Trademark Appeal Case
位置商標の使用識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−11839(T2017−11839/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第5類「貼付剤」を指定商品として、平成27年4月1日に位置商標として登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、商品の包装等においては、美観を発揮させるため、または需要者の注意を惹く目的等で、出所を表示するための識別標識以外の装飾的な種々の文字、図形及び色彩が使用されている実情がある。そして、本願指定商品を取り扱う業界においても、別掲3のとおり、出願人以外の者が、商品の包装等に複数の色彩が施された波形状の図形を配して使用している実情がある。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に美感を発揮する等のために装飾、模様等が施された商品の包装の一形態を表示するにすぎないと認識するにとどまるものである。
また、出願人の提出した証拠及び主張によると、本願商標の使用開始時期及び使用期間は明らかではないものの、2015年に出願人の取扱いに係る貼付剤に本願商標を使用していることが認められる。
しかしながら、その使用態様は、本願商標を構成する図形と同一視し得る図形と共に、色彩が施された三角形の図形や複数の色彩を横帯状に組み合わせた図形、「サロンパス」、「Hisamitsu」等の文字が共に用いられており、本願商標を構成する図形及び位置以外の構成要素を伴った使用態様であるところ、通常、需要者は識別力を有する文字等を目印に商品を識別しているものと推認され、本願商標のみが独立して自他商品の識別標識として機能しているとは判断し難く、本願商標についての需要者の認識を客観的に把握することができないことから、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。
したがって、本願商標は、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。
第3 当審においてした証拠調べ
審判長は、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲4に示すとおりの事実を発見したので、平成31年3月29日付けで、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、上記証拠調べの結果を通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、前記第3の証拠調べ通知に対し、要旨以下の意見を述べた。
(1)証拠調べ通知書にて挙げられた使用例は、いずれも、本願商標に付する図形とは形状や色彩、配色、位置等が著しく異なるものである。本願商標に付する図形は、請求人に係る商品「サロンパス」のシンボル図形であって(甲72)、請求人は、当該図形を商品パッケージの特定の位置に付し、継続的に独占して使用してきた。そうとすると、本願商標は、登録商標として保護を与えない実質的な理由に乏しく、また、他の事業者等に、当該商標を使用する余地を残しておく公益的な要請は喪失しているものであり、本願商標が使用による顕著性を獲得しているというべきである。
(2)商品パッケージは、製造販売者のハウスマークや、商品名等、多数の構成要素の組み合わせからなるのが一般的であり、他の要素と組み合わせて使用されているとしても、一部分のみが強い自他商品の識別標識として認識されることがあることは、市場における経験則である。例えば、請求人に係る「サロンパス」の商品パッケージには、請求人のハウスマークである「Hisamitsu」や、「サロンパス」といった文字を使用しているが、これらがそれぞれ極めて強い識別機能を発揮している。これらの文字については、請求人に係る広告宣伝活動等によっても、強い自他商品の識別機能を発揮するに至ったものであるが、本願商標に付している図形についても、商品パッケージに使用しているだけでなく、テレビコマーシャルや新聞・雑誌広告などにおいて、大々的に使用してきている。これらの継続的な広告宣伝の結果、取引者や需要者に深く浸透しており、商品パッケージにおいて他の要素と組み合わせて使用した場合であっても、当該波形図形部分のみを十分に認識するというべきである。
(3)本願商標に付された波形図形は、「サロンパス」のシンボル図形として請求人が創作、採択したものであり、登録第5766183号商標(甲84)として、登録が認められている。請求人は、当該図形を単独でも大々的に使用しており、取引者や需要者に深く浸透している、周知著名な商標である。本願商標について自他商品の識別力を否定することは、却って、上記登録商標そのものを否定することになりかねず、余りに不合理である。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、青色の波線帯状図形の上下に緑色の波線図形を配した図形(以下「本願図形」という。)を、包装箱の正面上部に付した位置商標であって、「商標の詳細な説明」として、「商標登録を受けようとする商標(以下『商標』という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、貼付剤の包装用箱の一面の中央部のやや上方に付された、青色とその上下の緑色の波形図形からなる。なお、包装用箱の形状を表す破線は、商品の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」旨記載され、第5類「貼付剤」を指定商品とするものである。
ところで、本願の指定商品を含む薬剤を取り扱う業界においては、商品の魅力向上や需要者の関心を引くなどといった目的のため、商品の包装箱の正面に様々な図形や色彩を装飾的に付すことが一般に広く行われているところ、その商品の包装箱の正面に表された商品名や効能等を示す文字を際立たせるための背景等として、異なる色彩の横長帯状図形を組み合わせて用いることが一般に広く行われている(別掲3及び別掲4)。
そうすると、本願商標は、その構成要素である図形の形状及び位置について子細にみれば、上記用例の薬剤の包装箱に付された図形の形状及び位置とは異なる点があるとはいえるものの、本願商標をその指定商品に使用するときは、需要者をして、その商品の包装箱に通常採用され得る位置に付された背景図形の一類型として認識されるにとどまり、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
(2)本願商標が使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているかについて
請求人は、本願商標は「サロンパス」の商品パッケージとして、2015年2月から、大々的に使用してきたものであるところ、当該商品は、圧倒的な売上高と市場占有率を誇り、また、膨大な量のテレビコマーシャル、新聞・雑誌広告に加え、全国規模のイベント活動やウェブサイト等により継続的かつ大々的に使用された結果、今日では著名な商標となっていることは疑う余地はない旨主張し、甲第1号証ないし甲第84号証を提出している。
そこで、請求人の主張及び同人提出の証拠について、以下検討する。
ア 請求人の使用に係る貼付剤について
(ア)使用開始時期及び使用態様
請求人は、1934年(昭和9年)に、貼付剤「サロンパス」を販売し、商品改良を続けながら販売を継続してきたところ、2015年(平成27年)2月には、包装箱に、本願図形を含む図形等を付した貼付剤「サロンパス」(以下「請求人商品」という。)を発売し、それ以降5年間、請求人商品を販売している(甲35〜甲38)。
請求人商品の包装箱の態様は、別掲2のとおり、(a)包装箱の正面上部に、青色の直線帯状図形並びに黄色、白色、緑色及び青色の波線帯状図形の左上隅に赤色の三角形が付された図形等(最下部の緑色波線帯状図形は、下方にグラデーションが施されている。以下、これらをまとめて「使用図形」という。)を配し、(b)上記青色の直線帯状図形内には、白抜きで、「Hisamitsu」の欧文字を理解させるロゴマーク(以下「請求人ロゴマーク」という)が表され、(c)上記青色の波線帯状図形内には、白抜きで、「サロンパス」の片仮名が表され、(d)上記緑色のグラデーションには、重なるように、貼付剤の形状を表したものと認識される図形が配されているものである。
そして、上記使用図形中、「サロンパス」の文字が白抜きで表された青色の波線帯状図形及びその上下に配された緑色の波線図形は、本願図形と同一視し得るものの、使用図形は、明らかに、本願図形以外の図形(赤色の三角形、青色の直線帯状図形、黄色の波線帯状図形、白色の波線帯状図形、緑色のグラデーション波線帯状図形等)を含んでなるものである。
そうすると、本願図形と使用図形とは、同一性があるものとは認められない。
(イ)販売状況及び市場占有率
請求人が、1934年(昭和9年)から継続的に販売する貼付剤「サロンパス」は、現在では世界各国で販売され、2017年(平成29年)5月に、「Salonpas」は、鎮痛消炎貼付剤市場における販売シェア世界No.1ブランドの地位を獲得した(甲34)。また、請求人の主張によれば、請求人商品を含む「サロンパス」ブランドの商品の売上高は、2016年(平成28年)6月から2017年(平成29年)5月までの1年間で、約66億円であり、同期の市場占有率は、約41%である。
そして、請求人商品は、日本全国のドラッグストア及びそのオンラインストアにおいて販売されている(甲40〜甲42)。
(ウ)広告宣伝
請求人は、請求人商品を発売した2015年(平成27年)以降、テレビ、新聞、雑誌、ラッピングバス及びウェブサイトにおいて、全国的に広告宣伝を行ったところ、これらの広告宣伝においては、請求人商品の包装箱が表示されていることが認められる(甲43〜甲55)。
イ 判断
上記アを総合勘案すれば、請求人が2015年(平成27年)に発売した請求人商品は、テレビCM、新聞等をはじめ、各種媒体を通じて宣伝広告され、かつ、全国的に販売され、一定程度の売上、市場占有率を有することがうかがえることからすれば、相当程度、需要者の間に広く知られたものとなっていることが認められる。
しかしながら、請求人が、2015年(平成27年)以降、請求人商品の包装箱の正面上部に付している使用図形は、本願図形以外の図形(赤色の三角形、青色の直線帯状図形、黄色の波線帯状図形、白色の波線帯状図形、緑色のグラデーション波線帯状図形等)を組み合わせた構成からなり、これらの図形がまとまりよく一体のものとして表されているものであるから、青色の波線帯状図形及び緑色の波線図形のみからなる本願図形とは、一見して別異のものと認識されるものであって、請求人商品に接する取引者、需要者が、使用図形の一部に着目し、本願図形部分のみを抽出して、当該部分を独立した自他商品の識別標識として認識するとはいい難い。
そうすると、請求人が、請求人商品の包装箱の正面上部に、使用図形の一部として本願図形を付し、当該態様を5年間、継続して使用しているとしても、使用図形全体が、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として需要者に認識されているとみるのが相当であり、本願商標のみが、自他商品の識別標識としての機能を果たしているとみることはできない。
したがって、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、証拠調べ通知書に挙げられた使用例は、いずれも、本願商標とは異なるものであり、請求人は、本願商標を継続的に独占して使用してきたのであるから、本願商標は、使用による顕著性を獲得している旨主張する。
しかしながら、上記1(1)のとおり、本願の指定商品を含む薬剤を取り扱う業界の実情を鑑みれば、証拠調べ通知書に引用した使用例と本願商標とは、異なる点があるとはいえるものの、本願商標をその指定商品に使用するときは、需要者をして、その商品の包装箱に通常採用され得る位置に付された背景図形の一類型として認識されるにとどまるものである。
また、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないことは、上記1(2)イのとおりである。
(2)請求人は、商品パッケージは、製造販売者のハウスマークや、商品名等(例えば、請求人のハウスマークである「Hisamitsu」や、「サロンパス」といった文字)、多数の構成要素の組み合わせからなるのが一般的であり、他の要素と組み合わせて使用されているとしても、一部分のみが強い自他商品の識別標識として認識されることがあることから、本願商標についても、当該波形図形部分のみを十分に認識するというべきである旨述べるとともに、請求人は、当該波形図形のみを用いて、大々的に広告宣伝活動を行ってきた旨主張する。
しかしながら、上記1(2)イのとおり、請求人が、請求人商品の包装箱に付している使用図形は、本願図形を一部に含むものの、まとまりよく一体のものとして表されているものであるから、当該使用図形から、取引者、需要者が、本願図形部分のみを抽出して、当該部分を独立した自他商品の識別標識として認識するとはいい難い。
また、請求人は、本願図形部分のみを用いて、広告宣伝活動を行ってきた旨主張するが、請求人があげる半袖の「ユニフォーム」(甲73、甲74)は、緑色を地色とし、赤色、黄色、青色又は濃い緑色の長方形が、大小様々にランダムに一面に配されており、ユニフォームの胸の部分には、白抜きで「サロンパス」の片仮名(表面)又は「Salonpas」の欧文字(裏面)が大書された図形(本願図形の上下に白い波線が付されたもの)が配され、当該図形の上部には、白抜きで請求人ロゴマークが、また、肩の部分には、濃い緑色の長方形と思しき図形内に、白抜きで「サロンパス」の片仮名(右)又は「Salonpas」の欧文字(左)が小さく表されたものである。このように多数の色彩、図形が使用されたユニフォームに接する需要者が、胸の部分に大書された「サロンパス」又は「Salonpas」の文字の背景図形として使用されている本願図形部分のみを抽出して、当該部分を独立した自他商品の識別標識として認識するとは考えにくい。
さらに、請求人は、本願図形部分のみを用いた広告宣伝活動として、テレビコマーシャルに用いた「魔法のじゅうたん」(甲80〜甲83など)をあげている。
しかしながら、テレビコマーシャルに出演するタレントが座る「魔法のじゅうたん」は、緑色、青色の波線帯状図形と白色の波線とを組み合わせ、全体形状としては長方形をやや波打たせたように表されたものであり、明らかに、本願図形とは異なるものである。
そうすると、請求人が主張する広告宣伝は、本願図形のみを使用したものとは認められない。
(3)請求人は、本願商標に付された波形図形は、登録第5766183号商標(甲84)として、登録が認められており、本願商標について自他商品の識別力を否定することは、却って、上記登録商標そのものを否定することになりかねず、余りに不合理である旨主張する。
しかしながら、請求人が所有する上記登録商標は、使用態様が限定されない図形商標である一方、本願商標は、使用態様が限定された位置商標として登録出願されたものであることを考慮すれば、両者は商標の種類が異なる別異の商標であり、上記登録商標が存することをもって、本願商標が商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識され得るなどということはできない。
(4)したがって、請求人による上記主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上によれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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