Trademark Appeal Case
建物装飾と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−5038(T2018−5038/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書記載のとおりに記載して、第36類「建物の管理,建物の売買」を指定役務として、平成27年4月1日に位置商標として登録出願されたものである。
その後、原審における平成28年3月16日受付の手続補正書により、その商標の詳細な説明は、別掲2のとおりに補正された。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、商標記載欄の記載、位置商標である旨の記載及び商標の詳細な説明の記載から特定される位置商標であるところ、役務の提供の用に供する物においては、美感を発揮させるため、または需要者の注意を引くために、装飾的な種々の文字、図形及び色彩が使用されている実情があるところ、本願商標の指定役務の分野において、出願人以外の者が、役務の提供の用に供する物である建物について、建物の正面中央ほぼ全面の部分に図形を施している事実がある。
そうすると、本願商標を構成する図形を、本願商標のとおりの位置に特定して、その指定役務の提供の用に供する物である建物の正面中央ほぼ全面の部分に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に美感を発揮する等のために施された装飾又は模様の一類型として認識するにとどまり、本願商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
3 当審における証拠調べ通知書
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲3に掲げる事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に通知し(令和元年8月28日付け証拠調べ通知書)、意見を求めた。
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
(1)本願商標は、その図形が一種独特の幾何図形を形成していること、役務の提供の用に供する物や、住宅展示場、管理物件などの建物の様々な位置に商標を付すことは一般的であることを踏まえると、商標としての機能を果たし得る。
また、自他役務識別力を有する本願商標に係る図形について、位置が特定されると、全体として商標としての機能を果たし得ないと解釈する合理的な理由が不明である。
(2)証拠調べ通知が掲げる事例は、建物の立体的形状と把握されるもので、これら事例が本願商標に係る識別性の有無とどのように具体的に結びつくか不明である。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
ア 本願商標の識別性
(ア)本願商標は、別掲1及び2のとおり、(a)建物外壁の正面ほぼ全面の位置に、(b)肉太のP及びFの字状の形状を組み合わせた図形を表してなる位置商標である。
そして、本願商標の図形は、建物外壁と一体的に構成されており、肉太の柱状の線により構成される「P」及び「F」の字状の模様又は装飾を組み合わせて表してなるとの印象を与えるものである。
(イ)また、建物の外観デザインは、屋根や壁の形状、色彩、素材、窓やドアの配置などを組み合わせて構成されるもので、別掲3のとおり、建物外壁の構造物(外壁やバルコニー、開口部の枠など)を組み合わせることで、本願商標と同様の模様又は装飾を含む、欧文字(「P」及び「F」、「U」及び「W」、「C」及び「A」、「A」及び「m」、「I」及び「n」、「O」及び「F」など)をモチーフにしたような多様なデザイン要素を施した建物が見られるから、本願商標に係る図形は、建物外壁のデザイン要素の域を脱しない形状にすぎないといえる。
(ウ)そうすると、本願商標は、その構成及び位置に鑑みれば、建物外壁と一体的に構成された装飾又は模様(建物外壁の構造物を組み合わせた模様を含む。)であるとの印象を与えるもので、その指定役務に係る需要者をして、建物の美感に資することを目的として採用された模様又は形状(建物外壁に構造物を設置することで必然的に生じた模様又は形状を含む。)と認識されるにすぎず、何人かの業務に係る自他役務の出所識別標識であると認識されるものではない。
イ 請求人の主張に対し
請求人の主張は、以下のとおり、いずれも採択できない。
なお、請求人は、本願商標について使用による識別性獲得の主張及び立証はしていない。
(ア)請求人は、本願商標は、その図形がモノグラムとして一種独特の幾何図形を形成しており、「P」及び「F」を重ね合わせた図形は商標登録例が多数あるから、その位置が特定されると商標としての機能を失うと解釈する合理的な理由が不明である旨を主張する。
しかしながら、本願商標は図形とその図形を付す位置とを組み合わせた位置商標であるから、当該図形を付す位置(建物外壁)を前提として、その指定役務に係る需要者を基準として、出所識別標識として認識されるか否かを検討、判断すべきであるところ、本願商標は、上記ア(ウ)のとおり、その構成及び位置に鑑みれば、建物外壁に施された装飾又は模様との印象を与えるもので、建物の美感に資することを目的として採用された模様又は形状と認識されるにすぎないというべきである。
(イ)請求人は、本願商標は、図形からなる商標であって、立体的形状からなる商標ではないから、平面的な特徴的な図形というべきであって、それが建物の正面ほぼ全面の部分に付されたとしても、単に美感を発揮するために施された装飾又は模様として需要者に認識されるものではない旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、建物外壁と一体的に構成されており、建物外壁のデザイン要素の域を脱しない形状にすぎないから、その表示手法(立体的か平面的か)に関わらず、建物外壁に施された装飾又は模様との印象を与えるにすぎない。
なお、本願商標は、「商標の詳細な説明」において「図形」と特定されているものの、別掲1及び別掲2の記載全体を参酌すれば、それを建物外壁の形状や構造物の輪郭やシルエットによって描写する使用態様も特段排除されておらず、現に、上記ア(イ)のとおり、建物の外観デザインにおいてそのような描写手法は一般的に採択されていることもあるから、本願商標の使用態様としては、建物外壁や構造物を組み合わせて描写することが想定されていると理解する方が合理的である。
(ウ)請求人は、役務の提供の用に供する建物(営業所、販売物件、住宅展示場など)に商標を付して役務を提供することは普通であって、商標の付される位置が建物の正面ほぼ全面の部分だからといって、自他役務の識別標識としての機能を発揮しないというべき理由はない旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、建物外壁と一体的に構成されており、建物外壁のデザイン要素の域を脱しない形状にすぎないから、その建物の用途に関わらず、一般的には建物外壁に施された装飾又は模様であるとの印象を与えるにすぎない。
なお、本願商標の指定役務には、建物を販売物件として取引対象とする役務も含まれるところ、取引後には顧客の所有物となるべき販売物件の外壁に、本願商標のように壁面と一体的な構成で、事業者に係る商標を顕著に表すような広告的な使用態様自体が想定し難い。
(エ)請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も登録されるべきである旨を主張する。
しかしながら、商標の登録適格性は各商標の個別の事情に基づき独立して判断されるものであり、また、請求人の援用する登録例は、本願商標とは、商標の構成態様、位置、指定役務等が相違するため、事案を異にするから、本願商標に係る審理判断に影響しない。
(オ)請求人は、当審が証拠調べ通知で掲げた事例は、建物の立体的形状と把握されるもので、これらが本願商標に係る識別性の有無とどのように具体的に結びつくかは不明である旨を主張する。
しかしながら、本願商標の図形と同様の模様又は装飾を立体的な手法で施した建物が多数あるという事実は、当該図形が建物外壁のデザイン要素の域を脱しない形状にすぎないことを示しているから、本願商標のような模様又は装飾は請求人固有のものではなく、出所識別標識としては事実上機能し得ないことが分かる。
さらに、本願商標が登録された場合の排他的独占権の範囲は、同様の模様又は装飾を立体的な手法で施すような使用態様にも及び得るから、本願商標の図形と同様の模様又は装飾を立体的な手法で施した建物があるという事実は、本願商標が登録された場合、他の事業者による建物外壁のデザインにおける選択肢を過度に制限することにもつながるから、本願商標の独占適応性にも問題があることを示している。
ウ 小括
以上のとおり、本願商標は、その図形の構成及び位置を踏まえると、その指定役務との関係において、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる標章ではない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)結論
本願商標は、同法第3条第1項第6号に該当するから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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