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Trademark Appeal Case

営利法人の医療商標使用意思

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35619号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4107258号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、42類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,美容・理容,入浴施投の提供,医業・健康診断・歯科医業・調剤,栄養の指導」を指定役務として、平成7年6月5日登録出願、同10年1月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、本件商標の指定役務中「医業・健康診断・歯科医業・調剤」についての登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)請求人は、商標登録第4107260号商標(甲第2号証)を有するところ、この商標登録に対し、本件商標を引用して登録異議の申立てを受け(平成10年異議第91086号)、平成10年9月17日付けで取消理由通知を受けているので、本件商標の登録無効の審判の請求について利害関係を有する。

(2)本件商標の商標権者「株式会社新健食」は、指定役務中「医業・健康診断・歯科医業・調剤」については、登録時にこれらに係る業務を行っていないばかりでなく、近い将来においても行うことができないものである。

商標の登録要件を定めた商標法第3条第1項柱書きは、登録時に出願商標を使用していることまでは求めていないが、少なくとも使用の意思を有することを求めている。したがって、商標登録を受けるには、指定役務に係る業務を行っているか、又は、近い将来行う予定があることを要するものである。

しかるに、商標権者は、請求人の調査によれば、健康食品の販売を行っている営利法人であり(甲第3号証)、登記簿の目的に記載されている診療所の経営は登記研究(甲第4号証)及び医療法第7条第4項(甲第5号証)により設立登記が受理されても開業ができないため、商標登録を受ける条件を満たしていない。

以上のとおり、本件商標は、その指定役務中「医業・健康診断・歯科医業・調剤」については、使用できないにもかかわらず登録されたものであるから、商標法第3条第1項柱書きに違反して登録されたものであり、無効とされるべきである。

(3)答弁に対する弁駁

イ)商標法第3条第1項柱書きの趣旨からみて、本件商標が適法に登録されたものであるとするには、登録時において、商標権者たる被請求人が、少なくとも近い将来において、これを使用する意志があるものであったことが求められるというべきである。

しかして、上記でいう「近い将来において商標を使用する意志がある」と認められるには、単にこれを主張するだけでは足りず、これが真正のものであることを要し、これが真正なものであると認められるには、少なくとも真正なものと推認するに足りる資料の提示によってなされるべきである。

ましてや、商標を使用して提供しようとする役務に係る業務を行うことが、法の求める許認可を条件とするものである場合には、「近い将来において商標を使用する真正の意志がある」ことの主張は、例えば、許認可の申請を行う予定があることを客観的に示す資料の提示といった、その意志があることを認めるに足りる資料によって裏付けられることを要すると解される。

したがって、商標権者が、法の求める許認可を受け得ない者である場合には、同人が「近い将来において商標を使用する真正な意志がある。」と主張したからといって、これに真正なものであることを認めるに足りる資料が伴わない限り、単なる主張に止まり、かかる主張のみでは、かえって「近い将来において商標を使用する意志がない」ことを推認できるというべきである。

ロ)ところで、医療法7条第1項は、「病院を開設しようとするとき、医師及び歯科医師でもないものが診療所を開設しようとするとき、又は助産婦でないものが助産所を開設しようとするときは、開催地の都道府県知事の許可を得なければならない」とし、同じ第7条第4項は、「営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、前項の規定にかかわらず、第1項の許可を与えないことができる」と規定している。

しかるところ、被請求人は、上記第7条第4項は、「・・・第1項の許可を与えないことができる。」としているのであるから、同項は、営利法人による医療行為を絶対的に禁止しているものではないと主張する。

確かに、医療法第7条第4項は、営利法人による医療施設の開設を絶対的に許可しないとの趣旨ではないが、そうかといって、いかなる営利法人にも許可がなされるのではなく、唯一例外的に営利法人に医療施設の開設許可が与えられるのは、営利法人の職員の厚生福利施設と認められる医療施設に限られ、この場合においても医療施設の非営利性は厳しく問われているのである(甲第6号証)。

ハ)被請求人は、営利を目的とする法人であるから、被請求人に医療施設の開設許可が与えられるのは、同人の施設が、甲第6号証でいう、被請求人の職員等の厚生福利施設と認められるものである場合に限られる。

しかるところ、被請求人は、富士ウエルネス研修センターなる施設を運営し、これの併設施設として「駿河平診療所」及び「駿河平銭灸治療院」なる医療施設を開設し、医療行為を行っていると主張している。

そうすると、上記の医療施設の開設許可は、被請求人が得ているのが当然といえるところ、これを示す資料の提示はなく、また、乙第1号証ないし乙第3号証も、被請求人と同人が開設していると主張する医療施設の関係が、医療法の趣旨に沿ったものであることを示すものではない。

かかる状況と本件商標が登録後1年4月を経ても使用されていないという事実に照らせば、被請求人は、本件商標の登録時において、本件商標を使用する真正な意志はなかったと推認せざるを得ない。

したがって、本件商標は、その指定役務のうちの請求に係る役務については、商標法第3条第1項柱書きの規定に違反して登録されたものというべきである。

よって、請求の役務に係る本件商標の登録は、商標法第46条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきである。

3 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を次のように述べ、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。

(1)被請求人は、商標法第3条第1項柱書きの規定の趣旨は、請求人の主張のとおり、現実的な使用ではなく使用の意思があれば足りるものであると理解している。

しかして、被請求人は、商標法第3条第1項柱書きの要件を既に具備するものであることを示すため、乙第1号証ないし乙第3号証を提出する。

乙第1号証に示すように、被請求人は、富士ウエルネス研修センターにて潜在型美容・健康増進・体質改善施設を行っており、同研修センターのみでなく全国的に同様の業務を行っている。しかも、健康診断及び診療行為並びに調剤等については、同研修センターに併設されている駿河平診療所において行うようになっている。また、乙第2号証に示すように、前記研修所においては、駿河平診療所のみでなく、駿河平鍼治療院も併設されている。また、乙第3号証に示すように、管理栄養士による健康相談も行われているから、被請求人が商標法第3条第1項柱書きの要件を具備するものであることは明らかである。

(2)請求人の甲第5号証として提出した医療法第7条第4項の「営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとするものに対しては、前項の規定にかかわらず、第1項の許可を与えないことができる。」との規定に基づくものと解される。

請求人は、医療法第7条の規定の趣旨を理解していないものであることは明白である。

請求人の提出した甲第5号証の第7条1項には、「病院を開設しようとするとき、医師及び歯科医師でないものが診療所を開設しようとするとき、・・・開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない。」と規定している。

これは、前記規定の反面解釈からして原則として医師及び歯科医師でないものが診療所を開設しようとするときには、開設地の都道府県知事の許可を受ければ開設することができる、というものであり、公益的な見地からみて行政上の許可主義を採択しているものである。

また、請求人の主張の論拠とされている第4項においても「・・・できる。」との文言による規定であり、絶対的なものではないことは明白であるから、被請求人が本件商標の指定役務である「医業・健康診断・歯科医業・調剤」について、使用できないとの請求人の主張理由は的を得たものではない。

(3)自然人ではない法人による医療業務が絶対認められていないかというと、そうではない。医療法人が認められていることを鑑みれば明らかである。この医療法人も公益法人ではなく特殊な営利法人である。

そうであるとすると、法人であっても医療業務ができないものでないことは明白である。

(4)被請求人の所有に係る商標権も財産権であり、財産権は移転性があることを前提とする。したがって、この財産権は独占的なものであり、かつ使用・収益・処分が可能である。この財産権は、禁止規定がない限り、制限されるものではない。

被請求人は、被請求人と同じ「株式会社...」が本件商標と同様の商標権を取得することができないかどうかについて調査した結果を乙第4号証ないし乙第8号証として例示する。

以上のとおり、請求人の主張は容認されるべきではない。

4 当審の判断

(1)商標法第3条第1項柱書きについて

我が国で採用している登録主義においては、現実に商標の使用をしていることを商標登録の要件とすると、折角使用をしてその商標に信用が蓄積しても、登録出願した場合に不登録理由があることによって不登録となるような事態が予想されるから、あらかじめ使用者に将来の使用による信用の蓄積に対して法的な保護が与えられることを保証すべきであり、そのためには現実にその商標の使用をする予定のある者には、近い将来において保護に値する信用の蓄積があるだろうと推定して事前に商標登録を認めるものである。

してみれば、(ア)商標権者(出願人)の業務の範囲が法律上制限されているために、商標権者(出願人)が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合、(イ)指定商品又は指定役務に係る業務を行うことができる者が法律上制限されているため、商標権者(出願人)が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合に、商標法第3条第1項柱書きを適用すべきであり、現実的な商標の使用ではなく使用の意思、使用の蓋然性があれば足りるものと解するのが相当である。

(2)そこで、請求人の提出した被請求人の登記簿謄本(甲第3号2証)をみると、業務の目的欄中に、「9.診療所、保養所の経営」と記載されていることが認められる。

しかして、上記事実及び被請求人の主張を勘案すれば、被請求人が、無効請求に係る役務について使用する意図が窺えるものであり、その意志がないと断じ得ないし、これを覆す証左も見あたらない。

さらに、被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第3号証をみると、被請求人は、食品によって、健康づくりや体質改善を目的とする食品販売会社であって、これを実践するための会員専用の施設と認められる富士ウエルネス研修センター内に潜在型美容・健康増進・体質改善施設を有し、その研修センターには駿河平診療所が併設され、血液検査、聴力検査、視力検査、尿検査、健康相談等が行えることが認められる。

次に、請求人の提出した甲第5号証をみると、医療法第7条第1項には、「病院を開設しようとするとき、医師及び歯科医師でないものが診療所を開設しようとするとき、・・・開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない。」と規定され、同第4項に「営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとするものに対しては、前項の規定にかかわらず、第1項の許可を与えないことができる。」と規定している。

これは、「医師及び歯科医師でないものが診療所を開設しようとするときには、開設地の都道府県知事の許可を受ければ開設することができる。」と解釈され得るものである。

してみれば、被請求人が本件商標の指定役務である「医業・健康診断・歯科医業・調剤」について、その施設の開設について、上記法令により制限されているために、業務開業が禁止されているものということはできない。

そうとすれば、被請求人は、本件無効請求に係る役務について使用の意志、使用する蓋然性を有する者であるものというのが相当である。

したがって、本件商標の指定役務中、無効請求に係る「医業・健康診断・歯科医業・調剤」は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきではない。

よって、結論のとおり審決する。

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