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Trademark Appeal Case

地理的表示の形式的判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2019−9759(T2019−9759/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「PATAGONIA CONCHA Y TORO」の文字を標準文字で表してなり、第33類「ぶどう酒,発泡性のぶどう酒,洋酒,果実酒」を指定商品として、平成29年11月14日に登録出願され、その後、本願の指定商品については、原審における同30年9月5日付け手続補正書により、第33類「パタゴニア又はその周辺地域で製造されるぶどう酒,パタゴニア又はその周辺地域で製造される発泡性のぶどう酒,パタゴニア又はその周辺地域で製造される洋酒,パタゴニア又はその周辺地域で製造される果実酒」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定は、「本願商標は、その構成中に、世界貿易機関の加盟国のぶどう酒又は蒸留酒の産地を表示する標章のうち、当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒について使用することが禁止されている『Toro』の文字を含む標章であって、本願の指定商品である第33類『パタゴニア又はその周辺地域で製造されるぶどう酒,パタゴニア又はその周辺地域で製造される発泡性のぶどう酒,パタゴニア又はその周辺地域で製造される洋酒,パタゴニア又はその周辺地域で製造される果実酒』は、当該産地以外の地域を産地とする『ぶどう酒』を含むものである。したがって、本願商標は、当該産地以外の地域を産地とする『ぶどう酒』について使用をするときは、商標法第4条第1項第17号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第17号該当性について

ア 商標法第4条第1項第17号について

商標法第4条第1項第17号は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(以下「TRIPS協定」という場合がある。)の第23条2及び第24条9に対応すべく、平成6年の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)において新設された規定である。

すなわち、TRIPS協定第23条2は、「一のぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示を含むか又は特定する地理的表示から構成される商標の登録であって、当該一のぶどう酒又は蒸留酒と原産地を異にするぶどう酒又は蒸留酒についてのものは、職権により(加盟国の国内法令により認められる場合に限る。)又は利害関係を有する者の申立てにより、拒絶し又は無効とする。」と規定し、世界貿易機関の加盟国に対し、ぶどう酒又は蒸留酒の地理的表示に関する商標登録出願が、その地理的表示の示す原産地と異なるものについてされた場合は、拒絶又は無効とすることを義務付けており、また、同協定第24条9は、「加盟国は、原産国において保護されていない若しくは保護が終了した地理的表示又は当該原産国において使用されなくなった地理的表示を保護する義務をこの協定に基づいて負わない。」と規定しているため、我が国は、これらの規定に従い、商標法第4条第1項第17号において、世界貿易機関の加盟国のぶどう酒又は蒸留酒の産地を表示する標章のうち、当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするものに使用することが禁止されている標章を有する商標であって、当該産地以外の地域を産地とするものについて使用する商標を不登録理由として規定した(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕」における商標法第4条第1項第17号に係る解説参照)。

ここで、TRIPS協定第23条2における「地理的表示を含む商標」については、同協定第23条1において、「『種類』、『型』、『様式』、『模造品』等の表現を伴う場合においても」として、需要者の誤認の有無とは無関係に使用を防止する義務が課されていることから、同条においては当該表示を含む商標がどのように認識されるかを要件とすることは認められていないと解されること、また、同協定第24条6において、一般名称化した場合の例外を定めていることを反対解釈すれば、一般名称化して地理的表示としてではなく用いられている場合であっても、形式的に地理的表示を含むと認められる商標は同協定第23条の適用を受けるというのが原則であると考えられることからすれば、当該商標に含まれる表示が商品の地理的原産地を特定する表示と一致するか否かという形式的判断によるものでなければならず、その表示の使用形態やその地理的表示の我が国における著名性の如何を問わずに判断すべきと解される。

そのため、商標法第4条第1項第17号は、「日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地(中略)を表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章(中略)を有する商標」と規定することとし、需要者がその標章を地理的表示と認識するか否かを問わない規定ぶりとなっている。

イ 本願商標の商標法第4条第1項第17号該当性について

本願商標は、前記1のとおり、「PATAGONIA CONCHA Y TORO」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「PATAGONIA」の文字、「CONCHA」の文字、「Y」の文字及び「TORO」の文字の間に1文字分の間隙が設けられているため、視覚上、当該各文字を組み合わせてなるものと看取、把握されるものである。

そうすると、本願商標は、その構成中に「TORO」の文字を有するものといえるところ、当該文字とつづりを同じくする「Toro」の文字からなる標章は、別掲1に示す情報によれば、欧州議会・欧州理事会規則に基づき、本願商標の登録出願日前の1989年10月7日に、世界貿易機関の加盟国であるスペインに係るぶどう酒のPDO(原産地呼称保護)として登録されている。そして、EUにおいては、ラベルに産地を記載することができる「地理的表示付きワイン」のカテゴリーとして、PDO(原産地呼称保護)及びPGI(地理的表示保護)を定めているところ、当該PDOやPGIの呼称は、当該規則により保護されており、不正な商業利用が禁止されている(別掲2参照)。

してみれば、本願商標は、世界貿易機関の加盟国のぶどう酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒について使用をすることが禁止されている「Toro」の文字とつづりを同じくする「TORO」の文字を有する商標であって、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒である「パタゴニア又はその周辺地域で製造されるぶどう酒,パタゴニア又はその周辺地域で製造される発泡性のぶどう酒」について使用をするものである。

したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第17号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は、自らについて、1883年に創業したラテンアメリカ最大のワイン製造メーカーであって、1933年にはヨーロッパへワインの輸出を開始しており、近年においては、チリ産ワイン最大の輸出業者(輸出額換算で28.2%)となっていること、請求人が製造、販売するワインの輸出先は、世界140か国に及ぶところ、我が国を始め、中国、米国、ブラジル、英国、オランダ、カナダ、韓国、メキシコにおいては、瓶詰めワインの輸出額1位を占めていること、ワイン販売量に係る世界におけるマーケットシェアは、第5位(1.14%)であることなどを述べた上で、「CONCHA Y TORO」の構成中の「TORO」の語は、創業者の名前「メルチョル・コンチャ・イ・トロ(Melchor Conchya y Toro)」に由来するものであって、創業以来、自己の業務に係るワインについて、「CONCHA Y TORO」の文字からなる商標をハウスマークとして継続して使用していることからすれば、当該「CONCHA Y TORO」の文字からなる商標は、我が国のワイン愛好家のみならず、取引者、需要者の間において、請求人のハウスマークとして広く親しまれ、知られていることは明らかであり、一連一体としてのみ認識されるべき商標である旨主張している。

しかしながら、我が国において、商標登録出願に係る商標が商標法第4条第1項第17号に該当するものであるか否かについては、当該商標に含まれる表示が商品の地理的原産地を特定する表示と一致するか否かという形式的判断によるものでなければならず、その表示の使用形態やその地理的表示の我が国における著名性の如何を問わずに判断すべきと解され、そのように解した場合、「PATAGONIA CONCHA Y TORO」の文字を標準文字で表してなる本願商標が同号に該当すること、上記(1)のとおりである。

したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。

イ 請求人は、「TORO」の語を含む商標だけでも、世界各国に多数の商標登録を有しているところ、その中には、スペイン特許商標庁(OEPM)及び欧州連合知的財産庁(EUIPO)において登録が認められたものも含まれており、「Toro」の文字からなる地理的表示の当事者国であるスペインを含むEUにおいて商標登録が認められている一方で、我が国において商標登録が認められないというのは、商標法第4条第1項第17号の適用において、あまりにも画一的すぎる運用がなされている旨主張している。

しかしながら、諸外国等と我が国の商標保護に関する法制は、その運用を含め、細部においては自ずと異なるものであるから、本願商標の登録の適否は、専ら我が国商標法の下において判断されるべきものであるところ、TRIPS協定の加盟国が当該協定に定められた義務等を履行するための法制及びその運用も、各国等により異なり得るのであるから、諸外国等の登録例が必ずしも参考となるものではなく、当該登録例があることをもって、直ちに上記(1)においてした判断が左右されることはない。

したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。

ウ 請求人は、我が国において、「Toro」の文字からなる標章が、スペインに係るPDO(原産地呼称保護)として登録された日より前である1979年3月22日には、商標「CONCHA Y TORO」について、商品「ぶどう酒,その他の酒類」を指定して出願し、商標登録を得ており、また、「Toro」の文字からなる標章が、スペインに係るPDO(原産地呼称保護)として登録された日である1989年10月7日以降であって、かつ、TRIPS協定に対応するため、商標法改正によって、ぶどう酒及び蒸留酒の産地を表示する商標の不登録事由(第4条第1項第17号)が追加された1994年以降でもある、2002年9月24日に出願された商標「MARQUES DE CONCHA Y TORO」(標準文字)についても、「ぶどう酒,その他の果実酒,洋酒」を指定商品として、登録が認められていることからすれば、本願商標が拒絶となる理由は格別認められない旨主張する。

しかしながら、本件審判は本願商標の商標法第4条第1項第17号該当性を争点とするものであるから、同号が不登録事由として追加される前にされた請求人が挙げた登録例(前者)は、同号該当性を判断する上での参考となるものではなく、また、同号に該当するか否かの判断は、その登録出願時及び本件審判に係る審決時を基準としてなすべきところ、本願商標については、上記(1)のとおり、登録出願(平成29年11月14日)時以前から現在に至るまで、世界貿易機関の加盟国のぶどう酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒について使用をすることが禁止されている「Toro」の文字とつづりを同じくする「TORO」の文字を有する商標であると判断したのであり、これが、商標の構成態様又は指定商品等が相違し、本件とは事案を異にするというべき請求人が挙げた登録例(後者)により左右されることはない。

したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第17号に該当し、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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