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Trademark Appeal Case

緑色単色商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−11816(T2017−11816/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を別掲2のとおりに記載して、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年4月1日に色彩のみからなる商標として登録出願されたものである。

その後、原審における平成28年2月15日付けの手続補正書により、その指定商品は、第30類「カップ入り即席そばの麺」と補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)

本願商標は、別掲1及び別掲2の記載から特定されるものである。

ところで、商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品・役務の広告の装飾等に使用される色彩は、様々な色彩を組み合わせたものも含め、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別するための標識として認識し得ないものである。

そして、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、本願商標の緑色又はその同系色の色彩が使用されている実情がある。

そうすると、本願商標を、その商品の包装や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の包装又は広告に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない。

また、請求人によって、本願商標に係る標章と同一視し得る色彩が、商品の包装容器や広告宣伝において使用されているが、いずれも需要者の注意を引くように「緑のたぬき」の文字又は図柄が目立つように使用されており、こうした使用状況又は使用態様によっては、本願商標のみで独立して識別力を有するに至っているということはできない。

以上のとおり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。

3 当審における証拠調べ通知書

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲3に掲げる事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に通知し(平成29年12月18日付け証拠調べ通知書)、意見を求めた。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見

(1)本願商標は、特定の緑色の色彩(PANTONE355C)のみからなる商標であって、証拠調べで通知された事例とは、色彩(明度及び彩度)や商品(そばとラーメン、焼きそば等)が異なるから、同業他社の使用例にかかわらず、独自の識別力を獲得した。

(2)本願商標の緑色の色彩(PANTONE355C)は、請求人が他社に先駆けてその商品に使用し販売を開始したものであって、後発の商品による緑色の図形の使用は請求人の商品を模倣したものと考えられるから、同業他社とは一線を画した独自の識別力を獲得した。

(3)本願商標の指定商品の分野はそばであるところ、ラーメンや焼きそばとは分野が異なるもので、本願商標に係る請求人商品はそばの分野においては最もシェアが高い。

5 当審の判断

(1)本願商標の色彩の識別性の有無について

ア 本願商標は、別掲1及び別掲2のとおり、緑色(PANTONE355C)のみからなるところ、文字や図形と組み合わせたものではなく、商標を使用する際の形態や使用態様も特定するものではない。

イ そして、商品やその包装の色彩又は色彩構成は、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではなく、現実の取引において、緑色(その近似色を含む。)は、商品(即席麺)の包装容器や包装袋の上部蓋部や側面の相当程度の範囲や文字、図形等を装飾するために広く使用され、同色で装飾した商品が多数見受けられる(別掲3(1)〜(5))。

ウ そうすると、本願商標は、商品の包装や広告の色彩として極めて一般的に採択されている色彩(緑色)の一種であって、それ自体は、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないから、その指定商品について使用(商品の包装容器や広告など)されたとしても、単に商品やその広告の美観を向上させる目的で採択された色彩との印象を与えるにすぎず、自他商品の出所識別標識と認識されるような特徴を備えるものではない。

(2)本願商標の使用による識別性の有無について

請求人は、他の審判事件(不服2017−2741、商願2015−30699に関する拒絶査定不服審判)において提出した証拠(甲第1号証ないし甲第69号証)を援用し、本願商標は、請求人による継続した使用により、自他商品の出所識別標識としての機能を獲得している旨を主張するため、以下検討する。

ア 証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。

(ア)請求人は、1953年に設立された総合食品メーカーで、即席麺(そば、うどん)や生麺(ラーメン、焼きそば)などを含む加工食品を製造、販売している(甲1)ところ、1980年に和風即席そばとして「緑のたぬき天そば」(以下「請求人商品」という。)を発売し(甲3)、現在も販売している。

(イ)請求人商品の包装容器には、発売当初は、蓋部上部に緑色を背景色として「緑のたぬき天そば」又は「緑のたぬき」の文字等が顕著に表されており、容器側面には緑色の帯状模様が表示されている(甲3)。その後、容器デザインには多少の変遷があるものの、1997年以降の包装容器側面の緑色の帯状模様には、重なるように「緑のたぬき」の文字等が顕著に表示されている(甲4〜甲16)。

また、即席麺の取引においては、上記(1)イのとおり、緑色(その近似色を含む。)は、商品(即席麺)の包装容器や包装袋の上部蓋部や側面の相当程度の範囲や文字、図形等を装飾するために広く使用され、同色で装飾した商品が多数流通している実情があり、それら商品の包装には商品名等の文字(「大黒軒天ぷらそば」、「ビック大盛りたぬきそば」、「大黒冷したぬきそば」、「小海老天そば 旨」等)が表示されている(別掲3(1)〜(5))。

(ウ)請求人商品の売上高は必ずしも明らかではないが、カップ麺(うどん、そば、ラーメン、焼きそばを含む。)の売上げランキング(2014年11月〜2015年1月)で2位(甲62)、カップ麺(ラーメン、うどん、そば、焼きそばを含む。)の商品別販売シェアランキング(全国、2015年〜2016年)で4位(甲69)、カップ麺(ラーメン、焼きそば、うどん、そばを含む。)ブランドシェア(2015〜2016)で8位(別掲3(7)ア(ア))とされる。

(エ)請求人商品は、販売促進活動(キャンペーン、イベント)(甲18〜甲61)、雑誌(甲63)、テレビCM(甲64、甲65)などを通じて継続して宣伝広告が行われているが、例えば「赤いきつねと緑のたぬき」というテーマソングのような商品名に着目させる宣伝手法は採択しているが、本願商標の特徴(色彩のみ)に特段着目させるような宣伝手法は確認できない。

イ 検討

以上を踏まえて検討するに、請求人商品は、1980年の発売以来、約40年の販売実績や継続的な広告実績があり、その販売実績も即席麺としては全国的にも上位に位置するほどの相当な販売実績を有するものではある。

しかしながら、請求人商品は、本願商標に相当する緑色を包装容器の上部蓋部や側面に表示しているとしても、比較的目につきやすい包装容器の蓋部には商品名(「緑のたぬき天そば」)に相当する文字などを表示し、近年は帯状模様にも重ねて当該文字等を表示しているから、包装容器全体としては、緑色の装飾部分よりも、商品名などに相当する文字部分が強く目を引くような構成よりなる。

そして、即席麺の取引においては、緑色(その近似色を含む。)を、商品の包装容器や包装袋の上部蓋部や側面の相当程度の範囲や文字、図形等に表示する商品が多数流通している実情があるから、その包装等に表示された商品名等に依拠せずに、当該色彩(緑色)のみで他人の商品との間で出所を識別することは事実上困難でもある。そのため、現実の取引においては、請求人商品に係る本願商標の色彩(緑色)が、その商品名とは独立して、固有の出所識別標識として需要者の間において記憶されることは考えにくい。

そうすると、本願商標は、請求人商品に係る使用態様及び取引の実情を踏まえると、需要者の間において、請求人商品の商品名などとは独立して、請求人固有の商標として全国的に広く知られるに至ったものとは認められない。

ウ 請求人の主張は、以下のとおり、いずれも採択できない。

(ア)請求人は、本願商標は「緑のたぬき」(カップ入り即席そばの麺)の包装容器に永年使用され、姉妹商品の「赤いきつね」との補色の関係から、非常に目立ち、識別力を発揮してきたもので、最近は、緑色の上に文字等も見られるが、緑色のみを常に地色として付していたことから、当該商品の全国展開や、「緑のたぬき」のセリフとともに、本願商標の緑色を地色とする商品を表示するようなテレビCMを含んだ広告宣伝によって、我が国の需要者の間において周知著名になっている旨を主張する。

しかしながら、上記イのとおり、請求人商品の包装容器全体としては、緑色の装飾部分よりも、商品名などに相当する文字部分が強く目を引くような構成よりなる上、即席麺の取引においては、緑色(その近似色を含む。)に彩色した商品が多数流通している実情があるから、その包装等に表示された商品名等に依拠せずに、請求人商品に係る色彩(緑色)のみで他人の商品との間で出所を識別することは事実上困難であり、請求人商品の販売実績にかかわらず、請求人商品に係る本願商標の色彩(緑色)が、その商品名からは独立して、固有の出所識別標識として需要者の間において記憶されることは考えにくい。

また、請求人商品の広告宣伝の際には、「緑のたぬき」の商品名に着目させる宣伝手法が図られているとしても、当該商品名に漠然とした色彩(緑)の要素が含まれているにすぎず、本願商標に係る特定の色彩(PANTONE355C)の周知が図られるものではないこと明らかで、また、即席麺の取引においては、上記イのとおり、商品名等に依拠せずに、商品の包装に表示された色彩(緑色)のみで他人の商品との間で出所を識別することは事実上困難であるから、本願商標の色彩(緑色)が、その商品名からは分離した、独立した知名度を獲得したことを示すに十分とはいえない。

そうすると、本願商標は、請求人商品に係る使用態様及び取引の実情を踏まえると、需要者の間において、請求人商品に表示された商品名などからは独立して、請求人固有の商標として全国的に広く知られるに至ったものとは認められない。

(イ)請求人は、本願商標は、特定の緑色の色彩(PANTONE355C)のみからなる商標であって、証拠調べで通知された事例とは、色彩(明度及び彩度)や商品(そばとラーメン、焼きそば等)が異なるから、同業他社の使用例にかかわらず、独自の識別力を獲得した旨を主張する。

しかしながら、本願商標は、「緑色」の一種であって、商品の包装や広告の色彩としても、極めて一般的に採択されている色彩であり、また、人が視覚によって見分け、記憶できる色彩には限界があるから、近似色は、時と処を異にして接する場合、見分けることは困難であり、本願商標と同一の色彩だけではなく、緑色の近似色に係る取引の実情は、本願商標に係る需要者が緑色をどのように認識するかにおいて直接的な影響を与えるものといえ、その識別性の検討において考慮することに、特段の支障はない。

また、本願商標の指定商品「カップ入り即席そばの麺」は、いわゆる即席麺(「数分のゆで時間で、または熱湯をかけて数分おくだけで食べられるように加工した麺類」デジタル大辞泉)の一種であって、麺の種類としてはそばのほか、ラーメン、うどん、焼きそばなど多様な種類があるものの、その需要者の範囲や流通経路(製造者、販売者)などが共通し、例えば市場統計や販売統計において、即席麺に係る事業者や商品は麺の種類を問わずにまとめて比較されてもいる(甲62、甲69、別掲3(7))など、相互に重複する又は密接な関連性がある。そうすると、即席麺に係る取引の実情は、本願商標の指定商品に係る需要者の認識に直接的な影響を与えるというべきであるから、その識別性の検討にあたって考慮することに特段の支障はない。

(ウ)請求人は、本願商標の緑色の色彩(PANTONE355C)は、請求人が他者に先駆けて販売を開始したもので、後発の商品による緑色の使用は請求人の商品を模倣したものと考えられるから、同業他社とは一線を画した独自の識別力を獲得した旨を主張する。

しかしながら、本願商標に係る緑色の最先の使用者が誰であるかに関わらず、現時点における取引においては、上記イのとおり、緑色(その近似色を含む。)を商品の包装等に用いる商品が多数流通している実情があるから、その包装等に表示された商品名等に依拠せずに、当該色彩(緑色)のみで他人の商品の間で出所を識別することは事実上困難であるため、現実の取引においては、本願商標の色彩(緑色)が、その商品名とは独立して、固有の出所識別標識として需要者の間に記憶されることは考えにくいというべきである。

(エ)本願商標の指定商品の分野はそばであるところ、ラーメンや焼きそばとは分野が異なるもので、本願商標の指定商品に係る請求人商品はそばの分野においては最もシェアが高い旨を主張する。

しかしながら、上記(イ)のとおり、即席麺(うどん、そば、ラーメン、焼きそばを含む。)は、本願商標の指定商品「カップ入り即席そばの麺」とは、需要者の範囲、流通経路(製造者、販売者)等が共通し、相互に重複する又は密接な関連性がある。

そして、登録商標の保護(禁止権)は同一の範囲にとどまらず、登録商標の指定商品に類似する商品又は役務にまで及ぶ(商標法第37条)から、商標の独占適応性の判断においては、類似する商品分野における取引の実情をも考慮すべきである。

そうすると、本願商標の係る識別性や独占適応性は、その指定商品「カップ入り即席そばの麺」に限定せず、重複又は密接な関連性がある即席麺に係る取引市場における指標(市場シェア)をも基準として検討すべきである。

エ 小括

以上のとおり、本願商標は、請求人によって長期間にわたって独占的に使用されているものではなく、請求人商品に係る使用態様及び取引の実情を踏まえても、需要者の間において、独立した請求人固有の商標として全国的に広く知られるに至っていないから、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができる標章とはいえない。

(3)まとめ

本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる標章ではないから、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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