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Trademark Appeal Case

結合商標の称呼分離

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35044号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第4106622号商標(以下、「引用商標」という。)は、「JT SERVER」の欧文字を書してなり、平成8年4月3日に登録出願、第12類「手押し台車」を指定商品として、同10年1月31日に設定登録されたものである。

2.引用商標

請求人が引用する登録第2393018号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和63年10月7日に登録出願、第12類「輸送機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成4年3月31日に設定登録されたものであり、同じく登録第2324830号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和63年10月6日に登録出願、第9類「たばこ製造機械、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成3年7月31日に設定登録されたものであって、いずれも現に有効に存続するものである(以下、前記2件の引用登録商標を合わせて「引用商標」という。)。

3.請求の趣旨及び請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第10号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

a)本件商標は、ローマ字「JT」の右側に「SERVER」の文字を書した構成であるところ、右側の「SERVER」の語は、英語で「配膳台、ワゴン」を意味するものであり、本件商標の指定商品「手押し台車」との関係では識別性がないか若しくは極めて顕著性の低い言葉である。「SERVER」の語が、「配膳台、ワゴン」を意味することは、英和辞典にも掲載されている。

したがって、本件商標からは、識別性のない「SERVER」の文字を除いた「JT」の文字部分より「ジェイティ」の分離した称呼が生ずるものである。

仮に、「JT」と「SERVER」が結合して、全体として識別性があると判断されて「ジェイティサーバー」の称呼が生ずるとしても、その他に「ジェイティ」の分離した称呼を生ずるものである。指定商品の普通名称に近い用語である「SERVER」の部分を重視したとしても「ジェイティサーバー」の称呼は、単に「ジェイティ」と略称されるか、若しくは「ジェイティ」の部分を商標的な部分として認識するものと考えられる。したがって、本件商標からは、「ジェイティーサーバー」の他に「ジェイティー」の称呼を生ずるものである。

なお、被請求人は、ローマ字2文字は、記号・符号として使用されると主張する可能性があるが、「SERVER」の語に全く識別性がないか、または極めて低い単語である為に、本件商標の「JT」は、単に商品の記号・符号として使用されるものではなく、相対的に商品の出所を表示するものとして使用される部分と考えられる。また、本件商標は、出所表示として使用されることを前提として出願されたものである。従って、本件商標の「JT」の部分は、商品の記号・符号として使用される可能性はあったとしても、識別標識の機能を果たす部分として称呼を生ずる部分であり、これを否定はできない。

さらに、モノグラムだから称呼を生じないとした特許庁の審決に対し、これを取消す判決(平成3(行ケ)91号東京高裁判決)があり、上告審(最高裁)においても高裁判決を支持する判決が下されている。そして、差戻後の審決では、「本件商標は、『D』と『L』を(中略)それぞれモノグラム化したものであることを容易に看取し得るものであるといわなければならない。しかして、該モノグラムより生ずる称呼についてみるに、本件商標から生ずる称呼は、該モノグラムを構成する『D』と『L』を順に読むことにより原判決で認定された『ディーエル』を生ずるものである。」と、モノグラム化したローマ字から生じる称呼を認定している。上記判決と同様の判決として、平成9年(行ケ)第163号東京高裁判決が挙げられる。

これらから、著名な商標について、ローマ字2字の組み合わせでも、称呼を生ずることが認定され、第三者の商標登録から著名商標と混同を生ずる称呼が事実上生ずる可能性がある場合には拒絶するという明確な基準が示されている。これは、商標法の法目的にも合致し、流通秩序の維持に資するとの判断に基づくものであり、出所混同の防止を追求した論理であり、机上の空論を排する妥当な判断である。

上記判決の趣旨に従えば、本件商標からは、「ジェイティサーバー」の称呼の他に、「JT」の文字から「ジェイティ」の称呼が生ずることは明らかである

b)他方、引用商標は、ローマ文字の「JT」を書してなるものであり、取引上は「ジェイティ」の称呼を自然に生ずるものである。このことは、特許庁の資料を公開している「Japio商標検索システム」による本件商標の検索結果等(甲第7号証の3乃至5)からも明らかである。

引用商標から「ジェイティ」の称呼が生ずることは、上記の最高裁判決および差戻後の審決によっても明らかであるが、さらに、取引の実際においても、「ジェイティ」の称呼をもって取引されているものであり、称呼を生じないとすることはできない。

引用商標は、たばこ業界のみならず、他の産業界にあっても著名となっており、現実に称呼による取引も多く存在しているのが実情である。このような状況下にあって、一方的に称呼を生じないと判断することにより、同じローマ字綴りの組み合わせ文字の商標を併存させることは、電話等の取引きにおいては混乱を生ずること必至である。

さらに、引用商標のように、需要者・取引者間において周知・著名となっている商標について、称呼が生じないとして文字の形状が異なる他の「JT」文字の登録を認めるとことが、商標に化体した業務上の信用を保護することを目的とする商標法の本来の趣旨に合うものでないことは明らかである。

このような事情下にある著名商標は、多く存在しており、既に著名になっている「GM」をはじめとして「GE」「BP」「JR」等についても出所混同の蓋然性については同一に判断されるべきである。記号・符号の採択が自由であることは充分容認できるが、ローマ字の中からわざわざ「GM」「GE」「BP」「JR」の組み合わせを特に採択すべき合理的な理由は無く、却って、出所混同の点からは純粋な記号・符号としても避けて通ることが望ましいと考えられる。まして、これらの採択の動機に疑問の持たれるような商標を、文字に図案化を施したことを奇貨として容認すべき必然性はないと考えられる。

c)以上のとおり、本件商標と引用商標は、いずれも「ジェイティ」の称呼を生ずるものであり、両者はその称呼において同一又は類似するものである。

また、本件商標は、その構成態様から「JT」(ジェイティ)の観念も生ずるものであり、引用商標とその観念においても同一又は類似するものであり、電話等の称呼を持って取引される現実の業態では出所混同を生ずる蓋然性の高い類似の商標である。

従って、本件商標は、引用商標とその称呼のみならず観念においても同一又は類似するものである。

なお、本件商標の指定商品が、引用商標の指定商品と相抵触するものであることは、明らかである。

(2)商標法第4条第1項第15号について

a)請求人は、1899年(明治31年)大蔵省専売局として発足、その後1949年(昭和24年)に日本専売公社へ組織変更。1985年(昭和60年)に日本たばこ産業株式会社となったものであり、従業員数2万2千人、資本金1,000億円、年間売上2兆7,354億円(平成9年3月期)を数えるものである。

その業務は、たばこ事業のほか、民営化に伴なう業務の拡張を目指し、現在までに、医薬事業、エンジニアリング事業、食品事業、アグリ事業、不動産事業、物流、情報事業等々へその業務を拡張し、運搬車等の運輸機械器具及び荷役機械器具等の分野にもその事業を拡張している。さらに各種の文化事業やイベント等の宣伝広告活動を積極的に展開しているものである。

請求人およびその会社グループは、電気・機械・運搬具について各種の商品を幅広く展開している。特に、JTエンジニアリング株式会社は、JTグループの下に、JTエンジニアリング・グループを形成し、各種の電気・機械・運搬具を製品化している。

また、請求人のグループ会社の一つである、ジェイティ・エレクトロニクス株式会社は、「JT ELEC」の商標の下に、スイッチングの電源等の商品を展開している。また、請求人は、企業グループを形成しているものであり、グループ内の各社はそれぞれ「JT」または「ジェイティ」の名称を冠している。なお、請求人が登録を有する「JT」を冠する会社名は、極めて多数に登るものであり、JTグループに属さないものは極めてまれな例外にすぎない。

b)引用商標は、1988年(昭和63年)4月頃より使用を開始し、その後、1989年(平成1年)4月1日より、正式に請求人のコミュニケーション・ネームとして採用されたものであり、請求人の宣伝・広告活動において常に使用されている。本件商標の出願日以前より、引用商標は、請求人を表示するものとして、需要者・取引者間に広く認識され、周知・著名になっていたものであることは、顕著な事実である。

c)上記のとおり、請求人の業務は多岐にわたるものであり、運搬車等の運輸機械器具等および、荷役機械器具等の分野にもその事業を拡張している。引用商標は、請求人のコミュニケーション・ネームとしてあらゆる商品および、その広告に使用しているものである。したがって、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用した場合には、需要者・取引者は、請求人の著名商標であり、請求人を示す著名なコミュニケーション・ネームおよび著名な略称である引用商標を直ちに連想するものである。また、本件商標の図案化の程度に多少の差異があったとしても、請求人の商標のイメージを当該商品の上にそのまま移行して、本件商標を見る者は、あたかも請求人の一連の商標の一変形態様として認識し彼此混同誤認を生ずること必定である。

したがって、あたかも当該商品が請求人の業務と何らかの関連のある商品であるかのごとく認識され、その商品の出所につき混同を生ずるに到るおそれのあること明白である。

特に、運搬車については、請求人は、「JT−VEHICLE」の商標を使用して商品を販売している。その商標中の「VEHICLE」は、商品の普通名称であって識別性のない部分である。運搬車と手押し台車では、荷物の運搬に使用する上で一方が動力を有するのに対して他方が動力を有していない点で違いがあるとしても、極めて近似した商品である。

このような事情の下で、本件商標に接する需要者は、本件商標をみれば、直ちに請求人の製造にかかる「SERVER」であると認識するものであり、その商品の出所につき混同を生ずるものである。

さらに、請求人は、企業グループを形成しており、グループ企業は、「JT」また「ジェイティ」を冠した社名を使用し、その社章としても、「JT」の文字を組み合わせたものを多く使用している。したがって、本件商標に接する需要者・取引者層は、請求人のグループ企業の商品と誤解し、その商品の出所につき混同を生ずるものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当すること明らかである。

(3)商標法第4条第1項第8号について

本件商標は、請求人を表示する著名な略称または通称である「JT」の文字を含むものであり、かつ、請求人の承諾を得ていない。

請求人は、引用商標をコミュニケーション・ネームとして採用、使用しているものであり、かつ、請求人の著名な略称または通称でもある。コミュニケーション・ネームは、他人の名称自体ではないとしても、他人を表示するものとして雅号、芸名、筆名等と同様に保護されるべきものである。

「JT」が請求人を表わす略称として一般に認められていることは、辞書類の略語の項においても、「JT(Japan Tobacco Inc.)、日本たばこ産業株式会社の略称」と紹介されていることからも明らかである。また、新聞等において「JT」の文字が見出し等に使用され、正式名称の後には括弧書きで(JT)の文字が入れられていることからも明らかである。

従って、本件商標は、請求人の著名なコミュニケーション・ネームおよび著名な略称を含む商標と評価せざるを得ず、かつ、請求人の承諾を得ていないから、商標法第4条第1項第8号の規定に該当するものである。

(4)以上詳述した通り、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第8号の規定に該当し、同第46条の規定に基づいて、その商標登録は無効にされるべきものと思料する。

4.被請求人は、何ら答弁するところがない。

5.当審の判断

(1)本件商標は、前記のとおり「JT」と「SERVER」の欧文字を一文字程度の間隔をあけて、普通に用いられる方法で横書きしてなるものであるところ、ローマ文字2字が、商品の種別、規格、形式等を表示するための記号・符号として、本件商標の指定商品を含む種々の商品に、普通に採択・使用されている実情からみれば、その構成中前半部の「JT」の文字は、これに接する取引者・需要者に、商品の記号・符号の一類型を表したものとして理解されるに止まるといい得るものである。

また、本件商標中後半部の「SERVER」の文字は、一般的には「サーブをする人(テニス、バレーなど)、奉仕者」の意味を有する英語として、若しくは「パソコンLAN等のネットワーク上で、搭載したハード・ディスク装置やプリンター、モデム、アプリケーションなどを他のパソコンに使わせるコンピューター」を称するものとして親しまれていると認められるものであるから、本件商標の指定商品との関係からみれば、自他商品の識別機能を有しないものということはできない。

この点に関して、請求人は、「『SERVER』の語は、『研究社 新英和大辞典』(株式会社研究社、1981年発行)に、『配膳台、ワゴン』の意味を有する英語として記載があるから、本件商標の指定商品『手押し台車』の普通名称に近い用語である。」旨主張するが、「SERVER」の文字は、上記の意味合いで理解されるとみるべきであって、これを左右するに足る証拠は見当たらない。

してみれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ジェイティサーバー」の称呼を生ずるほか、商品の記号・符号の一類型を表す前半の「JT」の文字部分を省略した後半部の「SERVER」の文字より、「サーバー」の称呼を生ずるものと判断するのが相当である。

他方、引用商標は、別掲のとおり、ローマ文字2字の「JT」を図案化したと認められるものであるから、これより「ジェイティ」の称呼を生ずる。

そこで、本件商標より生ずる「ジェイティサーバー」「サーバー」と引用商標より生ずる「ジェイティ」の称呼を比較するに、両称呼は、その音構成、音数の差などにより、明瞭に区別し得るものである。また、両者は、その外観・観念においても類似するものということはできない。

したがって、本件商標と引用商標は、その外観・称呼・観念のいずれの点よりみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。

(2)また、別掲の引用商標と同一の商標が、請求人の業務に係る商品「たばこ」を表示するものとして著名であって、同人が、たばこ事業の他、医薬事業、エンジニアリング事業、食品事業等、多分野に亘って事業を拡張していることは認め得るとしても、本件商標は、その指定商品「手押し台車」との関係からみれば、構成中前半の「JT」の文字が独立しては自他商品の識別機能を果たし得ないものであって、引用商標とは非類似の商標であること前記認定のとおりであるばかりでなく、該「JT」の文字と請求人の前記著名商標を比較した場合においても、その外観が著しく相違するものであるから、これをその指定商品に使用しても、請求人又は同人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

(3)さらに、ローマ文字2字の「JT」が、「たばこ」の製造・販売を主たる事業とする請求人の略称又は通称として、ある程度の周知性を獲得していることは認め得るとしても、本件商標は、請求人の主たる事業に係る商品とは全く異質の商品「手押し台車」について使用するものであるところ、これに接する取引者・需要者は、その構成中前半部の「JT」の文字を商品の記号・符号の一類型を表したものとして理解するに止まること前記認定のとおりであって、これを左右するに足る証拠は見当たらない。

してみれば、本件商標は、その商標中に「JT」の文字を有するとしても、請求人の著名な略称又は通称を含むものということはできない。

(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第8号のいずれにも違反してなされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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