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Trademark Appeal Case

位置商標の識別力と機能性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2019−416(T2019−416/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1の1のとおりの構成からなり,商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書に記載のとおりとし,第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,商願2015−30135に係る平成28年3月1日差出しの手続補正書に基づく商標法第17条の2第1項において準用する意匠法第17条の3第1項の規定による補正後の商標登録出願として,同年9月5日に位置商標として登録出願されたものである。

そして,商標の詳細な説明については,原審における同29年3月3日付け手続補正書により,別掲1の2のとおり補正され,さらに,本願の指定商品については,当審における令和元年9月24日付け手続補正書により,第9類「スマートフォン内部のプリント配線板に接着するための電磁波シールド材」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標を構成する図形は,単に黒色の長尺形状の図形であると認められるものであり,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,きわめて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなるものと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。また,出願人が提出した証拠からは,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないから,本願商標が,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋

当審において,請求人に対し,令和元年8月7日付けで,別掲2のとおりの事実を示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当する旨の審尋を発し,相当の期間を指定して,これに対する意見を求めた。

第4 審尋に対する請求人の意見の要旨

請求人は,令和元年9月24日付けの意見書において,上記第3の審尋に対する意見を提出した。

1 「本願商標に係る位置商標の形状に構成された黒色又はそれに近似した色彩が,識別標識としてではなく,商品の機能性向上等の観点から採択されたものであると認められる事実」について

(1)請求人がその商品に本願商標の黒色を採択したのは,当初は機能性もその理由の一つであったことを否定するものではないが,本願商標の艶消し黒の色調の黒色を採択後すぐに需要者から,薄さや品質の高さは勿論のこと,このスタイリッシュな艶消し黒の色彩が独特で素晴らしい,という高評価を得た。本願指定商品は約15年間,市場において殆ど独占的ともいえるシェアを有しており,これによって,需要者・取引者に「艶消し黒」イコール「請求人の電磁波シールド材」と認識されるに至っている。

(2)他人に係る特許公報等においても,同種商品について黒色又はそれに近似した色彩の採択に言及している事実を挙げられたが,これら公報ア,イ,ウの特許権者又は特許出願人である東洋インキSCホールディングス株式会社及び信越ポリマー株式会社のウェブページ,及び公報ア,イの発明者が属するトーヨーケム株式会社のウェブページで確認した限りでは,いずれも本願商標のような黒色を同種商品に使用している事実は発見できない。

2 「黒色ないしそれに近似する色彩が施された電磁波シールド材の事例」について

(1)請求人は,本願指定商品を第9類「携帯電話機・スマートフォン・タブレット型携帯情報端末・パーソナルコンピューター・カーナビゲーション装置・ドライブレコーダー用電磁波シールド材」から「スマートフォン内部のプリント配線板に接着するための電磁波シールド材」へと補正した。

(2)挙げられた事例のうち,「ア 長尺形状ないしそれの相似形であると認められる形状の電磁波シールド材」の(ア)(エ)(キ)(ク)(ケ)(サ)の色彩は,茶色又はグレー色であり,本願商標の「艶消し黒」の色彩と近似しているとは言えない。また,「イ ロール形状の電磁波シールド材」の(ア)は白っぽいグレー,(イ)は茶色と白,(ウ)は金色,(エ)は明るい茶色と,いずれも本願商標の「艶消し黒」とは似ても似つかない色彩である。他方,同じ黒色のものは,商品自体がスマートフォン部品としてプリント配線板に接着されるものは他になく,原材料,厚み,市場流通経路,需要者層などが全く異なる商品ばかりである。

(3)挙げられた事例のうち,アの(ア)は,本願指定商品と同じ電磁波シールド材ではあっても,その材料・品質・用途・需要者の範囲が全く異なる商品であり,特に需要者の点においては,この商品を選択し購入するのは一般のスマートフォン・ユーザーであるが,本願の指定商品の需要者は高度な知識を有するスマートフォン・メーカー或いはスマートフォン組み立て業者という違いがあり,全く別異の商品である。また,事例のア(イ)〜(サ)及びイの(オ)は,その用途又は機能又は厚みなどの違いから,本願指定商品とは全く別異の商品である。

(4)「ウ 本願の指定商品に関連する商品『電磁波の基板』に黒色ないしそれに近似する色彩が施された事例の(ア)〜(オ)は,それぞれのウェブサイトの会社が,「他社から購入した電磁波シールド材」を基板に接着した状態のものを撮影した画像であると思われるところ,画像のみからはどのメーカーの商品であるかを把握することはできないが,少なくともこれらウェブサイトを公開している会社のうちの大部分が,請求人の取引先であるため,請求人自体の商品が接着されているのであろうと考えられる。

(5)以上のとおり,本願の補正後の指定商品「スマートフォン内部のプリント配線板に接着するための電磁波シールド材」について,請求人の商品以外には,「艶消し黒」はもちろんのこと「黒色」或いはそれに近似する色彩を採用している商品は,列挙された商品の中には存在してないことから,本願商標は,十分に識別力を具備しており,登録されるべき商標である。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第5号該当性について

(1)本願商標について

本願商標は,別掲1のとおり,商標を付する位置が特定された位置商標であり,指定商品であるスマートフォン内部のプリント配線板に接着するための電磁波シールド材の片面部分(以下「本願位置」という。)にLabの組み合わせが,L*25.32,a*−0.16,b*−1.15とする艶消し調の黒色(以下「本願色彩」という。)であって,当該片面部分と同一の形状からなる長尺形状の図形(以下「本願図形」という。)を配置する構成からなる。

(2)本願位置及び本願図形の形状について

本願の指定商品を含む電磁波シールド材又は本願の指定商品に関連する商品「電磁波の基板」の分野(以下「指定商品の分野」という。)においては,長尺形状(長方形またはそれの相似形であると認められる形状並びにロール形状を含む)であって,その両面の色彩が異なる商品が存在する(別掲2の2のア及びイ)。

そして,本願図形も,単なる長尺形状であり,用いられる線の態様や形状に特徴があるわけでもなく,上記のものと比べて,特段の差異があるとは認められない。

また,電磁波シールド材は,その両面において色彩が異なる商品が存在する(甲31〜甲32,別掲2の1)ことからすれば,本願図形を付す位置(電磁波シールド材の片面部分)は,それ自体に特異性があるとは認められない。

そうすると,本願図形の形状は,構成が極めて簡単で,かつ,ありふれたものというのが相当であり,本願位置についても,指定商品の分野において一般的に選択されるものと認められる。

(3)本願色彩について

本願商標の指定商品の分野においては,商品の美感等に資する目的のため様々な色彩が用いられているところ,黒色又はそれに近似する色彩も,一般的に使用されている(別掲2の2)。また,黒色又はそれに近似する色彩は,電磁波シールド材を接着するプリント配線板の電子回路等の隠蔽や,電磁波シールド材に付す文字の視認性向上など,商品の機能性向上等の観点からも採択されていることが認められる(別掲2の1)。

請求人は,本願図形を構成する色彩について,「艶消し調の黒色は,特徴的なものであり,意匠的にもスタイリッシュであるようにとの意図で彩色を施しているのであり,決して単に機能的な色彩ではなく,この種商品についてはありふれた色彩でもない。」旨を主張する。

しかしながら,黒色は,元来ごくありふれた色彩の一つであり,色彩の光沢の有無も,商品の美感等に資する目的のためのものであって,上記のとおり,指定商品の分野においても,黒色又はそれに近似する色彩が使用されている実情があることに加え,黒色が商品の機能性向上等の観点から採択されていることがあることから,本願商標の色彩に黒色を選択するということ自体に特異性があるものとは認められない。

そうすると,本願図形を構成する色彩は,指定商品の分野において一般的に選択されるものと認められる。

(4)上記(2)及び(3)によれば,本願商標は,その構成が極めて簡単,かつ,ありふれた図形である長尺形状を,指定商品の分野において一般的に用いられる黒色で着色したものであり,本願図形を付す位置(電磁波シールド材の片面部分)も,指定商品の分野において一般的に選択されるものであることよりすれば,本願商標は,その指定商品との関係においては,これに接する取引者,需要者には,その構成全体として商品等の機能向上及び美観に資することを目的とする図形及び色彩並びにそれが一般的に付される位置を表したものと認識されるにとどまり,商品の出所を表示する標識と認識し得るものではないと解するのが相当である。

したがって,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標であって,商標法第3条第1項第5号に該当する。

2 商標法第3条第2項該当性について

商標法第3条第2項は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標として同法同条第1項第5号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができることを規定している。

そして,出願にかかる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該標章の使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量又は売上高等,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である。

請求人は,本願商標が商標法第3条第2項に規定する要件を具備しており,登録されるべき商標である旨主張し,証拠方法として,原審において,第1号証ないし第19号証を,当審において第1号証ないし第43号証(枝番を含む。)をそれぞれ提出している。

なお,原審において提出した書証は,当審においても提出していることから,当審において,本願商標が商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについての検討にあたっては,当審において提出した第1号証ないし第43号証を採用し,それぞれ甲第1号証ないし甲第43号証に読み替えるものとする。

そこで,請求人が提出した証拠及び同人の主張に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

(1)証拠及び請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。

ア 本願商標の指定商品に係る使用について

(ア)請求人は,艶消しの黒色の長尺形状の図形(以下「本願黒色図形」という。)を,スマートフォンの内部のプリント配線板に接着するための電磁波シールド材の表面の位置に付し(以下「本願黒色図形商品」という。),使用している(甲3,甲4の3及び甲4の4の型番SF−PC3100−C,型番SF−PC3300−C)。

(イ)請求人が取り扱う電磁波シールド材(以下「請求人商品」という。)について,請求人のウェブサイトには,請求人商品が,スマートフォン以外(たとえば,タブレット端末)にも使用されている旨の記載及び黒色以外の薄い水色(型番SF−PC5900−C)又は薄い紫色(型番SF−PC6000−U1)と看守される長尺形状(ロール状)の電磁波シールド材の商品写真が掲載され(甲3,甲4の1及び甲4の2),また,新聞記事においても,請求人商品には,スマートフォン以外の用途(たとえば,タブレット端末,携帯電話など小型電子機器)の電磁波シールド材があるとの記載がある(甲30,甲39)。

(ウ)請求人のウェブサイト(甲3)及び書籍「電磁波シールドフィルムの技術・市場展望」(株式会社ジャパンマーケティングサーベイ発行 甲41及び甲42)によれば,請求人商品(フィルム状/シート状のもの)には,たとえば,金属薄膜(蒸着/めっき/極薄金属箔)タイプ,導電樹脂タイプ,導電粘着タイプなど複数の種類(タイプ)の商品が存在する。

(エ)新聞・雑誌等の記事において,請求人は,安価で導電性に優れるが酸化しやすいためフィルムへの加工が難しいものであった銅素材と,樹脂材料の配合技術によって,電磁波シールド材(電磁波シールドフィルム)の開発で先行し,そのフィルムの厚みをごく薄い形状とすることに成功した高い技術力があることによって,請求人商品は,他社商品に対し優位性を有していることがうかがえる(甲1,甲26,甲28,甲29,甲31,甲33,甲34,甲38,甲39,甲40)。

なお,これらの新聞・雑誌等での請求人商品の紹介には,長尺形状の電磁波シールド材の写真が掲載されているものがあるものの(甲33,甲34),これらの書証はモノクロであり,その色彩が不明であってそれが黒色であるとの説明もないため,本願商標の色彩と同一視しうるものであるかの判別が困難であることに加え,甲第33号証及び甲第34号証以外の新聞・雑誌等の証拠には,請求人商品の写真の掲載がない。

イ 本願黒色図形の商品の使用開始時期及び使用期間,使用地域について

請求人は,本願黒色図形商品を含む請求人商品を,2005年(平成17年)7月から約15年間にわたって継続的に販売し,その使用地域は,我が国及び外国である(甲1,甲28〜甲40)。

ウ 本願黒色図形商品の販売数量又は売上高等について

請求人は,本願黒色図形商品を接着するプリント配線板を包含する最終製品であるスマートフォンの主要メーカーが世界各国でほぼ共通であり,その部品も国内外を問わず取引されている実情があることから,日本国内と世界とに分けて,商品の販売数量等や市場占有率の数値を算出することが困難である旨を述べるとともに,請求人商品は常に世界シェアで7割〜9割という高いシェアを誇っている旨を述べている。

本願黒色図形商品の販売開始以降の具体的な販売数量又は売上高は不明であるが,2016年(平成18年)の請求人商品のうち,フィルム状又はシート状の商品について,その市場占有率は,金属薄膜(蒸着/めっき/極薄金属箔)タイプでは約73%,導電樹脂タイプでは約43%,導電粘着タイプでは約2.7%であった(甲41)。

請求人商品の市場占有率について,新聞,雑誌及び書籍には,2011年(平成23年)には,世界シェア8割強(甲28,甲29,甲31〜甲33)との記載,国内外でトップシェア(甲30)との記載がある。2012年(平成24年),2013年(平成25年)及び2015年(平成27年)にも,同様に請求人商品の世界におけるシェアが約9割との記載がある(甲35,甲37〜甲40)。

エ 本願黒色図形商品の広告宣伝のされた期間・地域及び規模

(ア)請求人は,請求人のウェブサイトやカタログ頒布によって,本願黒色図形商品及びその他の請求人商品の広告を行った(甲3〜甲4の4)。

(イ)請求人は,2005年(平成17年)6月1日付け半導体産業新聞において,本願黒色図形商品(型番SF−PC5000)の広告宣伝を行った(甲2)。

(ウ)請求人は,国際電子回路産業展「JPCA Show」(2005年(平成17年),2006年(平成18年),2008年(平成20年)),エレクトロニクス製造・実装技術展「インターネプコン ジャパン」(2006年(平成18年),2007年(平成19年),2014年(平成26年))フラットパネルディスプレイの総合技術展「FPD INTERNATIONAL」(2006年(平成18年),2007年(平成19年),2008年(平成20年))の各展示会において,本願黒色図形商品(型番SF−PC5000)の広告宣伝を行った(甲6〜甲15,甲17)。また,2014年(平成26年)のエレクトロニクス製造・実装技術展「インターネプコン ジャパン」の展示会において,本願黒色図形商品(型番SF−PC3100)の広告宣伝を行った(甲21)。

オ 当該標章に類似した他の標章の存否

本願黒色図形商品に類似した他の商品として,上記1(2)のとおり,指定商品の分野において,本願黒色図形商品と共通する特徴を備える,黒色又はそれに近似する色彩が一般的に採用され,長尺形状の商品が多数存在している。そして,それらは,電磁波ノイズ対策の目的において,プリント配線板を位置として接着,積層等されることが行われていることから,本願黒色図形商品の特徴(図形及び色彩並びにその使用位置)は,他の同種商品に比して特異なものということはできない(別掲2の2)。

カ 需要者の認識についての質問票

請求人は,需要者の認識を示す目的にて,代表的なFPCメーカー(需要者)のうちの1社の重要な役職にある社員に,出願人の電磁波シールドフィルムの色彩について質問を行った旨を述べ,「Q3.タツタ電線の電磁波シールドフィルムについて,どのように感じておられますか。以下の選択肢から近いものを一つご回答ください。」「Q4.タツタ電線の電磁波シールドフィルムの色は何色ですか」「Q5.上記Q4.でご回答いただいた電磁波シールドフィルムの「色」について,どのように感じておられますか。以下の選択肢から近いものをご回答ください。(複数回答可)」等を設問とする「ご質問票」と題する平成30年11月14日付け資料を1部提出した(甲43)。なお,この質問票の回答者欄(社名,役職,ご芳名欄)は,回答者による記入がされたと推認できるものの,その全てが黒塗りであり,回答者欄の内容が不明である。

(2)判断

上記(1)の事実によれば,本願商標は,未だ自他識別力を獲得するまでには至っていないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。

ア 本願商標が我が国において全国的な周知性を獲得していないこと

(ア)本願商標の使用について

請求人は,2005年(平成17年)7月から約15年間にわたって,日本及び外国において,本願黒色図形を,スマートフォンの内部のプリント配線板に接着するための電磁波シールド材の片面の位置に付し(本願黒色図形商品),継続的に使用している。

(イ)本願黒色図形商品の販売実績について

2011年(平成23年)ないし2013年(平成25年),2015年(平成27年)及び2016年(平成28年)における本願黒色図形商品を含む請求人商品の売上高及び市場占有率等は高いことがうかがえる。

しかしながら,その数値には,本願指定商品以外の商品(たとえば,タブレット端末,携帯電話用など)も包含されており,本願商標を使用した本願指定商品に関するものはそれらの一部と考えざるを得ない。

また,請求人商品の市場占有率等が掲載されている新聞記事等には,専ら請求人商品の高い技術力や高い機能・品質(たとえば,銅素材と樹脂材料の配合技術,ごく薄い形状)が評価されたことによって,他社商品に対し優位性を有していることが紹介されているにすぎず,本願黒色図形商品と同一視しうる写真の掲載や,本願黒色図形商品に使用する本願商標の図形及び色彩並びにその使用位置に関する記載は認められない。

(ウ)本願黒色図形商品の広告宣伝について

請求人は,請求人のウェブサイトや商品カタログの頒布によって,本願黒色図形商品及びその他の請求人商品の広告を行ったことが認められるものの,商品カタログがどの程度の期間,どの範囲に,どれくらいの数量が頒布されたものか明らかではない。

また,請求人は,2005年(平成17年)6月1日付け半導体産業新聞において,本願黒色図形商品の広告を行ったことが認められるものの,新聞での広告宣伝の回数は,わずか一回にすぎず,少ないものといわざるを得ない。

さらに,請求人は,2005年(平成17年)ないし2008年(平成20年)及び2014年(平成26年)の展示会において,本願黒色図形商品の広告宣伝を行ったことが認められるものの,その展示会の来場者数,規模,地域等は不明である。

なお,これらの広告宣伝において,本願黒色図形商品の写真の掲載があるものの,本願商標の図形及び色彩並びにその使用位置に関する記載はないため,本願商標の図形及び色彩並びにその使用位置自体が,同種商品には見られない特異性を有するものとして,需要者に出所識別標識として印象付けられてきたことを裏付けるものではない。

(エ)需要者の認識についての質問票

請求人は,需要者の認識を示す目的の「ご質問票」と題する平成30年11月14日付け資料(甲43)を1部提出したものの,これはわずか1部にすぎないものである上,回答者が明らかではない。また,本願商標が,需要者に請求人の出所識別標識として印象付けられていることを示すためには,この質問票のうち,たとえば「Q4.タツタ電線の電磁波シールドフィルムの色は何色ですか」など,質問自体に既に請求人の社名の明示があることは適切ではないことに加え,質問票の全体をみても,本願商標の図形及び色彩並びにその使用位置自体が,需要者に請求人の出所識別標識として印象付けられてきたことを裏付ける内容と認められるものはなく,この資料の記載内容に証拠価値を認めることはできない。

そうすると,この資料の存在により,本願商標が,我が国の指定商品の需要者の間において全国的な周知性を獲得するに至ったものとはいえない。

イ 類似した他の商品等の存否

指定商品の分野において,請求人以外の者により,本願黒色図形商品と共通する特徴を備える,黒色又はそれに近似する色彩の長尺形状の商品が電磁波ノイズ対策の目的において,プリント配線板を位置として接着,積層等される例が見受けられる(別掲2の2)から,請求人のみが,本願商標の指定商品に黒色の色彩を有する長尺形状を付した商品を使用しているものとは認められない。

ウ 小括

以上のとおり,本願商標は,請求人によって,2005年(平成17年)7月から約15年間に渡って,我が国及び外国において継続して使用され,2011年(平成23年)ないし2013年(平成25年),2015年(平成27年)及び2016年(平成28年)における本願黒色図形商品を含む請求人商品の売上高及び市場占有率等は高いことがうかがえるものの,本願商標に係る図形及び色彩並びにその指定商品における使用位置の特異性はさしたるものとはいえず,請求人のみが本件商標に係る黒色の色彩を有する長尺形状を付した商品を使用しているものとはいえないこと,本願商標の図形及び色彩並びにその使用位置自体を強調し,印象付けるための広告宣伝が行われてきたということができないことから,請求人が本願商標をその指定商品に使用した結果,商品の機能,品質や技術的優位性から独立して,需要者が,本願商標の図形及び色彩並びにその使用位置自体のみをもって,専ら請求人の業務に係る出所識別標識であることを認識しているとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

したがって,本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められないから,商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものではない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は,「本願指定商品は約15年間,市場において殆ど独占的ともいえるシェアを有しており,これによって,需要者・取引者に「艶消し黒」イコール「請求人の電磁波シールド材」と認識されるに至っている」旨を主張する。

しかしながら,請求人による市場占有率等は高いことがうかがえるものの,上記(2)のとおり,商品の機能,品質や技術的優位性から独立して,本願商標の図形及び色彩並びにその使用位置自体が,需要者に請求人の業務に係る出所識別標識であることを認識されていると認めるに足りる証拠はない。

イ 請求人は,審尋での類似商品の例示について,他人に係る特許公報等にて同種商品について黒色又はそれに近似した色彩の採択に言及している事実を挙げられたが,これらの会社のウェブページで確認した限りでは,いずれも本願商標のような黒色を同種商品に使用している事実は発見できないこと,及び,他の例示「ア 長尺形状ないしそれの相似形であると認められる形状の電磁波シールド材」や「イ ロール形状の電磁波シールド材」の多くの色彩は,茶色,グレー色,金色,明るい茶色など,いずれも本願商標の「艶消し黒」とは似ても似つかない色彩であり,本願商標の識別力を否定する根拠にはならない旨を主張する。

しかしながら,上記1(3)及び(4)のとおり,黒色は,元来ごくありふれた代表的な色彩の一つであり,かつ,色彩の光沢の有無も,商品の美感等に資する目的のためのものであり,その選択自体に特異性があるものとは認められないし,指定商品の分野においては,商品の美感等に資する目的のため黒色をはじめとする様々な色彩が,一般的に使用されていること(別掲2の2)及び電磁波シールド材を接着するプリント配線板の電子回路等の隠蔽や,電磁波シールド材に付す文字の視認性向上など,商品の機能性向上等の観点から,黒色又はそれに近似する色彩が採択されていること(別掲2の1)から,たとえそれらの黒色に多少の色味の相違があるとしても本願商標の色彩と同系色の色彩がその指定商品の分野における多数の商品に使用されている実情があることには変わりなく,本願の指定商品の需要者においては,それらの使用に係る色彩が,視覚上,本願商標を構成する色彩と同系色の色彩と認識され得るものであって,本願商標を構成する色彩と区別し得るほどに別異のものとして認識されることはないとみるのが相当である。

ウ 請求人は,審尋での類似商品の例示について,(ア)同じ黒色のものは,商品自体がスマートフォン部品としてプリント配線板に接着されるものは他になく,原材料,厚み,市場流通経路,需要者層などが全く異なる商品ばかりであること,(イ)本願指定商品と同じ電磁波シールド材ではあっても,その材料・品質・用途・需要者の範囲が全く異なる商品であり,特に需要者の点においては,この商品を選択し購入するのは一般のスマートフォン・ユーザーであるが,本願の指定商品の需要者は高度な知識を有するスマートフォン・メーカー或いはスマートフォン組み立て業者という違いがあり,全く別異の商品であることから,本願商標の識別力を否定する根拠にはならない旨を主張する。

しかしながら,例示の商品については,いずれも電磁波シールド材の範ちゅうのものであることから本願商標の指定商品とその目的を共通にする商品であり,また,その需要者における購入の対象は,本願の指定商品のような限定的な用途の商品のみではなく,電磁波シールド材全体であるというべきであるから,本願商標が使用されている用途の商品についてのみの特殊的,限定的な取引の実情を考慮するべき事情は認められない。

エ したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。

3 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当するものであって,かつ,同条第2項の要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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