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Trademark Appeal Case

妻飾りと位置商標の識別性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−5033(T2018−5033/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書記載のとおりに記載して、第36類「建物の管理,建物の売買」を指定役務として、平成27年4月1日に位置商標として登録出願されたものである。

その後、原審における平成28年3月9日受付の手続補正書及び当審における令和元年9月10日受付の手続補正書により、その商標の詳細な説明は、別掲2のとおりに補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)

本願商標は、商標記載欄の記載、位置商標である旨の記載及び商標の詳細な説明の記載から特定される位置商標であるところ、建物の中央上方部は、建物の切妻や入母屋の側面の三角形の壁面である「妻」であり、その部分の装飾を「妻飾り」と称しており、本願商標の指定役務の分野において、出願人以外の者が、役務の提供の用に供する物である建物の妻の部分に妻飾りを施していたり、様々な形の妻飾りが製造又は販売されている事実がある。

そうすると、本願商標を構成する図形を、本願商標のとおりの位置に特定して、その指定役務の提供の用に供する物である建物の正面中央上方部に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に美感を発揮する等のために装飾が施された妻飾りの一形態を表示するにすぎないものと認識するにとどまり、本願商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

3 当審における審尋及び証拠調べ通知書

(1)本願商標の商標見本に表された標章の構成及び態様は、商標の詳細な説明の記載が表す標章の構成及び態様と一致しておらず、本願商標を特定したものと認めることができないことから、商標法第5条第5項の要件を具備しない旨を請求人に通知した(令和元年8月1日付け審尋)。

(2)当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲3に掲げる事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に通知し(令和元年8月1日付け証拠調べ通知書)、意見を求めた。

4 審尋及び証拠調べ通知に対する請求人の対応及び意見

(1)本願商標の「商標の詳細な説明」を、令和元年9月10日受付の手続補正書により、別掲2のとおりの記載に補正した。

(2)ア 本願商標は、その図形が一見して出所識別力を有する標章であること、役務の提供の用に供する物や、住宅展示場、管理物件などの建物の様々な位置に商標を付すことは一般的であることを踏まえると、商標としての機能を果たし得る。

また、自他役務識別力を有する本願商標に係る図形について、位置が特定されると、全体として商標としての機能を果たし得ないと解釈する合理的な理由が不明である。

イ 証拠調べ通知が掲げる事例は、建物に様々な装飾が施されているとしても、それら装飾は自他役務識別標識として使用されているのか、そうでないのか必ずしも明確ではなく、たとえ装飾として標章が使用されているとしても、これら事例が本願商標に係る識別性の有無とどのように具体的に結びつくか不明である。

5 当審の判断

(1)商標法第5条第5項について

本願商標に係る「商標の詳細な説明」の記載は、当審における補正の結果、商標登録を受けようとする商標を特定するものと認められるから、商標法第5条第5項の要件を具備する。

(2)商標法第3条第1項第6号該当性について

ア 本願商標の識別性

(ア)本願商標は、別掲1及び2のとおり、(a)建物外壁の正面の中央上方部の位置に、(b)十字状の図形を表してなる位置商標である。

そして、本願商標の図形は、建物外壁の妻(切妻造や入母屋造の屋根側面の三角形の壁面。「建築用語事典 第2版」技報堂出版)の位置に施されているもので、長い縦線と短い横線を十字状に組み合わせた構成の妻飾り(切妻や入母屋の妻の三角形の部分の装飾。別掲3(2)参照)との印象を与えるものである。

(イ)また、建物の外観デザインは、屋根や壁の形状、色彩、素材、窓やドアの配置などに加えて、妻飾りを含む建物の多様な装飾や模様を組み合わせて構成されるもので、別掲3(1)のとおり、建物外壁の妻に、本願商標と同様の模様又は装飾(複数の線を十字状に組み合わせたもの)を含む、多様なデザイン要素を施した建物が見られるから、本願商標に係る図形は、建物外壁のデザイン要素としては、ありふれた形状にすぎないといえる。

(ウ)そうすると、本願商標は、その構成及び位置に鑑みれば、建物外壁の装飾又は模様として施された妻飾りの一種であるとの印象を与えるもので、その指定役務に係る需要者をして、建物の美感に資することを目的として採用された模様又は形状と認識されるにすぎず、何人かの業務に係る自他役務の出所識別標識であると認識されるものではない。

イ 請求人の主張に対し

請求人の主張は、以下のとおり、いずれも採択できない。

なお、請求人は、本願商標について使用による識別性獲得の主張及び立証はしていない。

(ア)請求人は、本願商標は、その図形が独創的、個性的で自他役務の出所識別標識として商標登録もされているから、その位置が特定されると商標としての機能を失うと解釈する合理的な理由が不明である旨を主張する。

しかしながら、本願商標は図形とその図形を付す位置とを組み合わせた位置商標であるから、当該図形を付す位置(建物外壁)を前提として、その指定役務に係る需要者を基準として、出所識別標識として認識されるか否かを検討、判断すべきであるところ、本願商標は、上記ア(ウ)のとおり、その構成及び位置に鑑みれば、建物外壁に施された装飾又は模様(妻飾り)との印象を与えるもので、建物の美感に資することを目的として採用された模様又は形状と認識されるにすぎないというべきである。

(イ)請求人は、本願商標は、図形からなる商標であって、立体的形状からなる商標ではないから、平面的なものと理解せざるを得ず、平面的な妻飾りが世の中に存在しない以上は需要者も妻飾りとして認識することはなく、請求人も本願商標を自他役務識別標識として使用している(甲2)から、本願商標を構成する図形は妻飾りではない旨を主張する。

しかしながら、本願商標は、建物外壁の模様又は装飾(妻飾り)との印象を与えるもので、建物外壁のデザイン要素としてはありふれた形状にすぎないから、その表示手法(立体的か平面的か)に関わらず、建物外壁に施された装飾又は模様との印象を与えるにすぎない。

なお、本願商標は、「商標の詳細な説明」において「図形」と特定されているものの、別掲1及び別掲2の記載全体を参酌すれば、それを建物外壁の構造物(妻飾り)の輪郭やシルエットによって描写する使用態様も特段排除されておらず、現に、上記ア(イ)のとおり、建物の外観デザインにおいてそのような描写手法は一般的に採択されており、請求人も本願商標について同様の描写手法を採択しているものと考えられる(甲2)から、本願商標の使用態様としては、建物外壁の構造物により描写することが想定されていると理解する方が合理的である。

(ウ)請求人は、役務の提供の用に供する建物(営業所、販売物件、住宅展示場など)に商標を付して役務を提供することは普通であって、商標の付される位置が建物の妻の部分だからといって、自他役務の識別標識としての機能を発揮しないというべき理由はない旨を主張する。

しかしながら、本願商標は、建物外壁の模様又は装飾(妻飾り)との印象を与えるもので、建物外壁のデザイン要素としてはありふれた形状にすぎないから、その建物の用途に関わらず、一般的には建物外壁に施された装飾又は模様と認識されるにすぎない。

(エ)請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も登録されるべきである旨を主張する。

しかしながら、商標の登録適格性は各商標の個別の事情に基づき独立して判断されるものであり、また、請求人の援用する登録例は、本願商標とは、商標の構成態様、位置、指定役務等が相違するため、事案を異にするから、本願商標に係る審理判断に影響しない。

(オ)請求人は、当審が証拠調べ通知で掲げた事例は、建物に様々な装飾が施されているとしても、それら装飾は自他役務識別標識として使用されているのか、そうでないのか必ずしも明確ではなく、たとえ装飾として標章が使用されているとしても、これらが本願商標に係る識別性の有無とどのように具体的に結びつくかは不明である旨を主張する。

しかしながら、本願商標と同様の位置(建物の妻)に模様又は装飾を施した建物が多数あるという事実は、本願商標に接する需要者において、建物外壁の模様又は装飾(妻飾り)はデザイン要素として通常は把握されるというべきで、出所識別標識であるか否かは直ちに判読できないことを示しているところ、本件商標を構成する図形の形状は、建物外壁のデザイン要素としてはありふれた形状にすぎないから、需要者は本願商標について出所識別標識であることを認識する契機がなく、出所識別標識としては事実上機能しないというのが相当である。

ウ 小括

以上のとおり、本願商標は、その図形の構成及び位置を踏まえると、その指定役務との関係において、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる標章ではない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(3)まとめ

本願商標は、商標法第5条第5項の要件を具備するものの、同法第3条第1項第6号に該当するから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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