Trademark Appeal Case
歯ブラシの機能的形状の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−7668(T2018−7668/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、商標の詳細な説明を願書に記載のとおりとし、第21類「歯ブラシ」を指定商品として、平成28年1月18日に登録出願されたものである。
そして、商標の詳細な説明については、原審における平成29年4月7日受付の手続補正書により、「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、歯ブラシのブラシ部の先端(上端)部(図面の赤色に着色された部分)の図形からなる。なお、図では赤色で示すが、色を限定するものではない。また、図面の歯ブラシにおけるブラシ部の先端部(赤色に着色された部分)以外の部分は、商品の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
1 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなる位置商標である。そして、歯ブラシを取り扱う業界においては、本願商標の指定商品「歯ブラシ」のブラシ部には、磨き残しを無くす等の商品の機能の発揮等を目的として、種々な形状が採用されている実情があることからすると、本願商標は、歯ブラシの機能の向上等を目的に選択されたものといえるから、本願商標の特徴は、取引者、需要者においては、歯ブラシの形状として予測可能な範囲の特徴といえるものである。そうすると、本願商標は、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者において、商品の機能の発揮等のために採用し得る歯ブラシの一部の形状を表したものと理解、認識するにとどまるといえ、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 本願商標の商標法第3条第2項該当性
本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至ったものとは認められず、商標法第3条第2項には該当しない。
第3 当審においてした審尋
審判長は、請求人に対し、令和元年12月17日付け審尋において、別掲2及び3に係る証拠を示して、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨の見解を示し、相当の期間を指定して意見を求めたが、請求人からは、何ら応答がなかった。
第4 当審の判断
1 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
請求人は、本件審判の請求の理由において、本願商標は商標法第3条第2項に該当しないとする原査定の拒絶の理由には反論しておらず、専ら同条第1項第3号該当性のみを主張しているから、以下、この点について検討する。
(1)本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなる位置商標であり、指定商品を第21類「歯ブラシ」とし、商標の詳細な説明を「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、歯ブラシのブラシ部の先端(上端)部(図面の赤色に着色された部分)の図形からなる。なお、図では赤色で示すが、色を限定するものではない。また、図面の歯ブラシにおけるブラシ部の先端部(赤色に着色された部分)以外の部分は、商品の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」とするものである。
そうすると、本願商標に係る標章は、円が外側の列に8個及び中央の列に6個の3列に配された図形からなるものであって、これを付する位置は、指定商品である「歯ブラシ」のブラシ部の先端部分(歯に接する部分)である。
(2)一般に市販されている「歯ブラシ」の形状について
ア 歯ブラシの使用目的及び形状について
歯ブラシは、歯や歯間の汚れを落として磨くことを使用目的としたものであって、その形状は、ヘッド(植毛部)、ネック(頚部)及びハンドル(把柄部)よりなるものであり、ヘッド(植毛部)においては、刷毛を束ねた毛束が、複数の列と行に沿って植毛されている(別掲2(1))。
イ ヘッド(植毛部)の毛束の列及び行の形状について
歯ブラシのヘッド(植毛部)においては、毛束の列が2〜3列程度、行が6行〜8行程度のものがあり、その毛束の形状は円形からなるものである(別掲2(2))。
(3)判断
ア 本願商標と、一般に市販されている歯ブラシのヘッド(植毛部)における毛束の列及び行の特徴とを対比するに、両者は、円が複数の列及び行に配されてなるものであることを共通にしている。
イ 一般に市販されている「歯ブラシ」は、歯や歯間の汚れを落として磨くことを使用目的としたものであって、上記(2)イのとおり、一般に市販されている歯ブラシのヘッド(植毛部)における丸い形状をした毛束は、複数の列と行に沿って植毛されていることから、当該形状は、歯ブラシのヘッド(植毛部)において、毛束の形状として一般に取り得る形状であるといえる。
そして、それらの歯ブラシについては、例えば、「矯正装置まわりのプラークを落としやすい専用の3列ブラシでプラークコントロールを。」、「プラークの効率的な除去を目的としたベーシックタイプ。」又は「3列歯ブラシでは限界がある部位の歯磨きにおすすめします。」(別掲2(2))などの記載があることから、これらのヘッド(植毛部)における毛束の列と行の形状の特徴は、歯及び歯の間の汚れを落とすことを目的とした歯ブラシの機能又は美感に資することを目的として採用されたものであるといえる。
ウ そうすると、本願商標は、歯ブラシのヘッド(植毛部)における毛束の列及び行の特徴として、機能又は美感に資することを目的として採用されたものと認められ、また、需要者において、機能又は美感に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標を付した歯ブラシは、請求人が代表取締役を務める株式会社西尾(以下「西尾社」という。)の商品として、254万本以上が販売されているものであり、CS放送などで放映されているテレビショッピングチャンネルの一つである「ショップチャンネル」(http://www.shopch.jp/JscTop.do)において、遅くとも2009(平成21年)年5月から現在に至るまで、少なくとも月に1回程度以上は、本願商標を付した歯ブラシを販売するための番組が多数回放送されて、それに伴う商品の販売が継続的に行われており、当該ショップチャンネルが運営するウェブサイトないし他社のウェブサイトでも長年に渡って多数本が販売されている旨主張し、また、本願商標を付した歯ブラシを購入する需要者は、通常の歯ブラシとは全く異なる本願商標の上記ブラシ部の先端の特徴的な位置を商品の目印として選択して購入しているものであって、本願商標の上記ブラシ部の先端の位置、すなわち「ブラシ部の先端の位置が柄の長手方向に沿って山形に形成されており、かつ幅方向の中央部の高さを両側部の高さよりも一段高くしている」点が他の同種商品に対して識別力を有していることは明らかであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない旨主張している。
イ そこで、本願商標の使用の実情についてみるに、請求人が原審において提出した証拠(証拠資料1ないし15)及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、西尾社の代表取締役である(証拠資料1、6)。
(イ)西尾社は、「奇跡の歯ブラシ」を商品名とした「歯ブラシ」(以下「使用商品」という。)を製造及び販売した(証拠資料1、2、6など)。
株式会社リジェンティス(以下「リジェンティス社」という。)は、西尾社から、使用商品を購入し、販売する会社である(証拠資料1、5)。
使用商品は、ヘッド(植毛部)における毛束が外側の列に8個及び中央の列に6個の3列に配されたものであり、当該毛束は歯ブラシの先端から柄に向かって山形を形成し、かつ、中央の列の毛束は外側の毛束よりも一段高くなっているものである(証拠資料2、3など)。
そして、各毛束は、丸い円状に束ねられていることからすると、各毛束の先端の形状は、本願商標に係る標章と同一と認められ、また、当該毛束の先端部の位置は、本願商標に係る標章を付する位置と同一と認められる。
そうすると、本願商標と使用に係る商標とは、同一と認められる。
(ウ)西尾社は、遅くとも平成21年5月から同29年10月までの約8年間、リジェンティス社に対し、使用商品を合計約200万本販売し、リジェンティス社は、CSデジタル放送のショップチャンネルの番組並びに同ショップチャンネル及び自社の各ウェブサイトを通じて、使用商品を顧客へ販売した(証拠資料1ないし5、請求人の主張)。
(エ)上記CSデジタル放送のショップチャンネルの番組における販売時の映像をキャプチャした複数の画像(証拠資料2)によれば、1ページの3つ目の画像左下に「奇跡の歯ブラシ 累計販売数 254万1、821本突破!」の表示が、また、3ページの1つ目の画像の中央付近に「奇跡の歯ブラシ 累計販売数 164万6、748本突破!」の表示がある。
(オ)複数の他社が、ウェブサイトにおいて、「奇跡の歯ブラシ」の商品名をウェブサイト上に表示の上、使用商品を販売又は紹介した(証拠資料9ないし15)。
ウ 判断
(ア)上記イの認定事実によれば、西尾社は、平成21年5月から同29年10月までの約8年間において、使用商品を約200万本〜約250万本販売したものと推認でき、その販売本数は年間平均で約31万本であると認められる。
しかしながら、上記年間平均の販売本数は、例えば、我が国の2015年(平成27年)の歯ブラシの販売数量(4億1千7百万本)と比較すると、その0.1%にも満たないことから、決してその販売本数が多いとはいえない(別掲3)。
(イ)使用商品に関するCSデジタル放送のショップチャンネルの番組における宣伝及び広告は、行われたことは伺えるものの、CSデジタル放送は衛星放送であることからすると視聴者の範囲は限定的といわざるを得えないし、そもそも、仮に請求人の主張のとおりの放送がされたものとしても、その頻度は月1回程度にすぎないことからすると、使用商品は、どの程度の範囲の需要者の目にふれたのかが不明である。
(ウ)複数の他社が、ウェブサイトにおいて、使用商品を販売又は紹介しているが、その数は決して多いとはいえない。
(エ)一般に、商品等の形状に接する需要者は、当該形状は、商品等の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所識別標識のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そして、上記(2)イのとおり、一般に市販されている「歯ブラシ」のヘッド(植毛部)においては、毛束の列が2列〜3列程度、行が6行〜8行程度のものがあり、その毛束の形状は円形からなるものであることをも踏まえ、上記(ア)ないし(ウ)を総合考慮すれば、本願商標は、自他商品の識別力を獲得しているとは未だ認められないものである。
(オ)また、請求人は、「本願商標の上記ブラシ部の先端の位置、すなわち『ブラシ部の先端の位置が柄の長手方向に沿って山形に形成されており、かつ幅方向の中央部の高さを両側部の高さよりも一段高くしている』点が他の同種商品に対して識別力を有していることは明らか」である旨主張している。
しかしながら、上記(1)のとおり、本願商標に係る商標の詳細な説明では、標章を付する位置を「歯ブラシのブラシ部の先端(上端)部」としており、「ブラシ部の先端部(赤色に着色された部分)以外の部分は、商標を構成する要素ではない。」としている。
そうすると、本願商標における標章を付する位置は、柄の長手方向に沿って山形に形成されており、かつ幅方向の中央部の高さを両側部の高さよりも一段高くしたブラシ部の先端部に限られるということはできない。
仮に、本願商標における標章を付する位置が、請求人の主張のとおりに限定されるとしても、一般に市販されている「歯ブラシ」のヘッド(植毛部)の形状については、毛束の高さを柄の長さ方向若しくは幅の方向に山形にした形状、又は毛束の高さに段差を設けた形状のものが多数あり(別掲2(3))、これらの形状を有する歯ブラシが、例えば、「山型形状の毛先が歯と歯の間にフィットしやすく、狭い隙間に入り、汚れをスッキリと落としてくれる。また、毛先部分に段差を作る『段差型植毛構造』によって、三角の先端部が歯と歯ぐきの境目の汚れも見逃さない。」(別掲2(3)ア(ア))、「歯の表面はもちろん。ピラミッド型のブラシなので奥歯のくぼみなどの汚れに届きます。」(別掲2(3)ア(イ))、「山型になっているため、装置まわりのプラークが溜まりやすい部位にもピタッとフィット。無理なく自然な角度で磨くことができます。」(別掲2(3)ア(ウ))、「歯周ポケットにも歯ぐきにもやさしく当たる段差植毛で、歯周ポケットの奥深くの汚れをかき出します。」(別掲2(3)イ(ア))等の記載とともに複数の第三者により宣伝又は販売されていることからすると、これらのヘッド(植毛部)における形状の特徴は、歯及び歯の間の汚れを落とすという歯ブラシの機能に資することを目的として採用されたものであるから、これらのヘッド(植毛部)における形状は、機能又は美感に資することを目的として採用されたものと認められ、また、需要者において、機能又は美感に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであることから、上記判断を左右するものではない。
エ 小括
以上からすると、上記請求人の主張は、いずれも認めることができない。
(5)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、また、商品「歯ブラシ」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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