Trademark Appeal Case
単一色彩商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−8492(T2017−8492/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第32類「電解質補給用清涼飲料,粉末状の電解質補給用清涼飲料のもと」を指定商品として、平成27年4月1日に色彩のみからなる商標として登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「商品の包装に使用される色彩は、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別するための標識として認識し得ないものである。そして、本願の指定商品を取り扱う業界において、本願商標の色彩又は同系色の色彩が使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品の包装に使用しても、これに接する需要者は、商品の包装に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまるといえる。したがって、本願商標は、商品の特徴等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人が提出した証拠からは、出願商標部分のみが独立して識別力を有するに至っているということはできず、さらに、本願商標が需要者をして何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至っているものともいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成30年5月25日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、上記第3の証拠調べ通知に対し、要旨以下の通り意見を述べた。
1 本願商標は、PANTONE色番号:300Cで特定される青色のみからなるものであり、清涼飲料を取り扱う業界において通常使用される青色は、薄く明るい青色又はその色を用いたグラデーションであるところ、比較的濃い青色のみからなる本願商標の青色は、通常使用される青色とは異なる特異性を有しており、需要者の間でも「ポカリスエットブルー」、「ポカリブルー」と称され、単なる青色と区別した特別な青色と認識されるに至っている。
2 証拠調べ通知書で通知された証拠のいずれをみても、本願商標の色彩と近似する青色が使用されている例はなく、清涼飲料を取り扱う業界において、本願商標の色彩は特異性を有し、この特異性を需要者又は取引者が識別標識として着目するには十分なものといえる。
3 本願商標の色彩が、継続使用による識別力を獲得し、出願商標部分のみで独立して識別力を有するに至っている事実を明確にするため、需要者を対象としたアンケート調査を準備している。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、上記第1のとおり、色彩のみからなる商標であって、青色(PANTONE色番号:300C)のみからなるものであり、第32類「電解質補給用清涼飲料,粉末状の電解質補給用清涼飲料のもと」を指定商品とするものである。
そして、色彩のみからなる商標を、本願の指定商品である「電解質補給用清涼飲料,粉末状の電解質補給用清涼飲料のもと」に使用する場合には、通常、商品の包装にその色彩を付して使用されるといえるものであって、別掲2のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界において、商品の包装に色彩を付すことは、当該商品の包装の美感を向上させるための装飾等として一般的に行われていることであり、本願商標の青色と近似する色彩も多数使用されている実情がある。
そうすると、本願の指定商品を取り扱う業界において、青色は一般に利用されている色彩であるといえることからすると、本願商標の青色が特異な色彩であるとはいえない。
してみれば、青色の色彩のみからなる本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の美感を向上させるための装飾等として商品の包装が通常有する色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の特徴(色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 使用による自他商品識別力の獲得の有無について
請求人は、本願商標の青色の使用が清涼飲料及びその包装や広告には従来見られなかった新規なものであって、清涼飲料に反復継続して使用することにより、需要者又は取引者が、本願商標の青色が付され使用される清涼飲料は、請求人の業務に係る商品であると認識するに至っている旨主張し、その主張に係る証拠として、甲第1号証ないし甲第37号証(枝番号含む。)を提出している。
ところで、使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標が使用された期間及び地域、商品の販売数量及び営業規模、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情、当該商標やこれに類似した商標を採択した他の事業者の商品の存在、商品を識別し選択する際に当該商標が果たす役割の大きさ等を総合して判断すべきである。また、輪郭のない単一の色彩それ自体が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかを判断するに当たっては、指定商品を提供する事業者に対して、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。
そこで、上記観点から、以下検討する。
(1)本願商標の使用方法及び使用開始時期について
請求人は、「ポカリスエット」の名称の清涼飲料(以下「請求人商品」という。)を1980年4月から製造販売しており、当該飲料の容器(包装)に、白抜きで表された「POCARI」及び「SWEAT」の文字と曲線図形とともに本願商標の青色を背景色として使用している(甲2、甲3)。
(2)使用地域、販売実績について
請求人は、日本だけでなく1982年に香港・台湾で発売以降、中国・韓国・台湾・インドネシアに生産拠点を設けながら販売エリアを広げ、請求人商品は、2015年現在、世界20か国・地域で販売されている(甲4)。
また、2015年度の請求人商品の販売実績は、日本において2,625万ケース、海外において2,608万ケースである(甲6)。
(3)宣伝広告等について
ア 請求人は、宣伝広告の実績として、宣伝広告の時期及び方法を記載した一覧及び2014年の雑誌掲載の方法で行った宣伝広告のプリントアウト(甲8)を提出している。
しかしながら、宣伝広告の時期及び方法を記載した一覧からは、具体的な本願商標の使用状況を確認することができない。また、請求人の主張する2014年の雑誌掲載実績は、5誌において6回の掲載である。
イ 本願商標の青色は、店頭陳列台、のぼり、ビニールリュック、タオル、サーモスボトル、スクイズボトル及びクーラージャグタンクなどの請求人商品に係る販売促進用の物品に使用されている(甲9)。
ウ 請求人は、スポーツ等イベントの主催・共催・後援活動などを行っている(甲10)ことがうかがえるものの、イベントの詳細や当該イベントでの本願商標の青色の具体的な使用状況は明確ではない。
エ 請求人は、株式会社インテージによる、2008年から2015年にかけて一般消費者4,000人(2015年のみ2,000人)を対象に行った、清涼飲料の主要ブランドの経年認知状況調査結果として、「【主要ブランド】経年認知状況」と題する調査結果(甲11)を提出している。
しかしながら、当該調査結果は、具体的な調査内容、調査対象範囲等の詳細が不明である。
(4)ブログ記事等について
ブログ記事等において、請求人商品に使用されている本願商標の青色が、「ポカリスエットブルー」、「ポカリブルー」などと呼ばれている記事が掲載されている(甲12〜甲37)。
(5)請求人以外の者による本願商標に類似する色彩の使用について
別掲2のとおり、本願商標の青色と近似する色彩が、請求人以外の事業者により、スポーツドリンクなどの清涼飲料や清涼飲料のもとなどの商品の包装に使用され、当該商品が、製造、販売されている。
(6)判断
上記(1)ないし(5)を総合勘案すれば、請求人は、1980年から、継続して請求人商品の包装の色彩に本願商標の青色を使用していることが認められる。
しかしながら、上記(1)のとおり、請求人商品における本願商標の青色の使用態様は、白抜きで顕著に表された「POCARI」及び「SWEAT」の文字と曲線図形とともに、その背景色として使用されているといえるものであり、提出された証拠に掲載されている請求人商品は、いずれも本願商標の青色とともに当該文字と図形が使用されている。
そうすると、請求人商品に接する需要者は、商品を識別する上で重要な「商品名」として、白抜きで顕著に表された「POCARI」及び「SWEAT」の文字に着目するといえるものであり、請求人商品で使用されている青色の色彩部分のみが当該文字及び図形と分離して観察され、需要者に強く印象付けられるとはいえず、文字や図形を伴わない青色の色彩のみをもって自他商品識別力を獲得したものとは認められない。
また、別掲2のとおり、本願の指定商品を取り扱う分野においては、本願商標の青色に近似する色彩を商品の包装に使用した商品が多数存在しており、その点からも、請求人商品で使用されている青色の色彩は、請求人商品特有の色彩ということもできず、当該色彩部分のみが分離して観察され、需要者に強く印象付けられるとは認められない。
加えて、宣伝広告の実績として請求人の提出した証拠をみても、上記(3)のとおり、宣伝広告の時期及び方法を記載した一覧からは、具体的な本願商標の使用状況を確認することができず、請求人の主張する2014年の雑誌掲載の実績も、わずか5誌において6回程度の掲載であり、請求人商品に係る販売促進用の物品に本願商標の青色が使用されていることが確認できるものの、その頒布数、頒布範囲、規模等が不明である。
そして、請求人が、スポーツ等イベントの主催・共催・後援活動などを行っていることはうかがえるものの、イベントの詳細や当該イベントでの本願商標の青色の具体的な使用状況も明確ではなく、清涼飲料の主要ブランドの経年認知状況調査結果とされる「【主要ブランド】経年認知状況」と題する調査結果(甲11)は、その調査内容、調査対象範囲等の詳細が不明であり、請求人の提出した証拠からは、請求人商品の宣伝広告の実績は明確ではなく、その実績や規模を客観的に評価することはできない。
その他、請求人商品に使用されている本願商標の青色が、「ポカリスエットブルー」、「ポカリブルー」などと掲載されているブログ記事等が見受けられるとしても、請求人自身が、本願商標の青色を「ポカリスエットブルー」、「ポカリブルー」などと称して宣伝広告を行っている事実が確認できる証拠の提出はなく、これらの提出された証拠をもって、本願商標の青色が特異な色彩として一般に認識されているということはできない。
以上のことからすると、請求人は、本願商標の色彩を使用した商品を長期間にわたり相当程度販売しているといえるものの、その宣伝広告の期間及び規模等は明確ではなく、その使用態様は、白抜きで顕著に表された「POCARI」及び「SWEAT」の文字と曲線図形とともに、その背景色として使用されているといえるものであり、本願商標の色彩が、需要者において、独立した出所識別標識として周知されているとはいえない。そして、本願商標は、輪郭のない単一の色彩で、本願商標の青色と近似する色彩を使用する請求人以外の者が多数存在していること、請求人商品における、本願商標の色彩の使用態様からすると、商品の包装の背景色として使用されているといえるものであるから、商品を識別し選択する際に、本願商標が果たす役割は決して大きいものとはいえないこと、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきであること等も総合すれば、本願商標は、使用をされた結果自他商品識別力を獲得したとはいえない。
なお、請求人は、令和元年8月21日付けの上申書において、本願商標が識別力を有するに至っていることを示すためのアンケート調査を実施する旨述べていたため、当審において審理を猶予していたが、相当の期間が経過したにもかかわらず、当該調査結果などの証拠の提出が認められないことから、これ以上の審理の猶予は必要ないものと判断した。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書及び証拠調べ通知に対する意見書において、原審の拒絶理由通知及び拒絶査定並びに当審における証拠調べ通知で挙げた証拠において使用されている青色の色彩は、本願商標の青色と近似するものではない旨述べて、清涼飲料を取り扱う業界において通常使用される青色は、薄く明るい青色又はその色を用いたグラデーションであり、本願商標の青色は、これらと異なる特異性を有し、取引者、需要者は、この特異性に着目する旨主張する。
しかしながら、需要者が、本願商標の青色と原審において示した商品及び当審における証拠調べ通知書において示した商品の包装に使用されている青色の違いを明確に区別して認識するという事実はなく、本願商標の青色は、他人が使用する青色と同系色の色彩の1つと認識するとみるのが自然であり、格別請求人商品に係る特有の色として認識することはないというのが相当である。
また、別掲2のとおり、本願商標の青色と近似する色彩は、商品の包装の美感を向上させるための装飾等として使用されている実情がある。
そして、上記2(6)のとおり、需要者が、請求人商品を識別するのは商品名としての「POCARI」及び「SWEAT」の文字部分とみるのが相当であり、本願商標の青色にのみ着目して他の商品と識別しているとみるべき特段の理由は見いだせない。
そうすると、本願商標の青色と原審において示した商品及び当審における証拠調べ通知書において示した商品の包装に使用されている青色が、色相等において多少異なっているとしても、両者は、ともに一般に利用されている色彩である青色といえるものであるから、本願商標の青色が、特に着目される色彩ということはできない。
したがって、請求人の上記主張は、採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、使用により自他商品識別力を獲得したとは認められないものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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