Trademark Appeal Case
色彩商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−3243(T2017−3243/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を別掲2のとおりに記載して、第30類「中華そばのめん,即席中華そばのめん,うどんのめん,即席うどんのめん,そばのめん,即席そばのめん」を指定商品として、平成27年4月1日に色彩のみからなる商標として登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、別掲1及び別掲2の記載から特定されるものである。
ところで、商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品・役務の広告の装飾等に使用される色彩は、様々な色彩を組み合わせたものも含め、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別するための標識として認識し得ないものである。
そして、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、本願商標の金色又はその同系色の色彩が使用されている実情がある。
そうすると、本願商標を、その商品の包装や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の包装又は広告に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない。
また、請求人によって、本願商標と同一と推測される色彩が、商品の包装やその商品の紹介の際の背景色として使用されているが、いずれも「マルちゃん 正麺」の文字が極めて顕著に、大きく使用されており、こうした使用状況又は使用態様によっては、本願商標のみで独立して識別力を有するに至っているということはできない。
以上のとおり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。
3 当審における証拠調べ通知書
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲3に掲げる事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に通知し(平成31年2月7日付け証拠調べ通知書)、意見を求めた。
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
(1)本願商標は、金色(PANTONE871C)のみからなる商標であるところ、証拠調べで通知された事例は、色彩(明度及び彩度)が異なるもので、商品の包装のほんの一部に使用するにすぎないものもあるから、本願商標とは事案が異なる。
(2)本願商標は、使用開始当時は、即席麺の袋の色の常識を打ち破る斬新な色彩であったもので、請求人が他社に先駆けて使用を開始したもので、その使用実績もあって、他社商品とは一線を画した周知性及び識別力を獲得した。
5 当審の判断
(1)本願商標の色彩の識別性の有無について
ア 本願商標は、別掲1及び別掲2のとおり、金色(PANTONE871C)のみからなるところ、文字や図形と組み合わせたものではなく、商標を使用する際の形態や使用態様も特定するものではない。
イ そして、商品やその包装の色彩又は色彩構成は、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではなく、現実の取引において、金色(その近似色を含む。)は、商品(即席麺)の包装や文字、図形等を装飾するために広く使用され、同色で装飾した商品が多数見受けられる(別掲3)。
ウ そうすると、本願商標は、商品の包装や広告の色彩として極めて一般的に採択されている色彩(金色)の一種であって、それ自体は、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないから、その指定商品について使用(商品の包装容器や広告など)されたとしても、単に商品やその広告の美観を向上させる目的で採択された色彩との印象を与えるにすぎず、自他商品の出所識別標識と認識されるような特徴を備えるものではない。
(2)本願商標の使用による識別性の有無について
請求人は、証拠(甲第1号証ないし甲第77号証)を提出し、本願商標は、請求人による継続した使用により、自他商品の出所識別標識としての機能を獲得している旨を主張するため、以下検討する。
ア 証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、1953年に設立された総合食品メーカーで、即席麺(そば、うどん)や生麺(ラーメン、焼きそば)などを含む加工食品を製造、販売している(甲1)ところ、2011年に即席麺である「マルちゃん正麺」(以下「請求人商品」という。)を発売し(甲2〜甲4)、現在も販売している。
(イ)請求人商品の5パック入りの包装袋には、発売当初は、上部及び下部に色彩(「醤油」は赤色、「味噌」は黄色、「豚骨」は緑色)を施し、中央周縁には金色を背景色として「マルちゃん」及び「正麺」の文字等が顕著に表示されている(甲8)。その後、包装袋や容器、ラインナップには多少の変遷があるものの、請求人商品の「うどん」(包装袋の中央周縁の背景色は水色を基調とする。)、「カレーうどん」(包装袋の中央周縁の背景色は黄色を基調とする。)等を除いて、概ね包装の装飾には金色を表示し、さらに文字等も表示する(甲9〜甲11)。
また、即席麺の取引においては、上記(1)イのとおり、金色(その近似色を含む。)は、商品の包装や文字、図形等を装飾するために広く使用され、同色で装飾した商品が多数流通している実情があり、それら商品の包装には商品名や内容表示等の文字(「金の醤油」、「金の味噌」、「サッポロ一番」、「CUP NOODLE」等)が表示されている(別掲3)。
(ウ)請求人商品の売上実績は、発売開始して約4年後の2015年10月24日には累計出荷数が約10億食を達成(甲34、甲41)、2011年度の袋麺市場において市場シェア(見込み)は1割以上(甲45)、日経リサーチが2013年にスーパーの担当者を対象に実施した市場調査によれば、即席袋中華そばのブランドとしては、味が高評価を受けて、1位に評価されている(甲47)。
(エ)請求人商品は、販売促進活動(キャンペーン、イベント等)(甲21〜甲32、甲68、甲69)、雑誌、新聞、インターネット記事(甲12〜甲17、甲33、甲35、甲37〜甲40、甲42〜甲47、甲71、甲72、甲75〜甲77)、テレビCM(甲18〜甲20、甲48)などを通じて継続して宣伝広告や商品紹介が行われているが、それら記事情報においては、請求人商品の写真も表示し、発売当初は金色のパッケージに言及したものもあったが、主に品質の高さや味(おいしさ)に着目するもので、広告においては、本願商標の特徴(色彩のみ)に特段着目させるような手法は確認できない。
イ 検討
以上を踏まえて検討するに、請求人商品は、2011年の発売以来、10年程度に満たない程度の販売実績や広告実績であるものの、その販売実績は袋入り即席麺としては相当な販売実績や市場シェアを有するものではある。
しかしながら、請求人商品は、本願商標に相当する金色を包装袋の中央周縁に表示しているとしても、上部や下部の色彩も併せて複数の色彩を組み合わせてなるとの印象をも与える構成よりなり、その他に金色を同様の位置に表示しない商品もあるため、請求人商品のシリーズ全体としては統一的な印象を形成しにくいばかりか、請求人商品の包装には商品名(「マルちゃん正麺」)に相当する文字などが顕著に表示されており、包装全体としては、金色の装飾部分よりも、商品名などに相当する文字部分が強く目を引くような構成よりなる。
そして、即席麺の取引においては、金色(その近似色を含む。)を、商品の包装や文字、図形等に表示する商品が多数流通している実情があるから、その包装に表示された商品名等に依拠せずに、当該色彩(金色)のみで他人の商品との間で出所を識別することは事実上困難でもある。そのため、現実の取引においては、請求人商品に係る本願商標の色彩(金色)が、その商品名とは独立して、固有の出所識別標識として需要者の間において記憶されることは考えにくい。
そうすると、本願商標は、請求人商品に係る使用態様及び取引の実情を踏まえると、需要者の間において、請求人商品の商品名などとは独立して、請求人固有の商標として全国的に広く知られるに至ったものとは認められない。
ウ 請求人の主張は、以下のとおり、いずれも採択できない。
(ア)請求人は、本願商標は「マルちゃん正麺」(袋入り即席麺)に使用され、従来の即席麺の袋の色の常識を打ち破る斬新な色として、その商品の驚異的な販売実績もあって、他社商品とは一線を画する圧倒的な周知著名性を獲得したもので、金色の上に文字等が大きく使用されていたとしても、本願商標の金色が店頭において商品を購入する際の目印になることから、本願商標のみで独立して識別力を有する旨を主張する。
しかしながら、上記イのとおり、請求人商品の包装容器は、複数の色彩を組み合わせてあるなど、統一的な印象を形成しにくいものであるばかりか、金色の装飾部分よりも商品名などに相当する文字部分が強く目を引くような構成よりなる上、即席麺の取引においては金色(その近似色を含む。)に彩色した商品が多数流通している実情があるから、その包装等に表示された商品名等に依拠せずに、請求人商品に係る色彩(金色)のみで他人の商品との間で出所を識別することは事実上困難であり、請求人商品の販売実績にかかわらず、請求人商品に係る本願商標の色彩(金色)が、その商品名からは独立して、固有の出所識別標識として需要者の間において記憶されることは考えにくい。
また、雑誌や新聞等における請求人商品の紹介記事においても、上記ア(エ)のとおり、主に品質の高さや味(おいしさ)に着目しており、本願商標の色彩に特段着目させるような記載や宣伝手法は近年では確認できないから、請求人商品の販売実績によって、その包装に表示されている色彩である金色が、需要者の間において、独立した自他商品の出所識別標識としてどの程度受け入れられ、認識されているのかは把握できない。
そうすると、本願商標は、請求人商品に係る使用態様及び取引の実情を踏まえると、需要者の間において、請求人商品に表示された商品名などからは独立して、請求人固有の商標として全国的に広く知られるに至ったものとは認められない。
(イ)請求人は、本願商標は、金色(PANTONE871C)のみからなる商標であるところ、証拠調べで通知された事例は、色彩(明度及び彩度)が異なるもので、商品の包装のほんの一部に使用するにすぎないものもあるから、本願商標とは事案が異なる旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、「金色」の一種であって、商品の包装や広告の色彩としても、極めて一般的に採択されている色彩であり、また、人が視覚によって見分け、記憶できる色彩には限界があるから、近似色は、時と処を異にして接する場合、見分けることは困難であり、本願商標と同一の色彩だけではなく、金色の近似色に係る取引の実情は、本願商標に係る需要者が金色をどのように認識するかにおいて直接的な影響を与えるものといえ、その識別性の検討において考慮することに、特段の支障はない。
(ウ)請求人は、本願商標の金色(PANTONE871C)は、使用開始当時は、即席麺の袋の色の常識を打ち破る斬新な色彩であったもので、請求人が他社に先駆けて使用を開始したもので、他社商品とは一線を画した周知性及び識別力を獲得した旨を主張する。
しかしながら、本願商標に係る金色の最先の使用者が誰であるかに関わらず、現時点における取引においては、上記イのとおり、金色(その近似色を含む。)を商品の包装等に用いる商品が多数流通している実情があるから、その包装等に表示された商品名等に依拠せずに、当該色彩(金色)のみで他人の商品の間で出所を識別することは事実上困難であるため、現実の取引においては、本願商標の色彩(金色)が、その商品名とは独立して、固有の出所識別標識として需要者の間に記憶されることは考えにくいというべきである。
エ 小括
以上のとおり、本願商標は、請求人によって長期間にわたって独占的に使用されているものではなく、請求人商品に係る使用態様及び取引の実情を踏まえても、需要者の間において、独立した請求人固有の商標として全国的に広く知られるに至っていないから、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができる標章とはいえない。
(3)まとめ
本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる標章ではないから、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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