Trademark Appeal Case
要部抽出と周知商標の論点
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2019−900357(T2019−900357/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第6179913商標(以下「本件商標」という。)は、「ジュピタープロジェクト」の片仮名を標準文字で表してなり、平成30年9月6日に登録出願、第36類に属する別掲1のとおりの役務を指定役務として、令和元年8月29日に登録査定、同年9月13日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、引用する登録第5288174号商標(以下「引用商標」という。)は、「JUPITER」の欧文字を標準文字で表してなり、平成20年3月19日に登録出願、第36類に属する別掲2のとおりの役務を指定役務として、同21年12月18日に設定登録、令和2年1月8日に商標権の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取消しを免れないと申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は「ジュピタープロジェクト」の片仮名よりなるところ、「プロジェクト」は、容易に「活動計画」、「事業」等の意味を理解することができる単語である。
そして、「PROJECT」及び「プロジェクト」の表示は、第36類に属する金融関連事業の商標であって、当該表示を含む商標が多数商標登録され、金融関連事業の商標として、頻繁に採択されている(甲3)から、金融事業分野においては、需要者・取引者が、金融関連事業が特定の主体から提供されているという出所表示的な機能を認識することはなく、自他役務の識別力を発揮することはない。
よって、本件商標のうち、「ジュピター」が自他役務の識別力を発揮する、いわゆる、商標の要部であると理解することが妥当である。
イ 本件商標と引用商標との類否
本件商標は、要部が「ジュピター」であるから、「ジュピター」が自然称呼である。
一方、引用商標は、「JUPITER」の欧文字よりなる商標であり、その自然称呼は、「ジュピター」である。
よって、本件商標と引用商標は、共にその自然称呼が「ジュピター」であって、同一である。
次に、本件商標と引用商標とは、外観の構成態様は同一ではないが、本件商標の要部「ジュピター」と引用商標とは、外観においても類似する。
そして、本件商標と引用商標の観念について検討するに、本件商標の要部「ジュピター」からは、「木星」の意味が生じる。一方、「プロジェクト」からは、「活動などの計画」、「事業」の意味が生じる。
よって、本件商標全体からは、「木星活動計画」若しくは「木星事業」の意味が生じるが、かかる意味は日本語として不自然であるから、「木星」との意味を容易に感得し、役務の取引に当たるとするのが一般的である。
一方、引用商標は、「JUPITER」であるから、「木星」の意味が生じるものである。
よって、本件商標と引用商標は、観念においても類似する。
ウ 本件商標は、引用商標の登録出願日より後に登録出願され、また指定役務が類似し、さらに引用商標と類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
申立人は、1985年、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(以下「イギリス」という。)のロンドンにおいて設立された投資用資産の管理の代行を専門とする企業がその前身である。
その後、1995年にコメルツ銀行が申立人の前身会社を買収し、申立人は、2000年には、コメルツ銀行の完全子会社となる。
2010年6月、申立人のメンバー会社であるJupiter Fund Management plcは、ロンドン証券取引所に上場した(甲4)。
申立人は、上記変遷を経ながら、投資対象の地域を欧州からアジアへも拡張し、特に日本においては、東京証券取引所の上場株式を対象に、収益配当目当ての投資信託(インカム・ファンド)を実行し、株価及び収益情報を公開している(甲5)。かかる情報公開において、引用商標若しくは類似する「Jupiter」を常に表示している。
申立人の事業は、各種メディアに取り上げられ、その認知度を高めている(甲6)。なお、同号証の一部が表示するJupiter Asset Managementは、Jupiter Fund Management plcと同様、申立人のグループ企業若しくは団体である。
よって、本件商標の登録出願時には、引用商標は、日本において広く認識された商標であり、本件商標は、引用商標の役務と同一又は類似する役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人は、引用商標と同一の文字からなる商標を欧州共同体において、本件商標と同一役務について1997年に登録出願し、1999年3月に登録を得ている(甲9)。また、その登録商標は更新を重ね、本件商標の登録出願日時点においても有効に存続する。
引用商標と同一の文字からなる商標は、アメリカ合衆国においても使用実績が認められ、商標登録され、更新が認められ、有効に存続する(甲7、甲8)。
すなわち、引用商標は、本件商標の登録出願時点においては、既に使用され、欧州共同体及びアメリカ合衆国においては、広く認識されていたにもかかわらず、本件商標は、「ジュピター」を採択したものであり、引用商標の名声等にフリーライドするものであり、不正な目的をもって使用されている商標であるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「ジュピタープロジェクト」の片仮名からなるところ、「ジュピター」の文字が「木星」の意味を有し、「プロジェクト」の文字が「企画」の意味を有する語である(いずれも「広辞苑第七版」)としても、これらを組み合わせた「ジュピタープロジェクト」の文字は、全体として辞書等に載録がなく、一種の造語というべきであるから特定の意味が生じるものとはいえず、また、本件商標は、同書、同大に表され、これを構成する各語に軽重の差を見いだすことができないものであって、当該構成文字に相応して生じる「ジュピタープロジェクト」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
してみれば、本件商標は、全体として一連一体のものとして認識されるものとみるのが相当であるから、「ジュピタープロジェクト」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおり、「JUPITER」の欧文字を表してなるところ、当該文字は「木星」の意味を有する英語である(「コンサイス英和辞典第13版」)ことから、「ジュピター」の称呼を生じ、「木星」の観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、片仮名と欧文字の相違及び構成文字数において明らかな相違があるから、外観において明確に区別できるものである。
また、本件商標から生じる「ジュピタープロジェクト」の称呼と引用商標から生じる「ジュピター」の称呼とは、「プロジェクト」の音の有無という顕著な差異があるから、明瞭に聴別できるものである。
さらに、本件商標は特定の観念を生じないのに対し、引用商標は「木星」の観念を生じるから、観念において紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。
エ 本件商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について
本件商標の指定役務には、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務が包含されている。
オ 小括
以上のとおり、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似の役務であるとしても、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
申立人は、投資対象の地域を欧州からアジアへも拡張し、特に日本においては、東京証券取引所の上場株式を対象に、収益配当目当ての投資信託(インカム・ファンド)を実行し、株価及び収益情報を公開し(甲5)、かかる情報公開において、引用商標若しくは類似する「Jupiter」を常に表示し、また、申立人の事業は、各種メディアに取り上げられ(甲6)、その認知度を高めていることから、引用商標は、日本において広く認識された商標である旨主張している。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠は、「JUPITER」の文字が単独で使用されている例が見当たらないばかりでなく、すべて外国語で記載されたものであり、引用商標又は「Jupiter」の文字からなる商標が申立人の業務に係る役務を表示するものとして、どのように使用されているか等、その内容を具体的に把握することができないものである。
また、引用商標又は「Jupiter」の文字からなる商標を使用した役務について、その提供期間、提供地域、売上高、宣伝広告の規模等の実情を確認できる客観的な証拠の提出はなく、その他に引用商標に係る営業規模等を示す客観的な事実を発見することもできなかった。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたということはできない。
また、本件商標は、上記(1)のとおり、引用商標とは類似しない商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人は、本件商標の登録出願時点において、引用商標が既に使用され、欧州共同体及びアメリカ合衆国においては、広く認識されていたにもかかわらず、本件商標は、「ジュピター」を採択したものであり、引用商標の名声等にフリーライドするものであるから、不正な目的をもって使用されている商標である旨主張する。
しかしながら、引用商標は、欧州共同体やアメリカ合衆国において商標登録されているとしても、そのことのみをもって、需要者・取引者の間で広く知られているとはいい難く、また、上記(2)のとおり、引用商標は周知著名な商標であるとはいえないものであるから、本件商標が引用商標の周知著名性にフリーライドするものということはできない。
その他、本件商標が不正な目的をもって使用されているとする事情も見いだせない。
また、本件商標は、上記(1)のとおり、引用商標と類似するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)申立人の主張について
申立人は、「PROJECT」又は「プロジェクト」の文字は、金融関連事業の商標として頻繁に採択されているから、金融関連業務が特定の主体から提供されているという出所表示的な機能を認識することはなく、本件商標は「ジュピター」の文字部分が要部であり、「ジュピター」の称呼及び「木星」の意味が生じる旨主張している。
しかしながら、「PROJECT」又は「プロジェクト」の文字は、「計画」、「企画」等の意味を有する英語又は外来語であり(「コンサイス英和辞典第13版」、「広辞苑第七版」)、当該文字が構成文字中に含まれた登録商標が存在するとしても、本件商標の指定役務との関係でいかなる役務の質を表すかは明らかでないばかりでなく、当審において職権をもって調査するも、当該文字がその指定役務の具体的な質を表示するものとして取引上普通に使用されていると認めるに足りる事実も見いだせない。
してみれば、本件商標から「プロジェクト」の文字部分を出所識別機能がないものとして捨象し、「ジュピター」の文字部分のみを役務の識別標識として抽出することは妥当ではなく、本件商標は、上記(1)アのとおり、一連一体のものと認識されるものとみるべきであって、その構成文字に相応して「ジュピタープロジェクト」の称呼を生じ、また、全体として一種の造語として、特定の観念を生じないものである。
したがって、かかる申立人の主張は採用することができない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第19号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。