Trademark Appeal Case
音商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−9080(T2018−9080/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第5類「サプリメント」、第29類「乳製品」、第30類「茶,コーヒー,ココア」、第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒,清涼飲料,果実飲料,アルコールを含有しないビール風味の清涼飲料,乳清飲料」及び第33類「焼酎,洋酒,果実酒,酎ハイ,麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,麦芽または麦を使用したビール風味のアルコール飲料(ビール、ビール風味の麦芽発泡酒を除く。),梅酒」を指定商品として、平成27年4月1日に音商標として登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、商品の魅力を向上させるため又は広告等における需要者への注意喚起、印象付け若しくは効果音として、多種多様な音が一般的に用いられている実情があることからすれば、本願商標についても、需要者は、自他商品の識別標識としてではなく、商品の魅力向上又は広告の演出等に用いられる音の一種として認識するにとどまるものと認められる。そうすると、本願商標は、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は、四分音符=50のテンポ及び8分の2拍子の1小節からなる別掲1のとおりの音符、音部記号で構成される音の要素からなる音商標であり、願書に添付された経済産業省令で定める物件(平成27年4月3日付け提出の手続補足書に添付の音声ファイル)とともに特定されたものである。そして、その指定商品は、第5類「サプリメント」、第29類「乳製品」、第30類「茶,コーヒー,ココア」、第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒,清涼飲料,果実飲料,アルコールを含有しないビール風味の清涼飲料,乳清飲料」及び第33類「焼酎,洋酒,果実酒,酎ハイ,麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,麦芽または麦を使用したビール風味のアルコール飲料(ビール、ビール風味の麦芽発泡酒を除く。),梅酒」である。
ところで、テレビ、ラジオ又はインターネット等による商品の広告等においては、聴覚を通じて、商品の魅力を訴求したり、需要者の関心を引くべく、多種多様な音が一般に広く使用されている実情があることから、例えば、音が自他商品の識別標識としての機能を果たし得る言語等からなる又は音にそのような言語等が含まれている場合はともかく、そうでない場合には、その音は、通常、商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として聴取され、認識されることはないとみるのが相当であり、このことは、本願の指定商品を取り扱う業界においても、事情を異にするとみるべき理由は見当たらない。
そして、本願商標は、上記のとおり、音の要素のみからなる音商標であって、それ自体、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る言語等からなるものではないし、そのような言語等が含まれているものでもないから、当該音は、上記一般に広く使用されている音の一種として聴取され得るものにすぎない。
そうすると、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者は、商品の広告等において一般に広く用いられている音の一種として聴取、把握するにとどまり、その音について、特定の者(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして認識することはないというべきである。
してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
(2)本願商標の使用状況について
請求人は、2004年から、本願商標を「サプリメント,茶,コーヒー,ビール,ビール風味の麦芽発泡酒,清涼飲料,果実飲料,アルコールを含有しないビール風味の清涼飲料,焼酎,洋酒,果実酒,酎ハイ,麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,麦芽または麦を使用したビール風味のアルコール飲料(ビール、ビール風味の麦芽発泡酒を除く。)」といった請求人の取扱いに係る多様な商品のテレビCMにおいて使用しており、その性質は、社標(ハウスマーク)と認識されるものであるから、長年に渡って継続的に使用した結果、請求人の業務に係る商品として需要者の間に広く認識されるに至っているものである旨主張し、その主張を裏付ける証拠として、第1号証ないし第14号証(枝番号を含む。)を提出している(なお、本審決においては、以下、当該第1号証ないし第14号証については、順次、甲第1号証ないし甲第14号証と読み替え、単に「甲○」と記載する場合がある。)。
そこで、請求人の主張及び同人提出の証拠について、以下検討する。
ア 使用開始時期、期間及び使用態様
請求人は、2004年(平成16年)10月に、本願商標と同一と認められる音(以下「本件音」という。)の使用を開始したところ(甲8の1)、その使用態様は、請求人が製造、販売する洋酒(ウイスキー)のテレビCMの末尾において、白地を背景に薄い水色で二段に表した「水と生きる」の文字及び「SunTORY」の文字(以下「請求人ロゴ」という。別掲2)が表示されるタイミングに合わせて、本件音が使用されるというものであった(甲14)。その後、2004年(平成16年)ないし2017年(平成29年)の期間において、年によって異なるものの、ウイスキー、ビール、発泡酒、チューハイ、アルコール飲料、茶飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、清涼飲料、飲料水といった、請求人が製造、販売する商品中のいずれかの商品について、テレビCMが制作されており、これらのテレビCMの冒頭又は末尾に、請求人ロゴが表示されるタイミングに合わせて、本件音が使用されていることが認められる(甲3、甲8の1、甲13、甲14)。
さらに、少なくとも2014年(平成26年)3月から、「YouTube」のウェブサイトの「サントリー公式チャンネル」及び「サントリーウエルネスチャンネル」において、請求人が製造、販売する飲料水、サプリメントのCM動画が公開されているところ、2020年(令和2年)6月現在、これらの17種類のCM動画の冒頭に、請求人ロゴが表示されるタイミングに合わせて、本件音が使用されていることが認められる(甲11)。
イ 広告宣伝の地域及び規模
(ア)請求人は、本件音の使用が開始された2004年(平成16年)には、ウイスキー、ウーロン茶、コーヒー飲料に関するテレビCMを8本製作したほか、テレビCMの製作が最も多かった2005年(平成17年)には、ウイスキー、ビール、発泡酒、チューハイ、アルコール飲料、茶飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、清涼飲料、飲料水に関するテレビCMを186本製作した。しかしながら、2006年(平成18年)のテレビCMの製作本数は、96本となり、以後、請求人のテレビCMの製作本数は、2015年(平成27年)には3本、2016年(平成28年)には5本、2017年(平成29年)には2本と減少するとともに、そのテレビCMの内容はいずれも飲料水に関するもののみとなった。なお、請求人は、2018年(平成30年)には、テレビCMの制作を行っていない(甲4、甲8の1、甲14)。
そして、これらのテレビCMは、関東地方のテレビ局(日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、フジテレビジョン)及び関西地方のテレビ局(讀賣テレビ放送、朝日放送テレビ、毎日放送、関西テレビ放送)において放送されたことがうかがえるものの、具体的な放送番組名、番組内における放送回数等は明らかでない。加えて、放送時間帯も不明であることから、いかなる需要者に向けて放送されたかが明らかでない(甲8の1、甲14)。
(イ)請求人は、2008年(平成20年)ないし2018年(平成30年)の期間において、請求人が製造、販売するサプリメントについて、本件音を使用したテレビCMを制作し、それらが衛星放送局(BS日テレ、BS朝日、BS―TBS、BSテレ東、BSフジ、BS11、BS12、BS―FOX、Dlife)及び「名古屋」「愛媛」「沖縄」「関西」「関東」「広島」「高知」「山形」「山口」「山梨」「鹿児島」「秋田」「新潟」「青森」「石川」「長崎」「鳥取・島根」「福島」等の各地方局において、2008年(平成20年)は4,251回、放送回数が最も多かった2015年(平成27年)には13,303回、また2018年(平成30年)には7,592回放送されたとされており、放送回数は年平均で約8,000回ほどであることが見受けられるものの、各放送局における具体的な放送番組名、番組内における放送回数等は明らかでない。加えて、放送時間帯も不明であることから、いかなる需要者に向けて放送されたかが明らかでない(甲3、甲13)。
(ウ)請求人は、「YouTube」のウェブサイトに「サントリー公式チャンネル」及び「サントリーウエルネスチャンネル」を開設し、上記アのとおり、請求人が製造、販売する飲料水、サプリメントのCM動画を公開しているところ、これら17種類のCM動画の閲覧回数(2018年(平成30年)10月4日時点)は、最も閲覧回数の多い「サントリー 南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ『朝摘みオレンジ 朝の匂い』篇 30秒」(2014/4/14公開)と称する動画において137,551回、最も閲覧回数の少ない「プロテオグリカン配合 サントリーリフタージュTVCM体験篇(1)」(2016/11/28公開)と称する動画は577回であることが認められる(甲5の1、甲5の2、甲6)。
ウ アンケート
請求人は、本願商標が、使用により需要者に広く認識されているかどうかを検証することを目的とし、調査会社に依頼して、調査対象者を「全国の20代ないし60代の男女(男女比、年代構成は、人口分布に合わせている)であって、自身又は同居家族が、マスコミ関連業、調査業・広告代理業・コンサルティング会社に勤務しておらず、テレビコマーシャルを見る人(テレビをほとんど又は全く見ないか、テレビコマーシャルをほとんど又は全く見ない人は除外)」、サンプル数を「1,069人」、調査期間を「平成30年6月22日ないし24日」とする「サントリーホールディングス株式会社の音商標(商願2015−030488)の認識度調査」(インターネットによる調査)を行ったところ、その調査結果報告書(平成30年8月7日付け)(甲9の1)によれば、おおむね次のとおりである。
(ア)当該調査は、本願商標と、国際登録1177675号商標(以下「BMW音商標」という。)を「テレビコマーシャルの音」として聞かせる対照実験であり、サンプルを二分割して、グループ1には1番目に本願商標を、2番目にBMW音商標を聞かせ、また、グループ2には1番目にBMW音商標を、2番目に本願商標を聞かせるものである。なお、報告書においては、「後から聞かせた音商標に対する反応は、最初に聞かせた音商標に関する質問および回答行動に影響される可能性がある。」としつつも、「2番目に回答したことによる認識度の上昇が仮にあったとしても、その程度はサントリーとBMWで同一であり、2番目の回答を含めた結果はサントリーとBMWのいずれにも有利に作用するものではないと考えられる。」とされている(甲9の1、報告書4頁)。
(イ)「Q8」として、音を再生した上で、当該音が使用されたコマーシャルは何のコマーシャルだったか、会社名、ブランド名、商品名を自由に答えさせる質問に対し、「会社名又は商品名が正確な回答」の割合は、1番目に本願商標を聞いたグループ1において5.08%、1番目にBMW音商標を聞いたグループ2において5.96%であった。
(ウ)「Q11」として、上記「Q8」とは異なる音を再生した上で、当該音が使用されたコマーシャルは何のコマーシャルだったか、会社名、ブランド名、商品名を自由に答えさせる質問がされたが、それに対する回答割合の結果は、報告書に記載されていない。しかし、全サンプルにおける回答割合の結果によれば、1番目に本願商標を聞いたグループ1及び2番目に本願商標を聞いたグループ2の合計において、「会社名又は商品名が正確な回答」は、6.27%であった。また、1番目にBMW音商標を聞いたグループ2及び2番目にBMW音商標を聞いたグループ1の合計において、「会社名又は商品名が正確な回答」は、5.99%であった。
エ 小括
上記アないしウによれば、請求人は、本件音を、2004年(平成16年)ないし2017年(平成29年)の期間において、請求人の製造、販売するウイスキー、ビール、発泡酒、チューハイ、アルコール飲料、茶飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、清涼飲料、飲料水のいずれかに係るテレビCMについて使用し、これらのテレビCMは関東地方及び関西地方のテレビ局において放送されたことがうかがえる。
また、請求人は、本件音を、2008年(平成20年)ないし2018年(平成30年)の期間において、請求人が製造、販売するサプリメントに係るテレビCMについて使用し、これらのテレビCMは衛星放送及び各地方の放送局において放送されたことがうかがえる。
しかしながら、請求人の製造する飲料に係るテレビCMの制作本数は、2005年(平成17年)をピークに減少傾向となり、2015年(平成27年)ないし2017年(平成29年)の期間の本件音を使用したテレビCMの数はわずかであって、その内容は飲料水に関するもののみであることがうかがえるばかりか、2018年(平成30年)にはテレビCMの制作はされていない。
そして、請求人の制作した、飲料及びサプリメントのテレビCMの放送地域も、関東地方、関西地方及び各地方の地方局であって、各地域の放送にとどまるものであり、衛星放送については視聴者の範囲は限定的といわざるを得ない。
さらに、本件音を使用したテレビCMを放送した各放送局における具体的な放送番組名、番組内における放送回数、放送時間帯等も明らかでない。
また、請求人は、少なくとも2014年(平成26年)3月から、「YouTube」のウェブサイトにおける請求人公式チャンネルを用いて、飲料水、サプリメントのCM動画を公開しているものの、当該CM動画は、閲覧者が請求人公式チャンネルを閲覧し、再生ボタンを押さない限り需要者の目に触れないものであって、最も閲覧回数の多いCM動画においても、2018年(平成30年)10月までの約4年間で約13万回ほどの再生回数であることからすれば、これらCM動画の再生回数が、需要者が本件音を請求人の出所標識と認識するに十分な再生回数であるとは言い難い。
さらに、本件音は、テレビCM及びCM動画の冒頭又は末尾において、請求人ロゴ等とともに使用されているものであり、当該請求人ロゴに付随する音として、視聴者に聴取、把握され、記憶される態様で用いられているにすぎないから、当該テレビCMが放送されたことをもって、本願商標のみが、独立して、需要者において、商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識されるに至っているとはいい難い。
なお、上記テレビCM及びCM動画において、本願の指定商品中の「乳製品,ココア,乳清飲料,梅酒」について、本件音を使用したテレビCM又はCM動画は見受けられない。
加えて、請求人が実施した本願商標の認知度に関するアンケートは、本願商標と、BMW音商標との対照実験であるところ、前記第1のとおり、本願の指定商品は、第5類「サプリメント」、第29類「乳製品」、第30類「茶,コーヒー,ココア」、第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒,清涼飲料,果実飲料,アルコールを含有しないビール風味の清涼飲料,乳清飲料」及び第33類「焼酎,洋酒,果実酒,酎ハイ,麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,麦芽または麦を使用したビール風味のアルコール飲料(ビール、ビール風味の麦芽発泡酒を除く。),梅酒」であって、老若男女の一般消費者を需要者とするのに対し、BMW音商標の指定商品は、第12類「Automobiles and parts thereof, included in this class.(参考訳:自動車及びその部品(本類に属するもの))」であって、自動車に係る需要者であるから、両者の範囲は、一部が共通するとはいえるものの、異なる場合もあり得る。
そうすると、両者の需要者の範囲を同一のものとして行ったアンケート調査は、その需要者の設定において疑義があるから、本願商標とBMW音商標との調査結果を、単純に比較考慮することをもって、需要者における本願商標の認識の程度を推し量ることはできない。
その他、請求人の主張及び同人提出の甲各号証を総合してみても、本願商標が、その使用の結果、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に認識されていると認めるに足る事実は見いだせない。
(3)請求人の主張について
請求人は、本願商標の認知度に関するアンケートについて、BMW音商標の認識度とほぼ同等の回答を得た当該調査結果は、本願商標が「需要者の間で音商標として認識されている」ことを示すものである旨主張する。
しかしながら、調査結果によると、例えば、1番目に本願商標を聞いたグループ1において、その認知度は5.08%(Q8)にとどまっていることに加え、上記(2)エのとおり、飲料を中心とする本願の指定商品と、BMW音商標の指定商品である自動車とは、そもそもが異なる商品であり、その需要者は一部重複する場合もあるとはいえ、異なる場合もあり得るから、同一の調査対象者から得られた両商標の認知度に基づく請求人の主張は、その前提において適切でなく、採用することができない。
2 まとめ
以上によれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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