結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2019−900200(T2019−900200/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第6139698号商標(以下「本件商標」という。)は,「WiPhone」の文字を標準文字で表してなり,平成30年6月19日に登録出願,第9類「ヘッドホン,ワイヤレスヘッドホン,ワイヤレスヘッドホン用送信機,電気通信機械器具」及び第15類「電子ピアノ,電子ドラム,ピアノ(消音機能付きのものを含む),自動演奏ピアノ(消音機能付きのものを含む),エレキギター,楽器(電子式のものを含む),楽譜台,指揮棒,音さ,調律機」を指定商品として,同31年3月12日に登録査定され,同年4月19日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議申立ての理由として引用する登録商標(以下「引用商標」という。)は,以下のとおりであり,現に有効に存続しているものである。
登録第5147866号商標
商標の構成:iPhone(標準文字)
登録出願日:平成18年9月19日
設定登録日:平成20年7月4日
指定商品:第9類「ゲーム機能を有する携帯電話機,携帯電話,携帯電話の部品及び附属品,テレビ電話,インターネット接続機能・電子メール送受信機能・映像及びデータ情報送受信機能を有する携帯電話機」
申立人が,登録異議申立ての理由として引用する「iPhone」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)は,商品「スマートフォン」に使用し,需要者の間に広く認識されているとするものである。
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番を含む。)を提出した。
申立人は,パーソナルコンピュータ,スマートフォン等を製造販売し,音楽・映画配信サービス等を提供する,米国カリフォルニア州に本社を置く米国の法人である。申立人は,フォーブス社が実施した「世界の最も価値あるブランド」ランキングで首位を獲得するなど,高い知名度を誇り,当該ランキングにおいては,2011年(平成23年)から9年連続で首位の座を維持している(甲3)。
申立人が製造販売する製品のうち,2007年(平成19年)に発表した「iPhone」(使用商標)を付したスマートフォン(以下「申立人商品」という場合がある。)(甲4)は,申立人が製造販売する唯一のスマートフォンである。日本のスマホ市場において,申立人商品の人気は突出し,メーカー別出荷台数シェアにおいては,申立人が44%と,2012年(平成24年)から7年連続の首位を獲得しており(甲5,甲6),これはそのまま申立人商品のシェアといえる。
総務省の情報通信白書(平成29年度)によれば,2016年(平成28年)のインターネット利用者数は,1億84万人で人口普及率は83.5%であり(甲8),端末別インターネット利用率(平成30年度)は,スマートフォン(59.7%)が最も高く,パソコン(52.5%)の利用率を上回っている(甲9)。
また,NTTドコモが提供する「モバイル社会研究所」の「モバイル社会白書2019年版」によると,申立人商品のシェア率は,本願商標の出願及び登録時である2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)で,それぞれ50.6%及び47.4%と示されている(甲10)。そして,2018年(平成30年)のシェアが50%を超えているということは,申立人商品が日本で普及していることを示している。
加えて,インターネット記事や調査会社の調査で日本における申立人商品の高いシェア率が示され,申立人商品は,テレビでも継続的に広告されている(甲11〜甲14)。
以上から,我が国において,使用商標が申立人商品を示すものであることは顕著な事実である。
本件商標と引用商標とを比較すると,外観において,本件商標は,引用商標の文字を大文字・小文字の別までそっくりそのまま含んだ構成であって,外観上異なるのは「W」の文字の有無のみである。
申立人商品が,頭文字を小文字,2文字目を大文字とする「iPhone」であるということは,違和感を持って需要者の注意をひきつけ,多数の記事において紹介されており,広く認識されている(甲17)。
そして,本件商標は,大文字の「W」で始まり,次の文字は小文字「i」で表記されているにもかかわらず,「P」の文字を申立人商品と同じく大文字で表しており,この点は,看者の注意を強くひきつけるといえるから,両者は,外観上,相紛らわしい類似の商標といえる。
次に,本件商標から生じる自然な称呼は,「wine」(ワイン),「Wi−Fi」(ワイファイ)等より,「ワイフォン」と解される。一方,引用商標からは,「アイフォン」の称呼が生じる。
そうすると,称呼において,両者は,語頭の「ワ」と「ア」が異なるのみで,当該差異音は,母音同一の類似音であるため,称呼上,類似する。
観念について比較すると,本件商標は,「iPhone」の文字をそのまま構成要素に含むものであって,これより申立人を想起させる一方,引用商標は,申立人商品の名称そのものであるから,申立人を想起させる。
また,申立人は,使用商標のシリーズ名として,使用商標にアルファベット1字ないし2字を付加したり,数字とアルファベット1字を付加したりする態様を用いており(甲18),本件商標における「W」の文字もそのようなバージョンを表すにすぎないと解され,両者は,観念上,混同するおそれが大きい。
以上より,本件商標は,引用商標と外観,称呼,観念のいずれにおいても共通し,使用商標の著名性を考慮すれば,混同する可能性は明白であるため,両者が類似し,かつ,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と抵触しているので,商標法第4条第1項第11号に該当する。
本件商標は,辞書等に記載のない語であり,造語とみることができるが,その構成中に使用商標の文字を有している。
そして,「Wi」に続く「Phone」の頭文字を大文字とする必要は全くなく,使用商標に寄せているようにみえる。また,本件商標は,標準文字で表されたものであるが,登録商標は,色違い商標の使用をすることができるため,「W」と「iPhone」を色分けされた場合に使用商標の著名性を消す効果があるとは思えない。特に,本件商標の指定商品は,申立人の主力製品の一つである「スマートフォン」と類似する「携帯電話」を含む「電気通信機械器具」やスマートフォンのアクセサリー商品である「ヘッドホン」等であり,申立人商品と本件商標の指定商品とは,その需要者の範囲や販売部門等も一致する。
したがって,本件商標がその指定商品に使用された場合,かかる指定商品分野における需要者は,それらの商品が申立人の業務に係る商品ないし申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,出所について混同を生ずるおそれがあり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
使用商標は,申立人によって創作された造語であり,その構成中の2文字目の「P」のみ大文字で表したものであって,構成上顕著な特徴を有するといえるところ,本件商標は,その構成中に申立人の著名商標「iPhone」を大文字と小文字の違いも含めてそのまま有し,上記2で述べたとおり,申立人を想起させる相紛らわしい類似の商標である。
そして,使用商標は,申立人の商標として日本のみならず世界中で著名であることも考慮すれば,不正の目的をもって使用するものと認められるべきである。
さらに,本件商標は,日本国内で著名な使用商標と類似する商標であり,使用商標の出所表示機能を希釈化させるおそれが高いため,商標法第4条第1項第19号に該当する。
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,その指定商品中,第9類『全指定商品』について,商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を令和2年1月23日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
商標権者は,上記第4の取消理由の通知に対して,指定した期間内に何ら意見を述べていない。
(1)申立人が,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして示した使用商標は,上記第2の2のとおり「iPhone」の文字を書してなり,同人が商品「スマートフォン」について使用するものである。
(2)申立人商品は,2007年(平成19年)に発表され(甲4),また,我が国のスマホ市場における2018年(平成30年)のメーカー別出荷台数シェアにおいては,申立人が44%であり,2012年(平成24年)から7年連続の首位を獲得している(甲5,甲6)。
また,NTTドコモが提供する「モバイル社会研究所」の「モバイル社会白書2019年版」によると,申立人商品のシェア率は,本願商標の出願及び登録時である2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)で,それぞれ50.6%及び47.4%である(甲10)。
そして,すべての申立人商品には,使用商標が使用されている。
(3)そうすると,現在の我が国におけるスマートフォンの取引の実情からすれば,使用商標は,本件商標の登録出願の日前から,登録査定日はもとより現在においても継続して,申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであり,周知著名性の程度は,極めて高いものとみるのが相当である。
(1)本号の判断基準
本号における「混同を生ずるおそれ」の有無は,ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度,イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁判決 平成10年(行ヒ)第85号)。
以下,これらについて検討する。
(2)本件商標と使用商標の類似性の程度
本件商標は,上記第1のとおり「WiPhone」の文字を標準文字で表してなり,使用商標は,上記第2の2のとおり「iPhone」の文字を横書きしてなるものである。
そこで,両商標を比較すると,本件商標はその構成中に,大文字と小文字の違いも含め使用商標の構成文字「iPhone」の文字を有している。
そうすると,本件商標と使用商標は,相違するところが頭文字の「W」の文字の有無のみであって,その類似性の程度は決して低いものではない。
(3)使用商標の周知著名性及び独創性の程度
使用商標の周知著名性は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において極めて高いものである。
また,使用商標は造語であって,かつ,語頭の1文字のみを大文字で表す一般的な表し方と異なり,2文字目のみが大文字で表されていることから,その独創性の程度は高いものである。
(4)本件商標の指定商品中,第9類の指定商品と申立人商品との関連性の程度
本件商標の指定商品は,上記第1のとおりであり,その指定商品中の第9類「全指定商品」と申立人商品との関連性についてみると,スマートフォンとは,通話にとどまらず,ネット接続やカメラなど多彩な機能を備えた携帯電話(甲4)であるところ,電気通信機械器具の範ちゅうには電話機,携帯電話機等の通信機械器具が含まれている。
また,スマートフォンは,音楽や動画の再生機能も備えており,それらを楽しむためのさまざまな種類のヘッドホン等の附属品が製造販売されていることからすると,両者は,商品の生産又は販売部門,用途及び流通経路が共通する場合もあるから,関連性の程度が高いものである。
(5)取引者及び需要者の共通性等
本件商標の第9類の指定商品と申立人商品は,上記(4)のとおり,関連性の程度が高いものであるから,両商品の取引者及び需要者は共通することが少なくないものといえる。
(6)出所の混同のおそれ
上記(2)ないし(5)のとおり,本件商標はその構成中に使用商標の構成文字「iPhone」の文字を有し類似性の程度が決して低くはないこと,使用商標の周知著名性の程度は本件商標の登録出願時ないし登録査定時において極めて高いこと,使用商標の独創性の程度も高いこと,また,本件商標の指定商品中,第9類の指定商品と申立人商品との関連性の程度が高いこと,並びに取引者及び需要者が共通することが少なくないことに照らし,本件商標の指定商品中,第9類の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標は,その登録出願時及び登録査定時において,商標権者がこれをその指定商品中,第9類の指定商品に使用した場合,これに接する取引者及び需要者がその構成中の周知著名性が極めて高い「iPhone」の文字部分に着目し使用商標を想起,連想することが少なくないものと判断するのが相当である。
してみれば,本件商標は,その登録出願時及び登録査定時において,商標権者がこれをその指定商品中,第9類の指定商品に使用した場合,これに接する取引者及び需要者が使用商標を想起,連想し,当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品中,第9類「全指定商品」について,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(1)本件商標
本件商標は,上記第1のとおり,「WiPhone」の文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は,辞書等に掲載がないことから,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものというのが相当である。
そして,特定の意味を認識させない欧文字からなる商標を称呼するときは,我が国で親しまれている英語の読みにならって称呼することが多いことから,本件商標からは「ウィフォン」又は「ワイフォン」の称呼を生じるとみるのが自然である。
そうすると,本件商標は,「ウィフォン」又は「ワイフォン」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は,上記第2の1のとおり,「iPhone」の文字からなるところ,その構成文字から「アイフォン」の称呼を生じ,当該文字は,上記1のとおり申立人商品を表示するものとして広く知られていることから,「申立人のスマートフォン」の観念を生じるとみるのが相当である。
そうすると,引用商標は,「アイフォン」の称呼を生じ,「申立人のスマートフォン」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とを比較すると,両者は上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ,外観においては,語頭における「W」の文字の有無に差異を有するから,外観上,紛れるおそれはない。
次に,称呼においては,本件商標から生じる「ウィフォン」又は「ワイフォン」と引用商標から生じる「アイフォン」の称呼とは,語頭の「ウィ」と「アイ」の音又は「ワ」と「ア」の音との差異を有するところ,当該差異音が称呼の識別上重要な要素である語頭に位置することから,称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく,両者は,称呼上,互いに聞き誤るおそれのないものである。
また,観念においては,本件商標は特定の観念を生じないものであるのに対し,引用商標は「申立人のスマートフォン」の観念が生じるから,両者は,観念上,紛れるおそれはない。
そうすると,両商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても紛れるおそれのない,非類似の商標といわざるを得ない。
(4)まとめ
以上からすると,本件商標の第9類の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似の商品であるとしても,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念において類似する商標とはいえない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
上記1のとおり,使用商標は,申立人商品を表すものとして,需要者の間に広く知られているものである。
しかしながら,本件商標と引用商標とは,上記3のとおり,類似する商標とはいえないものであるから,引用商標と同一又は類似する使用商標と本件商標も,類似する商標とはいえない。
また,本件商標権者が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他の不正の目的を持って本件商標を出願し,登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
以上のとおり,本件商標の登録は,その指定商品中,第9類「全指定商品」について,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものとし,その余の指定商品については,取り消すべき理由がないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものとする。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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