結論テキスト
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は,その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2019−890037(T2019−890037/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第6084388号商標(以下「本件商標」という。)は,「Sunlop」の欧文字を書してなり,平成29年12月26日に登録出願,第12類「自動車用車体,自動車,乗物用バックミラー,自動車用バンパー,自動車用シャシー,自動車用シガーライター,自動車用ショックアブソーバー,自動車用タイヤ,自動車用ブレーキパッド,自動車用座席,自動車用チャイルドシート,乗物の座席用ヘッドレスト,航空機・自動車用シートベルト,乗物用防眩装置」を指定商品として,同30年9月13日に登録査定,同月28日に設定登録されたものである。
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は,以下の登録商標(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:明治42年10月18日
設定登録日:明治43年7月27日
書換登録日:平成12年9月13日
指定商品 :第12類「自動車・二輪自動車・自転車・乳母車・人力車・手押し車・荷車・馬車・リヤカーのタイヤ」
商標の構成:DUNLOP
登録出願日:大正9年10月26日
設定登録日:大正10年1月27日
書換登録日:平成12年8月2日
指定商品 :第12類「自動車・二輪自動車・自転車・乳母車・人力車・手押し車・荷車・馬車・リヤカーのタイヤ,鉄道車両・自動車・二輪自動車・自転車・乳母車・人力車・手押し車・荷車・馬車・リヤカーの金属・木・その他の材質からなる車輪・ハブ・リム・フェロー・スポーク」
請求人は,「本件商標の登録を無効にする,審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第221号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標について
本件商標は,「Sunlop」と書してなり,「サンロップ」の称呼を生じる。一方,引用商標は,「DUNLOP」と書してなり,「ダンロップ」の称呼を生じること明らかである。
イ 本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標の外観を比較すると,両者はいずれも,ごく普通の一般的な特段の特徴を備えない欧文字を用いており,語頭に後続する「unlop」及び「UNLOP」の文字部分は,小文字,大文字の相違が存在するものの,標章としては実質的な相違はなく,全体としては,外観上,語頭の「D」と「S」の一文字において相違を有するが,全体が欧文字6文字より構成される態様にあって,それが語頭であったとしても一文字だけしか相違しない事情にあり,全体的に観察して外観的に類似する。
また,両者の称呼を比較すると,引用商標から「ダンロップ」の称呼,本件商標から「サンロップ」の称呼を生じ,語頭の「ダ」に対して「サ」である点で相違するが,いずれも子音+aの発音である点で共通し,かつ,「D」,「S」がいずれも発音する場面で破裂を伴う点で共通するものであるから,商標全体を称呼する場合,「サンロップ」は「ダンロップ」との誤認を招く可能性の高いものである。
特に「ダンロップ」の発音は,各音に強弱を生じるものではなく,イントネーションに乏しい滑らか,かつ,平坦に行われるもので,その場合,なおのこと,「サ」と「ダ」の相違は商標全体の称呼に埋没される。
また,本件商標の指定商品も引用商標の指定商品と同一とするものである。
このように,本件商標は,引用商標に対して,称呼及び外観において類似し,本件商標及び引用商標の指定する「自動車タイヤ,自動車」等に使用した場合は,需要者をして混同を生ずる程の類似状態にある。
ウ まとめ
したがって,本件商標は,商標法4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の著名性
「DUNLOP」の文字は,1889年(明治22年)にスコットランドで設立された「The Pneumatic Tyre and Booths Cycle Agency,Ltd.」により自動車用タイヤについて使用され始めたもので,日本でも,1909年(明治42年)に神戸市に設立稼動された工場で生産されたタイヤに使用され,1910年(明治43年)には自動車用タイヤ等について商標登録を得て,現在に至っている(甲2)。
また,引用商標は,スコットランドで自動車用タイヤに使用しはじめた創業者の氏名に由来するものであるが,我が国においては全くなじみのない氏名であって,辞書に掲載されている文字には相当せず,その限りにおいては独創性に富んだ商標と同等に評価される。
引用商標(の文字を含む商標)は,タイヤに関連する分野のみならずあらゆる商品・サービス分野において,他の者による商標登録が一切無く,商標登録を有するのは請求人のみである(甲4)。
そして,特に,ゴルフ等のスポーツ関係商品を展開するに連れてその周知著名性はタイヤ関連商品の需要者,取扱者の範ちゅうを超え,一般需要者にも拡大し,全国,誰にでも知られているという状態にあるということ,以下のとおりである。
(ア)引用商標2は,「日本国で周知・著名である」と認定されている(甲5)。
(イ)請求人は,1909年(明治42年)より,自動車タイヤに係る事業を開始し,引用商標を長年にわたり使用している(甲6)。
(ウ)平成30年度の国内大手メーカーの2018年(平成30年)度の売上実績(甲7)には,請求人のタイヤの売上げは,7680億円に達し,業界第2位の地位を確保している。
(エ)請求人は,業界誌「月刊タイヤ」(甲9〜甲51)において,50年近く前から,引用商標を付したタイヤ(以下「請求人商品」という。)の広告を掲載し,請求人商品を紹介するカタログ(甲52〜甲105)を発行している。また,新聞記事データ(甲106〜甲213)には,40年近く前から,全国紙である日本経済新聞等において,引用商標及び「ダンロップ」が言及されている。
(オ)タイヤ業界において引用商標が周知著名であることを業界関係者が証明又は事実確認している(甲214〜甲219)。
(カ)請求人商品に関するテレビスポット放送確認書(甲220,甲221)は,テレビ放送のCMの実績であり,これより,引用商標及び「ダンロップ」が業界のみならず一般需要者に十分周知され,著名な商標として知られているといえる。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用商標とは,上記(1)のとおり,称呼及び外観が類似し,類似性の程度は高いものといえる。
ウ 取引の事情
引用商標2は,元来,自動車タイヤ等に用いられて,需要者の間に広く認識されるようになったものであるが,その後,ゴルフやテニス等のスポーツ関係商品等を含めて取扱い商品が拡大され,一般需要者においても,周知・著名性を獲得するに至ったものである。
一方,本件商標の指定商品も,引用商標を使用する請求人の業務に係る商品と同じ自動車用タイヤ等であり,取引者,需要者を同一とするものである。
エ 混同のおそれ
引用商標は,100年の歴史があり著名であるから,語頭において一字だけ相違する極めて類似性の高い本件商標に接する取引者,需要者は,同一の商品について使用される引用商標を想起・連想するに相違なく,当該商品が,請求人との間に親子関係会社や系列会社等の緊密な営業上の関係を持つ営業主若しくは,同一の商標によって商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を生じさせる蓋然性が高いものである。
また,本件商標の他人による使用は,請求人が長い年月をかけて築きあげてきた著名な引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り行為であり,当該顧客吸引力の希釈化を招く結果を生ずることも明らかである。
オ まとめ
したがって,本件商標は,商標法4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
引用商標2は,我が国において広く知られた商標であり,他人がこれに類似する本件商標を使用する時は,その著名性へのただ乗りのみならず,引用商標の顧客吸引力の希釈化を招くに相違なく,かつ,引用商標が我が国では造語に等しいという点に鑑みれば,そこに「不正の目的」が介在することも高い蓋然性をもって推認されるのである。
したがって,本件商標は,商標法4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,引用商標2の語頭を除く特徴的な部分を全て備えており,引用商標2にすり寄ったものに相違なく,これに接する取引者,需要者をして著名な引用商標2を連想・想起させるもので,引用商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力に便乗する不正な目的で採択され,出願して登録を受けたものであって,かかる商標をその指定商品に使用する場合には,引用商標の出所表示機能が希釈化され,請求人の築いてきた業務上の信用を毀損させるおそれがある。
本件商標の登録,存続及びその使用はかかる寄生行為を導くもので,商標を保護することにより商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,かつ,商標を頼りに商品を選択する需要者の利益をも保護するという商標法の目的に反し,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同項第19号及び同項第7号に該当し,同法第46条第1項第1号の規定によりその登録は無効とされるべきである。
被請求人は,請求人の上記主張に対し,何ら答弁していない。
(1)引用商標の周知著名性
ア 請求人の提出した証拠及び請求の理由によれば,以下の事実を認めることができる。
(ア)請求人は,1889年(明治22年)創業のタイヤメーカーであって,「DUNLOP」の文字は,1909年(明治42年)の神戸市に設立稼働された工場で生産されたタイヤに使用され,1910年(明治43年)には自動車タイヤ等について商標登録し,現在に至っている(甲2,甲6)。
(イ)請求人に係るタイヤ事業の2018年(平成30年)度の売上収益は,7680億円となっており(甲7),請求人は大手タイヤメーカーとして上位を占めている。
(ウ)請求人は,業界誌「月刊タイヤ(1972年(昭和47年)1月号〜2014年(平成26年)1月号)」(甲9〜甲51)において,請求人商品の広告を掲載している。
(エ)請求人は,「DUNLOP」の文字を表紙に表示した「自動車用タイヤのカタログ(1997年(平成9年)〜2018年(平成30年)」(甲52〜甲105)を発行している。
(オ)日本経済新聞(電子版を含む),日経産業新聞において,請求人の名称と共に,請求人の業務に係るタイヤのブランドとして「ダンロップ(DUNLOP)」の文字が掲載されている(甲106〜甲203,甲213)。
(カ)一般社団法人日本自動車タイヤ協会は,「100年以上にわたり『DUNLOP』タイヤは販売され,日本のみならず,多数の海外諸国においても販売されている。申立人はタイヤメーカーの世界シェアにおいて第5位,日本シェアにおいて第2位を有しており『DUNLOP』は国内外で周知なブランドとして認知されている。」旨の事実確認書(甲218)のほか,株式会社オートバックスセブン,株式会社イエローハット等のカー用品販売会社,「ゴム報知新聞」等を発行する株式会社ポスティコーポレーション,「自動車新聞」等を発行する株式会社自動車新聞社及び神戸商工会議所において,「DUNLOP」が請求人の著名なブランドである旨証明している(甲214〜甲217,甲219)。
イ 上記アで認定した事実によれば,引用商標は,100年以上にわたり請求人の業務に係る自動車用タイヤを表示するものとして使用し,本件商標の登録出願日には既に,タイヤを取り扱う分野の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ,その周知著名性は,本件商標の登録査定日においても継続していたものといえる。
(2)引用商標の独創性
引用商標である「DANLOP」の文字は,辞書等に載録のない文字であり,一種の造語であるといえるから,引用商標の独創性は極めて高いといえる。
(3)本件商標と引用商標との類似性
本件商標と引用商標との類否について検討するに,本件商標は,上記第1のとおり,「Sunlop」の欧文字からなるところ,当該文字は,特定の意味合いを有しない一種の造語と認められるものであって,その構成文字に相応して「サンロップ」の称呼を生じるものであり,特定の観念は生じないものである。
他方,引用商標は,上記第2のとおり,「DUNLOP」の欧文字からなるところ,その構成文字に相応して,「ダンロップ」の称呼を生じ,上記(1)のとおりの周知著名性より「ダンロップというタイヤのブランド」の観念を生じるといい得る。
そこで,本件商標の「Sunlop」の欧文字と引用商標の「DUNLOP」の欧文字を対比すると,外観においては,両者は,語頭の「S」と「D」の文字の差異及び大文字だけでなく小文字が混在する点で外観上,区別し得るというべきである。
次に,称呼においては,本件商標から生じる「サンロップ」の称呼と引用商標から生じる「ダンロップ」の称呼とを比較するに,両称呼は,語頭における「サ」と「ダ」の音に差異を有するものである。
しかしながら,該差異音の「サ」は,「舌端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦子音(s)と母音(a)との結合した音節」であって,同「ダ」は,「舌尖を上前歯のもとに密着して破裂させる有声子音(d)と母音(a)との結合した音節」であることから,調音方法が相違する無声摩擦音と破裂有声音であること,かつ,聴者に比較的強い印象,記憶を残しやすい語頭に位置していることから,本件商標と引用商標の称呼は,語調,語感が異なり,称呼上,互いに聞き誤るおそれはないものといえる。
そして,観念においては,本件商標は,特定の観念を生じるとはいえず,引用商標からは,「ダンロップというタイヤのブランド」の観念を生じるから,観念上,相紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念において,相紛れるおそれがない非類似の商標というべきであるから,その類似性は高いものとはいえない。
(4)本件商標の指定商品と請求人商品との関連性,取引者・需要者の共通性について
本件商標に係る指定商品中の「自動車用タイヤ」は,請求人商品と同一の商品であって,タイヤメーカーによって提供されるものであり,取引者,需要者を共通にするものである。
しかしながら,本件商標の指定商品中「自動車用タイヤ」以外の商品は,自動車並びに自動車の部品及び乗物用の部品といえるものであって,自動車メーカー等によって提供されるものであるから,請求人商品と需要者が共通にする場合があるとしても,その製造者,流通経路,販売場所等を異にするものであって,関連性は弱いものというべきである。
(5)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標との類似性は,高いとはいえないものの,引用商標の周知著名性,独創性,両商標に係る商品の関連性,取引者,需要者の共通性の程度を総合的に考慮すれば,被請求人が本件商標をその指定商品中「自動車用タイヤ」に使用した場合,その取引者,需要者において,請求人あるいは請求人と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがあるというべきである。
また,本件商標は,請求人の提出した証拠によっては,その指定商品中の「自動車用タイヤ」以外の商品について,上記のような混同を生じさせるおそれがあるというべき理由を見いだせないものである。
したがって,本件商標は,その指定商品中「自動車用タイヤ」については,商標法第4条第1項第15号に該当し,当該商品以外の指定商品ついては,該当するとはいえないものである。
(1)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは,上記1(3)のとおり,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,相紛れるおそれがない非類似の商標というべきである。
(2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品は,上記第1のとおりであり,引用商標の指定商品は,上記第2のとおりであるから,両者は同一又は類似の商品といえる。
(3)小括
本件商標は,その指定商品において引用商標の指定商品と同一又は類似するとしても,本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当する商標と認めることができない。
本件商標は,引用商標との関係において,その指定商品中の「自動車用タイヤ」以外の商品について,上記1のとおり,取引者,需要者に混同を生じさせるおそれが見いだせないものである。そして,本件商標権者が,引用商標を剽窃する目的で本件商標を登録出願し,本件商標をその指定商品について使用することにより,引用商標の周知著名性に便乗し,不正に利益を得ようとする意図があったと認めるに足りる証拠の提出はないから,本件商標は,不正の目的をもって使用する商標と認めることができない。
また,本件商標は,登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとか不正の目的をもって登録出願されたものである等の公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するものであると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当する商標と認めることができない。
以上のとおり,本件商標は,その指定商品中,「結論掲記の商品」について,商標法第4条第1項第15号に該当するから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とし,その余の商品については,同法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものではないから,その登録を無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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