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Trademark Appeal Case

吸着フローリングの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2019−7214(T2019−7214/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,「吸着フローリング」の文字を標準文字で表してなり,第19類及び第27類に属する願書記載の商品を指定商品として,平成30年1月9日に登録出願されたものである。

その後,本願の指定商品については,原審における平成30年11月20日付け手続補正書により,第19類「床材(金属製のものを除く。),置敷式床材(金属製のものを除く。),リノリューム製建築専用床材,プラスチック製建築専用床材,合成建築専用床材,アスファルト製の建築用又は構築用の床材,ゴム製の建築用又は構築用の床材,石灰製の建築用又は構築用の専用床材,石こう製の建築用又は構築用の専用床材,木材製の床材,無機繊維製の床材(石綿製のものを除く。)」及び第27類「畳類,敷物,置敷式床用敷物,置敷式タイルカーペット,滑り止めを裏面に有する薄板上の木製敷物」と補正されたものである。

2 原査定における拒絶の理由(要点)

原査定は,「本願商標は,『吸着フローリング』の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中『吸着』の文字部分は,『吸いつくこと』等の意味,『フローリング』の文字部分は,『(「床を張ること」の意)建築で,床仕上げ材の総称。特に木質系の床材を指す。また,木質系の床材による仕上げ。フロアリング』の意味を有する語であるから,本願商標は,全体として『吸着する(吸いつく)床材』程の意味合いを容易に認識させるものである。したがって,本願商標は商品の品質及び用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和2年1月31日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)

(1)別掲1(1)及び(2)に示された「吸着フローリング」の語の2件の使用例並びに当該2件のウェブサイトを運営する会社による使用実績及び売上げも不明であることを考慮すると,本願商標を一私人に独占させることは妥当でないと判断するのは早急である。

そして,別掲1(3)の「吸着タイプのフローリング」の記事は,「のり残りしない吸着タイプのフローリング」というように商品の特徴等を説明している記述とともに使用されており,「吸着フローリング」の語のみで特定の商品の品質を直接的に伝えていない。

また,「吸着」の語は,別掲2のとおり,「滑り止め加工が施された」,「ずれたり,横すべりしない」,「ズレにくい」,「ノリがいらない」といった意味合いで用いられている場合もある。

(2)「吸着」の語は,上記意味合いだけでなく,第19類の壁板を含む建築材料や建築用内装材の分野では,「有害物質を吸着」,「嫌なニオイを吸着」,「悪臭を吸着」などのように,悪臭をキャッチすること,ひきつけることなどの意味で使用されているほか,第27類のマットを含む敷物の分野では,「重金属吸着マット」,「オイル吸着マット」,「油水吸着マット」,さらには「エアー吸着マット」などのように,重金属や油,水等を引き寄せて不純物を除去することや汚れを吸引,除去することなどの意味でも使用されている取引実情がある。

かかる取引実情を踏まえれば,「吸着」の語は,受け身的な意味合いだけでなく,能動的な意味合いも有しており,様々な意味合いを想起させる多義的な語として取引者及び需要者に認識されている。よって,従前よりよく知られている「フローリング」の語を結合してなる「吸着フローリング」は,特定の品質を表すものではない。

「吸着」の語が裏面にすべり止め加工が施された商品や接着剤を必要としない商品にのみ使用されているわけではない実情のもとでは,その前後に商品の特徴等を説明する記述がなければ,何を吸着する商品なのか,何に吸着する商品なのか漠然としており,商品の特定の品質を取引者及び需要者に認識させることはできず,単なる暗示的な意味にとどまり,本願商標からは特定の商品の品質及び用途を具体的かつ直接的に認識することはできない。

(3)請求人は遅くとも2016年以降,継続して本願商標を付して商品の販売を行っており,販売を開始してから数年しか経過していないにもかかわらず,顧客からは既に一定の支持を集めており,相当の実績を有している。

本願商標は,出願人自らが考案した特定の意味合いを有していない造語であって,2016年度から2018年度までの3年間の取引において,相当の実績(カタログ頒布数50,133部,売上枚数約47,000枚,売上高は累計約2億円)を上げ,出願人の製品の出所を表す商標として既に一定の識別力を獲得している。

以上より,本願商標は,構成全体で特定の意味合いを生じさせない一種の造語であり,商標法第3条第1項第3号に該当しない。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

商標法第3条第1項第3号が,「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状(包装の形状を含む。),生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは,このような商標は,指定商品との関係で,その商品の産地,販売地,品質,形状その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される。そうすると,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,審決の時点において,本願商標が,その指定商品との関係で,その商品の産地,販売地,品質,形状その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の指定商品の取引者及び需要者によって本願商標がその指定商品に使用された場合に,将来を含め,商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号,平成27年10月21日判決参照)。

(2)本願商標について

ア 本願商標は,「吸着フローリング」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中「吸着」の文字は,「吸いつくこと」等の意味,また「フローリング」の文字は,「(「床を張ること」の意)建築で,床仕上げ材の総称。特に木質系の床材を指す。また,木質系の床材による仕上げ。フロアリング」の意味を有する語であるから(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店),本願商標は,全体として「吸着する(吸いつく)床材」程の意味合いを容易に認識させるものである。

イ 当審が職権で調査したところ,本願の指定商品の分野において,「吸着フローリング」又は「吸着タイプのフローリング」の文字が,「裏面に吸着加工が施された(接着剤を必要としない)床材」ほどの意味で使用されている事例(別掲1),及び「吸着○○(○○は商品名)」の文字が,「裏面に吸着(滑り止め)加工が施された(接着剤を必要としない)商品」ほどの意味で使用されている事例(別掲2)が認められる。

ウ 以上よりすれば,本願商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者及び需要者は,その商品が「裏面に吸着加工が施された床材」であること,すなわち,商品の品質を表示したものとして理解するにとどまり,自他商品の識別標識としては認識し得ないというのが相当である。

したがって,本願商標は商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は,「吸着フローリング」の文字を使用している事例は2件のみでそれらのウェブサイトを運営する会社による使用実績及び売上げも不明であることを考慮すると本願商標を一私人に独占させることが妥当でないと判断するのは早急である旨主張している。

しかしながら,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,我が国の取引者及び需要者が商品の品質を表示するものとして認識するものであれば足りるといえるものであり,実際に商品の品質を表示するものとして使用されていることまでは必要としないと解されるところ,上記(2)のとおり,「吸着フローリング」の文字が,その指定商品との関係で「吸着する(吸いつく)床材」程の意味合いを容易に認識させるものと認められること,また,実際の取引において「吸着○○(○○は商品名)」の文字が,「裏面に吸着(滑り止め)加工が施された商品」ほどの意味で使用されている実情があることからすれば,「吸着フローリング」の文字は,単に商品の品質を表示するものとして認識されるというべきである。

よって,仮に「吸着フローリング」の文字の使用例が2件であり,当該商品に関する使用実績が不明であったとしても,本願商標の同号該当性が否定されるものではない。

イ 請求人は,「吸着」または「吸着フローリング」の語は,商品の特徴等の説明が一緒になされており,それらの語のみでは特定の商品の品質を直接的に伝えていない旨主張している。

しかしながら,請求人が,商品の特徴等の説明と主張する「滑り止め加工が施された」,「ずれたり,横すべりしない」,「ノリがいらない」といった記述は,あくまで「吸着加工が施されている」ことをわかりやすくするために別の言い回しがされているにすぎず,商品の宣伝広告等において,商品の特徴を言い換えて説明することはよく見受けられる。

よって,商品の特徴等の説明が一緒になされているとしても,本願商標が商品の品質を表示したものと理解させることは上記(2)で述べたとおりである。

ウ 請求人は,第19類の壁板を含む建築材料や建築用内装材の分野では,「吸着」の語が,「有害物質を吸着」,「嫌なニオイを吸着」,「悪臭を吸着」などのように,悪臭をキャッチすること,ひきつけることなどの意味で使用されているほか,第27類のマットを含む敷物の分野では,「重金属吸着マット」,「オイル吸着マット」,「油水吸着マット」,さらには「エアー吸着マット」などのように,重金属や油,水等を引き寄せて不純物を除去することや汚れを吸引,除去することなどの意味でも使用されている取引実情がある旨主張している。

しかしながら,請求人が示すとおり,たとえ「吸着」の文字が「(悪臭等を)吸い取る」,「(不純物等を)吸引する」等の意味で使用される場合があるとしても,いずれにせよ「吸着」の文字は,商品の品質(機能,性能等)を表す語であり,出所識別機能を有する語として使用されていない。

よって,請求人が示す事例があるからといって,上記判断が左右されるものではない。

エ 請求人は,2016年から本願商標を付した商品の販売を行っており,2016年度から2018年度3年間における本願商標を付した商品のカタログ頒布数,売上枚数及び売上高を示した上で,出願人の商品の出所を表す商標として既に一定の識別力を獲得している旨主張している。

しかしながら,当該主張は,本願商標が使用による識別力を獲得したものとの趣旨(商標法第3条第2項)と解されるところ,請求人が当審において提出した証拠によっても,本願商標の実際の使用態様は明らかではなく,さらに請求人が主張する使用期間はわずか5年程度であり,使用地域,市場占有率,広告宣伝の規模等の事実は一切不明である。そして,上記(1)で認定した本願商標から生ずる意味合い及び「吸着」の文字の使用状況に鑑みれば,本願商標は,これが使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

オ よって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。

(3)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ同法第3条第2項の要件を満たすものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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