sokuhyo

Trademark Appeal Case

著名商標「COCO」の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2018−900397(T2018−900397/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6086229号商標の指定商品中,第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6086229号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年11月2日に登録出願,第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む,第9類,第35類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同30年8月24日に登録査定され,同年10月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由に引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。

1 登録第2704127号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の態様:「COCO」

指定商品 :第3類「化粧品,香料類」

登録出願日:昭和61年11月27日

設定登録日:平成7年2月28日

書換登録日:平成17年6月8日

2 登録第520006号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の態様:別掲2のとおり

指定商品 :第3類「化粧品(化粧用染料及び化粧用顔料を除く。),香料類(薫料,香精,天然じゃ香,芳香油を除く。)」

登録出願日:昭和31年3月21日

設定登録日:昭和33年5月13日

書換登録日:平成20年11月26日

3 登録第931430号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の態様:「ココ」

指定商品 :第25類「履物」

登録出願日:昭和44年6月25日

設定登録日:昭和46年10月5日

書換登録日:平成13年6月20日

4 登録第2649672号商標(以下「引用商標4」という。)

商標の態様:「COCO」

指定商品 :第24類「織物,メリヤス生地,フェルト,不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布」

登録出願日:平成4年3月27日

設定登録日:平成6年4月28日

書換登録日:平成16年2月25日

5 登録第5808944号商標(以下「引用商標5」という。)

商標の態様:「COCO」標準文字

指定商品 :第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品」,第18類「携帯用化粧道具入れ」,第21類「コンパクト」,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」

登録出願日:平成27年4月3日

設定登録日:平成27年11月27日

6 登録第6169514号商標(以下「引用商標6」という。)

商標の態様:「COCO」標準文字

指定商品及び指定役務:第25類「被服,運動用特殊衣服,帽子,ワイシャツ類及びシャツ,皮革製被服,模造皮革製被服,手袋,スカーフ,ショール,ネクタイ,メリヤス下着,メリヤス靴下,靴下,ストッキング及びユニホーム用ストッキング,タイツ及びタイツストッキング,下着,アイマスク,制服及びユニフォーム,マネーベルト,ガーター,ストッキング留め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身飾品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

登録出願日:平成28年9月5日

設定登録日:令和元年8月9日

なお,引用商標1ないし引用商標6をまとめていうときは,以下「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由(要旨)

申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当し,同法第43条の2第1号により取り消されるべきある旨申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第220号証(枝番号を含む。なお,枝番号を有する証拠において,枝番号のすべてを引用する場合は,枝番号の記載を省略する。)を提出した。

1 引用商標「COCO」の著名性について

(1)申立人は,著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設され,香水等の化粧品のほか,高級婦人服,ハンドバッグ,ベルト,靴,時計,アクセサリー等の宝飾品などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするトータルファッションメーカーである。申立人の業務に係る商品は,極めて高い知名度を有しており,いずれも洗練された高品質の商品として知られ,申立人の長年の継続的な努力によって,世界の超一流品としての極めて高い信用が日本においても形成され,著名性を獲得している。

引用商標1及び引用商標2にかかる「COCO」又は「COCO/ココ」は,この申立人の創設者である「Gabrielle COCO CHANEL」の愛称又は通称に由来するものであり,申立人はこの引用商標1及び引用商標2を,申立人の商品「香水」等に使用している(甲6〜甲10,甲13〜甲132,甲151,甲153)。

(2)申立人による香水「COCO」又は「ココ」は,1984年(昭和59年)7月23日にフランスにおいて発表され(甲38,甲123),次いでヨーロッパにおいて同年9月に発売され(甲32),日本においてはその翌年の1985年(昭和60年)9月20日に発売されたものである(甲47〜甲94)。

この申立人の香水「COCO」又は「ココ」は,1985年(昭和60年)の日本での発売と前後して極めて多数の新聞,雑誌によって報道,紹介され,また各種雑誌に広告記事が掲載されている(甲28〜甲103)。

申立人の香水「COCO」又は「ココ」の日本における発売開始年度である1985年(昭和60年)9月から12月末日までの約3ヶ月間だけでも,2億5千万円余の販売実績を達成しており,その後も申立人は継続的に雑誌やテレビによる広告・宣伝を行っている。また,申立人は日本において,発売開始後も現在に至るまで約30年近くにわたり,該香水「COCO」又は「ココ」に化体した信用,評判,名声を落とさぬよう,1992年(平成4年)度には9億円以上,その後も毎年約4億円近くもの広告費をかけ,継続的に雑誌やテレビによる広告・宣伝を行い,努力を継続している(甲104〜甲112,甲152〜甲160,甲162〜甲164,甲171〜甲180,甲188〜甲202)。この申立人による不断の努力により引用商標1及び引用商標2が付された商品は継続して高い評価を得ており,世界の一流品を掲載する各種刊行物にも紹介されるに至っている(甲113〜甲131)。なお,リサーチ会社「INFOPLAN」による香水の著名度に関する調査においても,著名な香水のトップ3にはすべて申立人の香水がランクされており,この申立人の香水「COCO」又は「ココ」は,香水を使用する人の78%,香水を使用しない人でも60%,トータルで68%の人が知っており,申立人の信用の維持のための継続した努力の結果が現れているものである(甲132)。その他にも,ファッションに敏感な女性が愛読するファッションのオンライン雑誌「ELLE ONLINE」にて読者が「人生を変えたフレグランス」として「COCO」が選ばれる等(甲153),1985年(昭和60年)に日本で発売されて以降,現在に至るまで非常に長い間,日本の需要者の間で愛されて続けている香水である。

申立人は,引用商標1及び引用商標2にかかる「COCO」又は「ココ」を1984年(昭和59年)に発売後,その時代に合わせた「COCO」シリーズを展開している。例えば,2001年(平成13年)には,「COCO MADEMOISELLE」(ココマドモワゼル)を,2012年(平成24年)には,「COCO NOIR」(ココ ヌワール)を発売した。いずれも,その香水の香りやデザイン,CF等の広告宣伝でも注目を浴び,大ヒット商品となり,引用商標1及び引用商標2にかかる「COCO」と並んで,申立人の香水の人気商品のひとつとなっている(甲12,甲16〜甲18,甲20,甲151,甲152,甲154〜甲164)。

このことは,1973年(昭和48年)に始まったアメリカのフレグランス協会(Fragrance Foundation)がその年の最も優れた香水をニューヨーク市のジャーナリストや香水小売業者の投票により決定される「香水のアカデミー賞」ともいわれる「FIFI賞」(FIFIAWARD)において,その最高の賞として,発売から15年以上経った優れた香水から選ばれている「殿堂入り部門」(Fragrance Hall of Fame)に引用商標1及び引用商標2にかかる「COCO」の香水が1996年(平成8年)に選ばれていることからも,業界内で永年注目を浴び確かな評価を勝ち得ていることは明らかである(甲19,甲20,甲151)。また,「COCO MADEMOISELLE」についても,2002年度(平成14年度)の「FIFI賞ベストフレグランス(フランス)」に輝き,2012年度(平成24年度)の「メディア・キャンペーン部門」にも選ばれており(甲20,甲151,甲162),申立人の「COCO」シリーズが現在に至るまで,世界中で広く知られ,日本においてもその人気や評判が知れ渡っている。

このように,申立人は,引用商標1及び引用商標2にかかる「COCO」ブランドにつき,1984年(昭和59年)の発売から現在に至るまで,「COCO」に化体した信用,評判,名声等が損なわれぬよう,「COCO」の広告宣伝方法から「COCO」の新シリーズの発売等,不断の努力をし続けている。

(3)申立人は,「COCO」を冠した口紅や香水,ジュエリーや時計等について,2013年度(平成25年度)以降も毎年多額の広告宣伝費を投下して,引用商標にかかる「COCO」商品の販売促進活動・広告宣伝活動を行ってきた。例えば,2014年度(平成26年度)ないし2016年度(平成28年度)における広告宣伝費用は,日本国内において毎年4億円を超え,2017年度(平成29年度)には7億円近く,2018年度(平成30年度)には10億円に達している(甲211,甲212)。

また,2014年(平成26年)以降,テレビのコマーシャル(甲213)も実施した。2014年(平成26年)には「COCO MADEMOISELLE」(香水)について,2015年(平成27年)には「Rouge Coco」(口紅)について,2017年(平成29年)と2018年(平成30年)には「Coco Glos」(グロス)について,関東と関西,中京や福岡の主要チャンネルにおいて約2週間から3週間にわたって実施した。

屋外広告については,2013年(平成25年)東京の表参道ヒルズといったファッションの中心地で最も集客のある人気商業施設において口紅についての「Coco Shine」の画像を大々的に掲載した巨大な屋外看板(甲214)による広告宣伝活動,地下鉄のホームでの屋外看板(表参道駅においては2015年(平成27年)と2016年(平成28年),銀座駅においては2017年(平成29年)実施)や地下道におけるデジタル看板(表参道駅において2015年(平成27年)と2016年(平成28年),銀座駅や日比谷駅において2017年(平成29年)に実施),その周辺ビルヘの巨大な屋外看板(甲214の2)による広告宣伝活動も行っている。また,2013年(平成25年)ないし2018年(平成30年)にかけて,雑誌のオンラインサイト上のバナー広告の掲載(甲218)も多数回にわたって実施した。

イベントについては,引用商標にかかる「COCO」の宣伝のため,多様なイベントを行っている。例えば,2016年(平成28年)には,申立人のペンタイプのリップスティックの「COCO STYLO」を使ったカラーメイクと音楽を楽しめる「CHANEL ROUGE COCO ON TOUR」というイベントが東京の表参道で限定期間開催された(甲215)。2017年(平成29年)には,「COCO CAFE」が期間限定でオープンし,「ROUGE COCO GLOS1」の先行販売やプロのメイクアップアーティストによるメータアップサービスが行われた(甲216)。2018年(平成30年)には,東京の原宿において,「COCO GAME CENTER」という申立人初のゲームセンターが期間限定で開催され,実際にプレーできるゲームが置かれているほか,「ROUGE COCO」の口紅や「ROUGE COCO LIP BLUSH」のリップやチークに使えるメイクアップ化粧品の先行発売もされた(甲217)。

申立人は,SNSであるFacebookやInstagram,Youtubeに公式アカウントを開設して最新の情報を発信し,「COCO」にかかる商品の新作をリリースするときも,商品の写真やプロモーション動画等を配信した(甲219)。

さらに,「COCO」に係る香水や口紅といった商品が,「VoCE」,「GLOW」,「Hanako」等の多様なファッション雑誌やライフスタイル情報誌において極めて多数掲載されており,それらの商品には「COCO」が使用されている。2015年(平成27年)には158回(甲206),2016年(平成28年)には149回(甲207),2017年(平成29年)には142回(甲208),2018年(平成30年)には127回(甲209),2019年(平成31年)前半で81回(甲210)も「COCO」にかかる商品が紹介されている。

以上のことから,本件商標の出願時である2017年(平成29年)にはすでに,引用商標にかかる「COCO」又は「ココ」は,申立人の創設者であり著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」の愛称又は通称として広く知られており,また申立人が商品「香水」等に使用する商標として,広く知られ著名性を獲得し,現在に至っているというべきである。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標及び引用商標の構成

本件商標は,欧文字「Fashioncoco」をピンク色にて横書きにしてなる商標である。この本件商標の構成文字たる「Fashioncoco」は一連で特定の熟語的意味合いを持つものでなく,また構成文字である「Fashion」は,「流行のもの(商品)」の意味合いを有し,ファッション業界の取引業界においては,「ファッションバッグ」,「ファッショングッズ」,「ファッション・アクセサリー」,「その高いファッション性」,「○○(デザイナー名)のファッション」,「都会的ファッション」,「ファッション製品」等といったように一般的に認識されている語であり(甲146の1),「スマートフォン用のカバー・ケース」及び「被服・履物・かばん類・身の回り品・時計・眼鏡・化粧品」等の小売等役務との関係でみた場合には,何ら自他商品・役務を識別する機能は有しない(甲146の1〜甲146の4)。

本件商標の指定商品及び指定役務も,「スマートフォン用のカバー・ケース」や「被服,布製身の回り品,寝具類,装身具,かばん類」等といったファッションに関連する商品及び役務となっている。また,本件商標については,「FASHION」と「coco」の両語は,一体のものとしては熟語的意味合いを形成する程密接な関連をもった結びつきを有するものではない。加えて,本件商標の「coco」の文字部分については,上述したように著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」の愛称又は通称として広く知られ,また申立人の業務に係る商品「香水」等に使用される商標として著名であることから,その著名性をうけて,本件商標に接する需要者,取引者にとっては,おのずと「coco」の文字部分が強く記憶に残り,当該部分が,本件商標の要部として認識されるものである。

そうすると,本件商標の構成中「Fashion」の文字部分からは,自他商品等識別標識としての独立した称呼や観念は生じず,専らそれ以外の部分すなわち「coco」の文字部分が本件類否判断の対象となる要部というべきであり,当該要部から,「ココ」の称呼が生じるとみるべきである。

一方,引用商標1及び引用商標4ないし引用商標6は,欧文字の「COCO」を書してなり,引用商標2は上段に欧文字の「CoCo」を,下段に片仮名の「ココ」を二段に書してなる構成である。引用商標3は,片仮名の「ココ」の文字を横書きしてなる。よって,引用商標1ないし引用商標6からは自然に「COCO」あるいは「ココ」の文字部分から「ココ」との称呼も生ずるものである。

(2)本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標とを比較すると,各商標はそれぞれ上記の構成からなり,本件商標の「Fashion」の文字部分については,本件商標の「スマートフォン用のカバー・ケース」及び「被服・履物・かばん類・身の回り品・時計・眼鏡・化粧品」等の小売等役務の関連分野において識別力が弱く,「coco」が,本件商標の要部というべきである。また,本件商標の「coco」の文字部分は,上述したように著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」の愛称又は通称として広く知られた「COCO(ココ)」を想起させるものである。そして,引用商標「COCO」に申立人の業務に係る商品「香水」等に使用される商標として著名であることから,その著名性をうけて,本件商標においても「coco」の文字部分が強く印象に残り,その要部として認識されるというべきである。そうすると,本件商標の要部である「coco」の文字部分と引用商標からは,同一の「ココ」との称呼を生ずる。

以上より,本件商標の要部が「coco」であることから,本件商標と引用商標は,ともに著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」の愛称又は通称として広く知られた「COCO」を想起させるものとして共通する観念を有し,さらに互いに「ココ」の称呼を生ずることから,商標自体も類似するものであるといえ,また,その指定役務が引用商標の指定商品と類似する「被服・履物・かばん類・身の回り品・時計・眼鏡・化粧品」等の小売等役務を含むことから,互いに相紛れるおそれがあり類似する商標であるというべきである。

(3)小括

本件商標は,上記のとおり,その要部を「coco」とし,その出願日前の出願に係る申立人の引用商標に類似する商標であって,その引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。

したがって,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

本件商標は,申立人の著名商標である「COCO」と識別力が弱い語である「Fashion」を組み合わせた態様からなる商標であり,一見して「ファッション業界で世界的に著名な愛称『COCO』で親しまれているココ・シャネルのファッション」といった意味を想起させるものである。

したがって,著名な引用商標と類似する本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合には,あたかもシャネルが提案するファッションの商品であるかのごとく,その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがあると判断されるべきである。

著名な引用商標と相紛れるおそれのある本件商標が,当該著名表示に化体した高い名声及び信用にフリーライトすることによって,当該著名表示に化体した名声,信用,及び評判の稀釈化が引き起こされるというべきであり,この引用商標に対する希釈化を防止し,引用商標が有する自他商品識別機能を保護すべきであり,本条の趣旨から考えても本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。

以上のとおり,本件商標と引用商標との外観,称呼及び観念上の類似性,申立人の引用商標が周知著名性を獲得していること,申立人が最も高く著名性を獲得している化粧品分野の商品と密接に関する役務を本件商標が指定している点などの取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合,本件商標に接した取引者,需要者は,あたかも申立人又は申立人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく,役務の出所について混同を生ずるおそれがある。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 商標法第4条第1項第19号該当性について

(1)引用商標の著名性

上記1のとおり,引用商標は,申立人の業務及び申立人の業務に係る化粧品等について使用された結果,「COCO」のつづり及び「ココ」の称呼のもと,全国的に高い著名性を有する商標であり,引用商標は,商標法第4条第1項第19号に規定する「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するものである。

(2)本件商標と引用商標の類似性

本件商標と引用商標とは,上記2のとおり互いに類似する商標である。

(3)出願人の「不正の目的」

引用商標は,上記のように申立人による長年にわたる努力の積み重ねの結果,取引者,需要者間において広く知られ,高い名声・信用・評判を獲得するに至っており,本件商標の出願時である2017年(平成29年)には,引用商標はすでに申立人の業務に係る商品に使用される商標として極めて広く知られていた著名商標であり,「COCO(ココ)」といえば「申立人が製造販売する世界的に有名なココ・シャネルの商品」との観念が一義的に生じるものである。

一方,本件商標の要部は,かかる著名な引用商標の「COCO」と文字構成が同一であって,同一の称呼が生じ,指定役務が申立人の「COCO」が著名性を獲得した「化粧品」と極めて密接な関連を有する役務であることを考えると,商標権者が著名な引用商標を知らず,偶然に著名な引用商標と同一のつづり及び同一の称呼を生じる文字からなる本件商標を出願したとは考え難く,引用商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願,使用されているものと推認される。

したがって,商標権者が本件商標を不正の目的で使用するものであることは明らかであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。

第4 当審における取消理由の要旨

当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和2年1月24日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 商標権者の意見

上記第4の取消理由に対し,商標権者は,何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断

1 申立人商標の著名性について

(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,次の事実を認めることができる。

ア 申立人の業務に係る商品のうち「香水」について使用される「COCO」又は「ココ」の文字(これらを以下「申立人商標」という場合がある。)は,申立人の創設者である「ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)」の愛称に由来する(甲23,甲24,甲26,甲36,甲113等)。

イ 「COCO」又は「ココ」の文字を付した申立人の業務に係る香水(以下「申立人商品」という。)は,1984年(昭和59年)にフランスで,同年9月にヨーロッパで発売され(甲17,甲18,甲32等),かかる発売について我が国の新聞やファッション雑誌等で紹介された(甲32,甲35〜甲40等)。

ウ 我が国において,申立人商品は1985年(昭和60年)9月に発売が開始され,その発売開始の前後を通して,かかる発売に関する記事が多数の新聞やファッション雑誌等に掲載された(甲41〜甲94)。

エ 「COCO」の文字を表示した申立人商品の広告が現在まで多数のファッション雑誌等に掲載された(甲95〜甲109,甲112,甲115,甲118,甲119,甲122〜甲131等)。

オ その後,申立人は,申立人商品のシリーズ商品として,2001年(平成13年)に「COCO MADEMOISELLE」の欧文字よりなる商標を付した香水を,2012年(平成24年)に「COCO NOIR」の欧文字よりなる商標を付した香水を,それぞれ発売し,当該シリーズ商品の広告が多数のファッション雑誌等に掲載された(甲172〜甲175,甲177,甲195,甲206の1・5,甲207の29,甲208の9,甲209の7〜甲209の12・14・15・17,甲209の19〜24・26・27・29〜31・104等)。

(2)以上の認定した事実によれば,申立人商品は1985年(昭和60年)9月から現在に至るまで,発売に関する記事や広告が我が国の多数の新聞や雑誌等に掲載され,シリーズ商品も発売されていることから,申立人商標は,申立人の業務に係る商品「香水」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「香水」を取り扱う分野の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。

しかしながら,「COCO」又は「ココ」の文字は,申立人が提供した証拠によれば,主として「香水」に使用されているものであって,それ以外の商品について広く使用されている事実は見いだせない。

そうすると,申立人商標の周知性は,「香水」を取り扱う分野の商品である「化粧品」の範囲にとどまるものというのが相当であり,その化粧品の分野を超えて,本件登録異議の申立てに係る指定商品又は指定役務の分野の需要者にまで,広く認識されているとは認めがたいものである。

以上のことを踏まえると,「COCO」並びに「Co Co」及び「ココ」の文字からなり,その指定商品中に「香水」を取り扱う分野の商品である「化粧品」を含むものである引用商標1及び引用商標2も,申立人商標と同様に,申立人の業務に係る「香水」及びこれを取り扱う「化粧品」の分野における需要者の間に,広く認識されていたと認められるものの,本件登録異議の申立てに係る「化粧品」以外の指定商品及び指定役務の分野の需要者においてまで,広く認識されているとは認められない。

また,引用商標3ないし引用商標6は,それらの指定商品及び指定役務との関係において,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠の提出はないから,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているとは認められない。

2 商標の類否判断

商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号,同43年2月27日第三小法廷判決)。

そして,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれぞれ分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号,同38年12月5日第一小法廷判決,最高裁平成3年(行ツ)第103号,同5年9月10日第二小法廷判決,最高裁平成19年(行ヒ)第223号,同20年9月8日第二小法廷判決)。

以上を踏まえて,本件商標と引用商標との類否について判断する。

3 商標法第4条第1項第11号該当性

(1)本件商標

本件商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,その指定役務中に第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含むものである。

そして,本件商標は,その構成中に「coco」の文字を有するところ,当該「coco」の文字部分は,申立人商標「COCO」と同一の文字のつづりであること,「ココ」の称呼も同一であること,上記1のとおり申立人商標「COCO」は,「香水」を取り扱う分野である「化粧品」の範囲の需要者の間に広く認識されていること,本件登録異議の申立てに係る指定役務中,第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に含まれる「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の需要者と商品「化粧品」の需要者が一致すると認められることを併せ考慮すれば,これをその指定役務中,第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について使用するときは,その構成文字「Fashioncoco」が外観上一体的に表されているとしても,その構成中の「coco」の文字部分からは,申立人の業務に係る商品「香水」を表示するブランドとして観念され,また,当該文字部分が,取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと判断するのが相当である。

そうすると,本件商標は,その構成中の「coco」の文字部分を要部として抽出し,当該文字部分だけを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

してみれば,本件商標は,その構成文字全体から「ファッションココ」の称呼を生じるほか,その構成中,強く支配的な印象を与える「coco」の文字部分から,単に「ココ」の称呼をも生じるものであって,申立人の業務に係る商品「香水」を表示するブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生じるものである。

(2)引用商標1及び引用商標2(申立人商標)

引用商標1は上記第2の1のとおり「COCO」の文字を横書きしてなるものであり,引用商標2は別掲2のとおり「Co Co」及び「コ コ」の文字を上下2段に書してなるものである。

そして,引用商標1を構成する「COCO」の文字並びに引用商標2を構成する「Co Co」及び「コ コ」の文字は,申立人の業務に係る商品「香水」を表示するものとして,我が国の「香水」を取り扱う分野である「化粧品」の取引者,需要者の間に広く認識されている申立人商標と同一又は類似の商標であるといい得るものである。

そうすると,引用商標1及び引用商標2からは,その構成文字に相応し「ココ」の称呼を生じ,申立人の業務に係る商品「香水」を表示するブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否

本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否を検討すると,まず,上記(1)のとおり,強く支配的な印象を与える本件商標の要部「coco」の文字部分と引用商標1及び引用商標2との比較において,両者は外観上,大文字と小文字の違い,色彩の有無,片仮名の有無などの差異を有するものの,構成中の「coco」,「COCO」及び「CoCo」の文字のつづりを共通にするものである。

また,両者は「ココ」の称呼及び申立人の業務に係る商品「香水」を表示するブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を共通にするものである。

そうすると,両者は,外観において「coco」,「COCO」及び「CoCo」の文字のつづりを共通にし,称呼及び観念も共通にするものであるから,その外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,全体的に考察すれば,両者は,商品及び役務の出所について誤認混同を生じるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。

してみれば,本件商標と引用商標1及び引用商標2とは,類似の商標といわなければならない。

(4)本件商標の指定役務と引用商標1及び引用商標2の指定商品との類否

本件登録異議の申立てに係る指定役務中,第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に含まれる「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標1の指定商品中,第3類「化粧品」及び引用商標2の指定商品中,第3類「化粧品(化粧用染料及び化粧用顔料を除く。)」とは,提供者と販売者,提供場所と販売場所が共通する場合が少なくなく,かつ,両者の需要者は共通するといえるから,両者に同一又は類似の商標が使用された場合,それらの出所について混同を生じるおそれのある,互いに類似するものと判断するのが相当である。

(5)小括

上記(3)のとおり本件商標は引用商標1及び引用商標2と類似する商標であって,上記(4)のとおり本件登録異議の申立てに係る指定役務に含まれる「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は,引用商標1及び引用商標2の指定商品中,「化粧品」と類似するものである。

そうすると,本件商標は,その登録異議の申立てに係る指定役務中,第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について,商標法第4条第1項第11号に該当するものといわなければならない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 商標法第4条第1項第15号該当性

(1)引用商標3ないし引用商標6の著名性について

上記1のとおり,引用商標3ないし引用商標6は,それらの指定商品及び指定役務との関係において,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。

(2)本件商標と引用商標3ないし引用商標6との類似性について

ア 本件商標

本件商標は,別掲1のとおり,ピンク色の着色された「Fashioncoco」の欧文字を筆記体のように横書きしてなるところ,全体をピンク色に着色され語頭の「F」の文字は大文字で残りの文字は小文字で書されており,同一の書体,等間隔に表されていることから,全体的にまとまりがよく一連一体に書されているものである。

そして,当該文字は,辞書等に載録されていない語であるから,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものとみるのが相当である。

また,特定の意味を認識させない欧文字を称呼するときは,我が国で親しまれている英語の読みに倣って称呼することが多いことから,本件商標からは「ファッションココ」の称呼を生じるとみるのが自然である。

したがって,本件商標は,「ファッションココ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。

イ 引用商標3ないし引用商標6

引用商標3は,「ココ」の文字を書してなるものであり,引用商標4は,「COCO」の文字を横書きしてなり,引用商標5及び引用商標6は,「COCO」の文字を標準文字で表してなるものである。

そして,その構成文字に相応して,引用商標3ないし引用商標6からは,それぞれ「ココ」の称呼を生じるものであり,引用商標3ないし引用商標6は,上記1のとおり,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものして需要者の間に広く認識されているものではなく,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するブランドとしての観念は生じないから,特定の観念を生じないものである。

ウ 本件商標と引用商標3ないし引用商標6との類似性

本件商標と引用商標3ないし引用商標6との類否を検討すると,まず,外観においては,それぞれ上記ア及びイのとおり,色彩の有無及び「Fashion」の文字の有無の差異を有するから,外観上,判然と区別できるものである。

次に,称呼においては,本件商標は,「ファッションココ」の称呼を生じ,引用商標は,「ココ」の称呼を生じるから,「ファッション」の称呼の有無の差異や音数の相違により語調語感が異なり,称呼上,明瞭に聴別できるものである。

さらに,観念においては,本件商標は,特定の観念を生じないものであり,引用商標3ないし引用商標6も,特定の観念を生じないものであるから,観念上,両者を比較することはできない。

そうすると,両者は,外観において判然と区別できるものであり,称呼において明瞭に聴別できるものであり,観念においては比較できないものであるから,これらを全体的に考察すれば,両者は,外観及び称呼の点において紛れるおそれのない非類似の商標であり,別異の商標であるから,類似性は低いものである。

(3)出所の混同のおそれ

上記(1)のとおり,引用商標3ないし引用商標6は,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていると認めることはできないものであり,上記(2)のとおり,本件商標と引用商標3ないし引用商標6とは,相紛れるおそれのない非類似の商標であるから類似性は低いものであって,別異の商標であるから,本件商標は,これに接する取引者,需要者が,引用商標3ないし引用商標6を連想又は想起するものということはできない。

してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品又は指定役務について使用しても,取引者,需要者をして引用商標3ないし引用商標6を連想又は想起させることはなく,その商品又は役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その出所について混同を生ずるおそれはない。

その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

5 商標法第4条第1項第19号該当性

本号は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。

そして,上記4(1)のとおり,引用商標3ないし引用商標6は,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。

また,上記4(2)のとおり,本件商標と引用商標3ないし引用商標6とは,外観及び称呼の点において紛れるおそれのない非類似の商標であり,別異の商標である。

さらに,本件商標が不正の利益を得る目的,他人たる申立人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足る具体的な証拠はないものであるから,本件商標は,申立人商標について獲得した業務上の信用及び顧客吸引力にただ乗りするものとはいえないし,また,申立人商標の出所表示機能を希釈化したり,その名声を毀損したりするものでもない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。

6 むすび

以上のとおり,本件商標は,その指定役務中, 第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」については,商標法第4条第1項第11号に該当し,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものと認められるから,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。

しかしながら,上記記載の指定役務以外の指定商品及び指定役務については,取り消す理由がないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。

よって,結論のとおり決定する。

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