Trademark Appeal Case
結合商標の要部抽出と類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2020−900017(T2020−900017/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第6192221号商標(以下「本件商標」という。)は,「A.L.I.Technologies」の文字を標準文字で表してなり,平成30年12月17日に登録出願,第7類,第9類,第12類,第16類,第28類,第35類,第41類及び第42類に属する別掲1に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,令和元年10月2日に登録査定,同月25日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録第6055607号商標(以下「引用商標」という。)は,「ALI」の文字を標準文字で表してなり,平成29年8月9日に登録出願,第35類,第36類,第38類及び第42類に属する別掲2に記載のとおりの役務を指定役務として,同30年6月22日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は,インターネットビジネスを行う世界的に有名な企業であり,複数の関連会社を有し,1999年の創業以来,飛躍的な商業的成功を遂げ,現在では,世界中のどこでも商品を売買することを可能とすることを実現した。
申立人が行っている主たる事業は,「Taobao(淘宝):コンシューマー向けオンラインショッピングモール」,「TMALL(天猫):越境オンラインショッピングモール」,「AliExpress:オンライン通販サイト」,「Alibaba.com:グローバルBtoB電子商取引サイト」,「1688:中国市場向けBtoB電子商取引サイト」,「alimama:デジタルマーケティングプラットフォーム」,「Alibaba Cloud:クラウドコンピューティングサービス」,「CAI NIAO:物流プラットフォーム」及び「ANT FINANCIAL:金融関連サービス」である。
申立人の財務報告書によると,売上高について2017年度は約229億8000万米国ドル,2018年度は約363億5000万米国ドル,2019年度は約561億5000万米国ドルであり,宣伝広告の費用について2017年度は約20億3200万米国ドル,2018年度は約30億9200万米国ドル,2019年度は約56億6000万米国ドルを費やした(甲4)。
さらに,2019年11月11日の中国における「独身の日」と呼ばれる日1日の売上は,268.4億人民元(384億米国ドル)である(甲5)。
(2)申立人と「ALI」ファミリー商標について
申立人は,語頭の3文字の「ALI」を申立人のサービス名称として広く用いている。すなわち,「ALI」と普通名称を結合させた商標を採択し,「ALI」と普通名称で構成された商標は申立人が出所であることを認識されるよう企業努力を行っている。また,申立人は「ALI」を含んだ商標を多数所有している。
したがって,取引者及び需要者は,「ALI」の語を含んだブランド,(特にインターネット技術に関連するブランド)や特に普通名称や識別力のない言葉の語頭に「ALI」の文字を付加させたものからは,申立人のALIブランドだけを連想するといえる。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 商標の対比
本件商標は、欧文字の「A.L.I.」及び「Technologies」を標準文字で横書きした構成からなる結合商標である。
これに対し、引用商標は「ALI」の文字を標準文字で横書きした構成からなるものである。
本件商標の構成中「Technologies」の語は,「科学技術,技術学,テクノロジー」等の意味を有する英単語「technology」の複数形と容易に理解されるものであり(広辞苑第七版),本件指定商品・役務との関係において,商品の品質及び役務の質等を表示するものであり,自他商品・役務を識別する機能を果たし得ないのに対し,引用商標の周知著名性を考慮すると,本件商標は,その構成中の「A.L.I.」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
したがって,本件商標から「A.L.I.」の文字部分のみを要部として抽出し,引用商標と比較をすることは許される。
そこで,本件商標の要部と引用商標の類否を検討すると,本件商標は,各文字の間にピリオドを有するが,3文字のアルファベット「A」,「L」,「I」を羅列してなる点で共通し,外観上,極めて近似した印象を与える。
次に,本件商標の要部からは,その構成文字に相応して,「アリ」又は「エイエルアイ」の称呼が生じるため,引用商標と称呼において共通する。
最後に,引用商標の周知著名性及び申立人が「ALI」の語に普通名称を結合させた商標を多数使用している取引の実情を考慮すると,本件商標と引用商標からは,「ALIブランド」,「申立人が提供する何らかの商品・役務」程の観念が生じるといえる。
そうすると,本件商標と引用商標とは,「ALI」の文字部分において実質的に共通しており,「アリ」又は「エイエルアイ」の称呼及び「ALIブランド」,「申立人が提供する何らかの商品・役務」の観念も同一である。
したがって,両商標は,互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
イ 指定役務の対比
本件商標と引用商標はいずれも第35類,第42類を指定し,同一又は類似の役務を含んでいる。
よって,本件商標の指定役務は引用商標の指定役務と同一又は類似のものである。
ウ 小括
以上から,本件商標は,引用商標と同一又は類似の商標であり,かつ,指定役務も同一又は類似のものであるため,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 出願商標とその他人の標章との類似性の程度
本件商標と引用商標の類似性の程度が高いことは,上記(3)のとおりである。
イ その他人の標章の周知度
申立人の「ALI」商標が周知著名であることは上記(1)及び(2)のとおりである。
ウ その他人の標章が創造標章であるかどうか
申立人の引用商標は,申立人の名称であるAlibaba Group Holding LimitedのAlibabaの語頭3文字から構成されるものであり,創造性のあるものである。
エ その他人の標章がハウスマークであるかどうか
申立人のハウスマーク(社標)には該当しないが,申立人が引用商標を企業のブランドとして位置付けていることは,前記のとおりであり,引用商標は,申立人が提供するブランドのうち,極めて重要な商標である。
オ 企業における多角経営の可能性
申立人は,上記(1)のとおり様々な事業を行っているため,多角経営の可能性は,十分に認められる(甲3)。
カ 商品間,役務間又は商品と役務間の関連性
本件商標と引用商標は,第35類,第42類において,同一又は類似の役務を指定しており,役務間の関連性が高い。
キ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情
申立人は,「ALI」ブランドの下で様々な事業,特にインターネット技術に関連する役務を行っており,本件商標は,インターネット,コンピュータ関連の商品・役務を幅広く指定しており,両商品・役務間の関連性の程度は高いものであり,取引者及び需要者の範囲は共通するといえる。
ク したがって,引用商標の著名性の程度,本件商標と引用商標の類似性,需要者の共通性,申立人の事業,本件商標と引用商標の商品間の共通性等を総合的に勘案すれば,申立人の周知著名商標である「ALI」に,「科学技術,技術学,テクノロジー」等の意味を有する英単語「technology」の複数形と認識される「Technologies」を付加したにすぎない本件商標を商標権者がその指定商品・役務に使用した場合には,少なくとも,申立人と何らかの関係にある営業主の業務に係る商品と誤認されるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性
ア 申立人提出の証拠及び同人の主張は,以下のとおりである。
(ア)申立人は,1999年創業のインターネットビジネスを行う企業であり,オンラインショッピングモール,オンライン通販サイト,電子商取引サイト,クラウドコンピューティングサービス,物流プラットフォーム,金融関連サービス等を事業としている(甲3)。
(イ)申立人は,2017年度ないし2019年度の売上高及び宣伝広告費を挙げているが(甲4),何に対する売上高及び宣伝広告なのか具体的な記載はなく,その詳細は不明である。
(ウ)引用商標がその指定役務に使用されている事実を確認し得る証拠は見いだせない。
イ 上記ア及び甲各号証によれば,申立人が中国においてオンライン通販サイト等を運営していることはうかがえるとしても,提出された証拠からは,引用商標の使用状況を示す証拠は見いだせない。
また,申立人が主張する売上高及び広告宣伝費については,当該内容が事実であることを裏付ける資料の提出はなく,かつ,我が国における販売実績や広告宣伝費等の資料の提出もないから,引用商標の量的規模を客観的な使用事実に基づいて把握することができず,引用商標の周知性の程度を推し量ることができないものといわざるを得ない。
仮に,申立人が主張する売上高や広告宣伝費が引用商標の使用に係る役務についてのものであるとしても,当該数値がその周知性を基礎づけるほど多数,多額であると認めるに足りる証左は見いだせない。
その他,我が国において引用商標が使用された申立人の業務に係る役務についての市場シェアなどの販売実績並びに引用商標に係る広告宣伝の費用,方法,回数及び期間などについては,その事実を量的に把握することができる証拠は何ら提出されていない。
そうすると,提出された証拠によっては,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標が申立人の業務に係る役務を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は,「A.L.I.Technologies」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成文字中の「A」,「L」及び「I」の各文字の後ろにピリオドを付してあることから,欧文字一文字ごとの読みをもって「エイエルアイ」と称呼するのが自然である。
そして,本件商標は,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で一体的にまとまりよく表してなるものであって,これより生じる「エイエルアイテクノロジース」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
また,「Technologies」の文字が,「科学技術」等の意味を有するとしても,本件商標の指定商品及び指定役務との関係からすると,指定商品の品質や指定役務の質等を表示するものとして一般に使用されているものとはいい難いものである。
そうすると,本件商標を「A.L.I.」と「Technologies」とに分離する特段の理由はなく,その構成中「A.L.I.」の文字部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの,又は,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないものと認めるに足る事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,その構成文字全体をもって一体不可分のものというのが相当であるから,その構成文字全体に相応して「エイエルアイテクノロジース」の称呼のみを生じ,特定の意味合いを有しない一種の造語と認められるものであって,特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は,「ALI」の文字を標準文字で表してなるところ,これよりは特定の意味合いを有する語として知られているとは認められないものであるから,一種の造語として理解されるとみるのが相当であり,特定の観念を生じないものである。
そうすると,引用商標は,その構成文字に相応して「エイエルアイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との比較
本件商標と引用商標との類否について検討するに,両商標は,それぞれ上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ,外観において,「.」(ピリオド)及び「Technologies」の文字の有無という明らかな差異を有するから,それらの差異が両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく,外観上相紛れるおそれのないものである。
次に,本件商標から生じる「エイエルアイテクノロジース」の称呼と引用商標から生じる「エイエルアイ」の称呼とを比較すると,両者は後半部に「テクノロジース」の音の有無という明らかな差異を有するから,両者をそれぞれ一連に称呼しても,語感語調が異なり,互いに聞き誤るおそれはなく,称呼上相紛れるおそれはないものである。
さらに,観念においては,共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
してみれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において紛れるおそれはなく,類似するものではないから,その外観,称呼及び観念によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して考慮すれば,両商標は非類似の商標であって,別異の商標というべきである。
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であるから,本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似であるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)イのとおり,引用商標は,申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであり,上記(2)ウのとおり,本件商標は,引用商標と非類似の商標であって,別異の商標というべきものであるから,類似性の程度は高いものとはいえないものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品又は指定役務について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想記させることはなく,その商品又は役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。