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Trademark Appeal Case

「Mercury」の商標・役務の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2019−900182(T2019−900182/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6133806号商標の指定役務中、第36類「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務についての商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6133806号商標(以下「本件商標」という。)は、「Mercury」の欧文字と「マーキュリー」の片仮名を二段に併記してなり、平成29年12月25日に登録出願、第36類「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供,前払い式電子仮想通貨の発行,前払い式電子仮想通貨の発行に関する情報の提供,前払式支払手段の発行,電子仮想通貨専用の自動支払機・自動預け払い機の貸与,電子仮想通貨専用の自動支払機・自動預け払い機の貸与に関する情報の提供,自動支払機・自動預け払い機の貸与」及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同31年3月8日に登録査定、同月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。

1 登録第4465732号商標(以下「引用商標1」という。)は、「Mercury」の欧文字を標準文字で表してなり、平成12年1月6日に登録出願、第36類「投資顧問契約に基づく投資助言及び投資一任契約に基づく投資,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,金融情報の提供,証券投資に関する調査研究,商品市場における先物取引の受託,企業財務に関するコンサルティング」を指定役務として、同13年4月6日に設定登録され、その後、同23年6月21日に存続期間の更新登録がされたものである。

2 登録第4469491号商標(以下「引用商標2」という。)は、「マーキュリー」の片仮名を標準文字で表してなり、平成12年1月6日に登録出願、第36類「投資顧問契約に基づく投資助言及び投資一任契約に基づく投資,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,金融情報の提供,証券投資に関する調査研究,商品市場における先物取引の受託,企業財務に関するコンサルティング」を指定役務として、同13年4月20日に設定登録され、その後、同23年6月21日に存続期間の更新登録がされたものである。

3 登録第5477295号商標(以下「引用商標3」という。)は、「BOFAML MERCURY」の欧文字よりなり、平成23年11月17日に登録出願、第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同24年3月9日に設定登録されたものである。

以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標の指定役務中、第36類に係る全指定役務(以下「申立役務」という。)について、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 本件商標と引用商標の類否

本件商標は、欧文字「Mercury」と片仮名「マーキュリー」を二段に書して表した構成であり、「Mercury」は、「水星」「水銀」を意味する英単語であり、下段の片仮名「マーキュリー」は、その振り仮名とみるのが自然であって、本件商標からは「マーキュリー」の称呼を生じ、「水星」「水銀」の観念が想起される。

引用各商標は、標準文字の「Mercury」、「マーキュリー」又は欧文字「BOFAML MERCURY」の文字からなる。

「BOFAML MERCURY」は「BOFAML」と「MERCURY」を組み合わせてなる商標であることは明らかであり、「BOFAML」部分は特定の観念を想起させないのに対し、「MERCURY」はよく知られた単語であるから、需要者・消費者は「MERCURY」部分に着目し、同部分が要部として抽出される。

以上より、引用各商標からも「マーキュリー」の称呼及び「水銀」の観念が生じる。

本件商標と引用商標は、同一の英単語「Mercury」を構成要素とすることから、外観・称呼・観念のいずれにおいても共通する類似商標である。

2 本件商標と引用商標の指定役務の類否

(1)特許庁のデータベース上付与されている類似群コードを見る限り、本件商標の指定役務には「36A02、36M01」のみが付与され、引用商標の指定役務(引用役務)の類似群コードとは抵触していない。

しかしながら、本件商標の指定役務中、少なくとも「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供,前払い式電子仮想通貨の発行,前払い式電子仮想通貨の発行に関する情報の提供,前払式支払手段の発行」(以下「類似主張役務」という。)は、類似群コード「36A01」ないし「36B01」に係る役務と類似する役務と解される。

すなわち、これらの役務については類似群コード「36A01」及び(又は)「36B01」ないし、これらのコードが「36A02」と共に付与されるべきであって、引用役務と類似関係にある。

(2)仮想通貨について

類似主張役務は、主に「電子仮想通貨」に関する役務であるところ、「仮想通貨」については、以下のとおり定義されている。

「貨幣としての実体や強制通用力はもたないが、一定数の利用者がその価値を認め、主にインターネット上で貨幣として取引に利用する電子的情報(広辞苑:甲5)」

「資金決済に関する法律 第2条第5項

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」

上記のとおり、「仮想通貨」は、電子的な「貨幣」としての価値を有し、円やドルなどの法定通貨に準ずる支払い手段として認められている。

なお、電子的な「貨幣」として代金の支払い等に使用可能という点において、電子的な決済手段として利用される「電子マネー」と「仮想通貨」は共通する(甲6)。

これに関し、審判1998−8913審決においても「本願商標は、・・・全体として『コンピューターネットワーク上での決済に使用される仮想通貨』、いわゆる『電子マネー』の意味合いを看取させるものである。」というように「仮想通貨」と「電子マネー」を同義の意味合いで把握されている。

平成30年5月18日付け政府広報オンライン記事(甲7)によれば、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、インターネット上で自由にやりとりされる通貨のような機能を持つ電子データであって、国が発行する法定通貨ではないものの、財産的価値を有するものである。そして、銀行等の第三者を介することなく、個人がインターネット上で自由に移転させることができるため、近年、ショッピングなどの際に、支払・資金決済ツールとして利用される機会が増えている。

仮想通貨の利用者保護とマネー・ローンダリング対策のため、日本では仮想通貨の取引所は金融庁への登録が義務付けられ、登録された事業者のみが仮想通貨の取引を行うことができ、登録された事業者は仮想通貨交換業者と呼ばれる(甲7)。

なお、「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう。

「資金決済に関する法律第2条第7項

一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換

二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること」

そして、「仮想通貨」の呼び名が、円やドルなどの法定通貨と誤解されるおそれがあること等から、同名称を「暗号資産」に改めることが2018年12月に金融庁より報告され、2019年5月には同改称を定めた法律(改正資金決済法及び改正金融商品取引法)が成立した(甲8、甲9)。「暗号資産」の名称からも明らかなとおり、「仮想通貨」は「資産」の一種と位置づけられるものである。

また、仮想通貨は、その値動きに着目した投機的な売買も多く、上記改正法では、暗号資産を外国為替証拠金取引(FX)と同種の金融商品と位置づけた。

すなわち、仮想通貨には「貨幣」としての側面の他、株券といった「有価証券」のような「金融商品」としての性質も有する。

仮想通貨は、急速に我が国の需要者・消費者の間に普及しており、大手都市銀行も仮想通貨発行ビジネスを手掛けている(甲10、甲11)。

このように、銀行が仮想通貨ビジネスに参入することからも、銀行業務と仮想通貨業務は資金決済に関する点や個人の財産を扱うという点で共通する。

上記のとおり、仮想通貨は様々な性質を有し、「仮想通貨」の語が何を指すのか曖昧に使用されてきた経緯があり、本件商標の出願人も特許庁も「仮想通貨」の定義をその審査の過程において明確に示してはいないことを考慮すると、類似主張役務における「仮想通貨」の語は、ビットコインやリップルといったいわゆる「暗号資産」の他、スイカやPayPayといった「電子マネー」の概念も広く含むと解される。

(3)類似主張役務について

ア 電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供

仮想通貨(暗号資産)は、支払い手段のーつとして利用可能な財産的価値を有する金融資産の一種であって、「商品・役務名リスト」においても「金融資産の運用・管理」には「36A01 36B01」、「資産の管理」には類似群コード「36A01 36B01 36D01」、「財産の管理」には類似群コード「36A01 36B01 36D01 36H01」が付与されていることからも、本役務はこれらの役務と類似するものであって、類似群コード「36A01」ないし「36B01」が付与されるべきである。

イ 電子仮想通貨に関する情報の提供

仮想通貨(暗号資産)は、金融資産の一種であって、投資対象としても売買されているところ、「商品・役務名リスト」において「金融に関する情報の提供」には類似群コード「36A01 36B01」、「投資に関する情報の提供」「有価証券に関する情報の提供」には類似群コード「36B01」が付与されていることからも、本役務はこれらの役務と類似するものであって、類似群コード「36A01」ないし「36B01」が付与されるべきである。

ウ 前払い式電子仮想通貨の発行、前払い式電子仮想通貨の発行に関する情報の提供

「前払い式電子仮想通貨の発行」とは、電子マネーのシステムと同じく、予め現金等の資金を支払うのと引換に仮想通貨を発行することを意味すると解されるところ、「商品・役務名リスト」において「電子マネーの発行」「電子マネーの発行に関する情報の提供」には類似群コード「36A01」が付与されている。

また、同役務は「現金等と仮想通貨の両替」と解することもでき、「商品・役務名リスト」において「両替」には類似群コード「36A01」が付与されている。

さらに、仮想通貨は、その取引によって売買損益が発生するという性質においては、株券等の「有価証券」と同等のものと解することもできるが、「商品・役務名リスト」において「有価証券の発行」には類似群コード「36B01」が付与されている。

以上より、本役務はこれらの役務と類似するものであって、類似群コード「36A01」ないし「36B01」も付与されるべきである。

エ 前払式支払手段の発行

「前払式支払手段」については、以下のとおり定義されている。

「資金決済に関する法律 第3条第1項

一 証票、電子機器その他の物(以下この章において「証票等」という。)に記載され、又は電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。以下この項において同じ。)により記録される金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この号及び第三項において同じ。)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される金額に応ずる対価を得て当該金額の記録の加算が行われるものを含む。)であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者(次号において「発行者等」という。)から物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの

二 証票等に記載され、又は電磁的方法により記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て当該数量の記録の加算が行われるものを含む。)であって、発行者等に対して、提示、交付、通知その他の方法により、当該物品の給付又は当該役務の提供を請求することができるもの」

旅行券やビール券のような証票の形式以外にも電磁的方法により記録される金額に応じて発行される番号、記号その他の符号も前払式支払手段の一種であり、具体例としては磁気式やIC型のプリペイドカード(SuicaやPASMOといった交通系カード等)、ネット上で使えるプリペイドカード(Amazonギフト券やiTunesギフト)、すなわち電子マネーも前払式支払手段の一種である(甲6の2、甲12、甲13)。

上記のとおり、「電子マネーの発行」には「36A01」が付与されていることから、本役務は同役務と類似するものであって、類似群コード「36A01」も付与されるべきである。

(4)登録例

仮想通貨又は電子マネー関連の役務については類似群コード「36A01」ないし「36B01」がこれまでも付与されてきた。

ア (登録第6107375号)仮想通貨交換業に係る仮想通貨の発行に関する指導・助言→類似群36A01のみ

※類似主張役務中「前払い式電子仮想通貨の発行,前払い式電子仮想通貨の発行に関する情報の提供」と同義である。

イ (登録第6091450号)仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換又は仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換の媒介・取次ぎ・代理に関して利用者の金銭又は仮想通貨の管理→類似群36A01のみ

※類似主張役務中「電子仮想通貨の管理」と同義である。

ウ (登録第6041938号)仮想通貨交換業に係る仮想通貨に関する情報の提供,前払い式電子仮想通貨に関する情報の提供→本商標登録に対しては類似群36A01及び36B01のみがふられている。

※類似主張役務中「電子仮想通貨に関する情報の提供」と同義であり、「前払い式電子仮想通貨に関する情報の提供」は、類似主張役務中「前払い式電子仮想通貨の発行に関する情報の提供」を包括する役務である。

エ (登録第6086321号)電子仮想通貨の両替、暗号通貨の両替→類似群36A01のみ

オ (登録第5659916号)電子マネー利用者が保持するカードに電子マネーを入金する手続の代行→類似群36A01のみ

上記サービスに「36A01」ないし「36B01」が付与されてきたことを考慮すると、類似主張役務にも同類似群コードが付与されるべきである。

(5)役務の類似性

類似主張役務は、「資産の管理」、「金融に関する情報の提供」、「投資に関する情報の提供」、「電子マネーの発行」、「両替」等と同等の役務と解することができるのに対し、引用商標の役務(以下「引用役務」という。)は、「有価証券の売買」、「有価証券の売買の媒介・取次ぎ又は代理」、「金融情報の提供」、「銀行業務」、「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)」、「両替」、「投資に関するコンサルティング」、「財務管理」、「資産の管理」、「資産の管理に関する情報の提供」等を含み、それぞれ同一・類似の商標を使用した場合には出所の混同を生じさせる同一ないし類似役務であることは明らかである。

役務の類否の判断について、審査基準では、「役務の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準を総合的に考慮するものとする。この場合には、原則として、類似商品・役務審査基準によるものとする。」とある。類似主張役務と引用役務は同一類似群36A01(ないし36B01)に属するものであり、審査基準によれば類似と判断されるものである。

3 むすび

以上より、本件商標と引用各商標は、類似商標であって、その指定役務も同一ないし類似関係にあるから、商標法4条1項11号に該当する。

第3 取消理由の通知

当審において、商標権者に対し、「本件商標は、引用商標1及び引用商標2と類似する商標であって、本件商標の指定役務中『電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供』(以下『取消対象役務』という場合がある。)と引用商標の指定役務中の『金融情報の提供』は、互いに類似する役務であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨の取消理由を令和2年3月10日付けで通知した。

第4 商標権者の意見

上記第3の取消理由に対し、本件商標権者は、意見書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号における商標の類否については、「その商品又は役務に係る取引実情に基づいて全体的に考察すべきものである」とされているところ、取消理由における判断には、本件商標権者と引用商標権者の実際の取引実情、具体的には、商標権者の具体的な事業の内容について検討がない。

(1)「仮想通貨」は、法律の定義及び流通の実態からみて、現実の商取引において、電子的な「貨幣」としての価値を有し、一定の条件の下、円やドルなどの法定通貨に準ずる支払い手段として認められているものということができることに関して

仮想通貨の取引を行うことのできる事業者は、金融庁に登録された「仮想通貨交換事業者」(現在は「暗号資産交換事業者」)に限られており、引用商標権者は、金融庁発表の事業者のリストに登録されていない(乙1)。

したがって、引用商標権者は、「仮想通貨(暗号資産)の取引を行うことのできる事業者」に当たらず、「金融情報の提供」には「仮想通貨(暗号資産)に関連する情報の提供」は含まれていないとみるべきである。

(2)改正法では、暗号資産を外国為替証拠金取引(FX)と同種の金融商品と位置づけていることに関して

引用商標権者が「暗号資産の取引を行うことのできる事業者」に当たらず、「暗号資産」に関する事業を行えない以上、取消対象役務との関係では、何ら混同は生じ得ない。

(3)我が国における大手都市銀行も仮想通貨発行ビジネスに参入する状況にあることに関して

引用商標権者は「暗号資産交換事業者」として登録されておらず、係る事業に具体的に参入していない。

商標法第4条第1項第11号における類否判断は、具体的な取引実情に基づいて判断されるのであって、「仮想通貨(暗号資産)の取引を行うことのできる事業者」ではない引用商標権者が取消対象役務との関係で類似するような「金融情報の提供」を行える状況は、現実には全くない。

2 「仮想通貨(暗号資産)」に係る事業が「金融庁への登録が義務付けられ、登録された事業者のみ」行うことができるという取引実情をかんがみれば、取消対象役務に係る「仮想通貨交換事業者(暗号資産交換事業者)」が提供できる役務と、登録事業者でないものが提供する一般的な「金融情報の提供」役務との間には、「『通常』同一事業者により製造又は販売されている等の事情」はないとみるべきであり、「取消対象役務」と一般的な「金融情報の提供」とは、相互に非類似である。

3 引用商標の登録出願時(平成12年1月6日)には、「電子仮想通貨」は技術的に未発達であり、引用商標の指定役務中の「金融情報の提供」に「電子仮想通貨(暗号資産)に関連する情報の提供」が含まれているとは思えず、本件商標の登録出願時(平成29年12月25日:既に金融庁で「仮想通貨交換事業者」に関する登録が行われていた)に、「金融情報の提供」に「36A01、36B01」の類似群が付与されていることを確認し、「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と引用商標の指定役務は非類似と考え、本件商標を採択、出願したものである。公表されている類似群を前提に先行調査を行った上で、採択を決めた商標権者が、その登録出願時において、「電子仮想通貨」に関する役務を想定していなかったことが明らかな引用商標との抵触を理由に、事後的に役務の類似を指摘され登録が取り消されるのは、不当である。

登録に関する予見可能性の担保の見地からも、実際の取引状況からも、少なくとも、引用商標の指定役務における「金融情報の提供」には、取消対象役務と類似する内容の情報の提供は含まれていないとみるべきである。

第5 当審の判断

1 本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否について

(1)本件商標

本件商標は、「Mercury」の欧文字と「マーキュリー」の片仮名を二段に併記してなるところ、上段の「Mercury」の文字は、「水銀」又は「水星」の意味を有する英語であり(ジーニアス英和辞典第5版 大修館書店)、下段の「マーキュリー」の片仮名も、「水星」又は「水銀」の意味を有する語(広辞苑第7版 岩波書店)であることから、本件商標からは、その構成文字に相応して「マーキュリー」の称呼及び「水銀」又は「水星」の観念を生ずるものである。

(2)引用商標1

引用商標1は、「Mercury」の欧文字よりなるものであるから、本件商標と同様に、その構成文字に相応して「マーキュリー」の称呼及び「水銀」又は「水星」の観念を生ずるものである。

(3)引用商標2

引用商標2は、「マーキュリー」の片仮名よりなるものであるから、本件商標と同様に、その構成文字に相応して「マーキュリー」の称呼及び「水銀」又は「水星」の観念を生ずるものである。

(4)本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否

本件商標と引用商標1及び引用商標2とを比較すると、本件商標は、引用商標1と同じ文字列の「Mercury」の欧文字及び引用商標2と同じ文字列の「マーキュリー」の片仮名を構成要素とするものであることから、両者は、外観上、類似するものである。

そして、両者は、「マーキュリー」の称呼及び「水銀」又は「水星」の観念を共通にするものである。

そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、外観において類似するものであって、「マーキュリー」の称呼及び「水銀」又は「水星」の観念を共通にするものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。

2 申立役務と引用商標1及び引用商標2の指定役務の類否について

本件商標の指定役務及び引用商標1及び引用商標2の指定役務は、それぞれ、前記第1及び第2のとおりであるところ、申立役務と引用商標1及び引用商標2の指定役務との類否について検討する。

(1)仮想通貨(暗号資産)について

「仮想通貨(暗号資産)」は、近年、取引が活発になってきたものであり、当初は、仮想通貨(暗号資産)を規制する法律もなかったものであるが、「貨幣としての実体や強制通用力はもたないが、一定数の利用者がその価値を認め、主にインターネット上で貨幣として取引に利用する電子的情報」(広辞苑第7版(甲5))の意味を有するものと辞書上に記載され、「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」という。)の第2条第5項においては、「一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」「二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」と定義されている。

我が国においては、仮想通貨(暗号資産)の取引所は金融庁への登録が義務付けられ、登録された事業者のみが仮想通貨(暗号資産)の取引を行うことができ、登録された事業者は仮想通貨(暗号資産)交換業者と呼ばれており(甲7)、「仮想通貨交換業」は、改正前の「資金決済法」第2条第7項において、「一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換」「二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理」「三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること」のいずれかを業として行うことをいうと定義され、「暗号資産交換業」は、改正後の「資金決済法」第2条第7項において、「一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換」「二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理」「三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。」「四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。」のいずれかを業として行うことをいうと定義されている。

そうすると、「仮想通貨(暗号資産)」は、上記法律の定義及び流通の実態からみて、現実の商取引において、電子的な「貨幣」としての価値を有し、一定の条件の下、円やドルなどの法定通貨に準ずる支払い手段として認められているものということができる(甲6の1、甲7)。

また、「仮想通貨」の名称については、円やドルなどの法定通貨と誤解されるおそれがあること等から資金決済法及び金融商品取引法の改正(令和元年法律第28号)に伴い、「暗号資産」と改称され、さらに、暗号資産は、その値動きに着目した投機的な売買も多いことから、上記改正法では、暗号資産を外国為替証拠金取引(FX)と同種の金融商品と位置づけている(甲9)。

さらに、我が国における大手都市銀行も仮想通貨(暗号資産)発行ビジネスに参入する状況にある(甲10、甲11)。

(2)商品・役務の類似について

「指定商品が類似のものであるかどうかは、それらの商品は通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる場合には、たとえ、商品自体が互いに誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商標は商標法にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。」(昭和33年(オ)第1104号判決)旨判示されており、役務の類似についても同様と解される。

また、商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情は、当該商標が現に、当該指定商品に使用されている特殊的、限定的な実情に限定して理解されるべきではなく、当該指定商品についてのより一般的、恒常的な実情、例えば、取引方法、流通経路、需要者層、商標の使用状況等を総合した取引の実情を含めて理解されるべきである(昭和47年(行ツ)第33号、同旨判決平成20年(行ケ)第10285号参照)。

(3)取消対象役務について

「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」における「電子仮想通貨」は、「仮想通貨(暗号資産)」が、上記(1)のとおり、「電子的情報」又は「電子機器その他の物に電子的方法により記録されているもの」のように定義されていることからすると、「仮想通貨(暗号資産)」と同義語であると認められるものである。

そして、資金決済法の第2条第5項に係る仮想通貨は、資金決済法及び金融商品取引法の改正(令和元年法律第28号)に伴い、「暗号資産」と改称されたものであり、その法律の定める定義及び流通の実態を踏まえれば、国家等の保障がない電子データであるにもかかわらず、現実世界において、実商取引の際に資金決済に用いられるものとして発生してきたものであり、実在の通貨と同様に扱われ、財産的価値を有し、交換可能であり、投資の対象ともなるというような性質を有しているものである。

そのような性質からすると、資金決済法の第2条第5項に係る仮想通貨(暗号資産)は、金融資産の一種というべきものであって、仮想通貨(暗号資産)交換業者を介し、売買、交換等が行われるものであり、我が国における大手都市銀行も仮想通貨(暗号資産)発行ビジネスに参入する状況にある(甲10、甲11)。

そうすると、資金決済法の第2条第5項に係る仮想通貨(暗号資産)に関する役務である「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」は、支払い手段のーつとして利用可能な財産的価値を有する金融資産の一種についての管理・情報の提供であるということができる。

(4)引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」について

引用商標1及び引用商標2に係る指定役務中の「金融情報の提供」は、「金融」が「経済社会における資金の貸借」(広辞苑第7版)であることから、「経済社会における資金の貸借に関する情報の提供」と解されるものである。

(5)取消対象役務と「金融情報の提供」との類否について

支払い手段のーつとして利用可能な財産的価値を有する金融資産の一種についての管理・情報の提供と解される「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と「金融情報の提供」とは、ともに「金融資産」を対象としていることから、目的、手段において一致し、取引者、需要者を共通にする場合があり、実際に、我が国における大手都市銀行が仮想通貨発行ビジネスに参入していることから、かかる役務を提供する事業者も共通にするものということができる。

そうすると、「経済社会における資金の貸借に関する情報の提供」というべき「金融情報の提供」と、資金と同様の役割を果たす「電子仮想通貨」の管理や情報の提供である「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」に同一又は類似の商標を使用した場合には、取引者、需要者をして、その出所について誤認混同するというのが相当であり、両役務は、類似の役務というべきである。

(6)取消対象役務以外の申立役務と、引用商標1及び引用商標2に係る指定役務との類否について

「前払式支払手段の発行」は、一般的に、あらかじめお金を払っておいて、購入時に決済する、プリペイドカード等の前払い式証票の発行をする役務であることから、「前払い式電子仮想通貨の発行,前払い式電子仮想通貨の発行に関する情報の提供」における「電子仮想通貨」は、「前払式」の「支払手段」の一といい得るものであり、例えば、「SUICA」、「PASMO」、「WAON」や「Edy」などの「前払式(プリペイド方式)による電子マネー」や、ネットワークゲームへの課金により取得できる、ゲーム内の仮想空間における通貨であって、ゲーム内のみで流通し、アイテム購入などに用いるもの(例えば、ロールプレイングゲーム中の世界で通用する通貨としての「ギル」「ルピー」など)が当たるものである。

また、「電子仮想通貨専用の自動支払機・自動預け払い機の貸与,電子仮想通貨専用の自動支払機・自動預け払い機の貸与に関する情報の提供,自動支払機・自動預け払い機の貸与」は、「自動支払機・自動預け払い機」を対象とした「機器の貸与」と「機器の貸与に関する情報の提供」である。

一方、引用商標1及び引用商標2の指定役務は、全般に「有価証券の引受け,有価証券の売出し」等の、主として金融商品取引法の規制を受ける証券会社が行う役務である。

そうすると、「前払式」の「支払手段」の発行や「自動支払機・自動預け払い機」を対象としたの「機器の貸与」及びそれらに関する情報の提供である取消対象役務以外の申立役務と、主として金融商品取引法の規制を受ける証券会社の行う役務である引用商標1及び引用商標2の指定役務とは、目的、手段が異なり、取引者、需要者、事業者を共通にするともいい難く、これらに同一又は類似の商標を使用した場合に、取引者、需要者をして、その出所について誤認混同するとはいえないから、両役務は、非類似の役務というのが相当である。

(7)小括

以上を総合勘案すれば、申立役務中の「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」は、互いに類似する役務であると認められる。

しかしながら、取消対象役務以外の申立役務である「前払い式電子仮想通貨の発行,前払い式電子仮想通貨の発行に関する情報の提供,前払式支払手段の発行,電子仮想通貨専用の自動支払機・自動預け払い機の貸与,電子仮想通貨専用の自動支払機・自動預け払い機の貸与に関する情報の提供,自動支払機・自動預け払い機の貸与」と引用商標1及び引用商標2の指定役務は、互いに類似する役務ということはできない。

3 商標法第4条第1項第11号該当性について

前記1のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2は類似するものであり、前記2のとおり、本件商標の指定役務中の「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」は、互いに類似する役務である。

したがって、本件商標は、その指定役務中「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 商標権者の主張について

商標権者は、「引用商標権者は、金融庁に登録された『仮想通貨(暗号資産)交換事業者』ではなく、引用商標権者が行う『金融情報の提供』には、『仮想通貨(暗号資産)に関連する情報の提供』は含まれていない。また、引用商標の登録出願時には、『電子仮想通貨』は技術的に未発達であり、引用商標の指定役務中の『金融情報の提供』には、『仮想通貨(暗号資産)に関連する情報の提供』は含まれていない」旨主張し、「取消理由における判断には、本件商標権者と引用商標権者の実際の取引実情、具体的には、商標権者の具体的な事業の内容について検討がない」と主張している。

しかしながら、引用商標権者が金融庁に登録された「仮想通貨(暗号資産)交換業者」ではないということは、特殊的、限定的な取引の実情であり、一般的・恒常的な取引の実情ということはできず、本件商標の指定役務中の「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」との類否は、引用商標権者の「仮想通貨(暗号資産)交換業者」の登録の有無にかかわらず、当該役務がどのような役務であるかを元に、事業者の共通性、需要者の範囲、提供の手段、目的等を総合的に考慮して判断すべきものである。

また、引用商標の登録出願時及び登録査定時において「電子仮想通貨」は技術的に未発達であり、引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」には、「仮想通貨(暗号資産)に関連する情報の提供」は含まれていなかったとしても、本件商標の指定役務中の「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」とは、上述のとおり、ともに「金融資産」を対象としていることから、目的、手段において一致し、取引者、需要者を共通にする場合があり、実際に、我が国における大手都市銀行が仮想通貨(暗号資産)発行ビジネスに参入していることから、かかる役務を提供する事業者も共通にするものといい得ることからすれば、これらの役務に同一又は類似の商標を使用した場合には、その出所について誤認、混同を生じるおそれがあるものというのが相当であり、両役務は類似の役務というべきである。

そうすると、本件商標の指定役務中の「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」との類否は、あくまで、一般的、恒常的な取引の実情のもとに、商標登録原簿上に記載された、本件商標の指定役務中の「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」と引用商標1及び引用商標2の指定役務中の「金融情報の提供」について判断されるべきであるから、引用商標権者の「仮想通貨(暗号資産)交換業者」の登録の有無等の特殊的、限定的な取引の実情をもとに類否を判断することは妥当ではない。

したがって、商標権者の主張は、いずれも採用することはできない。

5 まとめ

以上のとおり、本件商標は、その指定役務中「電子仮想通貨の管理,電子仮想通貨の管理に関する情報の提供,電子仮想通貨に関する情報の提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、結論掲記の指定役務について、その登録を取り消すべきものとし、本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務については、取り消すべき理由がないから、同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

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