Trademark Appeal Case
色彩商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−1155(T2018−1155/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第39類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成27年4月1日に登録出願され、その後、指定役務については、当審における同30年11月5日受付けの手続補正書において、第39類「鉄道による輸送」に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、その指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、出願人により提出された証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できるに至っているとはいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成31年1月25日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べに対する請求人の意見
請求人は、上記第3の証拠調べ通知に対し、以下1ないし4のように述べた。
1 請求人、北海道旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社は、いずれも1987年4月1日に日本国有鉄道の分割民営化に伴い発足した会社であるが、請求人と北海道旅客鉄道株式会社を含む6社の発足に際しては、全ての会社が「JR」という共通のロゴマークを採用した上で、それぞれの会社のコーポレートカラーによって会社を識別するというCI戦略が採用されたのであり、本願商標も、証拠調べ通知書において提示された事例1(以下「事例1」という。「事例2」以降も同様。)の色彩も、使用開始当初からそれぞれ請求人及び北海道旅客鉄道株式会社の役務の識別標識として使用されていたものである。したがって、事例1は、本願商標が自他役務の識別力を有しないことを証するものではない。
2 事例2、事例5、事例6、事例7及び事例10に係る色彩は、路線を他の路線と識別するために付されたものであり、むしろ色彩が自他役務の識別力を有することの一証左である。
3 事例2、事例3、事例4、事例8及び事例9に係る色彩は、本願商標とは明度及び彩度を異にするものであり、本願商標が有する自他役務の識別力を否定するものではない。
4 したがって、証拠調べ通知書に提示されたいずれの事例も、本願商標の自他役務の識別力を否定し得るものではなく、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しないことは明らかである。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性
(1)本願商標について
本願商標は、上記第1のとおり、色彩のみからなる商標であって、緑色(DIC213)のみからなるものであり、第39類「鉄道による輸送」を指定役務とするものである。
(2)取引の実情について
ア 役務の広告や提供の用に供する物に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上等のために採択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。
そして、役務の広告や提供の用に供する物には、様々な色彩が用いられており、緑色は特異な色彩であるとはいえない上、本願商標の緑色(以下「本願緑色」という。)と同系色の色彩についても、原審で示した事実のほかに、別掲2のとおり、本願指定役務と関係の深い業界において、広告宣伝に資するウェブサイトや、役務の提供の用に供する券売機、運行する列車の路線表示、列車の車体、乗り場案内や駅名標等の案内表示に使用されている実情がある。
イ なお、請求人は、色彩が単なる背景色等ではなく、識別標識として用いられることもあり、特に、公共交通機関では、極めて多数の需要者が利用するというサービスの特性にかんがみ、様々な需要者が、言語ギャップ等の影響を受けず、かつ、混雑した状況でも遠方から一目で確認できる色彩が、駅や停車場等、サービスの入口となる場所における各事業者の出所識別標識として、大きな役割を果たしており、他の公共輸送機関においても、色彩がサービスの出所識別標識として使用されているのだから、こうした指定役務の特性や取引の実情を考慮すべき旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証を提出している。
(ア)そこで、これらを検討するに、例えば、請求人が綾瀬駅と主張する写真には、白地の縦長の案内掲示版があり、青色の四角形部分に白抜きで「M」字様の図形、その下には、紺色の長方形部分に白抜きで「東京メトロ」及び「Tokyo Metro」の文字が表示され、本願緑色の四角形部分には、白抜きで、「JRグループ デザイン ガイドブック」(甲28)に記載されている、JRグループ各社が共通して使用する「シンボルマーク」と同一のマーク(以下「JRマーク」という。)及び「JR東日本」の文字が表示され、さらにその下に、「綾瀬駅」等の文字が表示されている(甲6)。
(イ)請求人が西船橋駅と主張する写真には、横長の案内掲示版があり、白い部分には「エレベーター」の文字、本願緑色部分にはJRマーク及び「JR東日本」の文字、青色部分にはM字様の図形、紺色部分には「東京メトロ」等の文字、及び黄緑色部分には「東葉高速鉄道」等の文字が表示されている(甲8)。
(ウ)請求人が高尾駅と主張する数台の券売機が設置されている写真には、壁の左半分の上部及び下部には、本願緑色をした帯部分に、「JR線きっぷ売場」等の文字が表示され、その間に「JR線」、「JR券売機」等の文字が表示されると共に、本願緑色が使用された券売機が設置されている。一方、壁の右半分の上部及び下部には、ピンク色をした帯部分に、「京王線きっぷ売場」等の文字が表示され、その間に、「京王」、一部がデザイン化された「KEIO」の文字が表示されると共に、紺色が使用された券売機が設置されている(甲13)。
また、写真の中央付近にも、案内表示が置かれており、その左側には、黄緑色を背景にして「中央線」の文字が、右側には、青色を背景にして「京王線」の文字が表示されている(同上)。
(エ)請求人が大崎駅と主張する写真には、横長の案内掲示板があり、その左側には本願緑色を背景に、白抜きで、JRマーク、「大崎駅」、「北改札口」等の文字が表示され、右側には濃紺色を背景に、「TWR」の欧文字をデザイン化したマーク及び「りんかい線」の文字が表示されている(甲14)。
(オ)請求人が五反田駅と主張する写真には、手前に本願緑色の案内掲示板があり、白抜きで「JR山手線」等の文字が表示されており、その奥には、ピンク色の案内掲示板があり、白抜きで「池上線」の文字が表示されている(甲17)。
(カ)請求人が川越駅と主張する写真には、横長の案内掲示板があり、その左側には、濃紺色を背景に「東武東上線のりば」の文字が、その右側には本願緑色を背景に、「入口」、「川越駅」の文字、JRマーク及び「JR東日本」等の文字が表示されている(甲20)。
(キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、鉄道の駅においては、交通機関名や路線名、駅名、乗り場案内等の案内表示や券売機等に、青色や黄緑色、緑色、紺色、ピンク色等、様々な単色のみからなる色彩が使用されている実情が認められる。
また、複数の異なる交通機関や路線が存在している場合に、それぞれの交通機関名や路線名等の案内表示の背景色や券売機の装飾に、異なる色彩が使用されていることで、利用者が複数の異なる交通機関や路線があることを認識しやすくし、利用する交通機関や行先等を把握しやすいものとしていることがうかがえる。
しかしながら、例えば、「東京メトロ」の文字(甲8)、「りんかい線」の文字(甲14)及び「東武東上線のりば」の文字(甲20)は、いずれも同系色の紺色を背景色に、また、「東葉高速鉄道」の文字(甲8)及び「中央線」の文字(甲13)は、いずれも黄緑色を背景色に、「京王線きっぷ売場」の文字(甲13)及び「池上線」の文字(甲17)は、いずれも同系色のピンク色を背景色にしているように、本願指定役務の分野においては、複数の異なる事業者が、交通機関名や路線名等を表示する際の背景色に、同系色の色彩を採択、使用している実情も見受けられるところである。
(3)判断
上記のとおり、案内掲示板や券売機等には、必ず「東京メトロ」、「JR山手線」、「京王線」、JRマーク等、出所を識別できる文字や記号が表示されており、異なる事業者が同系色の色彩を使用している状況からすると、本願指定役務の分野における需要者は、役務の提供を受ける際に、案内表示等に使用された色彩のみをもって、自己が利用する交通機関や路線等について識別しているというよりも、色彩と共に表示されている文字や図形等の他の要素とあわせて、役務の出所を識別しているとみるのが相当である。
してみれば、公共交通機関に係る役務の分野においては、本願緑色は、利用者に、交通機関名や路線等の表示を視認しやすくしている場合があるとしても、色彩のみが独立して、請求人と他の鉄道事業者とを識別するための標識として、その機能を果たしているということはできない。
本来、役務について使用される色彩とは、その提供の用に供する物や広告物等の魅力向上等のために使用されるものと解すべきであって、本願緑色も、その域を脱することはなく、視認性を高める効果が期待できるということはできても、自他役務の識別標識としの機能を果たし得るものとまでは認めることはできない。
また、本願指定役務の分野においては、本願緑色と同系色の色彩が、請求人以外の者によっても、役務の広告や役務の提供の用に供する物について使用されている実情があることからすると、本願商標のような緑色のみからなる色彩は、本願指定役務の分野において、何人もその使用を欲するといい得るものであって、本願緑色を含め、様々な色彩が異なる事業者によって採択使用されている状況にあるということができる。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであり、商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 使用による識別力の獲得について
請求人は、本願商標は、自他役務の識別力を獲得したと認めるに十分な使用実績があり、現に使用された結果、需要者の識別標識として機能しているから、本願商標は登録を受けることができる旨主張し、証拠方法として、原審において資料1ないし資料59、当審において甲第1号証ないし甲第24号証及び甲第28号証ないし甲第52号証を提出している。
そこで、本願商標が、使用をされた結果、需要者又は取引者が何人かの業務に係る役務であることを認識するに至っているかについて、以下検討する。
(1)これらの証拠及び請求人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 請求人及び本願商標について
請求人は、1987年4月1日に日本国有鉄道の分割民営化に伴い発足した鉄道事業者であり、本願商標は、会社発足の際に、請求人のコーポレートカラーとして採択され(資料1、甲52)、請求人を表すJRマークや「JR東日本」の文字、及びこれらを上下二段に組み合わせたマーク(以下「組合せマーク」という。)に使用されている(資料2、甲28)。
また、請求人の業務に係る駅数は、1,666駅(貨物駅5含む)(2017年4月1日現在:甲29)、自動券売機は、1,853台、指定席券売機は1,218台、多機能券売機は998台(いずれも2017年3月31日現在:甲30)、輸送人員は64億1,100万人(2017年3月期:甲31)、請求人の主な事業区域は東北、関東及び甲信越である(甲52)。
イ 本願商標の使用状況について
(ア)駅の構内等における使用状況について
請求人は、駅の構内や駅入口における案内掲示版、案内表示に本願緑色を使用している(資料9〜資料16、資料18、資料19、資料21、資料22、資料25〜資料38、資料42、資料46〜資料55、甲1〜甲8、甲14〜甲22)ものの、例えば、資料9ないし資料13、資料16、資料18、資料21、資料28、資料29、資料31、資料34、資料35、資料38、資料47、資料49、資料53ないし資料55、甲第3号証ないし甲第6号証、甲第8号証、甲第14号証、甲第19号証、甲第20号証、甲第22号証には、請求人の組合せマークが顕著に表示されている。
加えて、駅構内の券売機や券売機が設置された壁の一部に、本願緑色が使用されている(資料6〜資料8、資料20、資料24、甲9〜甲11、甲13)ものの、例えば、資料7の券売機の上部や、資料8の券売機の一部には、組合せマークが表示されており、甲第9号証や甲第10号証、甲第13号証の券売機には、「JR専用」、「JR線」の文字又はJRマークが表示されている上、これらの使用期間については不明である。
また、駅構内の時刻表、駅名標には、本願緑色が使用されている(資料4、資料5、資料17、資料23、甲23、甲24等)ことがうかがえるが、行先の表示や他の路線を表す色彩などと共に表示されていることに加え、いつ頃からこのような態様で使用を開始し、現在に至るまでどの程度の期間、継続的に使用されてきたのかは確認することができない。
(イ)広告について
a 請求人のホームページにおける「新聞広告データアーカイブ」のページには、「おかげさまでSuica電子マネー10周年編」の見出しの下、新聞記事の一面とおぼしき図が掲載され、当該図の背景色と、文字の一部に本願緑色が使用され、「掲載日」として、2014/3/22、3/24、3/29の表示がある(甲34)。
b 請求人のホームページにおける「新聞広告データアーカイブ」のページには、新聞記事の一面とおぼしき図が掲載されており、右下12分の1ほどの部分に本願緑色に似た色彩が使用され、「掲載日」として、2008/6/5の表示がある(甲37)。
c 請求人が車内広告と主張する写真には、本願緑色が全体の背景色として使用されているが、車内広告の時期は確認できない(甲48)。
(ウ)テレビコマーシャルについて
a 2016年2月1日打ち出しの請求人ホームページにおいて、「テレビCMギャラリー」の見出しの下、「JR東日本のテレビCMの一部をご紹介します。」の文字及び一部に本願緑色が使用されている画面の図がある(資料56)。
しかしながら、CMの全容や放映期間、放映回数等は主張立証されていない。
b 「YouTube」のウェブサイトにおいて、「JR東日本公式チャンネル」の見出しの下、「CMギャラリー」の記載の下方に、10個のCM動画の画面が掲載されているが、これらの画面において、本願緑色は確認できない上、CMの全容や放映期間、放映回数等は主張立証されていない(資料58)。
(エ)インターネットにおける使用状況について
a 2013年6月11日付け請求人プレス発表において、「JR東日本列車運行情報アプリ/アイコンイメージ」の背景色及び「スマートフォン画面イメージ」の一部に本願緑色に似た色彩が使用されているものの、上記アイコンイメージには、「JR東日本」の文字も表示されている(甲49)。
b 2014年3月4日付け請求人プレス発表において、「JR東日本アプリのサービスイメージ」の図に本願緑色に似た色彩が、赤、白、黒、青、ピンク、オレンジ色等の色彩と共に使用されている(甲50)。
c 「JR東日本アプリ」のホームページにおいて、組合せマーク、組合せマークを白抜きで表した四角形の背景色、「JR東日本アプリ」の文字等に、本願緑色に似た色彩が使用されている。また、当該アプリの画面の一部に、本願緑色に似た色彩が白、青、黒、赤等の色彩と共に使用されている(甲51)。
(2)判断
請求人の提出に係る資料及び甲各号証からは、請求人は、会社発足時に、本願緑色をコーポレートカラーとして採用し、当該色彩を、請求人を表すJRマーク、駅の案内掲示板、時刻表、駅名標及び券売機に使用していることがうかがえる。
しかしながら、請求人が本願緑色の使用を開始した時期が確認できるのは、わずかに資料1及び甲第52号証の、いずれも「ウィキペディア」のウェブサイトにおける記載のみであり、また、請求人が会社発足以降から現在に至るまでに、継続して本願緑色を使用してきたことを示す証拠は見当たらない。
また、請求人の業務は、公共交通機関の鉄道事業であって、その営業範囲は、東日本地域のほぼ全域に渡り、その業務に係る駅、券売機及び輸送人員の数の大きさからすれば、相当な数の需要者が、請求人の業務に係る役務を利用しているものと推認されるものの、本願緑色が使用された駅の案内掲示板や券売機には、請求人を表す組合せマークや「JR」等の文字が同時に使用されているものが多いこと、上記1のとおり、色彩のみで識別されるのが本願指定役務に係る分野における取引実情とはいい難いことを考慮すると、請求人の業務に係る役務に接する取引者、需要者は、組合せマークや「JR」等の文字によって、役務の出所の識別を行っているとみるべきであり、色彩は、これらを分かりやすくするために付されていると理解するにとどまるというべきであって、本願商標に接する需要者が、本願緑色の色彩のみに着目し、これを役務の出所識別標識として認識しているということを、請求人による本願緑色の使用状況から認めることはできない。
そして、本願指定役務「鉄道による輸送」の役務に係る広告宣伝として認識される本願緑色の使用状況をみるに、新聞広告の掲載回数は47回と、ごく限られたものであり、車内広告については、当該広告の掲載がされた路線の種類、地域的範囲、日時や掲載期間等が不明であるから、これらの広告によって、本願緑色が、請求人の業務に係る役務を表すものとして、広く周知になったものということはできない。
また、テレビコマーシャルについては、請求人は、当審において複数のテレビコマーシャルの視聴回数等について主張しているものの、その内容や視聴回数を客観的に証する資料の提出はなく、原審において提出されたテレビコマーシャルに関する資料についても、上記(1)イ(ウ)のとおり、テレビコマーシャルの全容が不明であるものや本願緑色の使用を確認できないものであるから、本願緑色が、これらのテレビコマーシャルにおいてどのように使用され、これに接する取引者、需要者に、どの程度の印象を残すものであるのかを推し量ることはできない。
加えて、「鉄道による輸送」に係る各種情報の提供を行うものと認識されるスマートフォン向けのアプリにおける使用状況についても、これらのアプリのダウンロード数や利用者数等は不明であるから、これらの使用によって、どの程度の数の取引者、需要者の目に本願緑色が触れたのかは不明であるし、その使用態様は「JR東日本」の文字、組合せマーク及び本願緑色以外の色彩も共に使用されているものである。
以上からすると、請求人が、本願緑色を、会社発足以降、継続して使用してきたことを確認することはできず、また、請求人の駅構内等における本願緑色の使用状況や、広告宣伝における本願緑色の使用態様は、請求人を表す組合せマークやJRマーク、「JR東日本」等の文字と共に使用されているものが多いことに加え、広告宣伝も、本願緑色が、文字や図形等の他の要素から独立して、強く印象に残るような手法が採用されているともいえないものである。
そうすると、本願指定役務の分野における取引者、需要者は、本願緑色のみによって、役務の出所の識別を行っているということはできず、また、本願緑色のみが独立して、請求人の業務を表すものとして、指定役務の分野における取引者、需要者に広く認識されているというべき事情も見当たらない。
してみれば、本願緑色は、色彩のみが独立して請求人の業務を表すものとして取引者、需要者間に認識されているものとみることはできず、本願商標は、使用された結果、請求人の業務に係る役務の出所を表示するものとして、又は自他役務の識別標識として認識されるに至っているということはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、公共輸送機関としての特性上、遠方からの視認性が高く混雑した状況でも認知されやすい本願商標の色彩が、請求人の役務の識別標識として高度な機能を発揮しており、特に、乗降客の多い都市圏等では、同一の駅を複数の鉄道事業者が使用する場合に、請求人と他の鉄道事業者との誤認混同を防ぐための識別標識として、本願商標は極めて大きな役割を果たしている旨主張する。
しかしながら、極めて多数の需要者が利用する駅等において、他の事業者の広告や看板等、様々な情報が掲示されている状況の中で、本願商標の色彩を案内掲示板等に使用することで、その視認性を高める効果があるとしても、必ずしも特定の者の役務の出所識別標識として機能しているということにはならない。
(2)請求人は、実際の取引現場において文字を表記することなく商品や役務を提供することは通常では有り得ないから、色彩と文字が一体的に使用されていることをもって、色彩商標の使用と認めず、使用による顕著性を否定するという判断は、現実の取引実情と乖離したものといわざるを得ず、色彩商標の登録制度の意義が失われ、取引秩序を維持して産業の発展に寄与するという商標法の趣旨にも反する旨主張する。
しかしながら、商標法においては、色彩のみが独立して自他商品、役務の識別標識として認識される場合には、色彩のみからなる商標についての登録を受けることができるものと解すべきところ、請求人提出の証拠からは、本願緑色について、色彩のみが独立して、請求人の役務の出所を表示する識別標識として、取引者、需要者に認識されていると判断するに足りる事情を認めることはできず、本願商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標といわざるを得ないものであるから登録を受けることができないと判断したものであって、色彩と文字が一体的に使用されていることのみを理由として、色彩商標の使用と認めず、使用による顕著性を否定しているものではない。
してみれば、本願商標が拒絶されることにより、直ちに色彩商標の登録制度の意義が失われるとか、商標法の趣旨に反するものということはできない。
(3)請求人は、当審が証拠調べ通知書で示した事例1に係る色彩は、本願商標と同様に、使用開始当初から、JR北海道の識別標識として使用されていたものであるし、その他の事例に係る色彩は、本願商標とは明度や彩度が異なるものであるから、これらの事例は、本願商標が自他役務の識別力を有しないことを証するものではない旨主張する。
しかしながら、請求人提出の証拠をみても、本願商標や事例1に係る色彩が、その使用開始当初から、取引者、需要者に、色彩のみが独立して請求人やJR北海道の識別標識として認識されていたというべき事情は見当たらない。
また、原審において示した事例や当審の証拠調べ通知書において示した事例に係る色彩は、詳細にみれば、本願緑色と明度や彩度を異にするとしても、一般の取引者、需要者が、役務の識別にあたり、その色彩の明度や彩度までを子細に観察し、それぞれの色彩を異なるものとして明瞭に区別することは困難であるというべきである。
そして、そのような一般の取引者、需要者の色彩に対する理解度において、本願緑色と同系色の色彩と認められる色彩が、他の事業者によっても、本願指定役務と同種の業界において使用されている実情があるということは、このような緑色のみからなる色彩が、指定役務の分野において、役務の広告や、役務の提供の用に供する物に普通に使用され、又は普通に使用され得る色彩の一種であることを示すものであるから、取引者、需要者は、本願緑色についても、前記事例における色彩の使用と同様に、誰もが普通に使用する色彩の一つと認識するにすぎないというのが相当であり、何人かの業務に係る役務であることを認識させる出所識別標識としては認識し得ないものである。
(4)請求人は、原審における拒絶査定は、拒絶理由通知書には全く記載していなかった新たな証拠を追加し、拒絶査定を行ったもので、実質的に新たな拒絶理由を追加したものであり、この点に関する請求人の反論の機会を実質的に奪うものであって、請求人に対し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなかったものであるから、本件審査手続は、商標法第15条の2の規定に違反するものである旨主張する。
そこで、本願の原審から当審までの手続の経緯をみるに、原審は、平成27年12月24日付け拒絶理由通知書において、本願の指定役務を取り扱う業界において、本願緑色と同系色の色彩が、役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等として使用されている例を3件示して、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するとの拒絶理由を通知した上で、同29年10月23日付け拒絶査定において、本願緑色と同系色の色彩が、指定役務を取り扱う業界において、上記拒絶理由通知書で示した使用例の他にも、役務の提供の用に供する物や広告に使用されている例3件を示したものである。
そうすると、上記拒絶査定における使用例3件は、既に拒絶理由通知書において開示された拒絶理由の該当性を補強するために示されたものであって、新たな拒絶の理由を追加したものとはいえないから、原審の手続は、請求人に対し、意見書を提出する機会を与えなかった違法なものとはいえない。
また、拒絶査定不服審判における審理の対象は、当該出願に拒絶の理由があるか否かであり、原審及び当審において示した証拠並びにこれらに対する請求人の主張を踏まえた上で、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから、商標法第3条第1項第6号に該当すると判断したものである。
(5)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。