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Trademark Appeal Case

商標の周知性と混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2018−890006(T2018−890006/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5591490号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5591490号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成24年12月3日に登録出願、第43類「寿司を主とする飲食物の提供」を指定役務として、同25年4月17日に登録査定、同年6月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の無効の理由において引用する商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。

1 登録第5003675号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成14年6月19日に登録出願、第30類「すし」及び第43類「すしを主とする飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同18年11月17日に設定登録され、その後、同28年11月8日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

2 登録第5511447号商標(以下「引用商標2」という。)は、「すしざんまい」の文字を標準文字で表してなり、平成22年4月9日に登録出願、第30類「すし,すしを主とするべんとう」及び第43類「すしを主とする飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同24年8月3日に設定登録されたものである。

以下、これらをまとめて「引用商標」という。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。

2 無効原因

(1)請求人の登録商標について

請求人は、本件商標の先願となる引用商標の商標権者である。

(2)引用商標が周知・著名であることについて

ア 本件商標は、平成24年12月3日に登録出願されたものであるところ、引用商標は、請求人が展開するすし店を表すものとして、「すし」や「すしを主とする飲食物の提供」について継続して使用されてきており、遅くとも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件商標の審判請求時に至るまで、請求人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、我が国において周知・著名となっている(甲4〜甲8)。

イ テレビ放送

テレビ放送の番組において、古くは1989年の放送のものから、2016年に放送されたものまで、継続的に、請求人の「すしざんまい」が取り上げられていることが分かる。請求人の「すしざんまい」は、報道番組を始め、いわゆるワイドショーや情報番組、バラエティー番組など、多種多様な番組で取り上げられており、その放送局は、全国放送局である(甲4)。

加えて、(株)エム・データが放送番組を視聴し記録したデータである「エムデータTVウォッチ」において、請求人の「すしざんまい」が、本件商標の登録出願前から本件審判請求時に至るまで、報道番組を始め、いわゆるワイドショーや情報番組、バラエティー番組など、多種多様な番組で取り上げられて、全国的に放送されたことがうかがえる(甲5)。

ウ 新聞、雑誌、ウェブサイトによる報道

新聞、雑誌、ウェブサイトによる報道において、2001年発行のものから、2016年に発行されたものまで、継続的に、請求人の「すしざんまい」が取り上げられている。請求人の「すしざんまい」は、いわゆる業界誌やビジネス雑誌のほか、異業種の雑誌等においても取り上げられており、その名称は、様々な分野に浸透している(甲6)。

また、新聞記事によれば、すし店の24時間営業の開始、マグロの初セリにおける落札、北海道、北陸等各地への店舗の進出など、本件商標の登録出願前の平成13年(2001年)発行のものから、同30年(2018年)に発行されたものまで、継続的に、請求人の「すしざんまい」が取り上げられている(甲7)。

エ 請求人の引用商標の使用状況と業績

請求人のウェブサイトをみるに、引用商標1が請求人のホームページに大きく表示されているとともに、そこに掲載されている店舗の写真等によれば、店舗の看板などにも、引用商標1が表示されている。また、引用商標2は店舗の名称として表示され、「すしざんまい」の文字の後に、地名に相当する文字に「店」の文字を付加して、「すしざんまい○○店」のように表示している(甲8)。

また、請求人の「すしざんまい」の業績をみるに、請求人のウェブサイトによれば、北海道から九州まで54店舗を展開している。本件商標の登録出願時(平成24年12月3日)である2012年度の飲食業ランキング(甲8の8:日経MJ第39回飲食業調査(2012年度))によれば、全飲食店の中にあって、店舗売上高伸び率ランキングでは第6位、売上高経常利益率ランキングでは第5位となっている。さらに、すし店に限ってみれば、同じく2012年度の「外食産業マーケティング便覧2012 No.2(富士経済 2012年7月25日刊)」によれば、その売上高は2位以下を大きく引き離し、首位となっている(甲8の9)。そして、売上高が2位以下を大きく引き離しての首位という状況は、2015年度の同便覧においても、全く変わっていない(甲8の10)。

オ 小括

請求人は、以上のとおり、自身のウェブサイトや店舗の看板等に引用商標を表示しているばかりでなく、テレビ、新聞、雑誌などのいわゆるマスメディアにも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件審判請求時に至るまで、引用商標とともに、継続的に取り上げられ、その業績も、「すし店」の分野においては、2位以下を大きく引き離して売上高首位に至っているものであるから、引用商標は、請求人の店舗の名称として、日本全国において周知・著名といえる。

(3)本件商標と引用商標とは類似することについて

ア 本件商標

本件商標は、別掲1のとおり、鉢巻きと前掛けをかけた魚とおぼしき図形を表示するとともに、その右側に、四角形状の輪郭内に各文字を表した「宅配専門」の文字と、その下部に、当該文字及び図形とは異なる色の濃さの太字の書体をもって「寿司ざんまい」の文字を顕著に大きく表示した構成よりなる。

本件商標の構成中、「宅配専門」の文字部分は被請求人の商品の販売方法や業態を表すものであり、自他商品及び役務の識別力がないことは明らかである。次に、図形部分は、鉢巻きと前掛けをかけた魚を擬人化したかのごとき図形程度のことは連想し得るとしても、直ちに、この図形部分の擬人化したキャラクターを表す特定の観念や称呼までが生じるものとはいえない。

さらに、「寿司ざんまい」の文字部分は、ほぼ同一と思われる特徴的な太字の書体及び同一の色の濃さをもってまとまりよく表示されている。

そして、本件商標は、外観上、「寿司ざんまい」の文字部分が圧倒的顕著に表示されており、加えて、「寿司ざんまい」の文字部分と他の図形及び文字は分離した態様で表され、これらを一体に認識しなければならない事情も見いだせない。

そうすると、本件商標は、被請求人がすしに関する店舗名として使用していることをも勘案するならば、「寿司ざんまい」の文字部分が独立して自他商品及び役務の識別標識として機能し得るのであって、当該文字部分に相応して「スシザンマイ」の称呼が生じる。

イ 引用商標

(ア)引用商標1

引用商標1は、別掲2のとおり、「つきじ喜代村」、「すしざんまい」及び「SUSHIZANMAI」の文字を異なる書体と大きさで三段に横書きした構成よりなる。

そして、上段部の「つきじ喜代村」の文字部分は、請求人の所在地である「築地」を平仮名で表した「つきじ」の文字に、請求人の略称「喜代村」を続けて表示したものである。

次に、「すしざんまい」の文字部分は、引用商標1の中でも、圧倒的に大きく顕著に中段部に表示されているものであり、上記(2)のとおり、請求人が展開するすし店の店舗名として、取引者、需要者の間で、広く認識されている。

さらに、「SUSHIZANMAI」の文字部分は、三段の中で一番小さな文字で、「すしざんまい」の文字部分の下に添えるように表示されているものであり、「すしざんまい」の文字をローマ字で表したものである。

そうすると、引用商標1は、「すしざんまい」の文字部分が他の文字よりも圧倒的顕著に表示されており、しかも、「すしざんまい」の文字が請求人の展開する店舗名として取引者、需要者の間で、広く認識されていることをも勘案するならば、引用商標1は、その構成中の「すしざんまい」の文字部分が独立して自他商品及び役務の識別標識として機能し得るのであって、当該文字部分に相応して、「スシザンマイ」の称呼をも生じる。

(イ)引用商標2

引用商標2は、上記第2の2のとおり、「すしざんまい」の文字よりなる。

そして、「すしざんまい」の文字は、上記(2)のとおり、請求人が展開するすし店の店舗名として、取引者、需要者の間で、広く認識されている。

そうすると、引用商標2は、その構成文字に相応して、「スシザンマイ」の称呼を生じ、請求人が展開するすし店の店舗名として認識される。

ウ 本件商標と引用商標の対比

本件商標は、上記アのとおり、「寿司ざんまい」の文字部分が独立して自他役務の識別標識として機能し得るのであって、当該文字部分に相応して「スシザンマイ」の称呼が生じる。

そして、被請求人は、自己のすしに関する店舗名として「寿司ざんまい」を使用している。

一方、引用商標についてみるに、まず、引用商標1は、上記イ(ア)のとおり、その構成中の「すしざんまい」の文字部分が独立して自他商品及び役務の識別標識として機能し得るのであって、当該文字部分に相応して、「スシザンマイ」の称呼をも生じる。

また、引用商標2は、上記イ(イ)のとおり、その構成文字である「すしざんまい」の文字に相応して、「スシザンマイ」の称呼を生じる。

そして、引用商標における当該「すしざんまい」の文字は、請求人の展開する店舗名として取引者、需要者の間で、広く認識されている。

そこで、本件商標の要部である「寿司ざんまい」の文字と、引用商標1の要部又は引用商標2の構成文字である「すしざんまい」の文字とを対比してみるに、両者は、「スシザンマイ」の称呼が共通する。

次に、外観上は、後半部の「ざんまい」の文字を共通にする一方で、前半部の「寿司」と「すし」の文字に差異を有するものであるが、その差異である「寿司」と「すし」は同じ言葉を漢字と平仮名で表した関係にあるから、当該差異が全体に与える影響は大きくなく、取引者、需要者には、近似した印象を与える。

さらに、観念においては、両商標は、同じ言葉の漢字と平仮名である「寿司」と「すし」の文字の後ろに、「ざんまい」の文字を結合させたものとして、取引者、需要者が把握、認識するといえるから、観念において異なる認識が生じるとは考え難い。

エ 小括

以上のとおり、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、取引者、需要者に近似した印象を与えるものであり、加えて、引用商標の「すしざんまい」が請求人のすしに関する店舗名として周知・著名であるから、両商標の外観、称呼及び観念、さらに、引用商標の周知・著名性を総合的に考察すると、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれがある類似の商標であり、本件商標は、請求人の業務に係る商品及び役務と混同させるおそれがあるといわざるを得ない。

(4)本件商標は、不正の目的によって出願・登録されたものであること

被請求人は、引用商標の存在を知りながら、本件商標と引用商標の差異である「魚」の図形や「宅配専門」の文字を表示しなかったり、又は、「魚」の図形を分離して、引用商標に近似する「寿司ざんまい」の文字を独立させて店舗名として表示しているところ、請求人も、店舗名として「すしざんまい」を使用しており、両者は、「寿司」と「すし」という漢字と平仮名の違いだけであるから、混同を生じるおそれがあること明らかである。しかも、被請求人は、その店舗名の表示の下で、ウェブサイト上、自社のTV広告として、請求人に係る動画を自社の広告と一緒に掲載したり、マグロ解体ショーや社員のジャンパーに至るまで、請求人の態様と同様の態様で事業展開をしており(甲10)、これらの点を勘案すると、本件商標は、請求人に係る商品及び役務と混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。

そうすると、本件商標は、不正の目的によるものであったとしか考えられない。

(5)商標法第4条第1項第11号該当性について

本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、類似の商標である。

本件商標の指定役務は、第43類「寿司を主とする飲食物の提供」であるところ、当該指定役務は、引用商標の指定役務に包含されているから、本件商標と引用商標は、その指定役務においても、同一又は類似する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(6)商標法第4第1項第10号又は同第15号該当性について

引用商標は、請求人が展開する「すし」に関する店舗の名称であって、遅くとも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件審判請求時に至るまで、請求人の業務に係る「すし」を表示するものとして広く認識されている。

そして、本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、類似の商標である。

しかも、本件商標の指定役務は、第43類「寿司を主とする飲食物の提供」であるところ、引用商標も「すし」及び「すしを主とする飲食物の提供」に係る商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る商品又は役務は、同一又は類似する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

また、仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当しないとしても、引用商標の我が国における周知・著名性や、本件商標と引用商標の近似性(類似性)を勘案するならば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(7)商標法第4条第1項第19号又は同第7号該当性について

本件商標は、上記第1のとおり、平成24年(2012年)12月3日に登録出願された。

一方、引用商標は、請求人が展開するすしに関する店舗の名称であって、遅くとも、本件商標の登録出願前から、登録査定時、さらには、本件審判請求時に至るまで、請求人の業務に係る「すし」を表示するものとして広く認識されている。

そして、本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、類似の商標である。

しかも、本件商標は、上記(4)のとおり、不正の目的により商標登録したものである。

したがって、本件商標は、我が国において周知・著名な引用商標と類似するものであって、不正の目的をもって商標登録したこと明らかであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

また、商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合は、商標法第4条第1項第7号に含まれる(商標審査基準参照)とされているところ、上記(4)のとおり、本件商標が不正の目的により商標登録したものであることを踏まえるならば、本件商標も、出願の経緯に社会的相当性を欠くといえるから、商標法第4条第1項第7号にも該当する。

(8)商標法第4条第1項第16号該当性について

本件商標は、その構成中に「宅配専門」の文字を含んでなるところ、そのうちの「宅配」の文字部分は「自宅配達の略。商品や新聞・雑誌・荷物などを家まで配達すること」を意味する語であり、「専門」の文字部分は「特定の分野をもっぱら研究・担当すること。」(いずれも「広辞苑」株式会社岩波書店発行)を意味する語である。

そうすると、本件商標中の「宅配専門」の文字全体としては、「もっぱら商品を自宅に配達してくれる」旨、すなわち、商品を自宅に配達する方法で販売しているものと認識させるものといえる。

ところで、本件商標は、「寿司を主とする飲食物の提供」として、役務を指定するものであるところ、その業態としては、通常、商品である「すし」を自宅などに配達して提供するものではなく、店舗内等の特定の場所で客に「すし」を飲食させるものとして、理解されている。

そうすると、本件商標は、その指定役務に使用したときは、提供される役務が店舗内等の特定の場所で「すし」を飲食させるものであるにもかかわらず、あたかも、商品「すし」を自宅に配達してくれるものとして認識されるといえるから、役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

3 請求人の店舗「すしざんまい」の売上高、シェア率等について

(1)「すしざんまい」の店舗と所在地

甲第8号証の9及び甲第8号証の10をみると、「すし店は、回転ずし/宅配ずし/テイクアウトずしを除いたすし業態を対象とする」との記載があり、さらに、甲第8号証の10には「回転ずしやカットステーキ、牛たん等肉料理を提供する『肉ざんまい』(本稿対象外)」の記載があることから、甲第8号証の9及び甲第8号証の10の内容は、回転ずし、宅配ずし、テイクアウトずしや「肉ざんまい」を除外した「すし店」の業績を対象にしていることが分かる。その上で、甲第8号証の9には、「『すしざんまい』を展開する喜代村は、2011年に12店オープンし、総店舗数は46と積極的な出店を続けたこと」の記載があることから、甲第8号証の9及び甲第8号証の10は、46店舗を前提としたものと考えられる。

そして、回転ずしの店舗の追加や、2012年以降にオープンした店舗の追加もあって、「すしざんまい」(「廻るすしざんまい」、「すしざんまい匠」及び「すしざんまい得得」を含む。)の店舗は2012年末で48店舗、2013年末で51店舗にのぼり、店舗数をみると、甲第8号証の9及び甲8号証の10が前提としていた店舗数よりも、多数の「すしざんまい」のすし店が展開、運営されていることが分かる。

(2)「すしざんまい」の店舗の売上高と周知・著名性

「すしざんまい」の店舗の売上高については、2010年が約99億円、2011年が約107億円、2012年が約142億円であり(甲16)、甲第8号証の9及び甲第8号証の10に掲載されている他社の売上高と比較しても、2位以下を大きく引き離している。

加えて、「すしざんまい」は、テレビ放送や、新聞、雑誌、ウェブサイトの報道などにおいて、請求人のすし店の名称として全国的に取り上げられていることからしても、「すしざんまい」は、本件商標の登録出願前から登録査定時に至るまで、請求人のすし店の名称として全国的に周知・著名となっていた(甲4〜甲8)。

4 令和元年8月19日付け上申書における主張

(1)「本件商標とこれに関連する商標の審査・審決の経緯」に関する被請求人の主張について

ア 本件審判は、無効審判であり、無効審判を定める商標法第46条の趣旨は、「本条の立法趣旨は、過誤による商標登録を存続させておくことは本来権利として存在することができないものに排他独占的な権利の行使を認める結果となるので妥当ではないからという点にある。」(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕)。すなわち、本件審判は、過去の商標の審査・審決による過誤登録を是正するための審判であり、その過去の審査・審決による結論を前提にした主張は、合理的根拠にならない。

イ 本件審判請求において、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号、同第7号等に該当する旨を主張しているが、本件商標がこれら無効理由に該当するか否かの判断の基準時は、同第11号及び同第7号が本件商標の登録査定時、同第10号、同第15号及び同第19号が本件商標の登録出願時(平成24年12月3日)及び登録査定時(平成25年4月17日)である。このため、各無効理由の適用における本件商標と引用商標の類否や、出所の混同のおそれの有無の判断も、本件商標の登録出願時又は登録査定時を基準に行われる。

そして、本件商標の登録出願時又は登録査定時において、引用商標は、請求人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、我が国において周知・著名となっていたのであるから、その周知・著名性を勘案した上で、本件商標と引用商標の類否や、出所の混同のおそれの有無も判断されなければならない。

加えて、本件商標の登録出願時又は登録査定時には、既に、「すしざんまい」の文字のみで構成される引用商標2は、自他商品及び役務の出所識別標識として機能し得ると認められ、商標登録されたのであり、しかも、その登録すべきとした審決の時期は、本件商標の登録出願前の平成24年(2012年)7月10日であって、本件商標の判断の基準時である登録出願時に極めて近い時期といえる。

そうすると、「すしざんまい」の文字は、自他商品及び役務の出所識別標識として十分に機能し得る。

ウ したがって、本件商標が引用商標とは類似しないとか、請求人の業務に係る役務と混同を生じさせるおそれがないとした主張は、合理的な根拠とはならないものであり、失当といわざるを得ない。

(2)「不正の目的」に関する被請求人の主張について

ア 本件審判請求において、不正の目的に関連して本件商標が無効理由に該当すると主張しているのは、商標法第4条第1項第19号及び同第7号であるところ、本件商標がこれら無効理由に該当するか否かの判断の基準時は、同第19号が本件商標の登録出願時(平成24年12月3日)及び登録査定時(平成25年4月17日)、同第7号が本件商標の登録査定時である。 すなわち、本件審判において判断すべきなのは、「寿司ざんまい」の商標を不正の目的で使用開始したか否かでなく、本件商標の登録出願及び商標登録が不正の目的によるものであったか否かであるから、被請求人の主張は、不正の目的がなかった根拠にはならない。

イ 被請求人が不正の目的でない根拠として挙げている点は、「寿しざんまい」の文字の自他商品及び役務の識別性や、請求人の登録商標を始めとした他人の登録商標の存在、それらの登録商標と本件商標や「寿しざんまい」の文字の商標の近似性を十分に認識していながら、本件商標を登録出願し、しかも、請求人の登録商標を始めとした他人の登録商標との近似する部分である「寿しざんまい」の文字の商標の使用をしていたことをうかがわせるものであり、被請求人に不正の目的がなかったことの根拠にはならない。

(3)「各無効理由」に関する被請求人の主張について

ア 被請求人は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に対しては、商標が非類似であるから該当しない旨を、同第19号及び同第7号については、商標が非類似であることに加え、「寿しざんまい」の使用開始時期や被請求人の旧商号による商願平11−52025号(以下「被請求人の旧商号による登録出願」という。)の出願を挙げて不正の目的でない旨や、社会的相当性を欠くものでない旨を主張している。

しかし、被請求人のそれら主張は、上記(1)及び(2)のとおり、失当といわざるを得ないものであるから、本件商標は、これらの無効理由に該当する。

イ 本件商標の指定役務である「寿司を主とする飲食物の提供」には、宅配専門の形態を採用しない、店舗内等の特定の場所で客に「すし」を飲食させるものが含まれている(むしろ、宅配専門の形態を採用しない方が普通と思われる。)のであり、そのような指定役務について本件商標を使用したときは、「すし」を自宅に配達してくれるものと誤認されるおそれがあること明らかであり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。

1 本件商標とこれに関連する商標の審査・審決の経緯

本件審判の理由では、本件商標が、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号に該当する旨述べられているが、かかる理由は、本件商標が引用商標に類似することを根拠としていることに尽きる。

(1)本件商標の構成

本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなる。

構成要素a.鉢巻きをした鯛のイラスト

構成要素b.縦書きの漢字「寿司」

構成要素c.漢字「寿司」表示の縦幅に略同一の縦幅で平仮名の横書き太字の「ざんまい」

構成要素d.「寿司」、「ざんまい」及び鯛のイラストの表示の上方に、横書き明朝体漢字の「宅配専門」

(2)関連商標群

本件商標に関連する一連の商標群(以下「関連商標群」という。:乙2)の審査・審理結果の解析をすることにより、本件商標と引用商標との類否判断が自ずと理解できる。

なお、関連商標群は、すべて、その指定役務に第43類「すしを主とする飲食物の提供」を含むものである。

ア 登録第4381641号商標(以下「第1商標」という。) 第1商標は、「すし三昧」の表示があり、構成の主要部は図案化した「魚坐」の漢字と「ととざ」の平仮名部分及び「すし三昧」の文字部分との2箇所である。

指定役務「すしの提供」に関して「すし三昧」の表記は、「すしを一心不乱に食する」ことを指称する観念を有し、この限りでは、特別顕著性を認め難いようにも思われる。

イ 登録第5003675号商標(以下「第2商標」という。)

本件審判における引用商標1である第2商標は、構成中の「すしざんまい」を、平仮名で「すし」を縦書き、「ざんまい」を横書きしたものである。

そして、その上部には横書きで「つきじ喜代村」の文字が、下部には横書きの英文字「SUSHIZANMAI」が配されている。

ウ 登録第5511447号商標(以下「第3商標」という。)

本件審判における引用商標2である第3商標は、「すしざんまい」の平仮名を標準文字で表したものである。

エ 登録第5591490号商標(以下「第4商標」という。)

第4商標は、本件商標である。

これは漢字縦書きの「寿司」と、大きめの横書きの平仮名「ざんまい」との組み合わせに加えて、鉢巻きの鯛のイラストと、横書きの漢字表記「宅配専門」とからなるものである。

オ 登録第5758937号商標(以下「第5商標」という。)

第5商標は、「SUSHI ZANMAI」の欧文字を標準文字で表したものである。

カ 商願2017−92336号(以下「第6商標」という。)

第6商標は、構成中の「すしざんまい」を平仮名で「すし」を縦書き、「ざんまい」を横書きしたものであり、その上部に小文字で「つきじ喜代村」と、右下に落款らしき図を表記したものである。

キ 小括

第2商標及び第3商標の平仮名の「すしざんまい」は、平仮名故に「すし三味」「寿司ざんまい」等のように漢字を含んだ「スシザンマイ」とは非類似であり、その理由は、「該文字(すしざんまい)は、その指定商品(すし)についてキャッチフレーズの一種を表示したものと認識されるとはいい難く、また、当該指定商品を取り扱う業界においてキャッチフレーズとして取引上普通に使用されている事実及び需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべき事情はみいだすことができない」ということに尽きる(第3商標に関する審決理由:乙11)。

この論拠を基にすると、漢字を含んだ第1商標及び第4商標などは、平仮名の「すしざんまい」に類似することにはならず、専ら漢字表記の観念を考えると全体的に記述的商標と判断し、特別顕著性を認めない方向にある。

この論理からすれば、本件商標(第4商標)は、その特別顕著性を鉢巻き鯛のイラストに求めざるを得ない。そうでなければ、本件商標は第2商標及び第3商標の平仮名の「すしざんまい」に類似するとして登録されなかったはずである。

(3)関連商標群の類否判断

第1商標ないし第6商標の一連の関連商標群に関する審査、審判等における判断の状況からすれば、当該審査、審判における類否判断の理論は、一貫性をやや欠くところもあり、明確に「スシザンマイ」の関連商標群についての論理解析は行われていない。

そこで、これらの商標群の相互の類否判断の結論(審査・審判の結論)を以下に順次説明することにより、「スシザンマイ」に関連する商標の類否判断に一定の論理的基準を結論したい。

ア 第1対比

第2商標と第1商標とは「非類似」。

イ 第2対比

第3商標と第1商標とは「非類似」。

ウ 第3対比

第4商標と第1商標、第2商標又は第3商標とは「非類似」。

エ 第4対比

第5商標と第1商標又は第4商標とは「非類似」。

オ 第5対比

第6商標と第4商標とは「類似」の可能性(拒絶理由が発せられた段階である(乙17))。

(4)不正の目的について

請求人は、本件商標の登録に関し、公序良俗違反を主張し、その理由として出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあると主張するが、この社会的相当性が何を意味しているかは不明である。

仮に、本件商標が請求人の使用商標を模倣して出願したものとの意であるならば全くの事実誤認である。

そもそも、本件商標は、被請求人が請求人よりも先に「寿司ざんまい」を用いてすしの宅配業務を開始し、使用していたものである。

「寿司ざんまい」の使用開始は、請求人が開始した平成13年(2001年)より2年前の平成11年(1999年)である(乙12、乙13)。

また、それを証する事実として、被請求人の旧商号による登録出願を行っていた(乙14)。

しかし、当該出願は、登録第4361034号商標(第1商標と構成を同一にする商標。以下省略。)を引用として拒絶され、権利化には至らなかった。

かかる経緯によると、「寿司ざんまい」については、請求人より2年前に使用の実績を有していたのであり、請求人が主張する「出願の経緯に社会的相当性を欠く」理由など全く存在しない。この間の経緯は、以前、被請求人の代理人弁護士が当時の請求人宛に不正競争防止法上の不正使用として注意を喚起し、請求人側の代理人弁護士と折衝した事実の経緯が存在していることからも明らかである(乙15)。

請求人は、本件商標が不正の目的で出願されたものと主張するが、被請求人の方が先に使用してきた経緯、被請求人の旧商号による登録出願をしていた事実、及び当該出願が登録第4361034号商標により「スシザンマイ」の称呼類似で拒絶された理由を踏まえて、「寿司」と「ざんまい」とを連記して新たに「寿司ざんまい」とし、より記述的商標として把握可能にした事実、並びに専ら商標の要部を鉢巻き鯛のイラストに焦点を絞った登録第5607230号商標や、本件商標を権利化した事実等を勘案すると、本件商標の登録には不正の目的を考慮する余地など皆無である。

(5)各無効理由について

ア 商標法第4条第1項第11号について

本件商標中の「寿司ざんまい」の文字を指定役務「すしの提供」について使用するときは、需要者は一種のキャッチフレーズとして認識するため、当該「寿司ざんまい」の文字自体が独立して自他役務の識別標識としての機能を果たすことはない。

したがって、本件商標の要部は、鉢巻き鯛のイラスト部分であり、特に称呼及び観念は生じない。

一方、引用商標は、特別顕著性を有する平仮名「すしざんまい」を含むため、「ツキジキヨムラ」あるいは「スシザンマイ」の称呼が生じる。

そこで、本件商標と引用商標の類否について判断すると、上記のとおり、本件商標からは称呼及び観念が生じないため、引用商標とは称呼及び観念を比較することができない。

また、本件商標と引用商標の外観が異なることは明らかである。

したがって、本件商標と引用商標とは、同一・類似の役務に使用したとしても、需要者が出所の混同を生じることのない非類似の商標である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

イ 商標法第4条第1項第10号及び同第15号について

需要者が混同を生じるには、商標が類似していることが前提であるが、本件商標と引用商標とは、称呼・観念・外観のいずれにおいても相紛らわしいものではなく、非類似の商標である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。

ウ 商標法第4条第1項第19号について

本号の要件としては、まず第1に、請求人が周知商標とする引用商標と本件商標とが同一又は類似であること(要件1)、第2に、本件商標が不正の目的で使用されるものであること(要件2)が必要である。

しかし、要件1の類否判断、すなわち、本件商標と引用商標との類否判断では、前述した第1商標から第6商標の関連商標群の対比、及び対比の結論における理由を勘案すると全く非類似である。

このことは、関連商標群第1商標から第6商標に係る類否判断の論理分析における結論で明確である。

次に、要件2の「不正の目的」においては、そもそも「寿司ざんまい」の使用開始時期は被請求人の方が請求人よりも早い。

しかも、被請求人の宅配寿司事業の開始も、請求人が周知と主張する引用商標が用いられる事業の開始よりも早いという事実がある。

さらに、本件商標と酷似する被請求人の旧商号による登録出願は、請求人が周知と主張する引用商標よりも先願である(もっとも、当該旧商号による登録出願は登録第4381641号商標(審決注:登録第4361034号の誤り。)により拒絶されているため、本件商標に酷似する当該出願に係る商標は、後願の「すしざんまい」と類似する結論にはなり得ない。)。

以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

エ 商標法第4条第1項第7号について

本件商標には関連商標群と対比して、出願の経緯に全く社会的相当性を欠如する理由はない。

すなわち、本件商標に酷似した被請求人の旧商号による登録出願に係る商標が、請求人が周知と主張する引用商標よりも「先願」であり、かつ事業自体も「先行」していたことを考えると、社会的相当性を欠く理由など微塵も見いだせない。

かえって、引用商標の方が後願であり、「すしざんまい」の事業も遅れてスタートしたことを勘案すれば、よっぽど社会的相当性を欠くものであり、後れた出願及び事業でありながら、周知であることを理由にして、先行使用・先行事業開始に係る本件商標に対して無効審判請求を行うことこそ、商標法の予定する秩序に反するといわねばならない。

なお、請求人は、被請求人が、宅配事業において看板やチラシ、ホームページ等において、本件商標のうちの「宅配専門」の文字や鯛の鉢巻きイラスト等を抜いて「寿司ざんまい」を使用していると指摘して、引用商標と故意に混同を生起させていると主張する。

しかし、既に「寿司ざんまい」の識別性に関する問題は論理的に自他商品及び役務の識別力なしとして結論されており、本件商標の簡易版として「寿司ざんまい」のみを使用することに違法性はなく、請求人の主張は「すしざんまい」の一連の商標の類否判断に関する論理的分析を全く無視したものである。

以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

オ 商標法第4条第1項第16号について

請求人は、本件商標中に「宅配専門」の文字が含まれていることに関し、指定役務「すしの提供」との関係で質の誤認を生じる旨主張している。

しかし、請求人のかかる主張は「寿司の提供」に関する事業実態のサービス形態と、「寿司の提供」に関する質の誤認とを混同するものである。

「寿司の提供」を指定役務として宅配専門の事業形態を採用する限り、指定役務と登録商標とは全く矛盾なく法的に問題のないものであり、仮に店舗で提供することがあっても、それは一事業実態であり、「寿司の提供」に関する質はいずれの事業実態でも何ら変化なく、需要者に「寿司の提供」の質の誤認を生じさせる余地など全くない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号のいずれにも該当しない。

2 令和元年10月28日付け上申書における主張

(1)過去の審査・審判による結論は、合理的根拠にならないという主張をする前に過去の審査・審判の経緯や結論を尊重して可及的に合理的な解釈をするための努力をするべきである。

請求人の登録商標の「すしざんまい」が登録になった根拠は、その平仮名表示にある。

本件商標の要部は、「鯛のイラスト図形」にあり、決して「寿司ざんまい」にあるのではない。

この「鯛のイラスト図形」によって、本件商標が登録された根拠を容易に説明することができる。

「寿司ざんまい」は、商標法第26条の商標権の効力が及ばない範囲の表示であり、引用商標の「すしざんまい」の商標権の及ばない、万人が自由に使用することができる標章である。

(2)「寿司ざんまい」は、記述的商標であり、登録される機能を全く有していないのであり、被請求人が本件商標の表示の中で「寿司ざんまい」の表記を鯛のイラスト図形と共に表している表示形態と不正の目的とは全く関連性がない。

そもそも被請求人の「寿司ざんまい」の使用は、請求人の「すしざんまい」のすし店運営より2年前に行われていたのであり、このようなタイムラグを見れば被請求人に不正使用などあるはずがない。

(3)請求人の主張する無効理由には、請求人にとって「寿司ざんまい」と「すしざんまい」の商標の区別がついていないことに端を発している。

(4)請求人は、本件商標の一部に「宅配専門」の表示があることについて、需要者に「寿司の提供」の質の誤認を生じさせると主張する。

しかし、宅配寿司でも店舗での寿司料理提供でも取引対象は「寿司」であり、需要者は、本件商標を見て寿司の宅配を行い、店舗での寿司提供も行うものであると認識するだけであり、寿司に係る業種であると認識すればよく、全体の商標表示に対し、小文字でわずかの専有面積でしか表示されていない「宅配専門」の文字にそれ程に役務の誤解を与える機能性はない。

(5)「甲8号証の8、甲8号証の10等において『すしざんまい』以外の店舗の販売実績も含まれていると解される」との審尋に対して請求人は審尋の回答と共に多数の「すしざんまい」のすし店が展開運営されているとの主張を行い「すしざんまい」の店舗の売上高とその周知著名性を主張している。

本件無効審判請求事件の争点は、請求人が商標法違反として掲げている多数の項目であるが、その基本的主張は本件商標と請求人の「すしざんまい」とが商標法上類似しているということにある。

引用商標の「すしざんまい」が、周知著名であるか否かを論じるまでもなく、双方非類似である限り、請求人の主張する無効理由を論じる必要もなく、請求人の主張は失当である。

本件商標の「漢字」と「平仮名」の組合せからなる「寿司ざんまい」の表記部分は、商標法上で記述的商標とされ自他商品及び役務識別機能を有しないということさえ理解できれば、「寿司ざんまい」と「すしざんまい」とが称呼、外観、観念上類似するか否かの論争は全く益のない論争である。

被請求人は、この点を強調して主張することにより、「すしざんまい」の周知著名性に係ることかと推測される審尋に対して上申する。

第5 当審の判断

1 引用商標の周知著名性について

(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。

ア 請求人のウェブサイトにおいて、「会社沿革」の見出しの下、「昭和60年9月 喜代村創業」、「平成13年4月 寿司事業部展開開始」等の記載と共に、「平成13年 4月/18 すしざんまい本店オープン」、「12月 すしざんまい別館オープン」と記載され、平成14年以降も「平成○年○月 すしざんまい○○店オープン」のようにオープンした店舗名が記載されている(甲13の1)。

イ 「2013年までにオープンした『すしざんまい』の店舗の一覧」において、「店舗」の欄及び「オープン時期」の欄に、「すしざんまい本店」及び「2001年4月」、「すしざんまい天神店」及び「2010年4月」、「すしざんまい小樽店」及び「2010年6月」、「すしざんまい横浜中華街東門店」及び「2011年3月」、「すしざんまい宇都宮駅店」及び「2012年3月」並びに「すしざんまい道頓堀店」及び「2012年9月」等のように記載されており、本件商標の登録出願時(平成24年12月3日)以前の平成24年(2012年)11月までにオープンした「すしざんまい」の店舗について、合計38件記載され、さらに、本件商標の登録査定時(平成25年4月17日)までにオープンした店舗は合計39件記載されている(甲13の2)。

ウ 請求人に係るすし店「すしざんまい」(以下「請求人すし店」という。)は、24時間営業のすし店、マグロの解体ショーを行うすし店、そして、平成24年(2012年)から6年連続してマグロの初競りにおいて高級マグロを競り落としたすし店(甲7の58〜甲7の101、甲7の124〜甲7の176、甲7の206〜甲7の246、甲7の295〜甲7の339、甲7の413〜甲7の467、甲7の502〜甲7の551)として、話題を集めており、特に、平成24年(2012年)、平成25年(2013年)と続けてマグロの初競りにおいて史上最高値で競り落とし、平成25年(2013年)の初競りにおける1億5,540万円の史上最高値は大きな話題となった。

エ 請求人すし店は、ニュース番組、情報系番組(以下「テレビ番組」という。)において広く取り上げられるようになり、当該テレビ番組で、請求人すし店を紹介するときに、請求人すし店の入口上部に、引用商標1が表示された請求人すし店の看板(甲4の47等)の画像が表示されている。

また、テレビ番組において、請求人すし店が紹介されるときに、請求人すし店の看板の画像のほか、「すしざんまい○○店」(甲4の62)、「すしざんまい ○○社長」(甲4の49)のように、「すしざんまい」の文字が表示されている。

オ 請求人すし店は、スポーツ新聞、雑誌等のメディアにおいて、例えば、2001年(平成13年)6月4日付けの日刊スポーツ(甲6の1)に「築地場外市場だからこそ!!ネタ新鮮『すしざんまい』」、「東京の台所、築地場外市場に24時間営業の寿司(すし)店『すしざんまい』が4月にオープンし、評判を呼んでいる」等のように記載されており、本件商標の登録出願前から「すしざんまい」の名称と共に多数紹介されている(甲6の1〜甲6の159)。

カ 請求人すし店は、新聞記事情報において、例えば、2001年(平成13年)5月25日付け「朝日新聞朝刊」(甲7の1)に「すし店 24時間営業(東京ストマック 築地魚河岸:9)」の見出しの下、「4月20日開店した24時間営業の『すしざんまい』だ。・・・母体の『喜代村』(本社・築地3丁目)はマグロの卸売りのほか、弁当、すし、うどん・そば店などを幅広く展開している。」との記事、2012年(平成24年)1月5日付け「日本経済新聞夕刊」(甲7の58)に「5694万円也、マグロ最高値、築地で初セリ。」の見出しの下、「新年恒例の初セリが5日、全国の主な卸売市場で開かれた。東京・築地市場では青森県の大間産クロマグロが過去最高の1匹5649万円で競り落とされた。これまでの最高値は昨年の3249万円だった。・・・すし専門店『すしざんまい』を展開する喜代村(東京・中央)が単独で競り落とした。」との記事、2013年(平成25年)1月5日付け「日本経済新聞夕刊」(甲7の124)に「マグロ1億5540万円、初セリ最高値。」の見出しの下、「新春恒例の初セリが5日、東京・築地市場で開かれ、青森県大間産のクロマグロが1匹1億5540万円の史上最高値で競り落とされた。・・・落札者は、すしチェーン『すしざんまい』を展開する喜代村(東京・中央)だった。」との記事のように、本件商標の登録出願前から登録査定時に至るまで、「すしざんまい」というすし店の名称と共に多数紹介されている(甲7の1〜甲7の177)。

キ 2013年(平成25年)5月22日付け「日経MJ(流通新聞)」において、「飲食業12年度ランキング/第39回」の見出しの下、「東京・築地市場の今年の初セリで、青森県大間産のクロマグロを過去最高値の1匹1億5千万円余りで落札した『すしざんまい』の喜代村(東京・中央)。店舗売上高伸び率ランキングで昨年の21位から6位に躍進し、経常利益率でも5位に入った。」の記事がある(甲8の8)。

ク 「出典:富士経済『外食産業マーケティング便覧 2012 No.2』2012年7月25日刊」の記載のある記事によれば、「すし店/2012年 9,700億円(国内市場)」の見出しの下、「2011年は、『すしざんまい』(喜代村)が出店を拡大させるなど」、「2012年は、『すしざんまい』既存店舗売上が大幅に拡大」及び「『すしざんまい』を展開する喜代村は、2011年に12店オープンし、総店舗数は46と積極的な出店を続けたこと、24時間営業が奏功したこと等で、実績は大幅に拡大した。2012年は、既存店の売上が年初から好調を続け、新規オープンは3〜4店舗と低調になると見ているが、前年比176%での着地を計画している。」とされている(甲8の9)。

また、同記事中に掲載された表において、2012年の「喜代村」の「販売高見込」は257億円で、「シェア」は2.6%であり、「喜代村」の次位に記載されている企業の「販売高見込」は46億円で、「シェア」は0.5%である(甲8の9)。

ケ 「出典:富士経済『外食産業マーケティング便覧 2015 No.2』2015年8月25日刊」の記載のある記事によれば、「すし店/2015年 9,610億円(国内市場)」の見出しの下、「喜代村は、『すしざんまい』『まぐろざんまい』、低価格業態の『すしざんまい得得』を展開している他、回転ずしやカットステーキ、牛たん等肉料理を提供する『肉ざんまい』(本稿対象外)等、幅広い業態を持っている。立ちずしは、リーズナブルな価格で上質なすしを提供する業態コンセプトが支持されている。2014年は消費増税が実施されたが、影響は小さく、堅調な需要に支えられたことから、売上高は伸長した。」とされている(甲8の10)。

また、同記事中に掲載された表において、2015年の「喜代村」の「販売高見込」は248億円で、「シェア」は2.6%であり、「喜代村」の次位に記載されている企業の「販売高見込」は43億5,000万円で、「シェア」は0.5%である(甲8の10)。

(2)判断

ア 請求人について

請求人は、昭和60年(1985年)に創業後、平成13年(2001年)に寿司事業を開始し、「すしざんまい」の名称のすし店(本店)をオープンした。

イ 引用商標について

請求人は、引用商標1をすし店の看板に使用している。

引用商標2(「すしざんまい」の文字)は、テレビ番組や新聞、雑誌で請求人すし店を紹介するときに使用されている。

ウ 「すしざんまい」の店舗数

本件商標の登録出願前から登録査定時に至るまでにオープンした請求人すし店「すしざんまい」は、北海道、栃木県、東京都、神奈川県、大阪府、福岡県において、39店舗と認められる。

エ 「すしざんまい」の国内のすし店における売上高及びシェア

請求人の平成24年(2012年)の売上高見込みは、257億円、シェアは2.5%であって、全国のすし店において、いずれも第1位であり、第2位の企業の売上高見込みは、46億円、シェアは0.5%である(甲8の9)。また、請求人の平成27年(2015年)の売上高見込みは、248億円、シェアは2.6%であって、全国のすし店において、いずれも第1位であり、第2位の企業の売上高見込みは、43億5,000万円、シェアは0.5%である(甲8の10)。

してみれば、平成24年及び平成27年における請求人の売上高見込みは、第2位の企業の売上高見込みに比して、5倍以上の金額となっており、上記の請求人の売上高見込みに「廻るすしざんまい」、「すしざんまい 匠」及び「すしざんまい得得」が含まれているとしても、これら店舗の数は7件と、請求人すし店全体の数と比べて少ないものである。

以上のことを勘案すれば、国内のすし店における売上高及びシェアにおいて、請求人すし店の占める割合は、相当程度あったものと推認できる。

オ テレビ番組、新聞、雑誌等のメディアによる紹介

請求人すし店は、テレビ番組、雑誌、新聞等のメディアにおいて、例えば「東京の築地場外市場にあって、すしネタが新鮮である」、「24時間営業のすし店であり評判を呼んでいる」、「新年恒例の初セリで、クロマグロを史上最高値で競り落とした請求人が展開している店舗である」等のように紹介されたり、特集記事が組まれたりして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人すし店の記事が多数掲載されるようになると共に、当該記事には、請求人が引用商標1を請求人すし店の看板として使用している写真等が掲載されている。

また、テレビ番組、雑誌、新聞等のメディアが、請求人すし店を紹介するときには、「すしざんまい」の文字が使用されている。

カ 上記アないしオからすれば、請求人は、平成13年(2001年)に「すしざんまい」という名称のすし店をオープンし、本件商標の登録出願前から登録査定時に至るまでに39店舗を、東京都をはじめ、北海道、栃木県、神奈川県、大阪府、福岡県において展開していたということができる。

そして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人ないし請求人すし店は、「24時間営業のすし店」であることや「新年恒例の初セリでクロマグロを史上最高値で競り落とした請求人が展開している店舗」であること等の話題でテレビ番組、雑誌、新聞等のメディアで広く取り上げられるようになり、その売上高も、他社を大きく引き離している。

また、請求人すし店が当該メディアで取り上げられる際には、引用商標1

が付された請求人すし店の看板も多数掲載されており、加えて、請求人のウェブサイトからも、請求人すし店における引用商標1が付された請求人すし店の看板等の使用状況をうかがうことができる。

そして、それらのテレビ番組、雑誌、新聞等のメディアでの掲載状況からすれば、本件商標の指定役務である「寿司を主とする飲食物の提供」の需要者である一般消費者において、請求人すし店が、その名称である「すしざんまい」(引用商標2)及び看板に使用されている引用商標1と共に、広く知られていたといい得るものである。

そうすると、請求人すし店の看板に使用されている引用商標1及び請求人すし店の名称を表す引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「寿司を主とする飲食物の提供」を表す商標として、需要者間に広く認識されていたというのが相当である。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)引用商標1について

引用商標1は、別掲2のとおり、上段に記載された筆文字風の「つきじ喜代村」の文字、中段に大きく筆文字風に記載された「すしざんまい」の文字、下段に小さくゴシック体で記載された「SUSHIZANMAI」の欧文字よりなるものであり、「すしざんまい」の文字部分においては、「すし」の文字をやや斜めに縦書きし、その右に、「ざんまい」の文字を横書きしており、「す」の文字と「ざ」の文字は一部重なっているものである。

そして、引用商標1の構成において、「すしざんまい」の文字部分は、大きく顕著に表されていることに加え、上記1(2)イのとおり、引用商標1は、請求人すし店の看板に使用されているものであり、上記1(2)カのとおり、「すしざんまい」が請求人の展開するすし店の名称として、「スシザンマイ」の称呼と共に、広く需要者に認識されていることからすると、引用商標1の構成中「すしざんまい」の文字部分は、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができ、当該文字部分だけを要部として抽出し、本件商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。

そうすると、引用商標1からは、その構成全体に相応して生じる「ツキジキヨムラスシザンマイ」の称呼のほかに、「すしざんまい」の文字に相応した「スシザンマイ」の称呼も生じるものといえ、「すしざんまい」が請求人の展開するすし店の名称として広く需要者に認識されていることから、「請求人の展開するすし店の名称としての『すしざんまい』」の観念が生ずるものである。

(2)引用商標2について

引用商標2は、上記第2の2のとおり、「すしざんまい」の文字よりなるものであるから、当該文字に相応して、「スシザンマイ」の称呼が生じるものであり、観念については、上記1(2)カのとおり、「すしざんまい」が請求人の展開するすし店の名称として、「スシザンマイ」の称呼と共に、広く需要者に認識されていることから、「請求人の展開するすし店の名称としての『すしざんまい』」の観念が生ずるものである。

(3)本件商標について

本件商標は、別掲1のとおり、鉢巻きをした魚とおぼしき図形(以下「魚図形部分」という。)の右側に、4つの四角形状の輪郭内に「宅配専門」の文字を一文字ずつ配し(以下「上段文字部分」という。)、その下に、「宅配専門」の文字より大きく、筆文字風に「寿司ざんまい」の文字を一文字ずつ交互に右斜め方向にずらして横書きしてなる(以下「下段文字部分」という。)ものであり、「寿司」の漢字は、「ざんまい」の平仮名に比して、やや小さく表されている。

そして、本件商標の構成中の魚図形部分と上段及び下段文字部分とを常に一体のものとして把握しなければならない特段の理由は認められないものであり、上段文字部分は、役務の事業形態が、宅配を専門とするものであることを表す語と解され、本件商標の指定役務との関係からすれば、自他役務の識別標識としての機能を果たすものとはいえないものである。

他方、本件商標の構成中の「寿司ざんまい」の文字は、大きく顕著に表されていることに加え、上記1(2)カのとおり、「すしざんまい」が請求人の展開するすし店の名称として、「スシザンマイ」の称呼と共に、広く認識されていること、本件商標の指定役務である「寿司を主とする飲食物の提供」において、「すし」と「寿司」が同義であり、相互に使用されるものであること等を考慮すると、本件商標に接する需要者は、本件商標の構成中の「寿司ざんまい」の文字部分に着目し、請求人の展開するすし店の名称として広く認識されている「すしざんまい」(引用商標2)及び請求人すし店の看板に使用されている引用商標1を想起することも少なくないというべきである。

そうすると、本件商標の構成中の「寿司ざんまい」の文字部分は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るというべきものであり、本件商標からは、当該文字に相応して、「スシザンマイ」の称呼も生じるものといえ、「すしざんまい」が請求人の展開するすし店の名称として、「スシザンマイ」の称呼及び請求人すし店の看板に使用されている引用商標1と共に、広く需要者に認識されていること、「寿司を主とする飲食物の提供」において、「すし」と「寿司」が同義であり、相互に使用されるものであること等から、「請求人の展開するすし店の名称としての『すしざんまい』」の観念も生じ得るというのが相当である。

(4)本件商標と引用商標の類否について

ア 外観について

本件商標と引用商標は、外観については、それぞれ上記(1)及び(2)並びに(3)のとおりであるから、全体としてみたときには、魚図形部分の有無等の差異等から互いに区別し得るものである。

一方、本件商標の要部といい得る「寿司ざんまい」の文字部分と引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分とをみるに、両者は共に筆文字風の書体で表されており、構成文字においても、「寿司」と「すし」の差異を有するにすぎないものであるから、互いに似通った印象を与えるというのが相当である。

また、本件商標の要部といい得る「寿司ざんまい」の文字部分と引用商標2との比較においても、構成文字において、「寿司」と「すし」の差異を有するにすぎないものであるから、互いに似通った印象を与えるというのが相当である。

イ 称呼について、

本件商標及び引用商標からは、いずれも「スシザンマイ」の称呼が生じるものであるから、両者は、称呼を共通にするものである。

ウ 観念について

引用商標からは「請求人の展開するすし店の名称としての『すしざんまい』」の観念が生ずるものであり、本件商標からは「請求人の展開するすし店の名称としての『すしざんまい』」の観念も生じ得るというのが相当であるから、両者は、同一の観念を有するものである。

エ まとめ

商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の役務(商品)に使用された場合に、役務(商品)の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるところ、本件商標と引用商標とは、全体の外観において相異するとしても、本件商標の要部といい得る「寿司ざんまい」の文字部分と引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2とは似通った印象を与えるものであり、また、本件商標と引用商標とは、「スシザンマイ」の称呼を共通にし、観念においても同一であるから、両者の外観、観念、称呼によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標とは互いに相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。

(5)本件商標の指定役務と引用商標の指定役務

本件商標の指定役務「寿司を主とする飲食物の提供」と引用商標の指定商品及び指定役務中「すしを主とする飲食物の提供」は、同一の役務である。

(6)小括

したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定役務も同一の役務であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

3 商標法第4条第1項第10号該当性について

引用商標は、上記1(2)カのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。

そして、本件商標と引用商標とは、上記2(4)のとおり、互いに相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当であり、本件商標の指定役務「寿司を主とする飲食物の提供」と請求人の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」は、同一の役務である。

したがって、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する商標であり、かつ、本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務は同一の役務であるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

4 商標法第4条第1項第15号該当性について

商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)」と規定されている。

したがって、本件商標は、上記2及び3のとおり、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するものである以上、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。

5 商標法第4条第1項第19号該当性について

商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。

請求人は、本件商標と異なる被請求人による商標登録出願において、拒絶の理由として引用商標2が引用されている(甲9)ことからすれば、被請求人は引用商標の存在を知っており、被請求人のウェブサイトにおける「寿司ざんまい」の文字の使用状況(甲10の1〜甲10の11)、被請求人の店舗の外観の写真(甲10の12〜甲10の19)、被請求人の社用車の外観の写真(甲10の20)、被請求人のウェブサイトにおける請求人に関する動画の掲載(甲10の26〜甲10の30)等によれば、被請求人は、引用商標に近似する「寿司ざんまい」の文字を独立して店舗名として表示し、その店舗名の表示の下、ウェブサイト上、自社のTV広告として、請求人に係る動画を自社の広告と一緒に掲載したり、請求人と同様の態様で事業展開しており、それらを勘案すると、本件商標は、不正の目的をもって登録出願されたものである旨主張している。

しかしながら、請求人が提出したこれらの証拠のうち、甲第10号証は、いずれも、本件商標の登録出願時及び登録査定時よりも後のものであるから、これらの証拠をもって、本件商標が、不正の目的をもって登録出願されたものであるとはいい難く、被請求人が、引用商標2の存在を知っていたとしても、そのことのみをもって、本件商標の登録出願が不正の目的をもってなされたということはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

6 商標法第4条第1項第7号該当性について

請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。

さらに、本件商標を、その指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、本件商標の構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもない。

その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠の提出はない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

7 商標法第4条第1項第16号該当性について

本件商標は、その商標の構成中に「宅配専門」の文字を有してなるところ、「宅配」の文字は「自宅配達の略。商品や新聞・雑誌・荷物などを家まで配達すること。」、「専門」の文字は「特定の分野をもっぱら研究・担当すること。」を意味するものであり、全体としては「商品などを自宅まで配達することを専門にすること」程の意味合いを認識するものである。

しかしながら、本件指定役務である「寿司を主とする飲食物の提供」において、「宅配専門」は、一事業形態を表すものである。

そして、「寿司を主とする飲食物の提供」という役務は、事業形態を特定した役務表示ではなく、これには、あらゆる事業形態のものも含まれる概念であると解されるものであるから、宅配という事業形態であったとしても、取引の対象となるものは、寿司を主とする飲食物を提供することである。

そうすると、いかなる事業形態であったとしても、寿司を主とする飲食物を提供することに違いはないというべきであるから、本件商標をその指定役務に使用しても、その役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるということはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。

8 被請求人の主張について

被請求人は、本件商標の関連商標群の審査・審理の類否判断を挙げると共に、本件商標の「寿司ざんまい」の文字部分については、自他役務の識別力を有さないものであって、本件商標の自他役務の識別力を有する要部は図形部分であるから、引用商標と類似しない旨主張する。

しかしながら、商標の類否判断においては、具体的事案の判断においては、過去の審査審判例に拘束されることなく判断されるべきであるから、過去の関連商標群の審査審判の事例をもって、その判断が左右されるものではない。

そして、本件商標の構成中の「寿司ざんまい」の文字は、大きく顕著に表されていることに加え、上記1(2)カのとおり、「すしざんまい」が請求人の展開するすし店の名称として、「スシザンマイ」の称呼と共に、広く認識されていること、本件商標の指定役務である「寿司を主とする飲食物の提供」において、「すし」と「寿司」が同義であり、相互に使用されるものであること等を考慮すると、本件商標に接する需要者は、請求人の展開するすし店の名称として広く認識されている「すしざんまい」と同一の称呼を生ずる本件商標の構成中の「寿司ざんまい」の文字部分に着目し、請求人の展開するすし店の名称として広く認識されている「すしざんまい」を想起することも少なくないというべきであるから、本件商標の構成中の「寿司ざんまい」の文字部分が要部となり得るものといわざるを得ない。

そうすると、本件商標と引用商標は、上記2のとおり、互いに類似するものと判断するのが相当である。

したがって、被請求人の主張は採用できない。

9 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第16号及び同第19号に該当しないとしても、同第10号及び同第11号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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