Trademark Appeal Case
頭部図形の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2019−10748(T2019−10748/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第3類「化粧品,せっけん類」及び第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を指定商品として、平成29年7月25日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、これは、人間の頭部を真上から描いた図形からなるものと容易に認識されるものである。
そして、育毛剤等の頭髪に関する商品を取り扱う分野においては、商品使用前の頭髪の状態を表すものとして、人間の頭部を真上から描いた図形や写真が一般的に使用されており、薄毛、脱毛の治療用の商品あるいは白髪染め用の商品の説明書やパッケージ等にそのような図形や写真が使用されている実情もある。
また、本願商標は、全体として、独創的な構成からなるとはいえず、同分野において使用されている頭髪の状態を表す図形の一種を表示したものとみるのが相当である。
そうすると、本願商標を、その指定商品について使用したときは、これに接する需要者は、単に「薄毛、脱毛の治療用の商品」、「頭髪の状態を表す図形の一種」であると認識するにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識し得ないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
3 当審における審尋
当審において、審判長は、請求人に対し、令和2年3月18日付けで、別掲2に係る証拠を示した上で、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する旨の審尋をし、期間を指定して、これに対する回答を求めた。
4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
前記3の審尋に対し、請求人は、令和2年4月22日付け回答書を提出し、要旨以下のように主張した。
(1)確かに、第5類の「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」の商品分野においては、審尋において引用された例のように、商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者の説明を目的として、人間の頭部を模した複数の図形が他者により使用されている例は見受けられるが、そのいずれもが、単に人間の頭部を模した図形のみが単独で使用されてはおらず、例えば、「この医薬品の対象となる壮年性脱毛症 ミノキシジルを5%配合した製剤は、以下のようなパターンの脱毛あるいは薄毛に効果があります。」といった説明書きが併記されており、人間の頭部を模した図形と、この説明書きとが一体をなして、初めて、当該図形が、商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者を説明するためのものであるとの理解が可能になる。かかる説明書きなく、単に人間の頭部を模した図形それのみをもっては、そこから、これが商品の効能や効果又は対象者を示すものであるとの理解に直接至ることは不可能である。
(2)人間の頭部の表現には、数多の表現手法があるところ、本願商標は、人間の頭部をモチーフとしながらも、頭部の形状を大幅にデフォルメした外観上特徴的な構成からなる図形商標であり、また、本願商標は、審尋において引用された他者の使用に係る人間の頭部を模した複数の図形とは、明確に区別が可能な別異の構成からなるため、たとえ引用に係る他者の図形の使用例があろうとも、需要者が、本願商標についても、これを直ちに商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者の説明であると認識すると考えるのは早計にすぎる。
(3)審尋において引用された、他者が販売する育毛を促すヘアトニック等のウェブサイトを見ても、本願商標と類似する図形どころか、人間の頭部を模した図形すら使用されていないものが大半を占めている。これらの引用例が示すのは、単に、市場において、頭皮や毛髪をケアするヘアトニックやシャンプーが販売されているという事実にすぎず、引用された図形についても、本願商標とは構成を異にする別異の図形であるから、これらの引用例は、本願商標が本願指定商品中、第3類の指定商品との関係で識別力を有しないことの裏付けとはなり得ない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第3類「化粧品,せっけん類」及び第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を指定商品とするものである。
ア 本願の指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」の分野においては、商品の用途や使用方法等を説明する図形が、商品の包装箱、容器、添付文書や商品のウェブサイト等に一般的に用いられているところ、別掲2(1)のとおり、発毛剤について、商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者を説明するために、頭頂が薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部を上から描いた図形からなる本願商標と略同一又は類似の図形が、商品の包装箱、添付文書、商品のウェブサイト等に使用されている事実が存在するほか、頭頂が薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部を前方斜め上から描いた図形が使用されている事実もある。
そうすると、本願商標をその指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について使用しても、これに接する取引者、需要者は、本願商標を、当該商品の対象者を説明するための記述的な表示、すなわち、当該商品の対象者である薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型として認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。
イ 本願の指定商品中、第3類「化粧品,せっけん類」の分野においては、別掲2(2)及び(3)のとおり、ヘアトニックやシャンプー等において、薄毛又は脱毛を予防し、発毛や育毛を促進すること及び頭皮や毛髪をケアすることを目的とした商品が販売されている事実が存在するところ、その中には、商品の宣伝などをするに当たり、頭頂が薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部を上から描いた図形を使用している事実もある。
そして、上記商品と発毛剤とは、化粧品、せっけん類か、薬剤かという違いはあっても、いずれも脱毛を予防し髪を育てることを目的とすることにおいて関連のある商品であるともいえ、需要者は一般の消費者であって、その製造販売者も共通する場合があるといえることから、商品の取引者及び需要者を共通にすることも少なくないといえるものである。
そうすると、薬剤(発毛剤)と需要者の共通性が高い化粧品やせっけん類の分野において、その商品の用途等を説明するために人間の頭部を描いた図形が使用されており、さらに、発毛剤について、本願商標と略同一又は類似の図形が一般的に使用されている事実に照らすと、本願商標をその指定商品中、第3類「化粧品,せっけん類」について使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品の対象者を説明するための記述的な表示、すなわち、当該商品の対象者である薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型として認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。
ウ したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、第5類の「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」の商品分野においては、説明書きなく、単に人間の頭部を模した図形それのみをもっては、そこから、これが商品の効能や効果又は対象者を示すものであるとの理解に直接至ることは不可能である旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品中の「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を取り扱う業界においては、商品の包装等に、当該商品の用途や使用方法等を説明する文字の表示とは別個に、用途等を一見して看取、把握させるべく、図形を用いることが一般に行われている。
そして、発毛剤の分野においても、本願商標と略同一又は類似の図形が、商品の対象者を説明するための表示として広く用いられている実情に鑑みれば、たとえ説明書きがなくとも、取引者、需要者は、本願商標をして、商品の対象者である薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型として認識するにとどまるものである。
したがって、上記請求人の主張は、採用することはできない。
イ 請求人は、本願商標は、外観上特徴的な構成からなる図形商標であり、たとえ引用に係る他者の図形の使用例があろうとも、本願商標とは明確に区別が可能な別異の構成からなるため、需要者が、本願商標についても、これを直ちに商品を使用した際に効能、効果を得られる対象者の説明であると認識すると考えるのは早計にすぎる旨主張する。
しかしながら、請求人以外の他者が、商品(発毛剤)を使用した際に効能、効果を得られる対象者を説明するために、商品の包装箱、添付文書、商品のウェブサイト等に、本願商標と略同一又は類似の図形を使用していることは、上記(1)アのとおりであり、表示方法について、図形を複数配置しているのか(別掲2(1)の使用例)、一つのみであるのか(本願商標)といった細部に異なる点はあるものの、頭部図形の表現方法は、概ね本願商標と同様の構成態様からなるものである。
加えて、医学雑誌「綜合臨牀 第2巻 第1号」(昭和28年1月1日発行、永井書店)に掲載された「禿頭の成り立ちについて」を表題とする医学博士の論文には、薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形が類型的に掲載されており、その中には、本願商標と略同一又は類似の図形の掲載も見受けられるところである(別掲3参照)。さらに、審尋において示した他者の使用例には、別掲2(1)アのように、上記論文に掲載された図形に依拠することを明記しているものも見受けられる。
そうすると、審尋における他者の使用例は、上記論文に掲載された図形に依拠するものであるとも考えられることから、これらの頭部図形と略同一又は類似の図形からなる本願商標とは、類似の図形であるといえ、本願商標は、格別、外観上特徴的ということはできない。
したがって、上記請求人の主張は、採用することはできない。
ウ 請求人は、頭皮や毛髪をケアするヘアトニックやシャンプーが販売されているという事実や、本願商標とは構成を異にする別異の図形が使用されているという引用例は、本願商標が本願指定商品中、第3類の指定商品との関係で識別力を有しないことの裏付けとはなり得ない旨主張する。
しかしながら、上記(1)イのとおり、発毛や育毛の促進等を目的としたヘアトニックやシャンプー等と発毛剤とは、化粧品、せっけん類か、薬剤かという違いはあっても、いずれも脱毛を防ぎ髪を育てることを目的とすることにおいて関連のある商品であるといえ、取引者及び需要者を共通にすることから、本願商標をその指定商品中、第3類の指定商品について使用しても、取引者、需要者は、当該商品の対象者の頭部図形の類型として認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないというべきである。
したがって、上記請求人の主張は、採用することはできない。
(3)まとめ
以上を総合すれば、本願商標は、その指定商品との関係において、取引者、需要者をして、その構成全体から、当該商品の対象者である薄毛又は脱毛の状態である人間の頭部図形の類型として認識されるものというべきであり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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