Trademark Appeal Case
複合語の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2019−11003(T2019−11003/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「個人版私募リート」の文字を標準文字で表してなり、別掲1のとおりの役務を指定役務として、平成30年2月16日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は、「『個人版私募リート』の文字を標準文字で表してなるところ、『私募リート』の文字は『機関投資家など特定の投資家だけを対象として私的な募集によって販売される不動産投資信託』の意味に通ずる語として本願指定役務を提供する業界等において用いられており、さらに、同『個人版』の文字は、『私募リート』が私的な募集によって販売される不動産投資信託であることから、『個人向け』あるいは『私人向け』程の意味合いを容易に看取させるものである。そうすると、本願商標は、全体として『個人投資家向けの私募リート(不動産投資信託)』程の意味合いを容易に看取させることから、これを銀行・証券・不動産・金融等に関連する本願の指定役務に使用しても、これに接した需要者、取引者は、上記のような意味合いを認識・理解するにとどまり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和2年5月7日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
4 証拠調べに対する請求人の意見
請求人は、上記3の証拠調べ通知に対し、以下(1)ないし(4)のように述べた。
(1)辞書等に記載の語義からは、本願商標は「対象を私人に特定した出版」を意味すると解することができる。「私募リート(REIT)」についても、辞書の記載に基づけば多義的な文言となる。
(2)実際の金融業界において「私募リート」に投資できる者は、一定のロット(数億円〜数十億円)での投資ができる機関投資家であり、現実的に一般的な個人投資家が投資できるような商品ではない。「個人版私募リート」は、それぞれの文言を単純に組み合わせた意味ではない新たな価値を持つ商品であることを比喩的・暗示的に漠然とイメージさせるにすぎず、何ら定まった観念が世間一般に認識され通用しているものではない。対象とする需要者は個人の投資の初心者であるため、「私募」の文言にも「リート」の文言にも馴染みがなく、需要者が明確な意味を理解することが難しい。「個人版私募リート」の使用は、出願人及び関係者が出願人商標として使用しているもののみであることからも、出願人の創作した造語であり、一般に使用されている文言ではない。
(3)「○○版〜」は、あくまでも「対象や様式を○○に特定した出版である〜」の意味であり、証拠調べで示された、「○○向けの内容」、「○○を対象とした内容」の意味として使用することは、従来の意味から派生した、対象を漠然と示す用い方である。「○○版〜」は、証拠調べの結果を見ても、「対象や様式を○○に特定した出版である〜」、「○○向けの内容」、「○○を対象とした内容」、「○○による」、「○○が実施する」、他の内容と区別するための大まかな分類等、様々な意味での使い方があり、「○○版」の文言によって、需要者が何らかの明確なイメージを持つことはできない。
(4)「個人」、「版」、「私募」及び「リート(REIT)」の文字のそれぞれが、それぞれの意味を有する語であるとしても、これらを結合した「個人版私募リート」に接する需要者は、その構成全体で特定の意味合いを想起させることのない一体不可分の造語として理解し認識するものである。
5 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「個人版私募リート」の文字を標準文字で表してなるところ、本願商標の構成中「個人」の文字は「国家または社会集団に対して、それを構成する個々別々の人。単一の人。一個人。私人。」を、「版」の文字は「対象や様式を特定した出版である意を表す語。」の意味合いを表す語である(いずれも岩波書店「広辞苑第六版」)。また、「私募」の文字は「50人未満の投資家を対象とする有価証券の募集。」を、「リート(REIT)」の文字は「不動産投資信託」の解説として掲載され、「[real estate investment trust]投資信託の一種。投資家から募集した資金により不動産を取得し、生じた利益を投資家に分配するもの。投資法人を利用する会社型と信託契約に基づく契約型とがある。」を意味し(いずれも岩波書店「広辞苑第六版」)、これらを組み合わせた「私募リート」の文字は、不動産投資信託の役務の分野において、「証券取引所に上場しておらず、機関投資家など特定の投資家だけを対象として私的な募集によって販売される不動産投資信託」を表す語として普通に使用されているものである(https://www.toushin.com/faq/reit-faq/private_reit/)。
そして、本願商標を構成する「個人」及び「版」の各語の意味と、別掲2の「○○版〜」の語の使用例を考慮すると、「個人版」の文字は「個人向けの内容」、「個人を対象とした内容」の意味を認識させるというのが相当であり、また、上記のとおり、「私募リート」の文字は不動産投資信託の一種を表すものであるから、「私募リート」の文字に「個人版」の文字を冠し、「個人版私募リート」と表した場合には、当該文字全体から「個人を対象として私的な募集によって販売される非上場の不動産投資信託」であることを需要者、取引者に理解、認識させるものとみるのが自然である。
そうすると、本願商標は、「私募リート」の個人版であることを記述的に表したものにすぎず、これをその指定役務のうち、不動産投資信託をはじめとする投資に関連する役務である、第36類「不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化商品の売買,不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化商品の売買の媒介・取次ぎ又は代理,株式・債券・投資信託(不動産投資信託を含む)その他の金融商品の売買,株式・債券・投資信託(不動産投資信託を含む)その他の金融商品の売買の媒介・取次ぎ又は代理,不動産投資その他の投資の運用及び管理,不動産投資その他の投資に関するコンサルティング及び情報の提供,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,有価証券等清算取次ぎ」及び、不動産投資信託に関わる電子計算機の情報処理に関連する役務である、第42類「不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化商品・株式・債券・投資信託(不動産投資信託を含む)・電子仮想通貨・電子プリペイドカード・電子マネーその他に関する電子計算機用プログラムの提供又は貸与,不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化商品・株式・債券・投資信託(不動産投資信託を含む)・電子仮想通貨・電子プリペイドカード・電子マネーその他に関するサーバの記憶領域の貸与」に使用しても、これに接する需要者、取引者は、「個人を対象として私的な募集によって販売される非上場の不動産投資信託」や「個人を対象として私的な募集によって販売される非上場の不動産投資信託に関する電子計算機用プログラムの提供又は貸与」であること、すなわち、役務の質(内容)を表示したものと認識するにとどまると判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお、原査定においては、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当する旨、認定、判断したものであるが、原査定と当審における判断とは、いずれも本願商標から「個人を対象として私的な募集によって販売される非上場の不動産投資信託」という認識が生じることを前提として、本願商標は自他役務識別標識としての機能を有するものではなく、商標法第3条第1項所定の商標登録の要件を欠くという共通の結論に至るものであるから、両者はその判断の内容において実質的に相違するものではない。
(2)請求人の主張について
請求人は、本願商標は、「不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化商品」等を直接的、具体的に示すものではなく、漠然と比喩的・暗示的にイメージさせるにすぎず、何ら定まった観念が世間一般に認識され通用しているものではない、いわゆる造語であり、自他識別機能を十分に果たし得るものである旨主張し、機関投資家など特定の投資家だけを対象としている「私募リート」を、機関投資家などの特定の投資家ではない、すなわち一般の投資家でも購入できる新たな不動産証券化商品として販売することを意図している旨を述べている。
しかしながら、新たな役務を意図しているとしても、「私募リート」は「証券取引所に上場しておらず、機関投資家など特定の投資家だけを対象として私的な募集によって販売される不動産投資信託」を意味する語として一般的に使用されているものであり、これに「個人版」の文字を冠した「個人版私募リート」の文字は、別掲2のとおり「○○向けの内容」、「○○を対象とした内容」を「○○版〜」と表す用例に当てはめてみれば、「個人版」の文字は、これに続く名詞等の表す内容が「個人向けの内容」であることを表現する一般的な方法であるといえることから、本願商標は、「個人を対象として私的な募集によって販売される非上場の不動産投資信託」の意味合いを記述的に表したものとみるのが相当であり、これをその指定役務中、前記不動産投資関連の役務に使用しても、役務の質を表示するにすぎないというべきである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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