了後の独自の商品供給のための準備行為を行い、もって本協力義務に違反し、平成29年8月18日に同年8月末日をもってかかる継続的売買を終了する旨を一方的に通知し、もって本予告義務に違反し、いったんこれを撤回するも同年9月15日に同年12月末日をもってかかる継続的売買を終了する旨を一方的に通知し、もって本予告義務に違反した。

(4)被請求人との継続的供給契約の解除

ア 請求人による催告

請求人は、被請求人が重大な債務不履行の状況を是正するのであれば引き続き契約を継続したいが、これを正さない場合は、本契約を解除することもやむを得ないと考えるに至った。

そこで、請求人は、被請求人に対して、平成29年9月27日付け催告書(甲14)により、同年10月6日までに被請求人が少なくとも1年以上の従前どおりの取引の継続の意思を明確に表明し、請求人との売買及びライセンスの継続を明らかにする場合は取引を継続するが、仮にしない場合には、やむを得ず被請求人の債務不履行(継続的供給契約の突然の停止)により被請求人と請求人との間で全ての契約を解除する旨を催告した。

イ 請求人による解除通知

当該催告に対して、被請求人は、平成29年10月5日付け「催告書に対する回答」と題する書面(甲15)により、「弊社の行為は、債務不履行に該当致しません」「弊社にて新しいブランドで生産から販売を開始する」と回答して応じなかった。

そこで、請求人は、やむを得ず平成29年10月12日付けで、被請求人との間の本契約、すなわち、仙三七商品、マナマリン商品の継続的契約及び商標「仙三七」のライセンス契約に基づく一切の売買及びライセンス契約を、被請求人の重大な債務不履行を原因として解除する旨の意思表示を記載した解除通知書(甲16)を書留郵便及びファクシミリで送付し、解除通知書は、遅くとも同年10月13日までに被請求人に到達した。

ウ 被請求人による「夢三七」商品の販売

実際に、被請求人は、ほどなく商標「仙三七」を付した商品と同じく三七人参を原材料とする商標「夢三七」を付した商品を、請求人と無関係の別ルートで調達し、従前の仙三七商品の卸売先である薬局に対し、卸売りを開始した。なお、このように早期に販売が開始できたのは、本協力義務に違反して、本契約期間中に三七人参の在庫を準備し、商標等も準備していたからに他ならない。

(5)結論

以上のとおり、本件商標は、被請求人の剽窃的な行為によって出願された商標であり、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害する商標に該当する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第7号該当性について

平成19年(行ケ)第10391号知財高裁判決(平成20年6月26日判決)では、本件のような場合に、商標登録に係る商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かを判断する際の指針を明確に述べている。判決に照らした場合、請求人の主張が誤りであることは明白である。請求人と被請求人の関係は、請求人自身が審判請求書で述べているとおり、私的な契約により結びついていた関係であり、仮にその契約が現時点において有効であるとしても、それは正に私的な契約であり、両者の間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきである。

したがって、商標法第4条第1項第7号を理由とする本件審判請求は、成り立たない。

(2)請求人と被請求人との間の契約について

請求人が言及する「商標使用許諾に関する覚書」(甲6)の存在は、被請求人も認める。

しかしながら、当該契約(覚書)のどこにも、本契約の終了に関する規定はなく、ましてや、契約を解除するには少なくとも1年前に申し入れをしなければならないという予告義務は規定されていない。

したがって、「予告義務違反」であるとの請求人の主張は、根拠を欠いている。

また、請求人は、被請求人の代表者から申し入れ書(甲7)が突然提出されたと述べているが、当該申し入れ書の最後にも記載されているように、請求人と被請求人は、その前年(2016年)より話し合いを行っていたものであり、「突然」との請求人の主張は誤りである。

さらに、契約期間中は、この継続的・独占的売買を明らかに損なう行為を行わない義務(「本協力義務」)も、当該契約(覚書)のどこにも記載されていない。第6条に記載されているとするなら、それは商標登録第4744413号の許諾期間のことであり、第5条に記載されているとするなら、それは当該商標権に関する協力義務である。商品の継続的・独占的売買の義務ではない。

(3)「仙三七」商標について

請求人も主張するように、被請求人と請求人は、三七人参の製造及び販売をそれぞれ分担し、「仙三七」商標を製品に付して使用するのは被請求人であるものの、その商標登録は請求人に委ねた。その結果が、当該契約(覚書)である。

しかしながら、「仙三七」商標を付した商品の販売は、専ら被請求人が行っていた。これを証明するため、被請求人が取引先に対して頒布したパンフレットの写しを提出する(乙1)。このため、一般需要者の間では、「仙三七」商標が付された商品の出所は被請求人として認識されている。

商品を販売することの難しさ、商標(ブランド)を需要者間に浸透させることの難しさは多くの事業者が指摘するところであるが、本件商標を付した商品についても例外ではなく、被請求人は、「仙三七」商標を付した商品を販売し、一般需要者間に浸透させるために、多大なる努力をし、多くの投資も行ってきた。

しかるに、専門家に相談したところ、請求人の商標登録第4744413号は、請求人が販売していた商品を正しく保護していないことが判明した。このため、被請求人はやむなく、平成28年10月14日に本件商標を、「サプリメント」を指定商品として出願し、同29年3月24日に登録を得たものである。

(4)まとめ

上記(1)ないし(3)のとおり、請求人の主張はいずれも根拠のないものである。

4 当審の判断

(1)本件審判の請求の利益について

請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないため、以下、本案に入って審理する。

(2)商標法第4条第1項第7号について

商標法第4条第1項第7号は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標は、商標登録を受けることができない旨規定しているところ、同規定の趣旨からすれば、(a)当該商標の構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形である場合など、その商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、(b)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(c)当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが、それ以外にも、(d)特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当すると解するのが相当である(東京高等裁判所平成16年(行ケ)第7号、平成16年12月21日判決参照)。

(3)当事者の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである

ア 請求人について

請求人は、高麗人参と同じ仲間である「三七人参」を原材料とする健康食品に「仙三七」「金不換王」等の標章を付し、「仙三七」「金不換王」については商標登録を行い(甲3、甲4)、仙三七商品を平成11年頃から継続して被請求人に独占的に卸売りしてきた株式会社である(甲1)。

また、牡蠣から取り出されたエキスによって作られた商品に「マナマリン」の標章を付し、商標登録を行い、「マナマリン商品」についても被請求人に事実上、独占的に卸売りしてきた。

イ 被請求人について

被請求人は、請求人から仕入れた上記仙三七商品、マナマリン商品等の健康食品を薬局薬店等へ販売する株式会社である(甲2)。

ウ 被請求人による商標登録出願及び登録の状況

本件商標の出願及び登録の経緯は、上記1のとおりであるところ、被請求人は、本件商標の出願を行うにあたり、請求人に対し、事前にその事実を告知しておらず、また、事後(登録後)においてもその事実を進んで告知することはなかった。

被請求人は、平成29年(2017年)8月18日付け申し入れ書(甲7)において、請求人に対して、本件商標の商標権利者であること、生産工場を確保したことを理由に、同年8月末をもって、仙三七商品の取引を終了することを要求した(甲7)。

さらに、「マナマリン商品」については、商標の譲渡を申し入れ、その他の商品については、既存の条件で取引を継続する旨申し入れた(甲7)。

エ 本件商標の登録出願当時の請求人と被請求人の関係

本件商標の出願時の平成28年(2016年)10月14日当時、被請求人は、請求人から仙三七商品やマナマリン商品を仕入れ(購入し)ていた者であり、平成11年(1999年)頃から平成29年(2017年)10月12日の解除通知書(甲16)まで請求人と被請求人は取引関係にあった。

オ 商標使用許諾に関する覚書について

請求人(甲)と被請求人(乙)との間で締結された「商標使用許諾に関する覚書」(甲6)において、第一条に「甲は、健康増進食品『三七人参加工食品』を乙の依頼により商品名『仙三七』として継続的に乙に供給を行ってきている。」、第二条に「甲は、乙との『三七加工食品』の継続的取引を前提に乙が本件(審決注:甲の有する商標登録第4744413号『仙三七』をいう。以下、同じ。)を永続的に且つ、独占的に無償で使用することを許諾するものとする。」、第五条に「甲及び乙は、第三者が本権の権利を侵害し、又は侵害しようとしていることを知った時は、互いに遅滞なく報告し合い協力してその排除に努めるものとする。」、第六条に「本件の許諾期間は、甲と乙間の『三七人参加工食品』の継続的取引が存続する限り無期限とし」、及び第七条に「甲及び乙は、信義に基づいて本覚書を履行するものとし、万一本覚書に関して疑義が生じた場合は、甲及び乙はお互いに誠意を持ってこれを解決するものとする。」との規定がある。

(4)商標法第4条第1項第7号該当性について

上記(3)によれば、以下のとおりである。

本件商標の登録出願が行われた平成28年10月14日当時、被請求人は、請求人の製造する仙三七商品やマナマリン商品等を仕入れ(購入し)、我が国で薬局薬店に販売する販売業者として取引関係にあった。そして、仙三七商品には、請求人が登録していた「仙三七」商標が付されていたところ、それは、「商標使用許諾に関する覚書」(甲6)に基づくものといえる。

そして、被請求人は、「被請求人と請求人は三七人参の製造及び販売をそれぞれ分担し、『仙三七』商標を製品に付して使用するのは被請求人であるものの、その商標登録は請求人に委ねた。その結果が前記契約(覚書)(審決注:甲第6号証の『商標使用許諾に関する覚書』をいう。)である。・・・専門家に相談したところ、請求人が得た商標登録第4744413号は請求人が販売していた商品を正しく保護していないことが判明した。このため、被請求人はやむなく、本件商標を、サプリメントを指定商品として出願し、平成29年3月24日に登録を得たものである。」と主張している。

しかしながら、仮に、そうであるのであれば、「商標使用許諾に関する覚書」(甲6)の第七条の「甲及び乙は、信義に基づいて本覚書を履行するものとし、万一本覚書に関して疑義が生じた場合は、甲及び乙はお互いに誠意を持ってこれを解決するものとする。」との規定にしたがって、被請求人は、請求人に対し、「仙三七」の商標権の登録出願手続をするように注意喚起すれば足りるはずであり、それを怠り、被請求人は、商標「仙三七」が第5類「サプリメント」に商標登録されていないことを奇貨として、本件商標の登録出願を行うことを請求人に秘匿したまま、本件商標の登録出願を行っているのであるから、請求人の商標「仙三七」を剽窃したものといわざるを得ない。

以上のとおり、本件商標の登録出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。

(5)被請求人の主張について

被請求人は、知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10391号(平成20年6月26日判決)の判示に照らして、「請求人と被請求人の関係は、請求人自身が審判請求書で述べているとおり私的な契約により結びついていた関係であり、仮にその契約が現時点において有効であるとしても、それは正に私的な契約であり、両者の間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきである。」と主張している。

しかしながら、上記(4)認定のとおり、被請求人は、商標「仙三七」が第5類「サプリメント」に商標登録されていないことを奇貨として、先取り的に商標登録出願し、登録を得たものであって、請求人の商標「仙三七」を剽窃したものといわなければならないものであって、本件商標の登録出願の経緯には、著しく社会的妥当性を欠くものがあり、私的な問題の範囲を超えているといわなければならない。

したがって、被請求人の主張は採用することができない。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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