sokuhyo

Trademark Appeal Case

免震動き商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−3390(T2018−3390/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなり、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務として、平成27年4月10日に登録出願されたものである。その後、商標の詳細な説明については、同28年9月27日付けの手続補正書によって、別掲1(2)のとおりに補正されたものである。

2 原査定の拒絶理由

原査定は、「本願商標は、全体として、免震構造の建物が振動する様子又は建物の免震設備が作動する様子を表したものと容易に認識される。本願の指定役務を取り扱う業界においては、地震発生時における免震構造の建物の振動の様子又は建物の免震設備の作動の様子を表した図を、免震構造の建物に関するウェブサイト等で使用することが一般に行われている(別掲2)。そうすると、本願商標をその指定役務中『免震構造の建物の建設工事,免震構造の建物の建築工事に関する助言,建物の免震設備の運転・点検・整備』に使用しても、これに接する取引者、需要者は、『免震構造の建物が振動する様子』又は『建物の免震設備が作動する様子』を表したものと認識するにとどまり、本願商標は、単に役務の提供の用に供する物、役務の用途、役務の効能、役務の質を普通に用いられる域を脱しない方法で表示するにすぎないものと認められるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標を、前記役務以外の『建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備』に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に対し、平成31年1月29日付け証拠調べ通知書をもって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要旨)

証拠調べ通知で示された事例には、地盤や建物の動きに連動して作動するアクチュエータやその模式図が表現されておらず、それが本願商標との大きな違いである。「アクチュエータを備えていない免震装置」は、建設業界においてありふれたものであるため、そのような免震装置の動きを表現したアニメーション等については役務の質等を直接的に表示するにすぎないものと認識される。しかし、本願商標は、「アクチュエータを備えた免震装置」をモチーフとするものであり、建設業界においても他に例を見ない特別な設計として認識されるものであるため、役務の質等を直接的に表示するにすぎないものと認識されるおそれはない。

また、証拠調べ通知で示された事例には、免震装置を備えていても建物が左右に揺れ動いている様子が表現されている例や、建物は静止しているものの、地盤の揺れ幅が小さい例などが見受けられるが、請求人の「アクチュエータを備えた免震装置」は、アクチュエータの機能によって極限まで揺れを抑えることができるものである。そのため、本願商標において、建物の揺れは表現されておらず、地盤の大きな横揺れに対し、建物は微動だにしない様子がデフォルメされた図案によって、高い抽象度をもって表現されている。したがって、本願商標は、役務の質等を暗示するものではあるが、直接的に表示するにすぎないものと認識されるおそれはない。

よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当するものではない。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、別掲1のとおり、時間の経過に伴う標章の変化の状態を表す9枚の図からなる動き商標であって(以下、それぞれの図を1枚目から順に「図1」ないし「図9」という。)、図1ないし図9は、地面、建物を認識させる図、建物の地下構造全体に免震設備を認識させる図及び建物の内部と外部に人とおぼしきものを描いた図から構成され、約2秒の間に、図1から図3にかけて、地面の動きに連動し、建物の地下構造全体の免震設備を認識させる図が中央から左に、図4から図7にかけて左から右に、図8から図9にかけて右から中央に、免震設備の構成物を伸縮又は変形させて動く様子が表されている。そして、本願の指定役務は、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」である。

ところで、本願の指定役務の分野では、建物の免震構造の仕組みを説明するウェブサイト等において、別掲2及び別掲3に示すように、連続した複数の静止画や動画を用いて、建物を免震構造とする建設工事の内容や、当該工事の結果として地震の揺れの衝撃を緩和することができるといった効果を表すために、免震構造の建物が振動する様子又は建物の免震設備の作動の様子を説明することが一般に行われている。そして、そのような静止画や動画においては、総じて地面、建物を認識させる図及び建物の地下に免震設備を認識させる簡略化した図が用いられ、それらが振動又は作動する様子が表現されている。

そこで、本願商標と別掲2及び別掲3の各使用例を比較すると、本願商標及び各使用例のいずれにおいても、建物の免震構造の仕組みを説明するために、単純な形状で表されたビルや家屋等の建物をその免震設備が見えるよう地下部分までを含めた断面図で表しており、かつ、地震の揺れを地盤や建物が左右に動く様子で表した点及び建物の基礎部分が変形する点においておおむね共通している。これらの共通性を考慮すれば、本願商標は、一般的に建物の免震構造の仕組みを表した図と認識されるというべきであって、これに接する需要者、取引者は、これらの図が、建物が免震構造であること、又は免震構造の建物であると理解し、その仕組みを簡略化した図形の変化によって説明したものであると理解するにとどまるとみるのが相当である。

そうすると、上記のとおりの構成態様をもって図形が変化する動き商標である本願商標を、その指定役務に使用しても、これに接する需要者、取引者は、別掲2及び別掲3の事例との差異を考慮してもなお、「免震構造を有する建物の建設工事」であるという工事の内容、効能及び目的、助言の内容が免震構造の建物に関するものであること及び「運転・点検・整備」の対象が免震設備であることを図形の変化によって表したもの、すなわち、役務の効能及び質(内容)を簡略化した図形の変化によって表した一類型と理解、認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識しないというのが相当である。

したがって、本願商標は、その指定役務「免震構造を有する建物の建設工事,免震構造の建築工事に関する助言,免震設備の運転・点検・整備」との関係において、役務の効能及び質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)請求人の主張について

請求人は、原審で示された事例(別掲2)は「地震による建物の揺れを緩やかなものに変える」旧来技術による免震装置であって、「地震による揺れそのものを打ち消すことにより、建物を原位置に静止させる」本願のような新しい技術による免震装置ではないから、旧来技術を表現した模式図が一般的に使用されていたとしても、本願商標の識別性を否定する理由にはなり得ない旨主張している。また、証拠調べ通知で示された事例(別掲3)には、地盤や建物の動きに連動して作動するアクチュエータやその模式図が表現されておらず、「アクチュエータを備えていない免震装置」は、建設業界においてありふれたものであるが、本願商標は、「アクチュエータを備えた免震装置」をモチーフとするものであり、建設業界においても他に例を見ない特別な設計として認識されるものであるため、役務の質等を直接的に表示するにすぎないものと認識されるおそれはない旨主張している。

しかしながら、本願商標の構成中に、請求人が他の技術と異なると主張するアクチュエータが建物と地面を水平方向に連結する様子が描かれているとしても、当該アクチュエータを表した図の部分は、免震設備の構成物の一つを表したものにすぎないというべきであり、また、本願の指定役務の分野の需要者には、建築の専門家とはいえない、自宅等の家屋の建築工事を依頼する者も含まれるというべきであるから、免震構造の仕組みが、請求人のみが提供する新しい技術によるものであるといった詳細な技術的事情を、専門知識を有さない需要者が、本願商標の図から直ちに認識し、理解するということは困難であるといわざるを得ない。そして、上記(1)のとおり、本願の指定役務の分野においては、建物の免震構造の仕組みを説明するに当たり、免震構造の建物が振動する様子又はその免震設備が作動する様子を、連続する複数の静止画や動画等により表すことが一般に行われている実情からすれば、本願商標に接する需要者、取引者は、商標中に、建物と地面を水平方向に連結するアクチュエータが描かれていると認識するとしても、そのことが他の技術と異なることを直ちに理解し、一般的な建物の免震構造の仕組みを表した図と区別できるとはいい難いものであって、アクチュエータは免震設備の構成物の一つにすぎず、その全体をもって、本願商標が建物の免震構造の仕組みを図形の変化によって説明したものであると理解するにとどまるというべきである。

してみれば、本願商標を構成する図が表す免震構造の仕組みにアクチュエータが備えられたものであるとしても、当該仕組みを図解したにとどまるものであって、これに接する需要者、取引者が本願商標全体を役務の出所識別標識として認識すると判断することはできない。

したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。