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Trademark Appeal Case

不使用取消と商標同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2018−300608(T2018−300608/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4373661号商標の商標登録を取り消す。
審判費用は,被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4373661号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成10年12月18日に登録出願,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として,同12年4月7日に設定登録されたものである。

そして,本件審判の請求の登録は,平成30年8月21日である。

以下,本件審判の請求の登録前3年以内の期間(平成27年8月21日ないし同30年8月20日)を「要証期間」という。

第2 請求人の主張

請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人の主張について

本件商標は,右上に縦書きの「伏見蔵」の文字,左下に縦書きの「松竹梅」の文字とその真下に「落款」を配し,中央部分に3〜4行程度の広いスペースを設けてなる。本件商標はその構成中に,宝酒造株式会社(以下「宝酒造」という。)の代表的な商標「松竹梅」の文字を含むことから,本件商標においてもっとも強い識別力を発揮するのは,「松竹梅」の文字であると考えられる。そうすると,本件商標からは,「ショウチクバイフシミグラ」の称呼と「松竹梅(の一銘柄)の伏見蔵」程の観念が生じるといえる。

乙第1号証の商品カタログには,「伏見蔵」及び「松竹梅」の文字,並びに「落款」が記載されたラベルを付した瓶入りの清酒が示されている。しかしながら,当該カタログは1997年に作成されたものであり,21年もの間,価格変更や商品リニューアルもなく,現在も同一のカタログが頒布されているとは考えにくい。要証期間内に当該カタログが頒布されたことの証明もないことから,乙第1号証によって,本件商標が要証期間内に使用されたということはできない。

次に,乙第2号証及び乙第3号証は,宝酒造東海支社中部配送センター又は西日本ロジスティクスから取引先に宛てた出荷票であるが,どちらも品名欄の表示は「伏見蔵本醸造業務用6PA」であり,「松竹梅」の文字も「落款」も示されていない。この品名欄の表示は,本件商標とは構成文字,外観,称呼において相違し,かつ,「伏見蔵という銘柄の本醸造業務用6本入り」程の観念しか生じないため,本件商標とは社会通念上同一の商標とはいえない。

また,乙第4号証の株式会社サマーソールト(以下「サマーソールト社」という。)から宝酒造への請求書の商品名の欄には「松竹梅 伏見蔵 1.8L」の文字が記載されているが,本件商標の構成要素の一つである「落款」が欠けている上に,ゴシック体の文字で等間隔にまとまりよく示されているため,独特な構成よりなる本件商標とは,その外観において大きく相違する。よって,乙第4号証の商品名の記載は,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。

さらに,乙第5号証ないし乙第7号証の飲食店のインターネットホームページ上のドリンクメニューに記載の「松竹梅伏見蔵 爛酒(一合半)」(乙5),「日本酒松竹梅 伏見蔵(京都) 一合」(乙6),「日本酒 松竹梅,豪快,伏見蔵」(乙7)についても,本件商標の構成要素の一つである「落款」が欠けており,また,本件商標とは文字の字体やその配置が大きく相違する。よって,乙第4号証ないし乙第7号証に示すドリンクメニューの記載も,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。

(2)現在の「伏見蔵」商品ラベルについて

答弁書の記載によると,清酒「伏見蔵」は,業務用酒販店の全国ネットワーク組織であるサマーソールト社加盟企業向けルートを通じて販売されている。サマーソールト社の関西地区加盟会社一覧(乙4)に記載の「(株)小松屋」は,複数の飲食店を経営しているが(甲3,甲4),その一つ,「boo foo woo ブフー 新大阪店」(甲5)において宝酒造の清酒「伏見蔵」が提供されている。「boo foo woo ブフー 新大阪店」のホームページ上のドリンクメニューには,「伏見蔵 本醸造」の記載があり(甲6),店内のテーブルに置かれたメニューには,「本醸造 伏見蔵(宝酒造/京都/五百万石)」の文字と酒瓶のラベルが記載されている(甲7)。店内のショーケースに飾られていた「伏見蔵」の酒瓶を店員に見せてもらったところ,乙第1号証に記載のラベルとは異なり,中央に大きく毛筆体で「伏見蔵」の文字が記載されたラベルが使用されている(甲8)。

インターネットを検索したところ,2009年2月5日に投稿された飲食店ちょっぷくのブログに,上記の「伏見蔵」と同一の酒瓶を記載した「伏見蔵」のポスターが記載されている(甲9)。よって,遅くとも2009年2月までに,宝酒造の清酒「伏見蔵」のラベルは,「松竹梅」の文字を含まない,上記の新しいラベルに変更されていたものと考えられる。この新ラベルにおいてもっとも注意を引く「伏見蔵」の文字からは,「フシミグラ」の称呼と「伏見の酒蔵」程の観念が生じ,本件商標とは外観・称呼・観念のすべてにおいて相違することから,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。

被請求人が提出した乙第4号証の「松竹梅 伏見蔵 1.8L」,乙第5号証の「松竹梅伏見蔵 爛酒(一合半)」,乙第6号証の「日本酒 松竹梅 伏見蔵(京都) 一合」,乙第7号証の「松竹梅,豪快,伏見蔵」の各記載には,奇妙なことに「松竹梅」の文字が含まれており,上記の商品ラベル「伏見蔵」の記載と一致しない。しかし,乙第4号証ないし乙第7号証は,宝酒造ではなく,取引先又は最終消費地の飲食店によって作成されたものであって,宝酒造は,サマーソールト社を通じて商品の販売を行っているところ,サマーソールト社発行の請求書には「松竹梅 伏見蔵 1.8L」(乙4)と記載されている。

サマーソールト社が商品名を誤登録し,伝票上の記載に誤記が生じているとすれば,サマーソールト社を通じて商品を仕入れた飲食店も,伝票上の誤記に気付かないまま,メニューに商品名を誤記する場合があると考えられる。よって,乙第4号証ないし乙第7号証は,商品名の誤記を示すにすぎないものであり,本件商標の使用を証明するものとは,到底いえない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。

1 「伏見蔵」ブランドの誕生

本件商標は,取消請求に係る指定商品中,第33類「清酒」について平成9年新発売以来,継続して使用されている。

本件商標は,本件商標権者の100%子会社の宝酒造が1997年(平成9年)「伏見蔵」ブランドの清酒に使用する目的で「伏見蔵」商標として誕生した。

「伏見蔵」商標は,同年10月に清酒本醸造・純米各720mlと1.8Lを新発売して以来,今日まで継続して21年間宝酒造により使用されている商標である。

2 商品カタログ(乙1)について

商品カタログの作成及び頒布の時期については,1997年10月の新発売に合わせて作成されたものであり,同月に初めて使用されたものである(乙8)。

当該商品カタログは,14万枚余り作成され,全国で使用されていたものであり,当時の寶酒造(現,宝ホールディングス株式会社:被請求人)の特約卸売店を通じて全国の酒類卸売店,小売店,料飲店に配布されたものである。

3 「伏見蔵」ブランドの清酒の発売時から今日までの経緯

「伏見蔵」ブランドの「清酒」は,1997年(平成9年)10月28日に「本醸造・純米各720mlと1.8L」を新発売(乙1)されたのち,「純米720ml,1.8L,本醸造720ml」は終売し(時期不詳),「本醸造1.8L」のみの販売となり,2002年(平成14年)3月からは愛知県の業務用酒販店,株式会社マルト水谷向け限定品としてラベル姿を変えて継続して販売されており,これが請求人提出のラベルであり,清酒「松竹梅『伏見蔵』」として,発売以来のラベル姿の商標認識同様に,変更後においても,このラベル姿の清酒は,従前のとおり「松竹梅『伏見蔵』」として認識され取引されているものである。さらに,2005年(平成17年)3月から,株式会社マルト水谷が中心メンバーとなっている,業務用酒販店の全国ネットワーク組織であるサマーソルート社加盟企業向けルートにも拡大し現在に至っており,「伏見蔵」ブランドの清酒は,その発売以来今日まで継続して21年間にわたり発売されている。

4 「伏見蔵」ブランドの清酒の取引伝票及びメニューにおける表示

「伏見蔵」ブランドの「清酒本醸造1.8L」の取引伝票上の表示は,乙第2号証及び乙第3号証では「伏見蔵本醸造業務用6PA」,乙第4号証では「松竹梅伏見蔵」と表記されるが,いずれも「伏見蔵」ブランドの「清酒本醸造1.8L」商品のことであり,「業務用6PA」の表示は,当該商品が「業務用酒販店向け商品の6本P函(プラスチック製の流通用ケース)入り荷姿」で出荷されたことを示すものである。

また,「伏見蔵」ブランドの「清酒本醸造1.8L」は,業務用酒販店を通じて最終消費地の居酒屋に販売されているが,同地でも乙第5号証では「松竹梅伏見蔵」,乙第6号証では「松竹梅伏見蔵(京都)」,また乙第7号証では「日本酒 松竹梅,豪快,伏見蔵」のように銘柄指定のメニュー表示がなされてこの清酒が提供されていることが確認できる。

5 宝酒造東海支社中部配送センターの出荷票(乙2)について

乙第2号証は,「伏見蔵」ブランドの「清酒本醸造1.8L」が,宝酒造東海支社中部配送センター(名古屋市中村区)から,愛知県名古屋市株式会社イズミック(以下「イズミック社」という。)の勝川物流センター(愛知県春日井市)に出荷された事実を示す出荷票であるが,これに対応する注文書については,大手卸店からの注文はEOS(電子データによる発注)が中心であり,注文書現物はそもそも存在しない。また,納品書については,相手方卸店に残る物であり,宝酒造の手元には残らない。

6 宝酒造西日本ロジスティクスの出荷票(乙3)について

同じく,乙第3号証は,「伏見蔵」ブランドの「清酒本醸造1.8L」が,宝酒造西日本ロジスティクス(京都府京田辺市)から,各卸店(当該卸店から業務用酒販店へさらに販売される)に出荷された事実を示す出荷票であり,これに対応するのが受領書(乙9)である。

7 サマーソールト社加盟業務用酒販店に対する請求書(乙4)について

乙第4号証は,サマーソールト社加盟業務用酒販店に対する「伏見蔵」ブランドの「清酒本醸造1.8L」の販売実績に関する「請求書」である。

この「請求書」は,サマーソールト社が,加盟社へ取扱いを推奨したことに対し,メーカーである宝酒造が加盟社への仕入れ数量に応じてリベートを支払うにあたり,サマーソールト社が当該リベートについて宝酒造へ請求したものである。

宝酒造の直接販売先は特約卸売店であり直接取引関係にないサマーソルト社との間の販売促進費に関する請求書面であるため,注文書,納品書,物品受領書はそもそも存在しない。領収書は。銀行振込につき領収証は発行されておらず,この請求に対するのが振込明細書(乙10)である。

8 居酒屋のドリンクメニュー(乙5〜乙7)について

「伏見蔵」ブランドの「清酒本醸造1.8L」は,各居酒屋の日本酒のメニュー名として,乙第5号証では「松竹梅伏見蔵 爛酒」,乙第6号証では「日本酒 松竹梅 伏見蔵 (京都)」,乙第7号証では「日本酒 松竹梅,豪快,伏見蔵」(松竹梅の豪快と伏見蔵の2銘柄)として確実に最終消費地で提供されている。またこの清酒のメニュー表示は,日本酒の商標(銘柄)としても使用されている。

9 結論

以上のとり,本件商標に係る「伏見蔵」ブランドは,商標権者の100%子会社の宝酒造により,その指定商品中「清酒」について発売以来今日まで21年間継続して使用されており,要証期間内に日本国内において使用されているものであるから,本件商標は商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきではない。

第4 当審の判断

1 被請求人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。

(1)本件商標権者と宝酒造との関係について

宝酒造は,酒類,酒精,調味料,その他の食料品及び食品添加物の製造並びに販売などを事業とする会社であり,その持株比率100%を本件商標権者が保有している(乙1)。

(2)商品カタログについて

宝酒造の社内通達(乙8)によれば,「伏見蔵」「松竹梅」を付した清酒は,1997年(平成9年)10月28日に発売されものであり,商品カタログ(乙1)はこの清酒の発売に合わせ卸店へ配布するために作成されたものと推認されるが,要証期間内に頒布された証拠は提出されていない。

なお,被請求人は,2002年(平成14年)3月からは業務用酒販店向け商品としてラベル姿を変えて販売され,これが請求人提出のラベル(甲8)であると主張するところ,甲第8号証の清酒のラベルには「伏見蔵」「本醸造」の文字は表示されているが,「松竹梅」の文字は確認することができない。

(3)宝酒造とイズミック社等との取引について

ア 宝酒造東海支社中部配送センターがイズミック社に宛てた2016年(平成28年)9月15日ないし2018年(平成30年)3月29日付けの出荷票(乙2)には,品名欄に「伏見蔵本醸造業務用6PA 1.8L」(以下「使用商標」という。)の記載がある。

イ 宝酒造西日本ロジスティクスがイズミック社大阪支店,三菱食品関西支社等に宛てた2016年(平成28年)9月16日ないし2018年(平成30年)3月16日付けの出荷票(乙3)には,品名欄に「伏見蔵本醸造業務用6PA 1.8L」の記載がある。

(4)サマーソールト社から宝酒造への販売実績の請求について

サマーソールトが,加盟社へ取扱いを推奨したことに対し,宝酒造へリベートを請求した2016年(平成28年)8月10日ないし2018年(同30年)8月29日付けの請求書には,商品名欄に「松竹梅伏見蔵 1.8L」の記載がある。

(5)居酒屋のドリンクメニュー

各居酒屋のドリンクメニューには,「松竹梅伏見蔵 爛酒」,「松竹梅 伏見蔵(京都)」,「松竹梅,豪快,伏見蔵」の表示はあるが,当該居酒屋のウェブサイトの印刷日は要証期間外である。

2 判断

(1)使用者について

上記1(1)のとおり,宝酒造は,本件商標権者がその持株比率100%を保有する子会社であるから,通常使用権の許諾契約がなくても,宝酒造は本件商標権者から本件商標の使用について黙示の許諾を受けているものと推認することができる。

したがって,宝酒造は,本件商標の通常使用権者であると認められる。

(2)商品カタログについて

商品カタログ(乙1)の作成日は1997年(平成9年)10月頃と推認されるが,要証期間内に当該カタログが頒布された証拠は提出されていないから,当該カタログの要証期間内の使用(頒布)は認められない。

(3)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について

使用商標は,上記1(3)アのとおり「伏見蔵本醸造業務用6PA 1.8L」であるところ,その構成中「本醸造業務用6PA 1.8L」の文字部分は,商品の品質を表示する部分であるから,使用商標は,「伏見蔵」の文字部分を独立した要部として認識し得る。

そして,本件商標は,「伏見蔵」と「松竹梅」の文字を二列に縦書きしてなるところ,「伏見蔵」の文字は共通するとしても「松竹梅」の文字の有無において相違するものであって,書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標ということはできないから,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものである。

なお,被請求人が主張する,2002年(平成14年)3月からの清酒のラベル(甲8)にも「伏見蔵」「本醸造」の文字は表示されているが,「松竹梅」の文字はない。

(4)サマーソールト社から宝酒造への販売実績の請求について

請求書(乙4)が要証期間内のものであって,「松竹梅伏見蔵 1.8L」の文字が記載されているが,サマーソールト社は,本件商標の通常使用権者と認める証拠はないから同社の取引書類の作成は通常使用権者による使用ではない。

(5)居酒屋のドリンクメニュー

居酒屋のドリンクメニューは,各居酒屋のウェブサイトで表示されているものであり,印刷日は要証期間外であり,かつ,要証期間内の使用を証する証拠の提出がないから,本件商標の使用と認めることはできない。

(6)小括

以上のとおり,宝酒造は,本件商標の通常使用権者であると認めることができる。

しかしながら,通常使用権者が作成した伝票に記載されている商標は,本件商標とは社会通念上同一の商標ということはできない。

その他,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に,本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標の使用があったことを認めるに足る事実を見いだせない。

3 むすび

以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。

また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである

よって,結論のとおり審決する。

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